Lは捜査本部が気付いてくれるのを待っていた。警察本部が気付いてくれないとなかなか次に進めないからである。Lは事あるごとにヒント時には答えといっていいほどのヒントを与え続け少しずつ進展させてきていた。それでも当初予定してた時間よりもかかっている。「あれれぇ。おかしいなぁ」はそろそろやりすぎな気がしていた。
L的にはDランクレベルの易しい気付きを警察本部の力で発見して欲しかった。
――レイ=ペンバーに関してはあえて不審な点を多く散りばめ、しかも誰でも解けるレベルにしといたのに気付かないのか……仕方ない……
「あれれぇ。おかしいなぁ」
Lは口に指を加えながらレイの改札のシーン、乗車のシーン、死のシーンを見ていた。
同時に複数の動画を見ることができるらしい。
「1周1時間の山手線に1時間半乗っていた。遺留品に切符もなく、スイカの履歴からも途中下車はしていない……レイはファイルを持ちながら1時間半電車に乗り続けたことになる……」
「たしかに」そのような発言を捜査本部のメンバーはしていた。
――いや、せっかく3つのシーンを並べたんだ。良く見てほしい。封筒が消えていることにも気付けないのだろうか
「あっ!!!!封筒はどこへ行った??」
「封筒?」
相沢は画面を覗き込んだ。
「あっ確かに改札とホームでは封筒を持っています」
総一郎は割り込んだ。
「遺留品リストに封筒はなかった」
「レイは一番最初にファイルを貰ったハリーにその直前に電話をしています。一番ファイルを欲しがっていたのはレイかも知れない。これには大きな意味がある……そして山手線での不自然な行動……」
「なにかありそうだな……」段々とレイに対して不信感を感じ始めていた。
「レイは調べていた者を疑う余地なしとだけ報告していますが、この中にキラがいる可能性がある……レイが調べていたふたつの家に……」
Lは大きく息を飲んだ。そして捜査本部のメンバーに向けていた背中であったが、くるっとメンバーの顔を見渡した。
「盗聴器と監視カメラを仕掛けます」
「馬鹿な……日本ではそんなこと許されない……!!」
「いくらなんでもそれは無理ですよ、竜崎」
「ばれたら私たちみんなクビだ……」
総一郎以外の捜査メンバーがあわてふためいている。
「首ではなく命を懸けて捜査していたはずです……」
総一郎は分かっていた。キラを捕まえるならリスクを背負う必要を。
「そのペンバーが調べていた二人というのは誰なんですか?」
「北村次長とその家族……夜神局長とその家族です。この二軒の家に盗聴器とカメラをつけさせて頂きたい」
松田と相沢は猛反対していた。総一郎も汗が止まらなかった。事の重大さを分かっていたからだ。Lはキラがその中にいる可能性は5%と言った。しかし、今まではキラの容疑者候補がいなかったことを考えると5%と言えども非常に大きい可能性であることも理解していた。感情論では総一郎も反対したくなった……しかし、もし自分の家族ではないなら決行していたという感情を抑えることができなかった……。自分の家族だから感情論でキラを追い詰める好機を逃すのはいけない……頭では分かっていた。しかし、このまま家族が疑われるというのもいやであった。結果として家の隅々まで盗聴器と監視カメラを設置しLと総一郎の二人で監視をするということで落ち着いた。
1月8日……
月は玄関の鍵を開けた。
月が階段から上がっていく様を4つのカメラで監視している。
「夜神月……カメラを付けた者からの報告では自分の留守中部屋に誰か入ってないかチェックしています」
月は自分のドアノブを触れようとして何か違和感を感じた。ドアノブの位置やシャーシンの芯を使って誰かが入っていないかをチェックしている。そして明らかに家族以外の誰かが部屋に入っていることを確信した。物の位置なども探りを入れたようで元に戻してあるように思えるがほんの数ミリずれていた。そして私服に着替えて外に出た。
――尾行もついているのか
月は私服のコートを隅々まで調べた。盗聴器がないかを確認していいたのである。
LINEで誰かに通話し始めた。
「ナミコ……家に監視カメラか盗聴器……いやどうせなら両方だろう。仕掛けられた可能性がある」
次回69!