捜査本部では他愛もない話をしていた。Lはいつ話が進展するかをじっと待っていたが限界だった。
――仕方ない
「そろそろキラ事件に対する私の考えを話してもいいでしょうか?」
すると部屋は静かになった。かすかにいやらしい声の音が漏れているがワタリがヘッドホンでナニかしているのだろう。松田はにやにやしていた。
「キラは単独犯。前の捜査本部の情報を得ていた……そ」
「キラって単独犯なの?」
相沢が話を遮ってきた。
――そんなことも話さないといけないのか……
「そして殺しに必要なのは顔と名前。死の時間、死の前の行動をある程度操れる……以上のことをふ」
「えええ。死の前の行動を操れるんですか?」
松田も話を遮ってきた。
「ふまえてこれから話すことを聞いてください」
Lは黒マジックを取り出した。マジックの先端部分を人差し指と親指の二本で持ち出しそのまま机の上に書きだした。
総一郎はつっこむのを止めた。
12月14日
FBI捜査官12人が日本に潜入
12月19日
○の中に☆を書いたり、えるしっているかなどの暗号を残したりと刑務所の犯罪者で死の前の行動を操るテストをしている
「ここまではいいですか?この意味が分かりますか?」
松田は「分かりません」とはっきり答えた。そして「えるしっているか」ってなんですかと聞いてきたので頭文字を横読みしてみるように伝えた。
「なるほど。犯罪者でテストとはキラも良く考えましたね」
相沢は関心している。
――そういう意味ではない。仕方ない……
「つまりこのたった5日の間にキラはFBIの存在に気付き、その存在を脅威に感じた。顔も名前も分からないFBIを全員消す為に死をどこまで操れるか犯罪者でテストする必要があった。キラは警察の情報を入手できる位置にいるので刑務所で死亡者が出ればそれを確認できる手法があったということ」
12月27日
FBI捜査官12人全員に彼らの顔と名前の入ったファイルを持たせ殺すことに成功しています。この理由は分かりますか?」
「それなら分かります。キラは顔と名前が必要だからですよ」
松田は自信満々に答えた。
「違います。これはファイルを見たのがわからなくする必要があった証……」
「なるほど。12人全員が同じファイルを持てばどこから入手したか絞れなくなるということだな」
総一郎はLの言いたいことをかみ砕いて言ったつもりだった。
――確かにその通りですが、本題はそこではない……本当に日本の警察はどこまで頭の回転が遅いのでしょうか……
「私の言いたいことは逆に言えばだれかとかなり接近したと考えられます。キラはFBIが調べていた者の中にいると考えることができます。キラはFBI全員の顔と名前を知るのにかなり無理をしています」
後ろで死神がクククと笑っていた。
「良く言うぜ。元々お前はFBI全員の顔も名前もずべて知っていたくせに」
「すごい……ここまで分かっていれば我々でも十分捜査できるぞ」
捜査本部のメンバーは希望に満ち溢れていた。これで一歩前進、いや二歩前進した気持ちになった。
総一郎は事件とは関係ない質問であるがL個人に興味があった。もちろん深い意味は……。
「竜崎ひとつだけ聞かせてくれ。あなたは自分を負けず嫌いと言っていたが我々に顔を見せるということがあなたにとってキラに負けたことにはなってないか?」
Lは体育座りで両足を両腕で抱え込んでいた。
「はい……顔を出したことも、FBIを犠牲にしたことも負けです……」
そして全員の顔を見渡して続けた。
「しかし……最後は勝ちます。ここに集った命がけの人間で見せてやりましょう……」
Lの顔が笑顔になった。はにかんでいる。
「正義は必ず勝つということを」
Lは雪降る町で外を眺めていた。
――何かひとつでも穴があったら……何かひとつでも真実が出てきたら命取りになる。
一方夜神家でも月は勉強しながら考えていた。
――これであと何か一つ決定的なものがあれば……そんなに焦ることもないだろう……いやここで逃したら……
二人は思った
「何かひとつ」
そして月は美空ナオミに出会ったのである。
次回、監視!