「小鳥君」
一言だけ発言して間が空く。この手の間は言いにくい事が続くことをライトは経験で学んでいた。相手に発言を促す為に一言だけ返し誘導した。
「はい?」
「実は私は極秘の調査で日本に来ていて日本の警察には……その……」
レイが何を言いたいかを察してその後の意味を考慮した上で発言した。
「……わかりました。あなたに会ったことは誰にも言いません」
一瞥するとまだ物足りない表情だった。
誰に言って欲しくないのか、そんなこと決まっている。だから後に続けた。
「もちろん父にも」
しかし、まだ足りない表情だった。何かを思い出しハッとした。
レイは言いたいことを即座に理解したライトに即座に理解を示さない上司や後輩の顔を浮かべた。即座に理解してくれたことを褒めようか考えたが、辞めた。その代りに
「じゃあ私はここで……警察が来ると面倒なので……」
言いかけた言葉は「帰ります」だろう。そして今回の事件は数分後には警察が来るのであろう。
――僕だってFBI捜査官と接触したなんて警察に知られたくない。父に知れれば必ずLに伝わる。Lは僕がLをキラだと疑っていることを全く疑っていない。今ここで起きたことは警察にただの事故として処理される。
「……」
「なんかせっかくスペースランドに行こうと思ってたのにこんな怖い目にあっちゃ……」
出来る事なら家に帰ってL=キラの仮説について吟味したかった。しかし、ライトの予想に反し
「私は大丈夫ですよ、せっかくなので行きましょう」
彼女はライトに腕組みししたかった。しかし、今は隣にいるだけでも幸せだった。
――こういう時の女の子は強いんだな
レイはバスジャックの事を思い浮かべ、待ち合わせのホテルへ足を運んだ。
――さて、この事を話すべきか……
ドアの前でカードキーを取り出し、ナオミの反応を見てから話すか話さないかを決めればいいやと思った。ナオミというのはレイのフィアンセである黒髪ロングストレートの日本女性である。
扉を開けるとナオミは待ち構えていたかのようにイスから立ち上がった。レイは部屋に入るまでが仕事モードだったので部屋に入るや否や、スーツを脱ぎだした。そしてソファにそのスーツを投げた。あとでハンガーにかけておけばいいと思ったのである。
イスに深く座り、天井を見上げて大きなため息をついた。
――さて話すべきか
そんなことを考えてるレイに対してナオミは間髪入れずに質問した。
「何かあったの?」
疑問形で聞いてはいるがナオミにとって確信していた。
――間違いなく何かあった。なにか秘密を隠している。
レイは一目散に椅子に座り天井を見上げる時は、何かがあり話すか話さないか迷っている時だった。そんな時は何があったかと誘導してあげることで話しやすくなることを二人で過ごした時間から学んでいた。