FAIRY TAIL 妖精の凍てつく雷神 作:タイトルホルダー
エルザ「(あのジェラールを倒した……私の……8年に渡る戦いは終わったんだ……)」
エルザが安堵の笑みを浮かべると、ナツは力を使い果たし、ガクッと倒れそうになる。
エルザ「ナツ!」
エルザは急いで駆け寄ってナツを抱き締めるように受け止める。
エルザ「お前はすごい奴だ。本当に」
そう言ってナツの頭を撫でる。
そこにトールとシモンが駆け寄ってくる。
シモン「二人とも大丈夫か?」
エルザ「私は大丈夫だ。ナツもしばらくすれば意識を取り戻すだろう」
トール「いやーこれで一件落着──
──というのは早いぞ二人共」
『!!?』
トールがあっけらかんとした態度で話しかけてくるが、突然真面目な態度に変わり、塔全体が激しく揺れ始めた。
楽園の塔から大小規模を問わず爆発が発生する。それを外から見ていたグレイたちは驚愕する。
ミリアーナ「何アレ!?」
パオラ「エーテリオンが……暴走している!!?」
ルーシィ「暴走!!?」
ハッピー「元々、あんなに膨大な魔力を一ヶ所に留めておくこと事態が不安定だったんだ……」
ジュビア「行き場をなくした魔力の渦が、大爆発を起こす」
楽園の塔の緊急事態に他の者達にも動揺がはしる。
ウォーリー「ちょ!?こんな所にいたら、オレたちまで」
ショウ「中にいる姉さんたちは!?」
グレイ「誰が助かるとか助からねえとか以前の問題だ。オレたちを含めて……全滅だ」
グレイの言葉が周りに重くのしかかる。
「そんなの……嫌だ……」
そんな声が水の球体の中で静かに響いた。
アニス「約束したもん……〝戻ってきてくれ〟って」
アニスは背中に
パオラ「だめよ!今楽園の塔の周りはエーテルナノ濃度が高すぎるし、いつ大爆発するかわからないわ!」
アニス「それでも……私は行く!!!」
そう言うとアニスは水の球体から飛び出し、サイコキネシスでさらに速度を上げて飛び出していった。
グレイ「よせアニス!!!」
パオラ「あのバカ……!!!」
ミリアーナ「アニスちゃーん!!!」
周りの静止も気に止めずに。
場所は戻って楽園の塔内部では、外よりもまずい状況になっていた。
トール「この塔はもうダメだ。いつ崩壊してもおかしくねえ。俺がここに来る前から俺を取り込もうとしていたからな。それほど不安定だったってことだ」
エルザ「くっ……何か方法はないのか!?この状況を打開する方法は……」
エルザは悔しさで拳を握りしめる。
トール「……一応、方法がないことはない」
シモン「どんな方法なんだ?」
トールはエルザたちに解決方法を静かに話す。その方法を聴いて、エルザたちは耳を疑った。
それは、『自分の体にできるだけエーテリオンの魔力を取り込み、残りを空へと放出する』という、とても危険な方法だった。
シモン「な!?正気か!?」
エルザ「無茶だ!そんなことをしたら、お前の体が!」
トール「いや、俺の計算ではうまくいくはずだ」
トールはそのまま説明を始める。
トール「この塔はエーテリオンの魔力、27億イデアもの魔力を持っている。だが、魔力が漏洩し続けることで現在は半分近い魔力量になっている」
そう言うとトールはその場でしゃがみ、両手で地面をコンコンと叩く。
トール「そんなとき、残りの魔力の約半分を俺が吸収し、その魔力を使ってもう半分の魔力を空に放出すれば?」
トールの言葉にエルザはハッとするが、すぐに冷静になる。
エルザ「いや待て。そんなに多くの魔力を吸収できるわけ……っ!?」
トール「気づいたか?
そのためのコールドフレアだったんだよ」
驚くエルザに対してトールはまるで事が思い通りにいったように嬉しそうな顔をして立ち上がる。
トール「ベータたちとの戦い、ジェラールの攻撃を防御したイージスバリア、そしてナツに放ったコールドフレア。これだけ魔力を消耗したんだ。なるとかなるさ。と言うわけで──」
トールはちらっと見えた外から来たなにかを見てニヤリと笑い、エルザたち三人にサイコキネシスをかける。
シモン「こ、これはサイコキネシス!?」
エルザ「待てトール!一人じゃ無理だ!」
エルザはトールを説得しようとするがトールはサイコキネシスを解除しようとしない。
トール「心配すんな。俺はこんなとこで死なねえ。だから、待っててくれ」
そしてトールは三人をそのまま真っ直ぐ飛ばし、楽園の塔から脱出させた。
飛ばさせる最中、エルザは自分達とは反対に塔に近づく光がちらっと見えたが、それがアニスであることは、塔から脱出して、パオラたちに救助された少し後だった。
エルザ『待てトール!一人じゃ無理だ!』
トール「一人じゃねえさエルザ。なぜなら俺には………」
トールは先程エルザに言われたことを一人で否定する。
そして塔にやってくる光を待つ。
トール「最高のパートナーがいるからな」
アニス「トール!!!」
光の正体であるアニスが超速でやってくる。そして胸元に飛び込み、トールもアニスを抱き締める。
トール「来ると思ったぜ」
アニス「トールとの約束だもん」
二人は抱擁を緩め、顔を合わせる。
アニス「早くここから出ようよ!みんな外で待ってるよ!」
トール「いや、まだだ。まだこの塔を離れるわけにはいかない。今離れるとエーテリオンの魔力の暴発で全員死ぬ」
アニス「でも、逃げる以外に方法なんてないよ……」
落ち込むアニスに対して、トールはエルザたちに話した方法を話す。
トール「つー訳で、お前は俺が魔力を空へと逃がしたときに、速攻で俺を抱えて脱出するんだ」
アニス「その方法って……できるの?」
トール「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる。俺は〝凍てつく雷神〟トールさんだぞ。だがそれ以前に……お前のパートナーだ」
アニス「………うん!!!」
トールがそう言うと、アニスは満面の笑顔で答えた。
トールside
俺はアニスを背に乗せたまま、地面のラクリマに両手を握り締めて突き刺す。
それにより、体内にエーテリオンの魔力が流れ込んでくるのを感じる。
………これがエーテリオンの魔力か。確かに力が沸き上がってくるのを感じるが、やはり体に合わないのか、少しの吐き気が襲いかかってくる。
おそらくナツは俺以上に体に負荷がかかっていただろう。
そう思うと、改めてナツの精神的な強さがわかる。
……もし、俺が同じ立場だったら、ナツのようにはいかないだろう。
俺は心が脆いから、そのまま自滅してしまうかもしれない。
そういう意味では、ナツが羨ましい。パートナーであるハッピーと離れていても、全く問題無さそうにしている。
それは無条件で信頼し合う仲だからだろうか。それは俺とアニスだって同じだ。
だが、俺はアニスが近くにいないと不安になる。俺は本当に一人でできるか不安になる。
だが逆に、一緒にいればその不安は無くなる。
どこへいくにも、何をするにも、アニスと一緒なら安心できる。
なぁアニス。お前は自分が足を引っ張っているんじゃないか、とか思ってるかも知れねえけど、
俺にとっては十分すぎるくらいに助けてもらってるんだぜ?
そして、魔力の吸収が完了し、その魔力を使って残りの魔力を空へと解き放った。
第三者side
外にいた者達はその光景に驚いた。
今まで大小関係なしにランダムに爆発していた塔が突然治まり、塔に残存していたエーテリオンの魔力が空へと解き放たれた姿を。
シモン「塔が……」
ルーシィ「私たち……助かったの?」
グレイ「そう言いたいけど、トールとアニスは……」
パオラ「トール……アニス……」
皆が助かった現実をすぐに受け入れずにいるが、パオラはただ祈るように目を瞑り、両手を合わせる。
すると、塔から何かが光って出てきたのが見えた。
よく見るとその光は遠回りだが此方へと向かってきている。
ハッピー「ねえあれって!」
グレイ「あぁ!間違いねえ!!!」
パオラは目を開けてその光を見る。その光の正体は自分が想いを寄せている少年と、その少年を抱えて飛んでいる少年のパートナー。
パオラ「心配ばかりかけて……あのバカ」
そう言ったパオラは心の底から安堵し、皆は抱き合ったりハイタッチなどをして喜びを分かち合った。
トール「あー疲れた。これはアレだぞ。数日は体がだるんだるんになるやつだぞ」
アニス「今は心がだるんだるんだね」
現在アニスに抱えられながら飛んでいるトールは数日後の自分を想像して嘆き、アニスに突っ込まれていた。
そんななか、アニスはトールに訪ねた。
アニス「ねえトール。今回私、役にたってた?」
トール「あぁ」
少し不安そうに言うアニスに対してトールは
トール「最高だったぜ」
と言い、それを聴いたアニスとトールの間には同じような笑顔と、形には見えない確かな信頼関係がそこにあった。
ちょっと短かったかな(・_・;