ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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前回のあとがきで次の投稿はかなり遅くなると書きましたが、出来るだけ近日中に今の章を終わらせたいと思ったので投稿しました!


13話 最後の賭け

――――消え失せろ――――

 

 

最後にその一言だけを言い残すと、その黒い霧はスーッと消えていった。

 

 

な、なんだ・・・・・?

 

なんだったんだ、今のは・・・・・!?

 

 

フェンリルにトドメをさせられそうになっていた俺を・・・・いや、俺と美羽を突然現れた黒い霧がフェンリルの牙から守ってくれた。

 

おかげで俺と美羽は助かったんだけど・・・・

 

「ね、ねぇ、今のって・・・・・」

 

美羽が声を漏らす。

その声は明らかに震えていた。

 

「あ、ああ・・・・・」

 

美羽が驚くのも無理はない。

俺だってかなり驚いている。

 

だって今のは―――――

 

俺の脳裏に浮かぶのはかつて死闘を繰り広げたあの男。

 

だけど、あいつは死んだ。

 

だったら、今のはいったい・・・・・・・

 

だめだ、いくら考えても全然分からん。

 

「フェンリルを止めただと? あれはいったい――――」

 

ロキもありえないといった表情で俺達を見てくる。

 

その時だった。

 

空から大質量の雷光が煌めき、フェンリルに命中。

その動きを止める。

 

「イッセー君! 美羽ちゃん!」

 

「その者達はやらせん!」

 

声がした方を見上げると、堕天使の翼を広げた朱乃さんとバラキエルさんが俺達のところへ降りてきていた。

 

朱乃さんは地面に降り立つとすぐに俺の元へと駆け寄る。

 

「なんて深い傷・・・・! 今治療しますから少し我慢して!」

 

朱乃さんはそう言うと俺が手にしていたフェニックスの涙を取り上げ、傷のある箇所に振りかけていく。

 

涙の効果のおかげで、明らかに致命傷だった傷が一瞬で塞がっていく。

 

「父さま!」

 

「うむ! ここは私が引き受ける! 朱乃は二人を後ろへ連れていきなさい!」

 

バラキエルさんが全身に雷光を纏わせながらそう言う。

 

俺はそれに反対する。

 

「いくらバラキエルさんでもあいつを一人で相手にするのは無茶です! 俺も戦います!」

 

「そのような体で何を言う。ロキに続き、フェンリルの牙までまともに受けてしまった君の体は既に満身創痍。少し休んでいなさい」

 

「でも!」

 

バラキエルさんに食い下がろうとするとバラキエルさんは俺の肩に手を置く。

 

「なに、私とてあのフェンリルを一人で倒せるとは思っていない。だが、君が回復するまでならもたせることができるだろう。幸い、向こうももうすぐ片がつく」

 

バラキエルさんが指差す方を見ると、オカ研メンバーとヴァーリチーム、そしてタンニーンのおっさんとロスヴィセさんが子フェンリル二匹と量産型ミドガルズオルム、そして、ヘルの魔物相手に激闘を繰り広げる姿が見えた。

 

「ギャスパー! やつの視界を奪って! 小猫は仙術でやつの気を乱してちょうだい!」

 

部長がギャスパーに指令を送る!

 

俺の血を飲んだギャスパーの体が無数のコウモリに変化し、子フェンリルの顔にまとわりつく。

 

ギャスパーには俺の血が入った小瓶を何個か渡してある。

それが役に立っているようだ。

 

「動きを止めますぅ!」

 

更には怪しく目を輝かせて、子フェンリルの動きを止めようとしていた!

 

子フェンリルの力が大きいせいか、完全には動きを停止させることは出来ていない。

だけど、子フェンリルの動きは幾分、鈍くなっていた!

 

その隙をついて小猫ちゃんが懐に入る!

 

「イッセー先輩から教わった技で!」

 

 

ドゴンッ!

 

 

気を纏わせた拳を的確に撃ち込む!

その瞬間、子フェンリルの体が僅かによろめいた!

 

上手く体内の気を乱すことが出来たらしい!

 

俺が教えたのは的確な場所に最適な気を撃ち込むこと。

それが相手の気を乱す最も有効な技だ。

 

小猫ちゃんはそれを実践出来てる!

 

子フェンリルの体がふらついたのを部長は見逃さず、更に指示を送る。

 

「祐斗は子フェンリルの足を止めて! ゼノヴィア、イリナさんは一斉攻撃よ! レイナは私と魔物を一掃して!」

 

部長の指示を受けて木場が動く。

 

「これで!」

 

木場が子フェンリルの足下に大量の聖魔剣を出現させて、子フェンリルの足を貫く!

 

更には驚異的なスピードで接近し、子フェンリルの体に斬戟を加えていく!

 

「イリナ、いくぞ!」

 

「ええ! 元教会タッグでやっちゃいましょう!」

 

ゼノヴィアのデュランダル砲とイリナの光の槍が子フェンリルの体を覆う。

 

小猫ちゃんの攻撃によって防御することが出来なかった子フェンリルは二人の全力攻撃を受け、全身から血を噴き出させていた!

 

「レイナは左を頼むわ!」

 

「了解! 一掃します!」

 

部長から放たれた大出力の滅びの魔力がヘルの魔物を消し飛ばしていく!

 

流石に滅びの性質は強力だ!

触れた魔物を一瞬で塵にしていった!

 

レイナも例の二丁銃を構えて、自身に迫る魔物共を確実に狙い撃ちしていく!

 

「まだまだ!」

 

レイナは銃の側面をくっつけた。

 

すると、銃口の先に光が収束されていき、レイナの体の半分はある光の球が出来上がる。

 

「いくわよ! フルバーストォ!!!」

 

放たれた光の球は魔物に命中したと思うと、拡大し、周囲の魔物を巻き込んでいった!

 

今ので五十体くらいは消し飛んだか?

 

なんつー威力だ!

 

 

一方―――

 

 

「―――こいつはどうだ?」

 

少し離れたところでタンニーンのおっさんが大出力の炎を量産型ミドガルズオルムに吐き出していた!

 

戦場を炎の海が大きく包み込む!

 

炎の中では複数のミドガルズオルムがもがき苦しみながら、消し炭になっていった!

 

「続きます!」

 

ロスヴァイセさんも北欧の魔術を展開してタンニーンのおっさんに続く。

 

雨のように降り注ぐ魔術の球が残りの量産型ミドガルズオルムとその周囲の魔物を貫いていく!

 

流石は北欧の主神の護衛を任されるだけはある!

 

「皆さんの回復は私が!」

 

ダメージを受けた者へアーシアが回復のオーラを飛ばす。

強敵ばかりのこの戦場。

ダメージを受ける者が多く、アーシアは休む暇もなく回復のオーラを送り続けていた。

その顔には疲労が見られる。

だけど、その回復は皆をしっかりと支えていた!

 

オカ研メンバーが相手をしているのとは別のもう一匹の子フェンリルを攻撃しているヴァーリチームも善戦していた。

 

「そらよっと!」

 

美猴が如意棒で子フェンリルを殴打していく!

伸縮自在の如意棒を操り、子フェンリルにダメージを与えていた!

 

「にゃははは♪ それそれ足止め」

 

黒歌が術を使って子フェンリルの足下をぬかるみに変えた。

子フェンリルは足を取られ動きを封じられる。

 

その子フェンリルにアーサーが聖王剣コールブランドを振るう!

その刀身には絶大なオーラを纏わせていた!

 

「とりあえず、視界を奪っておきましょう」

 

 

ザシュッ!

 

 

子フェンリルの両目を切り裂いた!

 

「次は爪。そして、その危険きわまりない牙も。この聖王剣コールブランドならば、子供のフェンリルごとき空間ごと削り取れます」

 

 

ゴリュッ!

 

 

アーサーはそう言って子フェンリルの爪と牙を削り取っていく!

 

『ギャオオオオオオン!』

 

子フェンリルも激痛に悲鳴をあげていく。

 

・・・・・・えげつない。

 

攻撃が残酷すぎるぜ、アーサー!

しかも、すました顔でそれをやるからメチャクチャ怖いよ!

子フェンリルがかわいそうに見えてくるわ!

 

「見ての通り、あちらは私達が優勢だ。ヘルの魔物も君達が大半を削ってくれたおかげで、残りわずかだ」

 

バラキエルさんが言う。

 

「残りはロキとヘル、そしてフェンリルのみ。だが、ここで君がやられてしまっては形勢が逆転することもありうるのだ」

 

「・・・・・・」

 

確かにバラキエルさんの言う通りで、ここで俺が無茶をするよりも一旦態勢を建て直してから参戦した方がいい。

 

だけど、いくらなんでもバラキエルさん一人にこの場を任せるのは・・・・・・

 

「君の不安は分かる。だが、私は死なん。ようやく朱乃と元の家族に戻れるというのだ。こんなところで死ぬわけにはいかん。・・・・・そして、君も死なせない。君のおかげで私達は前に進むことが出来たのだ。恩人を死なせはしない」

 

バラキエルさん・・・・・・。

 

「さぁ、朱乃。二人を任せるぞ」

 

「はい。・・・・二人を避難させたあと、私もすぐに加勢にきます」

 

朱乃さんが俺と美羽を担いた時だった。

 

ロキと戦っていたヴァーリが俺達のところへと降りてきた。

 

鎧のあちこちが破損しているが、大きなダメージを受けた様子はない。

 

「兵藤一誠を後退させることには賛成だが、フェンリルの相手は俺が引き受けよう。バラキエルにはロキの相手をしてもらいたい」

 

ヴァーリの言葉を聞いてバラキエルさんは怪訝な表情となる。

 

「なに? おまえ一人でフェンリルの相手を引き受けると言うのか?」

 

「ああ。一応の策はある。俺がフェンリルを引き離せば残るはロキとヘルのみだ。そうなればそちらも楽だろう?」

 

それはそうだけど・・・・・

 

相手の最大戦力はフェンリル。

それがいなくなれば俺達は相当、楽になる。

 

「だけど、どうやって引き離すつもりだよ?」

 

「言っただろう、策はあると」

 

ヴァーリの言葉を聞いてハッとなる。

 

まさか、こいつ――――

 

 

上空からこちらを見下ろしているロキが笑う。

 

「ふはははは! 一人でフェンリルを相手取るだと? 無謀なことを! 我も倒せない貴殿が勝てるとは到底思えんな!」

 

「俺を――――白龍皇を舐めるな」

 

 

ドンッ!

 

 

ヴァーリから凄まじいオーラが溢れ出る!

 

鎧に埋め込まれている宝玉が虹色に輝き、鎧自体も白く輝いていた!

 

そして、ヴァーリは力強くその呪文を口にした!

 

 

「我、目覚めるは―――」

 

〈消し飛ぶよっ!〉〈消し飛ぶねっ!〉

 

ヴァーリの声に呼応するように別の声が発せられる。この世の全てを呪いそうな声が、歴代白龍皇の怨念が辺り一帯に響き渡る。

 

「覇の理に全てを奪われし、二天龍なり―――」

 

〈夢が終わるっ!〉〈幻が始まるっ!〉

 

「無限を妬み、夢幻を想う―――」

 

〈全部だっ!〉〈そう、すべてを捧げろっ!〉

 

「我、白き龍の覇道を極め―――」

 

ヴァーリから一際大きなオーラが発せられ、最後の言葉が発せられる。

 

「「「「「「「「「「汝を無垢の極限へと誘おう―――ッ!」」」」」」」」」」

 

Juggernaut Drive(ジャガーノート・ドライブ)!!!!!!!!!』

 

ヴァーリの鎧が変質していく。

 

まるで意思を持った生き物の様にヴァーリの全身を覆っていき、ロキの攻撃により破損していた箇所も再生していくように治っていく。

 

そして、白金に輝く鎧を纏ったヴァーリは、見る者の心を奪いそうな程に美しかった。

 

・・・・・なんて、オーラの量だ。

 

これが覇龍。

 

ドライグに歴代の記録を見せてもらったけど、まさに別次元の強さだ。

 

いや、歴代最強とも言われるヴァーリだからこそ、ここまでの力を発揮できているのだろう。

正直、俺の第二階層では太刀打ちできない。

 

だけと、生で覇龍を見て再認識できた。

 

 

―――――この力は危険だと。

 

 

覇龍を使ったヴァーリが叫ぶ。

 

「黒歌! 俺とフェンリルを例のポイントへ送れ!」

 

「はいはーい」

 

黒歌が手をこちらに向けると、ヴァーリとフェンリルの足下に魔法陣が展開される。

 

魔法陣が一瞬、輝くとヴァーリとフェンリルは何処かに転移していった。

 

・・・・・・おいおいおい!

 

あいつ、何やってんの!?

 

つーか、例のポイントとか言ってたけど、最初からこれが目的だったのか!?

 

いや、確かにフェンリルをロキ達から引き離せたけどさ・・・・・

 

無茶苦茶するな、あいつ・・・・・

 

ロキが舌打ちをする。

 

「白龍皇め・・・・・! まさか、フェンリルが目的だったとは・・・・・!」

 

憎々しげにヴァーリがいた場所を睨んでいた。

 

それを見て、バラキエルさんが言う。

 

「ヴァーリ・ルシファーがフェンリルを引き離してくれたおかげで敵方の戦力を大きく削ることができたな。私はロキを相手する。朱乃、分かっているな?」

 

「はい。父さま、お気をつけて。私もすぐに加勢に参ります」

 

朱乃さんはそう言うと俺と美羽を連れて後方へと下がった。

 

 

 

 

 

 

朱乃さんに連れてこられたのは俺達の最も後方にいるアーシアのところだった。

 

俺と美羽はアーシアの前に下ろされる。

 

「イッセーさん! 美羽さん! お二人とも大丈夫ですか!?」

 

アーシアが俺達のところへ駆け寄り、俺達の傷を見ていく。

 

幸い、フェニックスの涙のおかげで傷自体は塞がっている。

 

ただ、フェンリルにやられたせいで、かなりの消耗をしてしまった。

 

特に俺はフェンリルに砕かれる前に、レーヴァテインで腹をかっさばかれているから、血が足りてない。

体がフラフラする。

 

こうして意識があることだけでも驚きだよ。

 

「ああ。痛みはないよ。傷も塞がっているしな」

 

俺はそう言ってアーシアの頭をポンポンと撫でてやる。

 

「・・・・・よかったですぅ。 うぅ・・・・イッセーさんが無事で良かったですぅ・・・・・・」

 

・・・・・無事と言えるかは怪しいところだけどね。

俺の体はどう見てもボロボロだし。

 

「アーシア、泣いてる暇は無いぜ? 部長達はまだ戦ってるんだからな」

 

そうだ。

まだ、戦いは終わっていない。

のんびりしてる暇なんてないんだ。

 

俺だって本当はこんなところで休んでる場合じゃない。

直ぐにでもバラキエルさんのところに行って、ロキを倒さないといけない。

 

だけど、体が言うことを聞いてくれない・・・・。

 

クソッタレめ・・・・・・!

 

「私は父さまのところに戻ります。アーシアちゃんは二人のことをお願いします」

 

「はい!」

 

朱乃さんは堕天使の翼を広げて飛び立っていく。

 

俺も早く回復して行かないと・・・・!

 

すると、俺の前に部長達と共に子フェンリルを相手にしていた小猫ちゃんが現れた。

 

小猫ちゃんは俺の様子を確認すると俺の胸に手を当てる。

 

「イッセー先輩の気の乱れを出来るだけ元に戻します。これで疲労感は取れるはずです」

 

俺の体の気が整えられていくのが分かる。

 

自分でしようにも大量の失血で体の感覚がおかしくなってる。

自分でやるのは危険だったから小猫ちゃんが来てくれて本当に助かった。

 

「ありがとう、小猫ちゃん。体が随分軽くなったよ」

 

「・・・・分かっていると思いますが、私は疲労の感覚を取り除いただけです。疲労自体はそのままです」

 

「ああ、分かってるよ」

 

「なら、良いです。私もイッセー先輩が死ぬのは嫌です。だから、無理はしないでください」

 

小猫ちゃんは俺に背を向けるとそのまま、戦場へと戻っていった。

 

去っていく小猫ちゃんの背中を眺めながら俺は苦笑する。

 

無理はするな、か。

 

ゴメン、小猫ちゃん。

それは約束できないな。

 

ここは戦場。

皆は限界ギリギリのところで戦ってるんだ。

俺だけ無理をしないなんてことはできない。

 

「はぁ・・・・・」

 

俺はため息をつくと、美羽と向き合った。

 

「美羽、少し試したいことがある。付き合ってくれないか?」

 

俺は賭けに出ることにした。

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

僕達はロキが新たに呼び出したフェンリルの子の一匹を相手に善戦していた。

 

「はぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

僕は騎士のスピードを最大限に活かしながら全力で聖魔剣を振るい、子フェンリルの体を切り裂いていく。

 

流石にフェンリルの子だけあって、その体は堅い。

僕の攻撃が通らないこともあった。

 

だけど、これまでの攻防でダメージを蓄積している今なら話は別だ。

 

僕の聖魔剣に斬られた部位からは血を吹き出し、明らかにダメージを与えていることが分かる。

 

「ゼノヴィア! 今だ!」

 

「ああ! いくぞ! デュランダルッ!!」

 

近距離から放たれた聖剣のオーラが子フェンリルを覆っていく!

 

『オォォォオオオオオオン・・・・・・』

 

消え入りそうな声で子フェンリルが鳴く。

 

流石にかなり効いてるみたいだね。

 

ヴァーリチームも優勢みたいだし、タンニーン様やロスヴァイセさんも量産型ミドガルズオルムを圧倒している。

 

魔物達を相手にしている部長とレイナさんももう少しと言ったところだ。

 

・・・・・残る問題は今回の元凶であるロキとそれに従うヘル。

 

今はバラキエルさんとティアマットさんが相手をしてくれているおかげで何とかなっているが・・・・

 

「ふはははは! 堕天使一匹ごときで我を倒せると思ったか! 見くびるなよ!」

 

「・・・・・っ!」

 

ロキが握るレーヴァテインの斬戟をすんでのところでかわすが、バラキエルさんはすでに至るところに切り傷が出来ていた。

 

傷の表面には火傷したみたいな跡もあり、それが合わさってバラキエルさんを傷つけるようにみえた。

 

イッセー君が回復するまでとのことだけど、もたもたしているとバラキエルさんが危ない。

 

「父さま!」

 

イッセー君達を後方へと下がらせた朱乃さんがバラキエルさんを援護するように雷光をロキへと放つ。

 

しかし、ロキは容易くそれを弾く。

 

これまでの修行で朱乃さんは大きく力を上げた。

その攻撃を軽々防ぐなんて・・・・・。

 

やはり、神というのは存在そのものが別格なのだろうか。

 

「堕天使・・・・いや、悪魔の気配も感じるな。先程の発言からして、その者の娘か。堕天使として産まれながらも悪魔に転生した、といったところか。しかし、それが一匹増えたところでどうということはない。まとめて始末してくれよう」

 

ロキはそう言うと自身の周囲に大型の魔法陣を複数展開し、狙いを朱乃さんとバラキエルさんに定める。

 

あれは危険だ!

 

バラキエルさんが焦りの表情となりながら、朱乃さんを庇う。

 

「下がるんだ、朱乃! ここは私が受ける!」

 

「嫌ですわ! 父さまを置いていくなんて出来ません!」

 

このままでは二人ともやられてしまう!

 

その時、空中に何やら魔法陣のようなものが描かれた。

 

そして、その魔法陣からは黒い巨大なドラゴンが落ちて来た。

 

禍々しい黒いオーラを迸らせるドラゴンで、歪な動きをしている。

 

何だ、あれは?

 

「あれは――――」

 

ロキも突然現れたドラゴンに目をやり、動きを止める。

 

すると、耳につけている通信機から声が流れた。

 

『皆さん、ご無事ですか?』

 

聞こえてきたのは男性の声。

 

皆にも聞こえているようで、戦闘を行いながら、その通信に耳を傾けていた。

 

そんな中、その声に反応する者がいた。

 

レイナさんだ。

 

「シェムハザ様。あの黒いドラゴンを送ってきたのはもしかして・・・・・」

 

シェムハザ・・・・・グリゴリの副総督。

たしか、匙君を任されていると先生から聞いているけど・・・・。

 

『ええ、私です。単刀直入に言いましょう。そのドラゴンは匙元士郎君です』

 

!?

 

あれが匙君!?

 

『実は今回の件に辺り、匙君に対してヴリトラ系の神器を全て合成したのです。そもそもヴリトラは幾重にも切り刻まれ、その魂を分割して4つの神器に封じた存在。その4つを合わせたのです』

 

「ですが、そんなことは可能なのですか?」

 

『本来は不可能です。ですが彼はレーティングゲームでは木場祐斗君との戦闘の際、内に秘めるヴリトラの意識を一瞬とはいえ起こさせた。おそらくは彼の闘志にヴリトラの魂が反応したのでしょうね。それに我々はかけたのです。結果としては上手くいきました。・・・・・一応、暴走する可能性も考えていたのですが、杞憂に終わりました。現赤龍帝、兵藤一誠君から受けていたという修行のおかげですね』

 

・・・・・なるほど、イッセー君の修行は伊達じゃなかったということだね。

 

『匙君。あとはいけますね?』

 

シェムハザさんがそう尋ねると黒いドラゴンから声が発せられる。

 

『はい!』

 

通信が切れたところで、部長が匙君に話しかける。

 

「匙君、聞こえるかしら? リアス・グレモリーよ」

 

『リアス先輩! 俺は何をすれば良いですか?』

 

「今、イッセーは大きなダメージを受けてしまったせいで、後ろに下がっているの。イッセーが回復するまで、バラキエルのサポートにまわってもらえないかしら?」

 

『了解です!』

 

匙君はロキに向けて黒い炎を放つ。

 

黒炎は命中するとロキの体を縛るように巻き付き始めた。

 

ロキは振り払おうとするが、その炎が消えることはなかった。

 

「これはヴリトラの黒炎か! やつの炎は相手を縛る呪いの炎だと聞いていたが・・・・忌々しいかぎりだ」

 

『ああ! こいつはたとえ神様でも容易に消すことは出来ないぜ! 兵藤が回復するまでおまえの動きを封じさせてもらう!』

 

「ふん。この程度の炎で!」

 

ロキのオーラが一段階上がり、凄まじい光を発する!

まだ、こんなに力を残しているのか!

 

匙君の黒炎が消し飛ばされそうになるが――――

 

ロキを極大の雷光が貫いた!

その威力にロキも動きを止める。

 

上空を見上げると堕天使の翼を大きく広げた朱乃さんとバラキエルさんが雷光を纏っていた!

 

二人とも肩を上下させていて、相当消耗しているようだ。

 

ロキは上空に浮かぶ二人を睨み、殺気を放つ。

 

「ちっ・・・・堕天使ごときが無駄な真似を・・・・。ふんっ」

 

ロキが全身に力を入れて、体に巻き付いていた黒炎を振り払った。

 

そして、匙君に向けて魔法による砲撃を放つ!

 

『ぐああああああああ!!』

 

砲撃は匙君に直撃し、周囲もろとも吹き飛ばした!

 

僕は匙君に駆け寄り、安否を確認する。

 

「匙君! 大丈夫かい!?」

 

『あ、ああ・・・・。俺はまだやれるぞ!』

 

黒いドラゴンの姿で再び立ち上がり、ロキに向かって次々に黒炎を放って攻撃を仕掛ける。

 

しかし、その黒炎はこごとくかわされてしまう。

 

「ほう、以外と頑丈だ。我の攻撃を受けて反撃できるとはな。だが――――」

 

ロキはレーヴァテインを振りかぶり、刀身に炎を纏わせていく。

 

その炎は辺り一帯を燃やし尽くすのではないかと思えるくらいの熱量を持っていた。

 

あれはマズい!

 

「この戦いにも飽きた。我はオーディンを討ちに行く。貴殿らにはここで散ってもらうとしよう!」

 

ロキがレーヴァテインを振り下ろす――――

 

 

 

「ロキィィィィィイイイイイイイ!!!!」

 

 

 

その声にロキは振り向く。

 

その視線の先ではイッセー君が巨大化したミョルニルを握りしめ、ロキに迫っていた。

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 




次話もできるだけ早く投稿したいです!

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