ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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8話 本当の気持ち

ミドガルズオルムとの邂逅から数日。

ロキとの決戦に向けての準備は着実に進んでいた。

 

まず、俺達オカ研メンバーと生徒会メンバーは学校を休んでいる。

代わりに俺達を模した使い魔達が学校生活を送っている状況だ。

初めは松田と元浜とのエロトークについていけるか心配だったけど、俺の性格を完全にコピー出来ているみたいで、その辺りは問題ないみたいだ。

他の皆も同様。

 

学校を休んでいる間、俺達は各自修行を行いつつ、体を休める。

それが今できることだ。

 

と言うわけで、俺は地下のトレーニングルームの端にある小さなスペースで座禅を組んでいた。

 

理由は神器の中にいる歴代に接触するため。

 

なぁ、ドライグ。

あの歴代の怨念は何とかならないか?

 

『そう言われてもな・・・・。以前にも言ったことがあるが、歴代赤龍帝達の怨念は強すぎて、俺でも奴らをどうこうすることは出来ん』

 

はぁ・・・・・

 

俺は盛大にため息をつく。

 

歴代の怨念は俺がピンチになると毎回、ああやって俺に覇龍を使わせようとしてくるから、かなり面倒だ。

 

『歴代は相棒の強さを感じている。それ故に相棒に覇龍を使わせて全てを破壊させようとしているのさ。今の相棒が覇龍を使い、暴走すれば辺り一帯は更地になるだろう』

 

そこまでして俺を暴走させたいってのかよ・・・・・

 

これは早急に手を打たないとマズいな。

こっちの世界に戻ってきてからもこんな激戦が続くとは思ってなかったから放置しておいたけど・・・・・。

そう呑気にはしていられないな。

 

 

神器の中に意識を潜り込ませてみる。

暗闇のなかを泳いでいき、たどり着いたのは何もない真白な空間。

ここに来るのも久しぶりか。

 

そこにはテーブルと椅子がたくさんあって、それぞれに歴代の赤龍帝達が座っていた。

男性から女性、子供から老人まで色々な人が無言で座っている。

 

全員、うつろで意識がないように無表情だ。

 

俺がヤバくなった時、こいつらは目覚めて、俺を覇に引きずり込もうとする。

 

無駄だとは思うけど、声をかけてみるか。

 

「おーい、起きろよ。聞こえてるんだろ?」

 

「・・・・・・・・」

 

返事は返ってこない。

肩を叩いても体を揺すっても無反応だ。

 

他の歴代にも同じことをしてみるけど、結果は同じだった。

 

まいったね、こりゃ。

話が出来ないんじゃ、どうしようもない。

 

女性はおっぱいでも揉んだら反応してくれるかね?

 

 

・・・・・・いや、止めとくか。

後で何されるか分からんし。

 

『というより、反応がないからといってそう言う行為をするのはどうかと思うぞ』

 

ですよねー。

 

はぁ・・・・・

 

今回も収穫は無しか。

 

俺は歴代との接触を諦めて、神器から意識を戻すことにした。

 

 

 

 

 

 

「あー、疲れた」

 

俺は座禅を解いてゴロンと横になる。

 

やっぱり、あそこにいると精神的に悪いな。

白い空間に怨念が満ちているから息が詰まりそうになる。

 

さーて、シャワーでも浴びてゆっくりするか。

汗で服がへばりついて気持ち悪い。

 

風呂場へ行こうと立ち上がると、部屋に朱乃さんが入ってきた。

 

「ここにいましたのね、イッセー君。修行お疲れさまですわ」

 

「修行というほどのものじゃないんですけどね。ところで、どうしたんですか?」

 

「アザゼルからイッセー君を呼ぶように頼まれたのです。ミョルニルの調整が終わったそうですわ」

 

ミョルニルってミドガルズオルムが言ってた武器か。

確かレプリカだっけ?

 

「了解です。汗流したら行きますよ」

 

俺は横に畳んでおいたジャージの上着を掴んで朱乃さんに言う。

 

朱乃さんもそれを聞いて部屋を出ていこうとする。

その後ろ姿を見て、俺は呼び止めた。

 

「朱乃さん。何か悩んでいますよね?」

 

俺が尋ねると、朱乃さんの体がピクッと僅かに反応した。

朱乃さんが何かを悩んでいるのは顔を見れば明らかだ。

 

・・・・・いや、本当は聞かずともその理由は分かっている。

 

朱乃さんは振り返り、口を開く。

 

「どうして、そのようなことを・・・・・?」

 

「朱乃さんの表情がどこか辛そうに見えたんで気になっただけです」

 

俺がそう言うと朱乃さんは息を吐く。

 

「・・・・イッセー君には隠し事は出来ませんわね」

 

「理由はやっぱり・・・・・・・お父さんのことですか?」

 

「・・・・・・」

 

朱乃さんは俯き黙りこむ。

 

「すいません、実は俺、朱乃さんとバラキエルさんについて聞いたんです。二人の間に何があったのか・・・・。朱乃さんのお母さんのことも・・・・・」

 

「・・・・・そう」

 

俺が頭を下げて謝ると朱乃さんは一言だけ返してきた。

どこか複雑そうな感情を抱いた声音だった。

 

俺は頭を上げて朱乃さんに言う。

俺が今からしようとしているのことは朱乃さんに嫌われることになるかもしれない。

 

それでも―――――

 

「朱乃さん。朱乃さんのお母さんのことですけど、あれは――――」

 

「―――分かっていますわ」

 

俺が言い終える前に朱乃さんが答えてしまう。

そして、朱乃さんはそのまま続ける。

 

「母さまが死んだあの日。あの人にはどうしようも出来なかった。でも、あの時の私は母さまが死んだショックで頭が一杯でそんなことを考える余裕なんてなかった。・・・・・今なら分かります。あの人が悪くないことくらい・・・・」

 

やっぱり朱乃さんも理解はしていたんだ。

バラキエルさんのせいではないことも。

バラキエルさんが朱乃さんのお母さんを見殺しにした訳ではないことも。

 

「・・・・・私はあの日、あの人に酷いことを言ってしまったの。『父さまのせいで母さまが死んだ! あなたなんて嫌い! 大嫌いっ』って。本当は私のせいで母さまは死んだ・・・・・! 母さまが私を庇ったから・・・・・! それなのに私は・・・・・!」

 

「もしかして、朱乃さんがバラキエルさんを拒むのって・・・・・」

 

「・・・・・そう。全ては私が弱いせい・・・・・。あの人の顔を見る度にあの日のことを思い出して、拒んでしまう。・・・・・私のせいてどれだけあの人を傷つけてしまったか・・・・・」

 

朱乃さんは震える声と共に涙を流していた。

両肩を抱いてその場に崩れ落ちる。

 

「私は・・・・! 父さまに謝りたい・・・・! 昔みたいに戻りたい・・・・・! それなのに・・・・・」

 

美羽の言った通りだった。

 

朱乃さんは心の中ではバラキエルさんと元の父娘に戻りたいと思ってたんだ。

それでも、それを言い出せずにいたんだ。

 

だったら俺が出来ることは一つだな。

 

俺は朱乃さんの正面に屈んで、朱乃さんの両肩に手を置く。

 

「だったら、朱乃さんのその気持ち、バラキエルさんに伝えましょう」

 

「・・・・・でも」

 

「・・・・今すぐとは言いません。朱乃さんの決心がついた時で良いです。朱乃さんが本当それを望んでいるのなら、俺は朱乃さんを支えます。だから、その想いをバラキエルさんに伝えてください。」

 

「・・・・・・・」

 

「もし、朱乃さんがその勇気を持てないのなら、俺の勇気をあげます。いくらでも持っていってください。」

 

そうだよ。

俺なんかの勇気で朱乃さんとバラキエルさんが元の父娘に戻れるのなら、全部あげてもいい!

 

すると、朱乃さんは口を開く。

 

「どうして・・・・・イッセー君はそこまでして、私達のことを・・・・・?」

 

どうして、か・・・・・。

 

まぁ、朱乃さんからすれば不思議に思うだろうな。

自分達父娘に関係のないはずの俺がここまで口を出すんだからな。

 

「・・・・・俺は昔、親友を目の前で失いました」

 

「っ!」

 

「俺だけじゃありません。美羽も本当の父親を失いました。だから、俺達には分かるんです。家族を、大切な者を失う気持ちが・・・・」

 

俺は言葉を続ける。

 

「朱乃さんだって分かってるはずです。別れなんてのは突然訪れることだってあることを。会いたくてももう二度と会うことが出来ない。話したくても声を聞きたくても、それが叶うことがないことを。・・・・・例え悪魔や堕天使が永遠に近い寿命を持っていたとしても、その時はやってくるかもしれない。・・・・・俺は朱乃さんに後悔してほしくないんです・・・・・・」

 

もし、このまま朱乃さんが自分の気持ちを伝えられないまま終わったら、絶対に後悔するだろう。

そして、その後悔は一生続くことになる。

そんなことにはなってほしくない。

 

「今すぐにとは言いません。今日中にとも言いません。だけど、朱乃さんのその気持ち、必ずバラキエルさんに伝えてください」

 

「・・・・・・・」

 

朱乃さんは無言のままだったけど、涙を流しながら静かに頷いた。

 

とりあえず、朱乃さんの気持ちも確認できたし、俺の気持ちも伝えた。

あとは朱乃さん次第ってところか。

これ以上は俺が手を出すわけにはいかないからな。

 

あ、今気づいたけど、汗でベトベトの手で朱乃さんに触れちまった。

 

「す、すいません、朱乃さん。俺、汗かいてるのに・・・・」

 

離れようとすると朱乃さんが俺を強く抱き締めてきた。

 

な、何事?

 

「いいの・・・・・。もう少し、このまま・・・・。お願い、イッセー」

 

なるほど・・・・。

そう言うことね・・・・・。

 

俺は再び朱乃さんを抱き締めて、頭を撫でてあげる。

 

「分かりました。それじゃあ、もう少しこのままいます」

 

それから数分間、俺達はそのままの状態でいた。

 

 

 

 

 

それから十分後。

 

俺は朱乃さんと共にアザゼル先生が待つ兵藤家最上階にあるミーティングルームへと向かった。

 

部屋に入るとそこにいたのはグレモリー眷とシトリー眷属、アザゼル先生とバラキエルさんとロスヴァイセさん、そしてヴァーリがいた。

 

部屋に入った俺に先生が話しかける。

 

「おう、来たか。悪いな、呼び出して。修行中だったんだろ?」

 

「いや、ほとんど神器の中に潜ってただけなんで大丈夫ですよ」

 

「ってことは歴代達に会って来たのか。それで、成果はどうだ?」

 

先生に尋ねられて俺はため息をつきながら首を横に振った。

 

「全くナシです。歴代に会えることは会えるんですけど、まったく無反応なんで話もできない状況です」

 

「やはりか・・・・。ドライグの話じゃ、歴代の怨念共は覇龍を使う時に意識を取り戻すらしいからな。・・・・いや、それ以外にもおまえが窮地に陥った時にも意識が戻るんだったか? おまえのことだから大丈夫だとは思うが、絶対に覇に呑まれるなよ。おまえが暴走したらマジでヤバそうだからな。このあたり一帯が数秒で更地に変わりそうだ」

 

「分かってますよ。そのために覇とは違う道を選んだんですから。それで、ミョルニルの調整が終わったって聞いたんですけど・・・」

 

俺が尋ねると先生は頷く。

 

「ああ。本来、神しか使えない物だが、悪魔であるおまえでも使えるように仕様をオーディンの爺さんと共に行った」

 

「お、俺が使うんですか? 先生とかバラキエルさんじゃなくて?」

 

レプリカとはいえ神の武器なんだろう?

そんなのを俺が使っていいのか?

 

「ああ。俺はオーディンの爺さんの護衛につく。おまえ達には悪いが俺は戦場に立つことが出来ん。そうなれば、今回ロキ達とやり合うメンバーの中で最高戦力はおまえかヴァーリだ。だが――――」

 

「俺は必要ない。俺は天龍の力のみを極めるつもりなんでな。ロキとの戦いも白龍皇の力で戦うつもりだ」

 

「だそうだ。てなわけでイッセー、おまえがミョルニルを使え」

 

なんか、消去法で決められたような気がするんだけど・・・・・気のせいだよな?

うん、気のせいだ。

そういうことにしておこう。

 

ヴァーリのやつは追加装備はいらないってことね。

天龍の力を極める、か・・・・。

本気で白龍神皇を目指してるんだろうな。

 

こりゃ、うかうかしてると再戦した時は負けるかも・・・・。

次も勝てるよう、しっかり修行しないと。

 

「赤龍帝さんにオーディン様からこのミョルニルのレプリカをお貸しするとのことで、どうぞ」

 

ロスヴァイセさんから手渡されたのは――――――――――普通のハンマーだった。

豪華な装飾やら紋様が刻まれているけど大きさとしては普通のハンマーだ。

に、日曜大工で使えそうだな。

大きさもちょうどいいし・・・・。

 

・・・・なんか、思ってたのと違うな。

神の武器って聞いてたから結構ワクワクしてたのに・・・・

 

「オーラを流してみて下さい」

 

ロスヴァイセさんに言われて軽くオーラをハンマーに流してみる。

 

 

カッ!!

 

 

 

一瞬の閃光。

その眩しさに俺は目を閉じてしまった。

 

そして、光が止んだので目を開けてみると――――――――

 

 

ハンマーがデッカくなっていた!!

 

おおっ!!

すげぇ!!

 

渡された時の3倍くらいなったか?

とにかく、先ほどとは見違えるくらい大きくなっていた。

 

それに伴って重さも増しているみたいなんだけど・・・・

もしかして、大きさに比例して重さを増していくのか・・・・?

 

先生が言う。

 

「そういうことだ。ミョルニルは流すオーラの量によって大きさが変わる。当然、そのオーラの量によって威力も変動する。おまえが力一杯オーラを籠めたらもっとデカくなる。おっと、その状態で無闇に振るうなよ? 高エネルギーの雷で辺り一帯が消え去るぞ」

 

 

マジっすか!?

 

前言撤回!

このハンマー、マジでヤバいな!

 

つーか、そんな危険な物をこの町に持ち込まないで下さいよ!

 

俺はオーラを流すのを止める。

すると、ハンマーは元のサイズに戻っていった。

とりあえず、これで辺り一帯が消し飛ぶことはないかな。

 

「さて、ミョルニルのことは確認できたな。使い方の詳細は取説を後で持ってくるからそれを読んでおいてくれ」

 

「取説!? 取扱説明書なんてもんがあるんですか!? これ神様の武器ですよね!? 今の発言でかなり安っぽく見えてきたんですけど!?」

 

「何言ってやがる。大概のものに取説は付いてるだろ。テレビ然りゲーム然り。特に危険物には取説つけないと後で苦情が来るだろ」

 

「神様も人間と変わらねェじゃねェか!」

 

「そーだよ。オーディンのジジイを見てみろ。神だということを除けば、ただのスケベジジイだろ。そーゆうもんなんだよ、どこの世界も」

 

そんな世界は知りたくなかった・・・・・!

・・・・そういえば、師匠も武術の神様だとか何とか言われてたけど、かなりスケベだった。

マジでどこの世界でもそのあたりは変わらないのかもしれない・・・・

 

先生が咳払いして俺たち全員に言う。

 

「作戦の確認に入るぞ。まず、会談の場で奴が来るのを待ち、そこからシトリー眷属の力でおまえ達をロキ達ごと違う場所に転移させる。奴もこのことは読んでいるだろうが、あえて真正面から来るだろう。そして大人しく転移されるはずだ。転移先はとある採掘地。広く頑丈な場所だから存分に暴れてくれ。ロキはイッセーとヴァーリ。二天龍が相手をする。フェンリルとヘルはグレモリー眷属とヴァーリチーム、そして龍王ティアマットと元龍王タンニーンで撃破してもらう。フェンリルは鎖で捕縛した後に撃破。ヘルはティアマットを中心にして撃破してもらう」

 

そう、俺はヴァーリと一緒にロキ担当だ。

一人であいてにするなら非常に厄介だけど、ヴァーリとなら何とかなるかもしれない。

 

だけど、油断は絶対にできない。

奴はそれほどまでに強い。

 

先生が続ける。

 

「絶対に奴らをオーディンの元へ行かせるわけにはいかない。特にフェンリルはな。あの狼の牙は神を砕く。主神オーディンといえども、あの牙に噛まれれば死ぬ。何としても未然に防ぐ。いいな?」

 

『はいっ!』

 

ヴァーリ以外のメンバーが強く応える。

 

・・・・・それにしても、異世界で魔王と戦ったと思えば、次は元の世界で神を相手にすることになるなんてな。

俺の人生って波乱だらけだな・・・・

 

「さーて、鎖の方はダークエルフの長老に任せてるし、あとは・・・・・。匙」

 

先生が匙を呼ぶ。

 

「なんですか、アザゼル先生」

 

「おまえも作戦で重要だ。ヴリトラの神器持ってるしな」

 

先生の一言に、匙は目玉が飛び出るほど驚いていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! お、俺っすか!? お、俺、兵藤や白龍皇みたいなバカげた力は無いっすよ!?」

 

かなり狼狽してるな。

まぁ、匙も俺の修行で強くなってきているとはいえ、まだ神を相手に出来るレベルじゃない。

前線に出るのは辛いところがある。

 

先生もそれを理解して、嘆息した。

 

「分かってる。何もおまえに前線でロキ達とやり合えとは言わん。というか、今のおまえが前線に立てば死ぬ。だから、おまえにはサポートに回ってもらいたい。特にロキの相手をするイッセーとヴァーリのな。おまえの能力は今回の戦いで必要になる」

 

「サ、サポートって・・・・」

 

「まぁ、そのために、おまえにはちょいとばかしトレーニングをしてもらう。そういうわけで、ソーナ、こいつを少しの間借りるぞ」

 

会長に訊く先生。

すでに右手で匙を確保してる・・・・

 

「よろしいですが、どちらへ?」

 

「冥界の堕天使領――――――――グリゴリの研究施設さ」

 

そういう先生の顔はすごく楽しそうだった。

 

あー、これは匙のやつ地獄を見るな。

先生の玩具決定だな。

 

俺は匙の両肩に手を置く。

 

「匙・・・・・俺はおまえのこと・・・・・絶対に忘れない」

 

「おいいいいいいいいっ!! 不吉なことをいうなぁぁぁぁぁあああ!!! つーか、死ぬの確定!?」

 

「はっはっはっー。行くぞ、匙! いざ、実験室へ!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!! 会長、助けてぇぇぇぇぇええええええ!!!!!」

 

匙が会長に助けを求めるが・・・・・

 

「匙、頑張りなさい。・・・・耐えるのですよ」

 

「か、会長ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

こうして、匙は先生と共に冥界に旅立ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

先生と匙が冥界に行ったので、ミーティングも終了となった。

解散早々にバラキエルさんとヴァーリは部屋から出ていく。

美羽も自室へと戻って行った。

 

会長が部長に声をかける。

 

「リアス、地下のトレーニングルームを使用しても構いませんか?」

 

「ええ、もちろんよ。修行するのでしょう?」

 

「はい。私達シトリーは前線に立たないとはいえ、オーディン様の護衛に付かなければなりません。会談はもうすぐ。一分たりとも無駄にできません」

 

会長の言う通り、シトリー眷属はロキと俺達を転移させた後、爺さんの護衛に付くことになっている。

とても重大な役割だ。

 

「分かったわ。私も後で行くから、好きに使ってちょうだい」

 

「ありがとうございます。それでは各自着替えて、地下に集合です」

 

『はい!』

 

おおっ、他のメンバーも気合十分だ。

 

シトリーのメンバーは各自の荷物を持って地下へと向かい、木場達もそれについて行った。

 

そして、部屋には俺と部長だけが残る。

 

俺も一旦部屋に戻ろうとしたとき、部長に呼び止められた。

 

「ねぇ、イッセー。少しいいかしら?」

 

「どうしたんです、部長?」

 

「朱乃のことよ。あなたを呼んで戻ってきた朱乃の表情が少し晴れやかだったから・・・・何かあったの?」

 

流石は部長。

仲間のことを良く見てる。

 

俺はその問いに少し微笑んで答えた。

 

「ただ、朱乃さんの本音を聞いただけですよ。それだけです」

 

「本音・・・。なるほど、そういうことだったのね。・・・・朱乃は前に進めそうかしら?」

 

「あとは朱乃さん次第ですが・・・・・大丈夫です。今の朱乃さんなら―――――」

 

俺がそう言うと部長は軽く息を吐いて、安堵したような表情となる。

 

部長もここのところ朱乃さんのことをずっと心配してたからな。

少し安心したのだろう。

 

 

朱乃さんなら大丈夫だ。

何も心配いらない。

きっと、自分の想いを伝えることが出来る。

 

俺はそう信じてる。

 

 

「あ、ここにいたのね、イッセー」

 

と、母さんが部屋に入ってきた。

格好は長袖に長ズボンで、手には軍手をはめていた。

 

少し土がついてるから、屋上菜園で作業してたのかな?

 

 

「ねぇ、お父さんの工具箱知らない? トンカチを使いたいんだけど・・・・あら?」

 

母さんがテーブルに置いてあるミョルニルのレプリカに気付いた。

そのままテーブルの方へと歩いていき、それに触れる。

 

「ちょうど良かったわ。ねぇ、これ少し借りていい?」

 

「え?」

 

「さっきね、菜園の手入れをしてたんだけど、ベンチの釘が抜けそうだったの。それで修理しようかと思ったんだけど、工具箱が見当たらなくて困っていたのよ」

 

あー、なるほど。

それでトンカチを探していたと。

 

 

・・・・・・ん?

 

 

何か嫌な予感がする・・・・

 

「すぐに返すから、これ少し借りるわね」

 

そう言って母さんはミョルニルのレプリカを持って部屋を出て行ってしまった。

目的のものが見つかって、ご機嫌なのか少しスキップしていた。

 

ポカンとそれを見送る俺と部長。

 

 

そして、数秒後・・・・・

 

 

 

「「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!!!」」

 

 

 

俺と部長の叫び声が周囲に響き渡った。

 

 

 

 

 

 




書き溜めておいたのが尽きたので次回はもっと更新が遅くなりそうです・・・・・

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