今回から新章スタートです!
1話 平和な日常です!!
なんだ・・・・・・?
ここはどこだ・・・・・?
辺りは炎が燃え盛り、逃げ惑う人、泣き叫ぶ人、倒れる人、様々な人達がいた。
この町、以前どこかで・・・・・・
すると、天から一筋の黒い光が降り注ぎ、更に町を焼いていった。
今ので、さっきの人達も吹き飛んでいく・・・・・
そんな中、町の広場があったと思われる場所で泣いている女性が一人。
金髪の女性のようだけど、自身が流している血のせいか、所々赤く染まっていた。
その腕には少女が抱かれている。
しかし、その少女はピクリとも動かない。
『なんで・・・・・・なんで・・・・こんな・・・・・』
女性は泣きながらもう一方の手で持っていた槍を落とす。
空には黒い翼を持った何かがいた。
それは何も言わず、ただ女性を見下ろすだけ。
『もうすぐこの世界は終わりを迎える・・・・・・。俺は・・・・・・』
今、一言だけ発したけど、周囲の音で上手く聞きとれない。
女性は更に激しく涙を流す。
『・・・・・助けて・・・・・助けてよ・・・・・・・イッセー・・・・・・』
▽
そこで俺は目が覚めた。
上半身を起こして周囲を見渡す。
・・・・自分の部屋。
俺はいつものように皆と同じベッドの上で寝ていた。
皆も何か変わっているところは特になく、スースーと寝息をたてている。
隣には美羽と部長。足元には小猫ちゃんや朱乃さん。アーシアやゼノヴィア、イリナ、レイナもいる。
いつもの光景だ。
何だったんだ・・・・さっきの夢は?
夢にしては妙にリアルで、夢って感じがしなかった。
それに、あの泣いていた女性って・・・・・
いや、確証はない。
だけど、何でか分からないけどそう思えた。
何でこんな夢・・・・・・。
もしかして・・・・・・・・。
いや、まさかな。
俺は首を横に振って頭に過った嫌な考えを消し去った。
ふと、時計を見てみると時刻は朝の五時。
修行の時間か。
俺はベッドから起きると手早くジャージに着替えて、早朝の修行へと向かった。
▽
『ふははははは! ついに貴様の最後だ! 乳龍帝よ!』
戦隊ものでよく出てきそうな派手な格好をした怪人が高笑いしていた。
『この乳龍帝がおまえ達闇の軍団に負けるわけにはいかない! いくぜ!
俺そっくりの特撮ヒーローが一瞬、赤い光に包まれたと思うと、変身した。
その姿は俺の赤龍帝の鎧まんまだった。
兵藤家の地下一階にある大広間にはシアターがあるんだけど、俺達グレモリー眷属、美羽、イリナ、レイナ、アザゼル先生、そして俺の両親がここに集まっていた。
鑑賞作品は『乳龍帝おっぱいドラゴン』。
俺を主役とした子供向けのヒーロー番組だ。
と、言っても、俺自身が演じているわけではなく、俺と背格好が同じ役者さんにCGで俺の顔をはめ込んで加工している。
「・・・・・始まってすぐに大人気みたいです。子供だけでなく、一部の大人にも人気が出ているそうです」
膝上の小猫ちゃんが尻尾をふりふりさせなが言う。
うーん、ラブリーだよ小猫ちゃん。
この間、第一話を見てみたけど、思っていた以上にストーリーがしっかりしていて驚いたよ。
更には視聴率が七十%を超えたと聞いたときには驚くなんてものじゃなかった。
物語のあらすじはこうだ。
伝説のドラゴンと契約した若手悪魔のイッセー・グレモリーは悪魔に敵対する邪悪な組織と戦うヒーローである。
おっぱいを愛し、おっぱいと平和のために戦う男。
邪悪な闇の軍団を倒すため、伝説のおっぱいドラゴンとなるのだ!
・・・・・・とのこと。
正直言おう。
チョー恥ずかしい!
だって、俺の親まで真剣に見てるんだぜ?
録画もしているみたいだし!
父さんがつまみを食べながら言う
「いやいや、俺もガキのころはこういうのに憧れたもんだ。近所の友達とヒーローごっこなんてしてな。誰がヒーローをするかでよくもめたよ。まさか、俺の息子が特撮のヒーローを演じるとはなぁ。人生何が起こるか分かったもんじゃない」
俺もそう思うよ、父さん・・・・・。
父さんの横では母さんが皆のコップにお茶を注いでいる。
「でも・・・・タイトルが『おっぱいドラゴン』・・・・・子供から人気があるの良いことなんだけど・・・・・・複雑よねぇ」
ですよね!
それにも同意するぜ!
よく、こんなタイトルで通ったな!
「この番組に出てくる鎧は本物そっくりだね。この籠手のおもちゃもよく再現されてるし。すごい再現度だよ」
木場がおもちゃ版
そう、実は始まってすぐにグッズも販売し出していると言う。
木場が今手にしている籠手のおもちゃもその一つ。
ボタンを押すと本物みたいに音声が鳴って宝玉が光るんだ。
他にも色々と販売されており、アザゼル先生、サーゼクスさん、セラフォルーさんが作曲した『おっぱいドラゴンの歌』という曲もバカ売れしているとのこと・・・・・・
うーん、悪魔ってよく分からんね。
話には聞いていたけど、冥界には娯楽と言えるものが本当になかったらしい。
画面では敵の罠にかかり、ピンチに陥った主人公の姿があるが、そこへヒロインが登場した。
『おっぱいドラゴン! 来たわよ!』
登場したのドレスを着た部長だった。
もちろん本物じゃなく、俺同様に部長と似た背格好の役者さんに部長の顔を加工している。
『おおっ! スイッチ姫! これで勝てる!』
主人公がスイッチ姫のおっぱいにタッチした。
すると、主人公の鎧が赤く輝きを放った!
つーか、スイッチ姫って何!?
『うおおおお! エネルギー全快! いくぜ、
おいおい、
俺の全てを番組で流す気かよ?
いや、別に良いんだけどね?
「おっぱいドラゴンの味方にスイッチ姫がいるんだよ。ピンチになったとき、スイッチ姫の乳を触ることでおっぱいドラゴンはパワーを得るんだ!」
ノリノリでアザゼル先生が解説をくれた。
そこは番組仕様なんだろうか・・・・・・
スパンッ!
先生の頭を部長がハリセンで叩く。
「・・・・・アザゼル、どういうことかしら? ス、スイッチ姫って・・・・・」
「あー、それな。イッセーは女の胸をつついて禁手に至ったと聞いてな。それを参考にしたのさ。女の胸を触ることでパワーアップ出来るんじゃないかとな」
「どうして私なのよ!?」
「おまえは冥界では有名で人気もある。主演女優としてはピッタリだろう?」
そんな理由で部長がスイッチ姫に!?
不憫だ!
あまりに部長が不憫すぎる!
先生、部長に謝ってください!
部長が泣きそうになってるんですけど!
アザゼル先生が俺に尋ねてきた。
「そういえば、イッセー。おまえの新形態あるだろ?」
「『
「おう、それそれ。それも今後の物語でいれていくつもりだから、今度話を聞かせてくれ」
「まぁ、良いですけど・・・・・」
下手に弱点とか出さないでくださいよ?
一応、俺の切り札なんで・・・・・。
アザゼル先生が嬉々として言う。
「そうか! これで新商品の開発も進みそうだ。あ、それからな、今後のストーリーにグレモリー眷属であるおまえ達にも役割が回ってくるからな。そこのところ覚えといてくれ」
それは初耳だ。
ということは木場達もこの番組に出てくるのか。
どんな役回りになるんだろうな。
「・・・・・もう、冥界を歩けないわ」
部長はため息混じりにつぶやく。
俺もですよ、部長。
見つかったら、「あ、おっぱいドラゴンだ!」って指差されそうだし・・・・。
『もう、どーでもいいじゃないか。どーせ、俺達は乳龍帝でおっぱいドラゴンだ・・・・・・』
俺と部長以上にため息をつく人がいた。
ドライグはこの放送が始まってからずっとこんな感じだ。
まぁ、乳龍帝だもんな。
二天龍の片割れ、赤龍帝として畏怖されてきたドライグからすればショックだよなぁ。
心中察するぜ、ドライグ。
『うぅ・・・・・・相棒・・・・・・・』
あ、でも部長のおっぱいでパワーアップしてみたいという自分もいるんだよなぁ。
『うおおおおおおん!! もうイヤだ、こんな世界!』
あー、泣いてしまったよ。
スマン、ドライグ。
そこをなんとか立ち直ってくれ。
「でもでも、幼馴染みがこうやって有名になるって、鼻高々でもあるわよねー」
イリナがはしゃぎながら言う。
この娘、すっかり『おっぱいドラゴン』を楽しんでるな。
「そういえば、私もイッセー君とヒーローごっことかしてたよね。懐かしいものだわ」
と、イリナが変身ポーズをしながら言う。
あー、そのポーズ覚えてる。
俺が小さい頃に好きだったヒーローのものだ。
「やったやった。あの頃のイリナってやんちゃなイメージが強かったよ。それが今では美少女になってるんだから人の成長って分からないもんだ」
あの頃はイリナのことを完全に男の子だと思ってたからなぁ。
再会したときの衝撃は相当のものだった。
正直、イリナが聖剣持ってたことよりも驚いたよ。
俺の言葉を受けて、途端に顔を真っ赤にするイリナ。
「もう! イッセー君ったら、そんな風に口説くんだから! そんなこと言われたら私、堕ちちゃう!」
イリナの羽が白黒に点滅し出した!
これが堕天の瞬間なのか?
天使が欲を持つと、堕ちるって聞いてたけど、こんな感じなんだな。
それを見て先生が豪快に笑う。
「ハハハハ! 安心しろ。ミカエル直属の部下だ。堕天してきたら、VIP待遇で歓迎するぜ!」
「いやぁぁぁぁぁ! 堕天使のボスが勧誘してくるぅぅぅぅ!!」
イリナが涙目で天へ祈りを捧げていた。
隣にいた父さんがこの光景を見ながら言った。
「うーん、賑やかなもんだ。こうして見ていると、なんだな。今更ながら、悪魔とか天使とか堕天使とか、関係なく思えてくるな」
全くだ。
ついこの間までは敵対していた者同士なんだぜ?
これを見ているとそうは思えないよな。
それがこうやってワイワイ出来るんだ。
種族が違っていてもさ、分かりあえるんだよ。
すると、父さんは顔を寄せて、皆に聞こえない声で俺に尋ねてきた。
(それで、
あの事・・・・・父さんが言っているのは俺と美羽についてのことだ。
俺が異世界で魔王を倒して帰ってきたこと、美羽が魔王の娘であり、その身を守るために俺がこちらの世界に連れて帰ってきたこと。
そのことは、父さんと母さん以外には誰にも話していない。
もちろん、皆を信用してないわけじゃない。
むしろ、十分な信頼をおいている。
話したからって美羽に酷いことをしてくることは無い。
ただ、どこから情報が漏れるかなんてのは分からない。
美羽に危険がおよぶ可能性が僅かにでもあるのなら、このまま黙っていたいと思っている。
皆も俺や美羽について聞きたいこともあるのだろうけど、それをしてこないのは皆の優しさだ。
皆に隠し事をしなければいけないのは心苦しいけど、もうしばらくはそれに甘えていたいと思う。
父さんは俺の表情を見て察したのか、小さく息を吐く。
(そうか・・・・。まぁ、おまえやドライグの話を聞いている限り、口外しないほうが良いんだろうな。・・・・・分かった。俺と母さんも今の状態を継続しよう。・・・・・だがな、イッセー。隠し事というのはいつかバレるもんだ。その時のことを考えておかないと後々、面倒なことになるぞ)
父さんの言う通りだ。
隠し事はいつかはバレる。
俺や美羽のことだっていつかは皆に知られてしまうだろう。
その時、俺は―――
(・・・・・分かってるさ)
(それなら良い。・・・・・俺や母さんはおまえみたいな経験はしたことがないし、人外についてだってほとんど分からない。おまえのような力だってない。だけどな、俺達はおまえ達の親なんだ。出来ることなら何でもする。だからいつでも頼ってくれ)
父さんの今の言葉に、旧魔王派の連中との戦いを終えて家に帰った時のことを思い出す。
帰ってきた俺の右腕を見た父さんと母さんは何があったのかと問い詰めてきたんだ。
俺は起こったことを全て話した。
全てを知った時、母さんは「これ以上無茶をしないでくれ」と泣きついてきた。
まぁ、右腕を失う直前までいったんだ当然の反応だよな。
だけど、父さんはこう言ったんだ。
「俺達がいくら言ってもおまえは止まるつもりがないのだろう? だったらおまえは自分が選んだ道を突き進め。俺も出来る限り、おまえを支える。だから、俺たちのことも頼ってくれ」―――――――と。
父さんだって、本当は母さんと同じ気持ちのはずなんだ。
俺だって、両親に心配をかけたくない。
だけど、俺は仲間のためなら全力で戦うととっくの昔に覚悟を決めている。
仲間を見捨てるわけにはいかない。
ここで止まるわけにはいかないんだ。
その気持ちを父さんは汲んでくれた。
「ありがとう、父さん」
「何言ってんだ。俺はおまえの父親なんだ。当然のことさ。だけど、無茶は程々にしろ。母さんだけじゃないここにいる皆がおまえのことを思っている。忘れるなよ?」
分かっているよ、父さん。
父さんとの会話を終えた後も『おっぱいドラゴン』の鑑賞会は続いたのだった。
▽
昼休み中の駒王学園。
俺は松田と元浜、そして美羽達と弁当を食べていた。
「はい、卵焼き。あーん」
「あーん」
「イッセーさん、お茶をどうぞ」
「サンキュー、アーシア」
美羽に食べさせてもらった卵焼きを呑み込んだ後、左手でアーシアから渡されたお茶を啜る。
美少女二人が両隣に座って、ご飯を食べさせてくれる!
いやー、最高の昼休みだな!
まぁ、当然のように松田と元浜は血の涙を流しながら睨んでくるわけで・・・・
「なんで!? なんでイッセーばかりが!」
「美少女からの『あーん』だと!? そんなイベントがなぜお前にだけ起こるのだ!?」
二人は自分の弁当を食べながら俺に泣き叫んでくる。
「しょうがねぇだろ。今は右腕使えないんだからさ」
そう、美羽とアーシアに食べさせてもらっている理由はここにある。
イグニスを使った代償で俺の右腕は炭になる寸前だった。
アーシアと美羽の治療のおかげで右腕を失わずに済んだものの、あれから数日が経った今でもうまく動かせない状況だ。
全く動かせないわけじゃない。
だけど、無理に右手で食べようとすると食べ物を落としてしまうことが多々ある。
授業中のノートも美羽に任せている状態だ。
それに、最近の修行だって、ティアとのスパーリングは無しに基礎トレーニングに重点を置いた修行を行っている。
冥界の病院やグリゴリの施設で診てもらったところ、腕を動かすのに重要な神経やら筋肉やらがいくつか完全に焼失していたらしい。
アーシアの神器でも完全に治せなかったのはそのためだ。
今は、失った部分を元に戻す再生治療を受けているところで、それが上手くいけば腕は動かせるようになるかもしれないと担当医に言われたんだけど・・・・
完全に失ったものを元に戻すには冥界の技術でも難しいらしく、以前の状態に戻すにはもう少し時間がかかるとのことだ。
はぁ・・・
利き腕が使えなくなるってのは本当に不便なんだぜ?
着替える時もかなり苦労するし・・・・
まぁ、今みたいに嬉しいこともあるわけだけどね。
「しっかし、そんな大ケガするなんて。俺達もヤカンには注意しないとな」
「うむ。一度の不注意が大惨事になるかもしれないというのがイッセーを見ていて良く分かった。美少女に囲まれるのは羨ましいことだが、腕が使えなくなるのはな・・・」
あ、ちなみに学園の皆には誤ってヤカンの熱湯を腕に被ったって言ってあるんだ。
まぁ、実際はそれどころじゃないんだけどね。
「そういうことだ。おまえらも火傷には十分注意しろよ?」
俺の言葉に悪友二人は深く頷いた。
すると、元浜が何かを思い出したようだった。
「そういえば、修学旅行の班決めをしないとな」
あー、修学旅行があるんだった。
ここのところ忙しくて完全に忘れてたよ。
俺達二年生は京都に行くんだ。
「えーと、男子女子混合で五人以上十人以下だっけか」
俺が尋ねると松田が頷く。
「そうそう。俺達三人組はとりあえず決まりだ。嫌われ者だからな、俺ら」
言うな、ハゲよ。
俺の評価自体はこいつらよりは上らしいが、一部の女子にはエロ男子高校生として嫌われている。
まぁ、女子の割合が大きいからか、その辺りも厳しいもんだ。
妹の美羽を除いたら、仲が良いのはアーシア、ゼノヴィア、イリナ、レイナ、それから桐生か。
まぁ、他にも仲が良い女子生徒はいるけど、四~五人程度だ。
あ、でもシトリー眷属の人達を入れたらもっと多いのかな?
「エロ三人組。修学旅行のとき、うちらと組まない? 美少女だらけよ?」
メガネ女子の桐生が申し出てきた。
何だ、そのいやらしい顔は?
「ああ、おまえ以外は美少女だな」
「うっさい! で? どうするのよ?」
「まぁ、良いんじゃないか? いつもつるんでるメンバーの方が良いだろ」
俺が答えると桐生はメガネをくいっとあげながらニヤリと笑った。
「そんじゃ決まりね。じゃあ、修学旅行の班メンバーはこの九人ってことで坂田先生に提出しとくわ」
「おう、頼むわ」
ということで修学旅行の班が決まった。
男子は俺、松田、元浜の三人。
女子は美羽、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、レイナ、桐生の六人だ。
メンバーが決まったので、今度、どこを回るか決めることになった。
観光地を調べておくか。
そういや、京都には天龍寺があるんだっけ?
俺、二天龍のドライグを宿してるから、一度行ってみるのも良いかもしれないな。
今度、旅行に必要なものを買いにいくとしよう。
「お兄ちゃん、次は何が食べたい?」
「そうだなー、唐揚げをたのむよ」
「うん、分かった。はい、あーん」
「あーん」
うん、やっぱり美羽が作った唐揚げは美味かった!