ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

73 / 421
14話 ずっと一緒だ!

[木場 side]

 

 

「バ、バカな・・・・! 真の魔王であるこの私が! ヴァーリに一泡も吹かせていないのだぞ!? おのれ! 赤い龍め! 白い龍めぇぇぇぇぇ!!!!」

 

シャルバはそう叫ぶと共にイッセー君が放った赤い光に呑まれて消えていった。

 

僕達は美羽さんが展開してくれた結界の中から、その戦いを見ていた。

 

イッセー君は本当にたった一人であれだけの数の敵を倒してしまった。

中には魔王クラスが二人もいたというのに。

 

僕はイッセー君の方へと視線を向ける。

 

・・・・・あれがイッセー君の新しい力。

 

鎧の形状や先程の戦い方からして恐らくは大勢の敵を相手にすることを主としたものだろう。

 

六つもある砲門から放たれる一撃はその一つ一つが強大で、最上級悪魔クラスの力を持っていた者でさえ消滅させることができるほどの威力を誇っていた。

 

僕は禁手に至り、これまでの修行で以前よりも強くなった。

だけど、だからこそ分かってしまう。

イッセー君との力の差を。

 

・・・・・遠い。 

あまりに遠く感じてしまう。

 

僕は本当にあの隣に立つことが出来るのだろうか・・・・・?

 

 

イッセー君の鎧が解除され、手に持っていた剣も赤い粒子と化して消えていった。

その時―――

 

 

グラッ

 

 

まるで力が抜けたようにイッセー君の体が崩れ落ちた!

そして、そのまま上空から落下してくる!

 

意識を失っているのか!?

 

僕は慌てて結界から飛び出すと、その場を駆け出し、落下してくるイッセー君の元へと向かう。

 

 

ズキッ

 

 

体に痛みが走る。

 

くっ・・・・ 敵から受けた傷が思ったより深い。

 

だけど、止まるわけにはいかない・・・・!

間に合ってくれ!

 

僕は両手を前に突きだしてイッセー君を受ける体勢になり―――

 

 

ドサッ

 

 

何とかイッセー君をキャッチすることに成功した。

良かった、間に合った。

 

「祐斗、イッセーは!?」

 

部長がこちらに尋ねながら走ってきた。

 

イッセー君の顔を覗いてみると、大量の汗をかき、完全に気を失っているようだった。

 

それでも無事だと思い、部長にそれを報告しようした。

だけど、僕の視界に入ってきたものが、僕の口を閉ざさせることになる。

 

僕の反応に部長も怪訝に思ったのか、怪訝な表情で再度尋ねてくる。

 

「祐斗・・・・? イッセーは大丈・・・・・・!? これは!?」

 

部長が僕の視線の先にあるものを見て目を見開いた。

 

それはイッセー君の右腕。

 

 

 

 

イッセー君の右腕は皮膚が焼けただれ、肌が黒く変色している。

 

 

 

 

これは火傷なんてレベルじゃない!

腕が使い物にならなくなってもおかしくはない状態だ!

 

考えられる原因はイッセー君が握っていたあの剣。

あの剣は離れている僕達にも届くくらいの熱量を持っていた。

あの剣が原因なのはほぼ間違いないだろう。

 

イッセー君はこんな状態になるまで剣を振るい続けていたというのか・・・・ っ!?

 

なんでこんなになるまで・・・・・っ!

 

 

いや、理由なら分かっている。

 

僕達だ。

僕達を守るためにこんな・・・・・っ。

 

「早く治療しないと手遅れになりますわ!」

 

「分かってるわ! アーシア!」

 

部長が大声でアーシアさんの名を呼ぶ。

 

アーシアさんはついさっき目を覚ましたところで現状を理解できていなかったようだけど、イッセー君の右腕の状態を見て、表情を一変させた。

 

「イッセーさん!? しっかりしてください! イッセーさん!」

 

アーシアさんは直ぐ様に治療を開始する。

淡い緑色の光がイッセー君の右腕を照らし、傷を治していく。

しかし、神器の力によって傷が塞がっていくものの、治りが遅い。

 

アーシアさんの神器は大抵の傷なら比較的短い時間で完治させることが出来るんだけど・・・・・。

 

それほどまでに深い傷だというのか・・・・・。

 

「ボクもやるよ!」

 

美海さんもアーシアさんの隣にしゃがみ、魔法陣を展開する。

治癒魔法をかけるつもりだろう。

 

二人がかりなら――――

 

 

 

 

「死ねぇぇぇぇ! 化け物めぇぇぇぇ!!!」

 

 

『!?』

 

 

振り返れば槍を持った悪魔がこちらに猛スピードで迫っていた!

生き残りがいたのか!?

 

視線からして狙いはイッセー君か!?

 

僕は迎え撃とうと動き出すが、これでは間に合わない!

 

クソッ!

 

僕は咄嗟にイッセー君の前に立ち、盾になろうとする。

彼を、イッセー君をこんなところで死なせるわけにはいかないんだ!

僕の命をかけてでも彼は死なせない!

 

 

槍が僕を貫きそうになった瞬間。

 

 

ドウンッ!!

 

 

「ぐあああああああ!!」

 

迫ってきていた悪魔は突如として現れた白い光が直撃して、そのまま消滅した。

 

 

なんだ!?

 

いったいどこから!?

 

 

「悪いな。今、彼に死んでもらっては俺が困るんだ」

 

声と共に僕達の前に現れたのは眩い光を放つ白い全身鎧(プレートアーマー)

 

以前にも見たことがある。

そう、僕が見たのは駒王学園で行われた会談の時。

 

イッセー君と激闘を繰り広げたあの男。

 

 

「赤龍帝、兵藤一誠を倒すのはこの俺だ。誰にも譲らないさ」

 

 

白龍皇、ヴァーリ・ルシファーが僕達の前に現れたのだった。

 

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・・・・。俺は・・・・・・」

 

目を覚ました時、俺は禁手の状態から解かれていた。

号泣する皆に抱きつかれた時は何事かと思ったよ。

 

時間の経過と共に記憶が戻ってきた。

 

そういえば、シャルバに最後の一撃を放った後、力尽きて、そのまま気を失ったんだった。

 

すると、俺の視界に一人の男が写る。

 

「ヴァーリ? なんでおまえがここに?」

 

俺が尋ねると木場が代わりに答えてくれた。

 

「イッセー君が気を失っている時に生き残った旧魔王派の悪魔が襲ってきたんだけど、ヴァーリが助けてくれたんだ」

 

マジかよ。

 

全員倒したと思ってたのに・・・・・。

まさか、倒してないやつがいたなんて気づかなかった。

俺もまだまだってことかな。

 

『(気づかなかったのは無理はない。相棒は力のほとんどを使い尽くして限界を迎えていたからな)』

 

だけど、そのせいで皆を危険にさらしたんだ。

修行不足だよ。

 

『(そう自分を責めるな。相棒はよくやった。最善を尽くしたんだ。それ以上求めるのは単なる傲りだ)』

 

そっか・・・・・。

分かったよ、ドライグ。

何にしても全員助かったんだ。

結果オーライってところだろ。

 

とりあえず、ヴァーリには礼を言わないとな。

 

「ありがとな、ヴァーリ。助かったよ」

 

「いいさ。君を倒すのは俺だ。他のやつに持っていかれるのが許せなかっただけだしな」

 

不敵に笑みを浮かべるヴァーリ。

 

おいおい・・・・・。

こいつ、マジで再戦望んでるよ・・・・・・。

 

はぁ・・・・・。

 

 

ここで疑問に思ったことがある。

 

「つーか、何でここにいたんだよ? テロってわけじゃないんだろ?」

 

こいつは旧魔王派みたいな汚いマネはしないだろう。

むしろ、真正面から堂々と挑んでくるだろうし。

 

だからこそ、こいつが何をしにきたのか全く分からん。

 

「俺がここに来たのはあるものを見に来たんだ。・・・・そろそろか。空を見ていろ」

 

「?」

 

俺は訝しげに思い、何もないフィールドの空を見上げる。

 

すると―――。

 

 

バチッ! バチッ!

 

 

空中に巨大な穴が開いていく。

そして、そこから何かが姿を現した。

 

「あれは―――」

 

そこから出現したものを見て、俺は驚いて口が開きっぱなしになっていた。

他の皆も同様だった。

 

「よく見ておけ、兵藤一誠。あれが俺が見たかったものだ」

 

空中に現れたのは真紅の巨大なドラゴン。

 

なんだあれ!?

メチャクチャデカいじゃねぇか!

 

何メートルあるんだ!?

 

驚く俺を他所にヴァーリは続ける。

 

「『赤い龍』と呼ばれるドラゴンは二体いる。ひとつは君に宿るウェールズの古のドラゴン、ウェルシュ・ドラゴン。俺に宿るバニシング・ドラゴンも同じ伝承から出てきている。そして、もうひとつは『黙示録』に記されし、赤いドラゴンだ」

 

「黙示録・・・・?」

 

「『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド。『真龍』ーーー『D(ドラゴン)×(オブ)D(ドラゴン)』と称される偉大なドラゴンだ。自ら次元の狭間に住み、永遠にそこを飛び続けている。今回、俺はあれを確認するためにここへ来た」

 

「でもよ、どうしてそんなところを飛んでいるんだ? 今回、シャルバに次元の狭間に飛ばされたけど何もなかったぞ?」

 

「ほう、次元の狭間から脱出したというのか。やはり、君は面白い。質問の答えだが、それは俺には分からない。いろいろ説はあるが・・・・・。あれがオーフィスの目的であり、俺が倒したい目標だ」

 

ヴァーリの目標―――

 

とんでもない目標だな、それは。

 

「俺はいつか、グレートレッドを倒す。そして、『真なる白龍神皇』になりたいんだ。赤の最上位がいるのに白だけ一歩前止まりでは格好がつかないだろう?」

 

ヴァーリは苦笑しながら夢を語った。

笑ってはいるけど、目はとても真剣なものだ。

 

なるほど、こいつがテロリスト集団に身を置いてるのもあのドラゴンを倒すためか。

 

こいつらしいな。

 

「だけど、その前にまずは君に勝たないとな。赤龍帝、兵藤一誠。この挑戦、受けてくれるか?」

 

その台詞つい最近聞いた覚えがあるぞ。

ったく、なんでどいつもこいつも俺に挑戦したがるのかね?

 

はぁ・・・・・。

 

俺は軽く息を吐いた後、笑みを浮かべた。

 

「あー、分かったよ。その挑戦、受けてやるよ。いつでもかかってこい。真正面からぶつかってやる」

 

「そうか。礼を言うよ、兵藤一誠」

 

短い返しだったけど、満足したような表情のヴァーリ。

 

すると、一つの気配が現れる。

 

「グレートレッド、久しい」

 

振り返ると俺達のすぐ近くに黒髪黒ワンピースの少女が立っていた。

 

いつのまに・・・・・・

 

「誰だ?」

 

ヴァーリがそれを確認して苦笑する。

 

「オーフィス。無限の龍神さ。『禍の団』のトップでもある」

 

マジか!?

この少女がテロリストの親玉!?

てっきり、ジジイとかおっさんの姿をしてると思ってたのに!

 

こんなに可愛い娘だったのかよ!

変質者がいたら誘拐されるぞ!?(多分!)

 

少女―――オーフィスはグレートレッドに指鉄砲のかまえでバンッと撃ち出す格好をした。

 

「我は、いつか必ず静寂を手にいれる」

 

 

バサッ

 

 

今度は羽ばたきの音と共に数人の見知った気配が現れた。

 

アザゼル先生、ティア、タンニーンのおっさんだ。

 

三人ともフィールド内で戦闘を行っていたようだけど、どうやら終わったらしい。

 

「おー、イッセー。無事で何よりだ」

 

「うむ、流石は私のイッセーだ。こちらの旧魔王派の悪魔共は片付けたらしいな」

 

「ハハハハ、兵藤一誠は規格外だからな、何とかなるとは思っていた。―――と、オーフィスの気配を追ってきたらとんでもないものが出てきたな」

 

三人は空を飛ぶグレートレッドに視線を向ける。

 

「懐かしい、グレートレッドか」

 

「おまえらも戦ったことあるのか?」

 

先生の問いにティアとおっさんは首を横に振る。

 

「いや、俺なぞ歯牙にもかけてくれなかったさ」

 

「同じくだ。まぁ、やつが本気を出したら私は一瞬で消されるだろうな」

 

この二人がそこまで言うか。

 

いや、俺もあのドラゴンに勝てる気は全くしないけどね。

 

「久し振りだな、アザゼル」

 

ヴァーリが先生に話しかける。

 

「おう。元気そうじゃねぇか、ヴァーリ。クルゼレイ・アスモデウスとシャルバ・ベルゼフブはどうやら、イッセーが倒したみたいだな」

 

「ああ。一部始終を見ていたが、彼の新たな力を見ることができた。ふふっ、俺も再戦するのが待ち遠しいよ」

 

「相変わらずのバトルマニアだな。まぁ、それはおいといてだ」

 

先生はオーフィスに言う。

 

「オーフィス。旧魔王派は末裔共を失い、それに荷担していたやつらも掃討、または捕縛した。旧魔王派は壊滅だ」

 

「そう。それもまた一つの結末」

 

オーフィスは全く驚く様子もなかった。

痛くも痒くもないって感じだな。

 

それを聞いて、先生は肩をすくめた。

 

「おまえらの中でヴァーリのチーム以外に大きな勢力は人間の英雄や勇者の末裔、神器所有者で集まった『英雄派』だけか」

 

英雄派?

 

まだそんな勢力があるのかよ・・・・・・。

 

「さーて、オーフィス。やるか?」

 

先生が光の槍の矛先をオーフィスに向ける。

 

えっ、戦闘開始ですか!?

俺は参戦しませんよ!?

もうそんな力残ってませんからね!

 

すると、オーフィスは先生を無視して体の向きを俺の方に変える。

 

「赤龍帝。我の仲間になってほしい」

 

 

『なっ!?』

 

この場にいる全員が驚愕の声をあげる。

 

俺は何を言われたのか、意味がわからず、脳がフリーズしている状態だ。

 

「へ? 今、なんて?」

 

「我の仲間になってほしい。我と共にグレートレッド、倒す」

 

はああああああああ!?

 

俺、勧誘されちゃったよ!

俺にテロリスト集団に入れってか!

 

「悪いけど、断るよ」

 

「なぜ?」

 

「俺はテロリストになるつもりはない。そんなのは絶対にゴメンだ」

 

俺がハッキリと断ると「そう、残念」と言って、俺に背中を向けてしまう。

 

一瞬、寂しそうな眼してたけど・・・・・

俺、キツい言い方しちゃったかな?

 

「我は帰る」

 

ヒュッ!

 

一瞬、空気が振動したと思ったら、オーフィスは消え去っていた。

 

いついなくなったのか動きが見えなかった・・・・・

 

先生達も嘆息してる。

 

「俺も退散するとしよう。仲間が待ってるんでね」

 

ヴァーリもそう言い残すとこの場を去ってしまった。

 

あー、なんか色々あって疲れた・・・・・。

 

右腕も痺れてるし・・・・・・って、あれ?

今気づいたけど、痛みがマシになってる。

 

見れば、アーシアが目を覚ましていた。

 

「アーシアが治療してくれたのか? ありがとう、アーシア」

 

「い、いえ、私は・・・・・。すいません、イッセーさん、私を庇ったせいでイッセーさんが・・・・・・」

 

アーシアが涙を浮かべながら、謝ってくる。

俺の腕のことを言ってるのか?

 

アーシアのせいじゃないのに・・・・・・

 

「アーシア」

 

「はい・・・・キャッ」

 

俺はアーシアを動く左腕で強く抱き締めた。

突然のことにアーシアも驚いている様子だった。

 

「俺は大丈夫だ。俺は生きて、こうしてアーシアと話してる。だからさ、何も心配いらない」

 

「い、イッセーしゃん・・・・うぅぅぅぅ・・・・」

 

おいおい、余計泣いちゃったよアーシアちゃん。

まぁ、さっきみたいに暗い表情じゃないから、大丈夫か。

 

「あらあら、妬けてしまいますわ」

 

「そうね。でも、ここは譲るしかないわね」

 

朱乃さんと部長が何やら話してるけど・・・・・。

そこは気にしないでおこう。

 

「お兄ちゃん」

 

「美羽。俺の代わりに皆を守ってくれてありがとな。おまえがいてくれて本当に良かった」

 

「う・・・・」

 

「う?」

 

「うわああああああん!!」

 

 

ドンッ

 

 

ごふっ!

 

美羽が飛び付いてきた。

結構な衝撃がきたぞ。

 

「よかった・・・・・・無事で本当によかったよぉぉぉぉ」

 

あらら・・・・

 

美羽もわんわん泣き出したよ。

こいつにもかなり心配かけたようだな。

 

これは後で父さんのゲンコツが待ってるかもな・・・・・。

 

「妹を泣かせるとはどういうことだー!」とか言って強烈なやつを繰り出してくるかも・・・・・・

 

まぁ、その時はあえて受けよう。

 

 

「さ、帰ろうぜ。俺達の家に」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

 

こうして、今回の騒動は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

それから二日後。

 

 

ばーん! ばーん!

 

 

空砲が空に鳴り響き、プログラムを告げる放送案内がグラウンドにこだまする。

 

『次は二人三脚です。参加する皆さんはスタート位置にお並びください』

 

そう、今日は体育祭の日だ。

そして、今から俺とアーシアが出場する二人三脚が始まろうとしていた。

 

俺は自分とアーシアの足首のひもをぎゅっと縛る。

 

「これで準備は万端だ。いつでもいけるぜ」

 

俺がそう言うとアーシアはどこか心配そうな顔で俺に聞いてきた。

 

「イッセーさん、右腕は大丈夫ですか?」

 

アーシアの視線が俺の右腕へと移る。

 

今、俺の右腕には包帯が巻かれている状態だ。

理由はこの間の戦闘で出来た傷を隠すため。

 

傷といっても痛みはほとんどひいてる。

これもアーシアや美羽の治療のおかげだ。

ただ、まだ痺れは残っていて、あまり動かすことは出来ない。

 

これもイグニスを使った代償ってやつだ。

まぁ、腕が無くならなかっただけマシだな。

 

「問題ないよ。少なくともこの競技には影響しないさ。勝とうぜ、アーシア。俺達のこれまでの努力の成果を学園の皆に見せつけてやろうぜ!」

 

「はい!」

 

 

そして、順番は俺達の番となった。

お互いの腰を手でおさえ、走る構えとなる。

 

 

パンッ!

 

 

空砲が鳴り響き、俺達はスタートを切る!

 

「「せーの、いち、に! いち、に!」」

 

二人の声を合わせて走り出す。

うん、良いスタートだ。

二人の呼吸がピッタリ合ってる!

 

「イッセー! アーシア! 一番取りなさい!」

 

「いけますわよ!」

 

部長や朱乃さん、他の部員の皆が応援をくれる!

 

一般の観客席の方からも馴染み深い声が聞こえてくる。

 

「イッセー! ゴール決めろよ!」

 

「アーシアちゃんもファイトォ!」

 

父さん、母さん! 

俺達の晴れ舞台、しっかり見ていてくれよ!

 

そのままカーブを曲がり、あとは一直線。

このまま走り抜く!

 

「お兄ちゃん! アーシアさん! ラストスパートだよ! 頑張って!」

 

ゴール手前では美羽が俺達を待っていてくれている!

 

俺は走りながら、アーシアに言った。

 

「アーシア、俺達は家族だ。もし、またアーシアを泣かせるやつが現れたら俺が絶対に守る。だから、ずっと側にいてくれ」

 

「―――っ!」

 

アーシアは泣きそうになるけど、それを堪えて走るのに集中した!

 

そして―――

 

 

俺達はゴールテープを切った!

 

「よっしゃああああああ!」

 

一番の旗をもらい、俺はガッツポーズを取った!

 

「やったぞ、アーシア!」

 

「はい! やりました、イッセーさん!」

 

俺とアーシアら手を取り合って喜んだ!

 

いやー、これまでアーシアとたくさん練習してきたからな、その成果を出せたよ。

 

おっと・・・・

 

俺は全身の力が抜けていくのを感じ、こけそうになる。

 

やっべぇ。

 

天撃(エクリプス)を使ったときの疲れがまだ回復してないんだった。

あれで体の中の気をほとんど使いきったからなぁ。

 

そんな状態で体を動かせばこうなるのは当然か。

 

「イッセーさん、大丈夫ですか!?」

 

体勢を崩す俺をアーシアが支えてくれた。

 

「あー、ちょっと疲れただけだよ」

 

そこに美羽が駆け寄ってきた。

 

「二人とも大丈夫?」

 

「少し疲れただけだから心配ないよ」

 

「そっか、良かった。アーシアさん、お兄ちゃんを任せて良いかな? ボク、次の競技に出ないといけないから」

 

「は、はい!」

 

いやー、なんか色々悪いな・・・・。

 

アーシアに支えられながら、その場を移動する。

 

「アーシアさん、ファイトだよ♪」

 

「―――っ」

 

何言ってるんだ、美羽のやつ。

俺達の競技は終わったぞ?

 

俺が疑問に思っているなか、俺の隣ではアーシアは頬を赤く染めていた。

 

そんなこんなで、俺はアーシアと共に休めるところへと移動した。

 

グラウンドから少し離れた木の下。

すぐ横には体育館がある。

俺達はそこで一息つくことにした。

 

他の生徒は競技の応援に行っているから、俺達以外は誰もいない。

とても静かだ。

 

最近、ゆっくり出来なかったから、こういう場所も悪くないと思えてくる。

 

「ふぅ。少し休んだら応援に行こうか」

 

「あ、あの、イッセーさん」

 

「ん? どうした?」

 

アーシアに呼ばれて振り返ると―――

 

 

アーシアが俺の唇に唇を重ねてきた。

 

 

・・・・・・・・

 

ん?

 

んんんんんんん?

 

混乱する俺!

 

「あ、アーシア、い、いいい今のって」

 

「イッセーさん、大好きです。これからもずっとお側にいます」

 

最高に眩しい笑顔で言われてしまった。

 

俺はその場に寝転がり、空を見上げた。

 

「ああ。ずっと一緒だ、アーシア」

 

 

俺、今最高に幸せだ。

 

 

 

 

 

 




ということで第六章はこれにて終わりです。

いやー、なんとか今月中に章を完結させることができました。
よかったよかった。

8月からは学業の方で色々と忙しくなるので更新スピードが一気に落ちます。
楽しみにしてくれている方には申し訳ないです・・・・

ですが、完結に向けて今後も頑張るので応援よろしくお願いします!

ちなみにですが、次回は番外編を考えています。
余裕があれば投稿します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。