ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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10話 かつてない怒り

相手の『兵士』と『戦車』を倒したことにより、敵は『女王』、『騎士』二名、『僧侶』二名、そしてディオドラのみだ。

 

ディオドラの相手は俺がするとして、他は部長と朱乃さん、木場で何とかなるだろう。

 

「行きましょう」

 

部長の掛け声と共に俺達は次の神殿へ足を進めた。

 

次に俺達を待っていたのは―――敵三名の姿。

全員、ローブを纏っている。

 

「待っていました、リアス・グレモリー様」

 

三名のうちの一人がローブを取り払う。

あの人は確か、ディオドラの『女王』。

 

うん、美人だ。

ブロンドのお姉さん。

碧眼がキレイだ。

 

それに続いて残りの二名もローブを取り払った。

片方が女性で、もう片方が男性だ。

二人とも『僧侶』。

映像では魔力とサポートは中々に優秀だった。

 

『女王』の方も強かったはずだ。

アガレス戦では『女王』の直接対決をして勝利を修めていたからな。

炎の魔力を用いていたのを覚えている。

 

「あらあら、では、私が出ましょうか」

 

そう言って一歩前に出たのは朱乃さん。

 

「あとの『騎士』二人は祐斗がいれば十分ね。私も出るわ」

 

と、部長も前に出た。

 

二大お姉さまのタッグかよ!

 

「あら、部長。私だけでも十分ですわ」

 

「何言っているの。いくら雷光を覚えても、無茶は禁物よ? ここは堅実にいくのが一番だわ」

 

雷光と滅びの力。

どちらも強力な性質を持つ。

更にはそれを扱う二人も強くなっているから、威力は絶大だ。

 

それが共闘する。

この勝負も余裕で勝てそうだ。

 

すると、小猫ちゃんが俺をちょんちょんと小突く。

 

ん?

どうした小猫ちゃん?

 

小猫ちゃんは俺にしゃがむように促し、耳元に小さな声で耳打ちしていく。

 

ふむふむ、なるほど。

 

「それでいいの?」

 

「・・・・はい。それで朱乃さんはパワーアップします」

 

パワーアップしなくても勝てると思うんだけどなぁ・・・・。

まぁ、小猫ちゃんの頼みとあらば言ってみようか。

 

「朱乃さーん」

 

俺が呼ぶと朱乃さんが振り向く。

 

「えっと、その人達に完勝したら、今度の日曜デートしましょう! ・・・・・・これでいいの小猫ちゃん?」

 

俺が小猫ちゃんに尋ねるとコクコクと頷く。

 

うーむ、俺とデートする権利なんかで朱乃さんがパワーアップするとは思えないけどなぁ。

 

 

カッ! バチッ! バチチチチッ!

 

 

突然、稲妻が辺り一面に散らばり出した。

何事かと思い、朱乃さんの方へ顔を向けると―――絶大な雷光のオーラに包まれた朱乃さんがいた!

 

「・・・・・うふふ。うふふふふふふふ! イッセー君とデート!」

 

え、ええええええ!?

 

なんか、迫力のある笑みを浮かべながら、周囲に雷を走らせてる!?

ウソッ!?

マジでパワーアップしちゃったよ!

 

「酷いわ、イッセー! 朱乃だけにそんなこと言うなんて!」

 

ちょ、今度は部長が涙目で俺に訴えてきた!

 

「うふふ、リアス。これは私の愛がイッセー君に通じた証拠よ。さっきだって、『俺の朱乃』って言ってくれたわ。これはもう確定なのではないかしら?」

 

「な、な、なななな、何を言っているの! デ、デート一回くらいの権利で雷を迸らせる卑しい朱乃になんか言われたくないわ!」

 

おいぃぃぃぃぃい!

 

なんだか、部長と朱乃さんが口論し出したんだけど!

小猫ちゃん、これ本当に大丈夫なの!?

事態が悪化した風にしか見えないんだけど!

 

「なんですって? いまだ抱かれる様子もないあなたに言われたくないわ。その体、魅力がないのではなくて?」

 

「そ、そんなことはないわ!」

 

「あら? 何をしたというのかしら?」

 

「・・・・ベッドの上で胸を触ってくれたわ」

 

「・・・・それ、イッセー君の寝相が悪くてそうなっただけではなくて?」

 

「・・・・・キ、キスしたもん・・・・・」

 

あ、今の部長、スゲー可愛かった。

完璧に普通の女の子だった。

 

つーか、人前でそんなこと言っちゃって良いんですか!?

 

 

ガシッ

 

 

俺は突然、肩と腕を掴まれた。

 

見てみると、美羽、ゼノヴィア、小猫ちゃんが俺を掴んでいた。

ものすごい力で・・・・・。

 

「今の話、どういうことかな?」

 

美羽、笑顔だけど目が笑ってないぞ・・・・・。

 

「いや、部長とキスしたのは・・・・な、なんというか・・・・そういう雰囲気になって・・・・・」

 

その先に進もうとしたら、アーシアが部屋に入ってきたから出来なかったけどね・・・・。

 

「ほう・・・・。それはどんな雰囲気か、是非とも教えてもらいたいものだな。なぁ、小猫」

 

「・・・・リアス部長だけなんてズルいです」

 

ゼノヴィアと小猫ちゃんも目がマジだ!

 

木場に助けてもらおうと視線を送るが・・・・・。

 

「ハハハ。大変だね、イッセー君」

 

木場ァァァァ!!!

 

 

俺が叫ぼうとした時――――

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

 

 

うおっ!?

 

神殿が揺れる!

ゼノヴィアの時の比じゃないぞ!

 

見ると、お姉さま方が口論を続けながら莫大なオーラを発していた!

 

「だったら私も今すぐにイッセー君と唇を重ねてきますわ! リアスのキスなんか忘れるくらいに!」

 

「ダメよ! あなたのことだから、舌も入れるつもりでしょう!」

 

「当然よ! 彼を私色に染め上げて見せますわ!」

 

「絶対にダメよ! イッセーが獣になってしまうわ!」

 

・・・・・・なんつー会話をしてるんですか。

つーか、今の件、以前にも聞きましたよ?

 

相手の『女王』と『僧侶』達もどう出ていいのか分からず、困惑している様子だった。

 

しかし、この空気に耐えられなくなったのか、『女王』が全身に炎のオーラを纏いながら激昂する。

 

「あなた方! いい加減になさい! 私達を無視して男の取り合いなどと―――」

 

「「うるさいっ!」」

 

 

ドッゴォォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

部長と朱乃さんが特大の一撃を相手目掛けて撃ち放つ!

その威力は見ているだけで寒気がするほどだった!

 

滅びの魔力と雷光が敵を容赦なく包み込んでいき、周囲の風景もろとも消し飛ばしていった!

 

相手は今ので完全に戦闘不能。

 

お、恐ろしい・・・・・。

 

あの二人は怒らせたらマジで怖いね。

しかし、口論は止まらない。

 

「だいたい朱乃はイッセーのことを知っているの!? 私は細部まで知っているわ!」

 

!?

 

部長、いつ俺の細部を見ましたか!?

風呂の時ですか!?

 

「知っているだけで、触れたことや受け入れたことはないのでしょう? 私なら今すぐにでも受け入れる準備は整ってますわ!」

 

「うぬぬぬぬ! ・・・・・まぁ、いいわ。それはアーシアを救ってからゆっくりと話し合いましょう。まずはアーシアの救出よ」

 

「ええ、わかっていますわ。私にとってもアーシアちゃんは妹のような存在ですもの」

 

おおっ、二人ともやっと意見が一致したか!

一時はどうなることかと思いましたよ!

 

 

ん?

 

そこで俺はあることに気づいた。

この気・・・・・まさか・・・・・。

 

俺は次の神殿の方を見る。

 

そんな俺を美羽が怪訝な表情で見てくる。

 

「どうしたの?」

 

「・・・・もしかしたら、嫌なやつと再会するかもな」

 

「?」

 

意味が分からないと、首を可愛く傾げる美羽。

まぁ、仙術使ってる小猫ちゃんでも気付けてないから仕方がないか。

 

まぁ、いいか。

出会えば敵だろうし、その時は倒すだけだしな。

 

 

「イッセー。私と小猫も頑張ったんだ。今度、私達ともデートしてくれ」

 

ゼノヴィアの言葉にガックリとなる俺であった・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

俺達はディオドラの『騎士』が待っているだろう神殿に足を踏入れたとき、俺達の視界に見覚えのある者が映り込む。

 

「や、おひさ~」

 

現れたのは白髪の神父。

それは―――

 

「やっぱ、おまえかよ。フリード」

 

そう、俺達の目の前に現れたのはフリード・セルゼン。

あのクソ神父だった。

 

エクスカリバー事件の時以来か。

懐かしいもんだ。

 

まぁ、会いたくなかったけど・・・・・。

 

「おやおや? 今、俺と会いたくなかった、とか思ったでしょ、イッセー君?」

 

「おう」

 

「うわぉう! 即答! 僕チン傷ついちゃう!」

 

大袈裟に泣き真似をするフリード。

 

そんなキャラじゃないくせに。

ふざけた口調もそのままか。

 

俺は辺りを見渡し、フリードに問う。

 

「フリード。ディオドラの『騎士』はどうした?」

 

俺の問いに嫌な笑みを浮かべるフリード。

 

フリードは口をモゴモゴさせると、ペッと何かを吐き出した。

 

見てみると、それは人の指だった。

 

「俺様が食ったよ」

 

こいつ・・・・・・。

 

部長と朱乃さんの戦闘が終わった直後に二つの気が消えたから、もしかしたら・・・・とは思っていた。

だけど、今の答えは予想外だ。

 

小猫ちゃんが鼻を押さえながら目元を細めた。

 

「・・・・・その人、人間止めてます」

 

小猫ちゃんが忌むように呟く。

 

奴はニンマリと口の端をつりあげると、人間とは思えない形相で哄笑をあげる。

 

「ヒャハハハハハハハハハハッハハハハハッ! てめえらに切り刻まれたあと、ヴァーリのクソ野郎に回収されてなぁぁぁぁぁぁっ! 腐れアザゼルにリストラ食らってよぉぉぉぉぉおおっ!」

 

ボコッ! ぐにゅりっ!

 

異様な音を立てながらフリードの体の各所が不気味に盛り上がる。

神父服は破れ、四肢は何倍にも膨れ上がった。

 

「行き場無くした俺を拾ったのが『禍の団』の連中さ!奴ら! 俺に力をくれるっていうから何事かと思えばよォォォォオオっ! ぎゃははははは! 合成獣だとよっ! ふははははははっははははっ!」

 

ドラゴンやコウモリ、そのほかにもいろんなものを混ぜたような、異形の形になるフリード。

 

美羽が口許を押さえて信じられないものをみたかのような表情をしている。

俺は手のひらで美羽の視線を遮る。

こんな醜悪なものを美羽に見せなくない。

 

「ヒャハハハハハハッ!ところで知っていたかい?ディオドラ・アスタロトの趣味をさ。これが素敵にイカレてて聞くだけで胸がドキドキだぜ!」

 

フリードが突然ディオドラの話しを始める。

 

「ディオドラの女の趣味さ。あのお坊ちゃん、大した好みでさー、教会に通じた女が好みなんだって! そ、シスターとかそういうのさ!」

 

女の趣味? シスター・・・・・?

俺の中で直ぐにアーシアと直結した。

 

フリードは大きな口の端を上げながら続ける。

 

「ある日。とある悪魔のお坊っちゃんはチョー好みの美少女聖女様を見つけましたとさ。でも、聖女様は教会にとても大切にされていて、連れ出すことは出来ません。そこでケガした自分を治療するところを他の聖職者に見つかれば、聖女様は教会から追放されるかも、と考えたのでしたぁ」

 

そうかよ・・・・。

 

そういうことかよ・・・・・・。

 

道理でおかしいはずだ。

現魔王の血縁者で上級悪魔であるディオドラが教会の近くで眷属も引き連れず、怪我をし、たまたま悪魔も治せるアーシアに助けられる。

考えれば考えるほど、あまりにも話しができすぎている。

 

アーシアはあのクズ野郎に・・・・・・ッ

 

強く握る俺の拳からは血が滲み出ていた。

だけど、痛みは感じない。

それよりも怒りの方がでかい・・・・・・・ッ!

 

「信じていた教会から追放され、最底辺まで堕ちたところを救い上げて犯す! 心身共に犯す! それが坊っちゃんの最高最大のお楽しみでありますぅぅうう!!」

 

「ッ!!」

 

キレた美羽が咄嗟に魔法陣を展開する。

 

・・・・・が、俺はそれを止める。

 

「どうして!?」

 

美羽が驚愕の表情を浮かべる。

 

「あんなクズ野郎のためにおまえが手を汚す必要はない。ここは―――」

 

「僕が出るよ」

 

俺の言葉を遮って前に出たのは木場。

木場は聖魔剣を一振り作り出した。

 

「イッセー君が出るまでもない。その怒りはディオドラまで取っておくんだ。だから、彼の相手は僕がしよう。・・・・・それに僕もそろそろ限界なんだ」

 

冷静な物言いだ。

 

だけど、木場の瞳ははっきりとした怒りと憎悪に満ちていた。

 

「分かった。任せるぞ、木場」

 

木場は静かに頷くと、そのまま歩んでいく。

その身に殺意を含んだ攻撃的なオーラを纏わせながら。

木場は異形の存在と化したフリードの前に立つ。

 

「やあやあやあ! てめぇはあのとき俺をぶった斬りやがった腐れナイトさんじゃあーりませんかぁぁぁぁ! イッセー君を殺る前にてめぇに仕返しするといきましょーかぁぁぁ! 色男さんよぉぉぉっ!」

 

木場は聖魔剣をかまえると冷淡な声で一言だけ言う。

 

「君はもういない方がいい」

 

「調子くれてんじゃねぇぇぇぇぞぉぉぉぉっ!」

 

全身から生物的なフォルムの刃を幾重にも生やして木場へと突っ込んでいくフリード。

 

木場とフリードが交錯する―――

 

 

バッ!

 

 

刹那、モンスターと化したフリードは無数に斬り刻まれ四散した。

すれ違い様に木場が高速の斬戟をフリードに繰り出したんだ。

 

「・・・・・んだ、それ・・・・・強すぎんだろ・・・・・」

 

辺りにフリードの肉片と血液が散らばる中、フリードの頭部が床に転がり、大きな目をひくつかせていた。

 

「・・・・・ひひひ。ま、おまえらじゃ、この計画の裏にいる奴らは倒せねぇよ・・・・・」

 

 

ズンッ!

 

 

頭部だけで笑っていたフリードに木場は容赦なく剣を突き立て、絶命させる。

 

「続きは冥府の死神相手に吼えているといい」

 

クソッ、木場のやつ決め台詞までカッコイイのかよ!

イケメンめ!

 

俺は物言わなくなったフリードの頭部を見る。

なんというか、こいつとは腐れ縁だったのかね?

 

今はこいつのことはいい。

俺達がやるべきことはアーシアを助ける。

それだけだ。

 

「行こう、皆」

 

俺達は頷きあい、ディオドラの待つ最後の神殿へと走り出した。

 

 

 

 

 

最深部の神殿。

ここにアーシアとディオドラがいる。

 

内部に入っていくと、前方に巨大な装置らしきものが姿を現す。

そして、その中心にアーシアが張り付けにされていた。

 

見た感じ、外傷は無いし服も破れている様子はない。

気の乱れも感じないから、とりあえずは無事か。

 

「やっと来たんだね」

 

装置の横から姿を現したのはディオドラ・アスタロトだった。

やさしげな笑みが俺の癇に障る。

 

「・・・・イッセーさん?」

 

アーシアが顔を上げる。

 

目元が腫れ上がり、涙の跡が見えた。

腫れ上がり方からして、かなりの量の涙を流したのだろう。

 

「・・・・ディオドラ。おまえ、アーシアに話したのか?」

 

先程、フリードから聞かされたこと。

あれは絶対にアーシアに聞かせてはならないものだ。

 

だが、ディオドラはニンマリと微笑む。

 

「うん。全部、アーシアに話したよ。ふふふ、キミたちにも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知ったときのアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか?本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」

 

アーシアがすすり泣き始めている。

 

「・・・・・そうか」

 

ああ・・・・こいつは許せそうにねぇな。

 

俺から放たれる殺気が神殿を揺らし、内部にひびが走る。

 

「アハハハ、凄い殺気だね!これが赤龍帝!でも、僕もパワーアップしているんだ!オーフィスからもらった『蛇』でね!キミなんて瞬殺―――」

 

 

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

 

 

「・・・あっ、がっ・・・・」

 

 

ディオドラの顔面が地面にめり込み、巨大なクレーターを作り出す。

今、俺がこいつをフルスイングで地面に殴り付けたんだ。

 

ディオドラは何が起きたのか分からず、痛みやらで混乱しているようだった。

 

拳をバキッバキッと鳴らしながらディオドラに告げる。

 

「立てよ、クズ野郎。アーシアを泣かせたツケはきっちり払ってもらう。これで終わりと思うなよ? おまえには絶望を見せてやるよ」

 

 

かつてないほどの怒りが俺の中で燃え上がっていた。

 

 

 


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