ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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13話 リアスvsソーナ 後編!!

『ソーナ・シトリー様の「女王」一名、「騎士」一名、「戦車」一名、リタイア』

 

 

 

俺はグレモリー家に用意された自室のモニターでゲームの観戦をしていた。

もちろん今のアナウンスが流れた時もその一部始終を見ていた。

 

俺の血を飲んだギャスパーがソーナ会長の眷属をたおすところを。

 

今回のゲームのルーム上、機動力がある木場かゼノヴィアが作戦の要だと思っていたんだけど、その予想は大きく外れることになった。

 

まさか、ギャスパーが要だったとは・・・・

 

 

確かに俺の血を―――赤龍帝の血を飲んだときのギャスパーのスペックは相当のものだ。

それは会談を襲撃された時に確認済みだしな。

 

それにあいつの吸血鬼としての能力なら建物を壊すことなく相手を撃破できる。

 

 

・・・・・だけど、実際に使ってくるとは誰も思わなかっただろう。

当然、ソーナ会長も。

 

事実、ソーナ会長の眷属である副会長と巡さん、由良さんはギャスパーに撃破されたことで、戦力を大きく失ったことになる。

 

それに対して部長達は今のところ誰一人として欠けていない。

 

 

 

これで不利な状況から一転、部長が優位に立った。

 

ギャスパーはさっきので力を使い切ったのか完全にダウンしているが、朱乃さんやゼノヴィアはまだピンピンしている。

 

 

 

問題は不利な状況に陥ったソーナ会長がどんな反撃をしてくるのか。

 

そして―――匙だな。

 

 

 

木場が匙と戦闘を開始してから少し経った。

 

匙は体の至るところを斬り裂かれ、全身が血まみれだ。

聖魔剣の聖なる力の影響か、傷口から煙が出ている。

いつリタイアしてもおかしくない状況だ。

 

どうみても木場が圧倒的に有利だ。

 

 

―――だけど、匙は決して倒れない。

 

むしろ、体から沸き立つオーラは戦闘に入る前よりも大きくなっている。

 

 

木場もそれに気付いているのか、戸惑いの表情を浮かべている。

 

 

このゲーム、まだまだ荒れるかもしれないな・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・ぐっ・・・ゲホッ!」

 

 

僕の目の前では匙君が全身から血を流しながら床に膝をついている。

 

それに対して僕は掠り傷は何ヵ所かできているものの、大きなダメージは受けていない。

 

匙君を持ち前のスピードを活かして攻め続け、素手やラインによる攻撃があればすぐに距離を取る。

 

ようするにヒットアンドアウェイだ。

 

 

――――完全に僕が優位。

 

 

のはずなんだけど・・・・・。

 

その考えは今の僕の頭からは完全に消えていた。

 

何度斬ろうとも何度倒そうとも、匙君は立ち上がって僕に攻撃を仕掛けてくる。

更に言うなら、その攻撃は徐々に鋭くなって来ている。

 

 

「く・・・・・おおおおおおおっ!!!」

 

 

痛みをこらえ、歯を食い縛りながら立ち上がる匙君。

 

一体、どこからこんな力が沸いてくるのだろうか。

 

「ラインよ!!」

 

勢いよく放たれるライン。

始めの方と比べると段違いの速さだ。

 

僕はそれを剣で捌きながら接触されるのを拒む。

 

繋げられたら力を吸われてしまうからね。

一瞬で全部を持っていかれるなんてことはないと思うけど、油断はできない。

 

あのラインには直接触れないのが賢明だね。

 

 

僕達のすぐ側では小猫ちゃんと仁村さんが戦闘を行っていた。

 

小猫ちゃんは格闘に秀でているけど、今回は更に猫又の力を解放しているので普段よりも戦闘力が上がっている。

 

それでも、仁村さんは猫又が扱う仙術についての知識を持っているのか、小猫ちゃんの攻撃を受けないように上手く立ち回っていた。

 

しかし、ついに小猫ちゃんの拳が相手の頬を掠める。

そして変化が起こった。

 

仁村さんの体か少しだけ揺らぎ、その目も泳いでいるようだった。

そして、小猫ちゃんはその隙を見逃さなかった!

 

拳に薄い白色のオーラを纏わせて、相手の胸に打ち込んだ!

 

 

パンッ!

 

 

小気味の良い音が周囲に響き渡る。

 

その瞬間、仁村さんはその場に膝を落とした!

 

「気を纏った拳であなたに打ち込みました。同時にあなたの体内に流れる気脈にもダメージを与えたため、もう魔力を練ることは出来ません。更に言うなら内部にもダメージは通ってます。・・・・・あなたは立ち上がることは出来ません」

 

 

なるほど。

 

これが小猫ちゃんが扱う仙術か・・・・・。

 

話には聞いていたけど、これは格闘戦において絶大な効果を発揮するようだね。

 

イッセー君も気を扱う技術に長けているみたいだけど、同じことが出きるのだろうか?

今のところ拳に纏わせて殴り付けているところしか見たことがないんだよね。

 

・・・・・まぁ、それだけでも十分な威力があるのだけれども。

 

 

「・・・・・匙先輩、ゴメンなさい・・・・・」

 

それだけを言い残すと、仁村さんの体が光輝き、この場から消えてなくなる。

 

いまのはリタイヤしたときの光だね。

 

『ソーナ・シトリー様の「兵士」一名、リタイア』

 

グレイフィアさんのアナウンスが聞こえてくる。

 

これで相手は四名を欠いたことになる。それに対して僕達は今のところ誰一人として欠けていない。

完全に優位に立ったわけだ。

 

「・・・・・私はイッセー先輩と約束したんです。絶対に負けません!」

 

小猫ちゃんが格好よく決める。

もしかしたら、小猫ちゃんが一番気合いを入れているのかも知れないね。

 

 

「くっ・・・・副会長達に続いて仁村までやられたのかよ・・・・。やっぱり強いなおまえら・・・・・。でもよ、俺がここで諦めるわけにはいかねぇんだ!」

 

匙君が腕の傷を押さえながら言いながら、こちらに魔力弾を放ってくる。

あの魔力にこめられたものは相当な代物。

 

防御力が低い僕がまともに受ければ大ダメージを受ける。

 

 

この魔力はいったいどこから来ているんだろう?

匙君の魔力はこれほどまでに高くはなかったはず。

それなのにこの威力を産み出している。

 

それにあれほどの負傷を負いながらも立ち上がれることにも疑問を抱いていた。

 

その答えを探すべく僕は魔力弾を避けながら匙君の体を注意深く観察する。

 

すると、破れた制服の間から彼の胸部に何かが繋げられているのが見えた。

 

まさか・・・・・・

 

 

「匙君、君は自分の命を力に変えているのかい!?」

 

「気付いたか・・・・。ああ、そうさ。俺がおまえを相手にするのには力不足だってことくらい自分が一番分かってんだ。だから、俺は神器の力で命を力に変換しておまえと戦うことにしたのさ。見ての通り『命懸け』ってやつだ」

 

「本気かい?そんなことをすれば君は・・・・・」

 

僕がそう言うと匙君は真剣な眼差しで笑みを浮かべた。

 

「ああ、こんなバカなことをしてたらそのうち死ぬだろうな。それでも俺はどんなことをしてでもおまえ達を倒す。そう決めてここに来たんだ。―――この戦いは冥界全土に放送されている。俺達は俺達の夢をバカにしてた奴等の前でシトリー眷属の本気をみせなきゃいけない!」

 

 

ドゥンッ!

 

 

そう言いきった匙君の体からこれまでとは比べ物にならないほどの黒いオーラが発せられる!

 

「俺達の夢を叶える為なら俺はいくらでも命をかける。どうせ悪魔は永遠に近い寿命を持ってるんだ。百年や二百年分の命を使ったところでどうってことはない。このゲーム、会長の眷属が俺だけになったとしてもおまえ達全員を倒して見せる!」

 

 

それほどまでの覚悟を持っていたのか・・・・・。

 

正直、彼がこのゲームにかける想いは想像を遥かに越えていた。

 

 

オォォォォォォォォォ・・・・・・・

 

 

匙君の背後に大きな黒い蛇のようなものがぼんやりと浮かぶ。

あれは何だ・・・・?

 

いや、今はそんなことを考えている余裕は僕には無い。

 

匙君から発せられるオーラが僕の肌をピリピリと刺激する。

 

これほどの力・・・・・・彼は本当に百年分以上の命を燃やしているのかもしれない。

 

早く彼を止めなければ非常に危険だ。

 

匙君自身もそうだし、今の彼の攻撃を受ければ僕達もリタイアは免れない。

 

 

 

僕は瞑目し、感覚を研ぎ澄ませる。

そして剣を正面に構え、腰を落とす。

 

「君にそれ以上の無茶をさせるわけにはいかない。君は僕が止める」

 

「止まらねぇ!俺はおまえ達を倒して勝利を掴む!」

 

僕は目を開き、床を蹴る!

 

それと同時に匙君も拳を握り、駆け出した!

 

「ハァァァァァァァッ!!」

 

「おおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の交錯。

 

 

 

 

 

 

ドシャア

 

 

僕の後ろで大量の血を吹き出しながら崩れ落ちる匙君。

聖魔剣の影響からか、体から煙が上がっている。

 

 

そう、制したのは僕だ。

 

「・・・・ちっ・・・・・くしょう・・・・・・」

 

 

匙君の体が光に包まれる。

戦闘不能と見なされリタイアするんだ。

 

だけど、僕は彼から目を離せなかった。

目を離したら再び立ち上がる、そう思えたからだ。

 

 

『ソーナ・シトリー様の「兵士」一名、リタイア』

 

 

そのアナウンスを聞いて張り詰めていたものが一気に無くなった。

 

同時に僕の右腕を激痛が襲う。

 

「ぐっ・・・・・」

 

見れば、深い傷が出来ていて吹き出た血が制服を赤く染めていた。

 

さっきの攻撃で匙君の拳が僕の腕に当たったんだ。

 

・・・・・もし、僅かにでも僕の攻撃が遅ければ僕の腕はもっと酷いことになっていただろうね。

 

今の右腕は傷によって動かせない状態だしね。

 

 

 

「祐斗先輩、大丈夫ですか?」

 

「まぁ、なんとか・・・・・。部長がフェニックスの涙を僕に渡しておいてくれて良かったよ」

 

僕は制服のポケットを探り、小瓶を取り出す。

小瓶の蓋を開けて傷にかけるとあっという間に傷が無くなった。

 

これで僕はまだ戦える。

 

「さぁ、行こうか。部長達もすでに動き出しているみたいだ」

 

「はい」

 

 

小猫ちゃんも頷き、僕達は最後の決戦に赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

ショッピングモールの中心に中央広場みたいなところがある。

円形のベンチに囲われて、その中央には時計の柱が存在していた。

ここは、よく買い物に疲れた客が座ったりしているところだ。

 

そこまで歩を進めたところで僕は足を止めた。

 

当然だろう。

 

―――ソーナ会長が目の前にいるのだから。

 

 

会長から少し下がったところには生徒会メンバーの『僧侶』二人。

二年の花戒さんと草下さんだ。

二人は会長を囲むように結界を張っている。

 

 

なぜ会長がここに・・・・・?

 

形勢はどう見ても会長が不利だ。

それなのにこうも堂々と姿を現すなんてね。

 

・・・・・・なにか仕掛けているのだろうか?

 

 

すると、僕と小猫ちゃんが来た方向とは逆からゼノヴィアとギャスパー君を背負った朱乃さんが現れた。

 

どうやら、真羅先輩達を倒したのはギャスパー君のようだね。

彼はあらかじめイッセー君の血が入った小瓶を貰っていたから、それを使用したのだろう。

 

 

「ソーナ、大胆ね。中央に出てくるなんて」

 

振り替えればアーシアさんを従えた部長がそこにいた。

 

「そう言うあなたも『王』自ら移動しているではありませんか、リアス」

 

「ええ。どちらにしてももう終盤でしょうから」

 

「・・・・・・そうですね。それにしても、椿姫がとられるとは想定外でした。まさか、ギャスパー君を使ってくるとは・・・・・」

 

会長が厳しい表情で言う。

 

会長はギャスパー君の性格を知っていたからこそ、作戦の計画が大きく狂ったのだろう。

 

少し前までの彼ならこんなことにはならなかっただろうからね。

 

 

 

「さぁ、決着をつけましょうか。・・・・あなたはリザインしろと言ってもしないでしょう?」

 

「当然です。ここでリザインなんてすれば眷属に顔向けが出来ません」

 

「だと思ったわ。・・・・・だから、私は今持てる全力を以てあなたを倒す」

 

 

そう言う部長の体からオーラが発せられる。

完全に戦闘モードに入ったんだ。

 

 

それに対して、会長は特に構える様子がない。

オーラを纏うわけでもなく、魔力を溜めるわけでもなく、ただただ僕達を見ているだけ。

 

・・・・・やはり、何かがおかしい。

 

部長もそれを感じたのかどこか訝しげな表情をしている。

 

罠でも仕掛けているのかと周囲を見渡すけど、そういう感じのものは見当たらない。

 

 

 

「何をしている。さっさとケリをつけようじゃないか」

 

ゼノヴィアが二つの聖剣を握って前に出る。

 

・・・・ゼノヴィア、君はもう少し慎重になった方が良いと思うよ?

 

と言いたいところだけど、このまま睨み合っていても時間の無駄になるのは確かだ。

 

同じことを考えているからか部長もゼノヴィアを止めようとはしない。

 

 

それを了承と捉えたゼノヴィアはその場を駆けて会長に斬りかかる!

 

振り下ろされた二つの聖剣はゼノヴィア自身のパワーと相まって、その力を増幅させる。

 

二人の『僧侶』によって作られた結界はその力に耐えきれず、呆気なく破壊されてしまう。

 

そして、ゼノヴィアの聖剣が会長に届いた―――はずだった。

 

 

 

「なっ!?」

 

僕達、グレモリー眷属の全員が驚愕の声をあげる。

 

 

ゼノヴィアに斬られたはずの会長が姿が消えたからだ。

 

 

リタイアしたわけではない。

もし、リタイアしたのならアナウンスが流れるはずだ。

 

どういうことだ!?

 

まさか、今の会長は幻影・・・・・?

 

 

 

驚く僕達に目掛けて花戒さんと草下さんが魔力による攻撃を仕掛けてくる!

 

近くにいるゼノヴィアが危ない!

 

「ゼノヴィア!」

 

「くっ・・・・・! この程度で!」

 

ゼノヴィアが聖剣を振りかぶり、草下さん目掛けて一撃を繰り出す!

 

すると、草下さんは両手を前に出し―――

 

 

反転(リバース)!」

 

 

聖剣の聖なるオーラが消失し、魔のオーラと変化した!

 

ゼノヴィアの斬撃はただの斬撃となって草下さんが展開した魔力障壁に防がれ、呆気に取られるゼノヴィアに対して花戒さんが魔力弾を放つ。

 

ゼノヴィアは間一髪で聖剣を盾にして受け止めるが、広場の端の方まで吹き飛ばされてしまう。

 

 

そのまま、草下さんが追撃を仕掛けようとするが―――

 

 

ドオオオオオオオオンッ!!

 

 

草下さんを大質量の雷が襲う!

 

今のは朱乃さんが放った雷、いや雷光による攻撃だ。

 

光は悪魔にとって猛毒。

今のをまともに受けた草下さんは光に包まれる。

 

「憐耶!」

 

花戒さんが草下さんの名を呼ぶが、その隙を小猫ちゃんにつかれてしまう。

 

「そこ!」

 

「うっ・・・・・!」

 

小猫ちゃんの気を纏った拳が花戒さんの胸に直撃する。

 

仁村さんの時と同じようにその場に膝を着く花戒さん。

 

そして、彼女の体が光に包まれた。

 

 

『ソーナ・シトリー様の『僧侶』二名、リタイア』

 

 

アナウンスがなり、二人の姿が完全に消える。

 

 

それを確認した部長はゼノヴィアのところに駆け寄った。

 

「ゼノヴィア、大丈夫?」

 

「ああ、問題ない。・・・・・だが、さっきのは一体・・・・」

 

「分からないわ。彼女の能力なのか、それとも神器なのか。ただ、カウンター系の一種なのは間違いないわね」

 

カウンター系の能力。

力押しの戦闘が多い僕達にとっては厄介なものだ。

 

 

部長は少し息を吐く。

 

そして、表情を引き締めた。

 

「あとはソーナだけね。小猫、位置は特定できるかしら?」

 

「はい。先程は感じ取れませんでしたが、今は屋上に会長の気を感じます。さっきの結界は会長の姿をそこにあるように見せるための虚偽と幻影、そして本人の気と位置を感じ取られないようにする特殊なデコイだと思います」

 

猫耳をピクピクと動かして、会長の気を探っているようだ。

 

「そう、屋上。そこにソーナがいるのね。なら、私達もそこに向かいましょう。決着をつけるわ」

 

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

デパートの屋上。

外の空は白く、何もなかった。

ゲームの空間だからだろう。

 

僕達はそこに赴いていた。

 

前方には会長の姿。

 

会長はこちらに視線を送ると苦笑していた。

 

部長が会長に問う。

 

「ソーナ、どうして屋上に?」

 

「最後まで『王』が生き残る。それが『王』の役割。私が取られたら、このゲームは終わってしまうでしょう?」

 

「・・・・そう、深くは聞かないわ」

 

部長はそう言うと瞑目する。

 

そして、一歩前に出る。

 

それに合わせて会長も前に出た。

 

「リアス、私は諦めません。あの子達が諦めなかったように」

 

会長はそう言うと両手を大きく広げた。

 

その瞬間―――

 

 

ザバァァァァァァ!!!

 

屋上の床から水が吹き出す。

それは部長と会長を囲むようにドーム状に展開される。

そして、それは僕達と部長との間に壁を作ることになった。

 

「これは―――」

 

部長は目を見開き、声を漏らす。

 

会長は不敵な笑みを浮かべる。

 

「これは私があなたと一対一(・・・)で戦うために桃と憐耶との三人で用意した最後の仕掛けです。特別な術式を組んだので、あなたの眷属でもそう簡単に破ることは出来ません。この意味は分かりますね?」

 

 

――――っ!

 

僕は慌てて聖魔剣で斬りかかるが、水の壁はビクともしない。

 

ゼノヴィアも攻撃を仕掛けたけど、結果は同じだった。

 

 

最後の最後でやられた!

 

これでは部長と会長の一騎討ちだ。

レーティングゲームは『王』が取られれば終わり。

 

つまり、この勝負は部長が負ければ僕達の敗北ということになる。

 

 

くそっ・・・・・ここに来て・・・・・・!

 

 

 

「心配いらないわ、祐斗」

 

焦る僕に部長が声をかけてきた。

 

部長は僕達を見渡して、一言。

 

「絶対に勝つ。皆の想いを無駄にはしないわ」

 

部長はそう言うと会長の方に視線を戻し、歩を進める。

体から凄まじいオーラを発しながら。

 

「私はこのゲームの開始直後からずっと魔力を溜めていたの。イッセーがライザーとのゲームの時にしたようにね。まぁ、あそこまでの出力は出ないのだけれど・・・・」

 

ドンッ!

 

部長のオーラが更に激しいものとなる。

体から漏れだす滅びの魔力が周囲に影響を出し始めている。

 

・・・・なんて魔力だ。

 

どうやら、部長は修行を経てかなりのパワーアップを果たしたらしい。

 

 

 

それを見て、会長は笑みを浮かべる。

 

会長の周囲に水のオーラが集まり、次第に何かを形成させていく。

 

この水の量、尋常じゃない。

 

見れば、このデパートのあらゆるところから水が集まってきているようだった。

 

流石は水の魔力を得意とするシトリー家。

姉のセラフォルー様は氷、妹の会長は水が得意と聞いている。

 

「さて、リアス。私の水芸、とくと披露しましょう」

 

会長は大量の水を魔力で変化させ、宙を飛ぶ鷹、地を這う大蛇、勇ましい獅子、群れをなす狼、そして、巨大なドラゴンを幾重にも作り出していた。

 

ここまで同時に違うものを形成できるのか!

魔力の技術は部長を超えている!

 

閉じ込められた空間でこれほどの数を作り出されては部長に逃げ場はない!

 

 

「ふふ、あなたもかなりの修行をしたようね。流石は私の親友にしてライバルのソーナだわ。だけど、私も負けてられないの。あなたを倒すわ、ソーナ!」

 

「臨むところです、リアス!」

 

 

そして、親友同士の激闘が始まった。

 

部長は凶悪なほどの滅びの魔力を、会長は多彩な水の魔力をぶつけ合った。

 

どちらも魔力の質に秀でているが、こうして見ていると部長はパワー、会長は技術が目立つ。

 

 

二人の激闘はしばらく続いた。

 

 

そして―――

 

 

『ソーナ・シトリー様、リタイア。よって、リアス・グレモリー様の勝利です!!』

 

 

ゲームは幕を閉じた。

 

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 

 


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