今回はそれの完成版です。
それではどうぞ!
「そうか、初戦はシトリー家か」
グレモリー家に帰ると、アザゼル先生が待っていた。
広いリビングに集合し、先生に先程の会合の顛末を話したんだ。
「対戦まで約二十日間か・・・・」
先生が何やら計算を始める。
「修業ですか?」
俺が尋ねると先生は頷く。
「当然だ。今回のゲームのこともあるが、禍の団のこともある。サーゼクスは若手を巻き込みたくないと言ったそうだな。これには俺も賛同している。・・・・だが、敵さんにとってはそんなものは関係ないからな」
確かに・・・・
禍の団のやつらにとっては俺達が若手だろうが何だろうが関係ないだろうな。
いつ襲ってくるかも分からないし、備えておくのは重要なことだ。
「修業は明日から始めるぞ。すでに各自のトレーニングメニューは一部を除いて考えてある」
先生の言葉に皆の視線が俺に集まる。
なんで、俺を見てるの?
もしかして、一部って俺のことですか!?
すると、木場が先生に尋ねた。
「僕達だけが堕天使総督のアドバイスを受けるのは不公平なのでは?」
あー、それもそうか。
他の若手から文句があってもおかしくないと俺も思う。
だけど、先生は嘆息するだけだ。
「それくらい別にいいだろ。俺は悪魔側に研究のデータも渡したし、天使側もバックアップ体制をしているって話だ。あとは若手悪魔連中がどれだけ自分を高めるか、その心しだいだ」
まぁ、それもそうか。
本当に強くなりたかったら必死で自分を鍛えるもんな。
「それに、うちの副総督のシェムハザも各家にアドバイスを与えているしな。もしかしたら俺よりもシェムハザのアドバイスの方が役に立つかもな! ハハハハ!」
おいおい・・・・。
いきなり、不安になるようなこと言わないで下さいよ。
「まぁ、そういうことだ。修業は明日から。今日は全員のんびりしてろ」
先生のこの言葉で今日のミーティングはお開きとなった。
・・・・俺の修業はどうなるんだろうな。
不安だ。
そこへグレイフィアさんが現れた。
「皆様。温泉のご用意が出来ました」
それは最高の知らせだった!
▽
「あー、極楽」
俺は木場、アザゼル先生と共にグレモリーの庭の一角にある温泉に浸かっていた。
「旅ゆけば~♪」
先生なんて歌まで歌ってご機嫌だ。
「いやぁ、流石は冥界屈指の名家グレモリー家の温泉だ。いい湯だぜ」
この人って温泉に慣れてるよな。
普段から浴衣着てるし、日本の文化が好きなのか?
まぁ、それだったら日本人の俺としては嬉しいけどね。
俺と木場は並んでタオルを頭にのせて湯に浸かっていた。
それにしても、さっきの木場はキモかった。
だって、突然―――
「イッセーくん。背中を流してあげるよ」
なんてことを頬を染めながら言ってきたんだぜ?
確かに裸のお付き合いなんてものもあるけど、頬を染めながら言われるとゾクッとする。
せめて、普通に言ってくれ。
頼むから!
ん?
そう言えばギャー助は?
あいつも男湯に一緒に来たはずなんだけど・・・・
見渡してみると入口のところでウロウロしてるギャスパーを発見。
「ギャスパー。折角の温泉なんだから入れよ」
俺は湯から一旦上がり、ギャスパーを捕まえる。
「キャッ!」
なんて、可愛らしい悲鳴を上げるギャスパー。
この瞬間、嫌な予感がしたので俺はギャスパーを温泉に投げ入れた。
ドボーーーン!!
「いやぁぁぁぁぁん! 熱いよぉぉぉ! 何するんですかぁ!」
絶叫を上げるギャスパー。
大げさなやつめ。
まぁ、これでギャスパーも温泉に浸かれるだろ。
「おい、イッセー! 何しやがる! 酒がこぼれるだろうが!」
あー、先生が酒飲んでるの忘れてた。
いや、ホントすみません。
俺は再び温泉に入る。
すると、先生が俺に尋ねてきた。
「ところでイッセー。おまえ、女の胸が好きなんだって?」
「ええ、もちろん! 大好きです!」
俺は即答した!
ああ、おっぱいは俺の大好物さ!
「おまえ、女の胸を揉んだことはあるのか?」
先生は両手の五指をわしゃわしゃさせながら聞いてくる。
「ええ! もちろん!」
俺は右手で揉む仕草をする。
思い返せば俺は異世界に渡ってから今まで、色んな人のおっぱいを触ってきたような気がするぜ。
「そうか、じゃあ、こう―――」
頷く先生は、人差し指を横に突き立てて言う。
「女の乳首をつついたことはあるか?」
先生が指で宙を押すようにする。
それを見て俺は不敵な笑みを浮かべた。
そして、チッチッチッと人差し指を横に振る。
「甘いですね先生。俺がそれをしてないとでも?」
「なに・・・・? おまえ、まさか―――」
「先生、俺は――――女の子の乳首をつついて禁手に至った男ですよ」
絶句する先生。
隣では木場とギャスパーも衝撃を受けているようだった。
ふっふっふっ・・・・
皆、俺の偉大さに今頃気づいたのかな?
すると、先生は俺の両肩に手を置いた。
そして、哀れみの目で俺を見てきた。
「イッセー・・・・俺から話を振っといてなんだが・・・・まさか、おまえがそこまでバカだったとはな・・・・」
「・・・・・僕は皆の想いを受け入れてやっと至ったって言うのに・・・・胸をつついて至った?・・・・そんな・・・」
あれ?
先生と木場が残念そうな表情で俺を見てくる!
なに、その反応。
俺、可笑しなこと言ったかな?
「流石はイッセー先輩ですぅ! 僕達の予想のはるか斜め上をいってますぅ!」
ギャスパーが目をキラキラさせて言ってくる。
ありがとうよ、ギャスパー!
そこに女湯の方から声が聞こえてくる。
『リアス、またバストが大きくなったのかしら?』
『そ、そう?ぅん・・・。ちょっと、朱乃、触り方が卑猥よ。そういうあなたこそ、ブラジャーのカップが変わったんじゃないの?』
『前のは少々キツかったものですから。あら? 美羽ちゃんも以前より大きくなったような・・・・』
『あら、本当じゃない』
『ふぇ!? そ、そんなことないですよ・・・って、なんで二人で揉みにくるんですか!?』
『いいじゃない。減るものじゃあるまいし』
『そうですわ。これは・・・・この柔らかさにこの肌触り。私も胸には自信がありますが、これには劣るかもしれませんね』
『やんっ! あ、朱乃さぁん、そこ、らめぇぇぇぇ!』
『はうぅ、皆さんスタイルが良いから羨ましいです・・・』
『そんなことはないさ、アーシア。アーシアのだってほら』
『はぁん!ゼノヴィアさん、ダメですぅ! あっ・・・・そんな、まだイッセーさんにもこんな・・・・』
『ふむ。アーシアのは触り心地が良いな。なるほど、これなら男も喜ぶのかもしれないね』
・・・・・・。
あー、ヤバい鼻血が止まらない。
うちの女子部員はエロすぎるぜ。
うーん、覗きたい。
男湯と女湯を隔てる壁。
これを登ってあちらの世界へダイブしたい。
どっかに覗き穴はないのか!
「なんだ、覗きたいのか?」
アザゼル先生がいやらしい笑みで聞いてきた。
「はい! 覗きたいです!」
「堂々としてるな。いや、それこそ男だ。温泉で女湯を覗くのはお約束だ。だがな―――」
先生はそこまで言うと俺の腕をむんずっと掴んで、空へ放り投げた!
「どうせなら、混浴だろ!」
どわああああああっ!
ちょ、目が回るううううう!
俺の視界が男湯から女湯に移り―――
ドッボォォォォォォン!!
痛って!
鼻にお湯が入った!
鼻がツーンとする!
サバッ!
俺は底に手を着き、顔をお湯から出す。
そして、今の俺はとんでもない状況に陥ってることに気づく。
「イタタタ・・・・」
「え、み、美羽?」
「へっ?」
俺の目の前には美羽の顔。
互いの鼻が当たりそうなほど近い。
さらに言うなれば、俺が美羽に迫っているような格好だ。
俺はこの状況に動けないでいた。
美羽も同様のようだ。
俺達はそのままじっと互いの目を見つめ合う。
一糸纏わぬ生まれたままの美羽の姿。
温泉に入っているせいか長い黒髪がいつも以上に艶やかで、幼い顔立ちも今日はどこか大人っぽく見える。
エロいってのもあるけど、それよりも綺麗だ・・・・
「・・・・・お兄ちゃん。そんなに見つめられたら・・・・・」
はっ!
いかんいかん!
何考えてんだ俺!
「ご、ゴメン!」
俺は慌てて立ち上がる。
この行動を俺はすぐに後悔することになる。
なぜなら―――
「「「あっ」」」
女子の視線が俺の下半身へと集まる。
「ああああああああっ!」
俺の絶叫が温泉に響いた。
▽
次の日。
俺達はグレモリー家にある広い庭に集まっていた。
アザゼル先生から修行のメニューを聞くためだ。
なんだけど・・・・・
「ね、眠い・・・・」
「そ、そうだね・・・・」
朝から俺と美羽はダウンしていた。
はい、兄妹そろって寝不足でございます。
昨日の夜、一緒のベッドに入った俺と美羽。
温泉でのことがあったからお互いにドキドキして、全く眠れなかったんだ。
あ、言っておくけど手は出してないぞ。
妹を泣かせるようなことはしないからな。
まぁ、とにかくそう言うわけで俺達は超眠い。
目の前に布団があったらダイブしたい。
美羽は寝てても良かったんだけど「皆が修行するのにボクだけ寝るなんて出来ないよ」と言って起きてきたんだ。
無理するなよ、美羽。
ちなみに、昨日の温泉で皆の裸はバッチリ脳内保存しているぜ!
眼福でした!
メンバーが揃ったことを確認した先生が口を開く。
「よし、約二名すでにダウンしかけているが、全員揃ったな。今から修行のメニューを渡していくんだが・・・・・その前におまえらに悪い知らせだ」
先生が重い口調で言う。
悪い知らせ?
なんだ?
「まぁ、まだ決まったことじゃない。現在も議論が続けられていることなんだが・・・・」
えらく歯切れが悪いな。
こんな先生は珍しい。
部長達も先生を怪訝な表情で見ている。
「いったい、どうしたというの?」
気になった部長が尋ねた。
すると、先生は俺を見て言った。
「イッセー。おまえはこの若手のゲームに参加できないかもしれない」
「「「!?」」」
この情報にこの場にいる全員が驚いている。
意味が分からない俺。
なんで、俺だけゲームに参加できないんだよ!?
もしかして、お偉いさんに失礼な態度をとったから!?
「どうして、イッセー君が参加できないんですか?」
木場が聞いてくれた。
「理由は簡単だ。イッセーがあまりにも強すぎるからだよ」
「はぁ!? そんな理由で!?」
アザゼル先生の言葉に俺は納得出来ないでいた。
先生は嘆息する。
「実のところ、これには俺も反対出来ないでいる」
「どうしてですか!?」
「おまえ、自分の実力を考えてみろ。おまえの力量はどうみても魔王クラス。下手すりゃ、俺でも負けるかもしれん。デビュー前の若手がそんな力を持ったやつを相手に出来るわけがないだろう」
この理由に皆は「あー」とどこか納得しているようだった。
ウソッ!?
皆はそれで良いのかよ!?
ちくしょう!
いじけてやる!
「それから、もう一つ理由があってな。イッセーは転生する時、アジュカの手が加わっただろ?」
「ええ、まぁ」
「本来、リアスでは眷属に出来なかったおまえはアジュカの手を借りることによって無事に転生し、リアスの眷属となった。これは不公平なのでは、という意見が多くてな」
た、確かに。
それを言われると平等じゃないような気がする・・・・
他の若手には魔王の援助なんていってないだろうし・・・・
アジュカさんも「今回は特別だ」的なことを言ってたな。
「・・・・分かりました」
「まぁ、そう気を落とすな。仮に若手のゲームに参加出来なくてもプロの方では存分に力を振るえるだろうさ」
プロねぇ・・・・
割りと先の話だな。
「イッセーが抜けることで戦力は一気に下がる。だがな、リアス。これはチャンスでもあるんだぞ?」
「ええ、そうね。イッセーが抜けることで私達は色々と不利になるでしょう。でも、これで勝てば私達の評価は一気に上がるはずよ」
なるほど、そう言う見方もあるわけか・・・・
あー、俺も参加したかったなー。
まだ決まったわけじゃないけどさ・・・・
「さて、気を取り直して修行の話をするぞ。先に言っておくが今から渡すメニューは先を見据えたものだ。すぐに効果が出る者とそうでない者がいる。ただ、おまえらはまだ成長段階だ。方向性を見誤らなければ伸びるはずだ。まずはリアス、おまえだ」
最初に先生が呼んだのは部長だった。
「お前の才能、魔力、身体能力はどれをとっても一級品だ。このまま普通に暮らしていても成人になる頃には最上級悪魔の候補にも挙げられるだろう。が、今すぐにでも強くなりたい。それがお前の望みだな?」
先生の問いに部長は力強く頷く。
「ええ。私は皆の王として相応しい者になりたい」
「なら、この紙に記してあるメニューをこなしていけ」
先生から手渡された紙を見て部長は不思議そうな顔をしている。
「・・・・・これって、基本的なメニューよね?」
「お前はそれでいいんだ。おまえは全てが総合的にまとまっている。だからこそ基本的な修行で力が高められる。問題は『王』としての資質だ。王は力よりもその頭の良さ、機転の良さが求められる。要するに眷属が最大限に力を発揮できるようにしてやるのが王の役割なんだよ」
なるほど。
先生の言うことは最もだな。
というより、先生もしっかり考えてたんだなぁ。
「次に朱乃」
「・・・・はい」
先生に呼ばれるものの不機嫌な表情の朱乃さん。
朱乃さんはどうにもアザゼル先生が苦手らしい。
レイナとは普通に接することが出来ているみたいだから、やっぱりお父さん絡みかな?
そう思っていたら、先生はそのことを真っ正面から言う。
「おまえは自分の中に流れる血を受け入れろ」
「ッ!」
ストレートに言われたせいか、朱乃さんは顔をしかめる。
「フェニックス家とのレーティング・ゲームは見させて貰った。確かにおまえは強くなった。だがな、これから出会うであろう強敵には雷だけでは限界がある。雷に光を乗せ『雷光』としなければ、いつかこの眷属の足を引張ることになるぞ。・・・・・・自分を受け入れろ。俺から言えるのは今はこれだけだ。『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろ」
「・・・・・」
先生の言葉に朱乃さんは応えなかった。
ただ、拳を強く握り、唇を噛んでいた。
朱乃さんも今のままじゃダメなことくらい分かってるはずだ。
俺は信じるぜ、朱乃さんは絶対にこの試練を乗り越えてくれるってな。
「次は木場だ」
「はい」
「まずは禁手を解放している状態で一日保たせろ。それが出来れば次は実戦の中で一日保たせる。この修行期間で最低でも一週間は持続出来るようにしろ。神器については俺がマンツーマンで教えてやる。剣術のほうは・・・・師匠に習うんだったな?」
「ええ、一から鍛え直してもらう予定です」
へぇ、木場にも師匠がいたのか。
どんな人なのかな?
・・・・俺の師匠みたいに鬼畜ではないと思うけど。
「次はゼノヴィア。おまえはデュランダルを今以上に使いこなせるようにしろ。今のおまえはデュランダルに振り回されている所がある。出来るだけ制御できるようにしろ。それが出来ればテクニック方面もちったぁマシになるさ」
「分かった。やってみよう」
それから先生の視線はギャスパーに移る。
「次、ギャスパー」
「は、はいぃぃぃぃぃ!!」
チョービビってるよ。
いや、段ボールに逃げ込まないだけ進歩してるか・・・・?
「おまえはまず、その引きこもりをなんとかしろ。そうじゃないと話しにならん。おまえはスペックだけなら相当のものだ。それを克服出来ればゲームでも実戦でも活躍出来るはずだ。とりあえず、『引きこもり脱出作戦!』なるプログラムを組んだから、それをこなしていけ」
「はいぃぃぃぃぃ!! 当たって砕けろの精神で頑張りますぅぅぅ!!」
・・・・こいつがその言葉を言うと本当に砕けそうで不安だ。
すると、先生の視線は美羽に移った。
「悪いが、美羽にはギャスパーのサポートを頼む。こいつは、おまえになついているようだからな。おまえがいれば安心するだろうよ」
「分かりました。一緒に頑張ろうねギャスパー君!」
「美羽先輩! よろしくお願いしますぅ!!」
なるほど。
ギャスパーに美羽を付けるのはありか。
まぁ、美羽が厳しくできるのかは疑問だけど・・・・
「続いて、アーシア」
「は、はい!」
アーシアも気合い入ってるな。
「おまえも基本トレーニングで身体と魔力の向上を目指せ。それから、回復のオーラを飛ばすことにもっと慣れろ。より遠方の味方を回復の出来るようにな」
確かに、アーシアは回復のオーラを離れた相手に飛ばせるようになったけど、距離がかなり限られているからなぁ。
まぁ、基本は出来ているからなんとかなるだろう。
「次に小猫」
「・・・・はい」
小猫ちゃんも相当気合いが入ってる様子だ
「おまえは申し分無いほど『戦車』としての才能をもっている。おまけにイッセーとの修行を経て、現状でも中々のものになっている」
そりゃあ、ケルベロスをボコボコに出来ますからね・・・
小猫ちゃんは力の使い方が以前よりも良くなったと俺は思う。
「だが、リアスの眷属にはイッセーを筆頭に木場やゼノヴィアといったおまえよりもオフェンスが上のやつが多い」
「・・・・分かっています」
先生のハッキリとした言葉に悔しそうな表情を浮かべる小猫ちゃん。
もしかして、気にしていたのか?
「俺から与えるのは基本的なメニュー、そして自分をさらけ出せっていうアドバイスだ。そうでなければ、これ以上の成長は望めんぞ?」
「・・・・・」
何も答えない小猫ちゃん。
さらけ出せ、か。
小猫ちゃんは何かを隠してる?
えらく険しい表情をしている。
ここはそっとしておいた方が賢明か?
「最後にイッセー」
おっと、俺の出番か。
「おまえについては本当に悩んだぞ。おまえは魔力が下級悪魔の平均並ってこと以外は全てが超一流だ。正直、俺のアドバイスはいらないんじゃないか、と考えたくらいだ」
「先生・・・・・」
「おいおい、そんな残念そうな目で見るなよ。ちゃんと考えてきてるって。・・・・おまえ、悪魔になってから『
先生にそう聞かれ、俺は記憶を探る。
「・・・・そういえば、無いような・・・・・」
「やっぱりな。まぁ、必要も無かったんだろうが・・・・。今後、禍の団と争っていく上で、おまえよりも強いやつと出会さないという保証はない。その時のためにも使える力は今のうちに身に付けておけ。おまえが悪魔の駒の特性を使えば、かなりの力になるはずだ」
なるほど。
確かにそうだな。
いや、機会が無さすぎて今まで忘れてたってのもあるんだけどね。
あ、コカビエルとヴァーリの時に使えば良かったのか・・・・
まぁ、今後使っていけばいいや。
「さて、もうそろそろ来るはずなんだが・・・・」
アザゼル先生が時計を見て何やら呟く。
来る?
誰か来るのか?
・・・・ん?
空から気配が・・・・
俺は空を見上げた。
すると、俺の視界にデカい影が!
こっちに猛スピードで向かって来たぞ!?
ドオオオオオオオオンッ!
それは地響きを鳴らしながら俺の目の前に着地した。
デカい!
十五メートルはあるんじゃないか!?
これは――――ドラゴン!?
「アザゼル、よくもまぁ悪魔の領土に堂々と入れたものだ」
巨大なドラゴンは笑みを浮かべながら言った。
おお!
喋れるのか!
「ハッ! サーゼクスからの許可は貰ってるぜ? 文句あるのかよ?」
「ふん。まあいい。それで? 俺に相手をしてほしいというのはそこの小僧か?」
巨大なドラゴンがデカイ指で俺を指してきた。
え?
このドラゴンが俺の修行相手ですか?
「そうだ。イッセー、紹介するぜ。このドラゴンは『
タンニーンって聞いたことある名前だ。
元六大龍王の一角だったドラゴン。
以前、ドライグに教えてもらったことがある。
まさか、こういう形で会うことになるなんてな。
とりあえず挨拶しとくか。
「兵藤一誠です。よろしくお願いします」
「うむ。ドライグを宿すものを鍛えるのははじめてだ。おまえの噂は俺の耳にも届いているぞ。随分活躍しているみたいじゃないか」
元龍王にも俺の噂が!?
いや、気にするのは止めよう。
いちいち驚いていたらキリがない。
「あいつはまだなのか?」
先生が呟く。
まだ来るんですか?
俺がそう思った時、俺達の前に魔法陣が展開される。
そこから現れたのは―――ティアだった。
「え、ティア?」
「おう、イッセー。今日は堕天使の総督殿に呼ばれてな。来てやったぞ」
・・・・・嫌な予感がする。
「せ、先生? 俺の修行相手って、まさか・・・・」
「お、察しが良いじゃないか。そうだ。おまえの修行相手はタンニーンとティアマット。この二人に頼んである。存分に修行に打ち込め」
は、はいいいいいいい!?
マジですか!?
龍王が二人!?
俺に死ねと!?
「イッセー君、ファイト」
木場が俺の肩に手を置いて爽やかなイケメンフェイスで言ってきやがった!
マジで殴るぞ、この野郎!
おわっ!
タンニーンに俺の体を掴まれた!
う、動けん!
「さあ、修行に行くぞ兵藤一誠。おまえの力を俺に見せてくれ」
なんか、どっかで聞いたようなフレーズ!
ちょ、マジでこの二人が相手なのかよ!?
「リアス嬢、あの山を借りてもよろしいか?」
タンニーンが向こうの山を指差して部長に問う。
ぶ、部長、許可出さなくて良いから助けて!
「そうね。好きに使ってちょうだい。イッセー、絶対に生きて帰ってくるのよ?」
そんな不吉なこと言わないで!
「お兄ちゃん、頑張って!」
「おう!」
美羽に言われたら断れねぇ!
なんて、俺は妹に弱いんだ・・・・
こうして、俺は龍王二人が相手という無茶苦茶な修行に身を投じるのであった・・・・・・。