ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今回は少々長くなってしまいました。


3話 若手悪魔の会合です!!

夕食の席。

 

「遠慮なく楽しんでくれたまえ」

 

部長のお父さん――――ジオティクスさんの一言で会食は始まった。

 

デカい横長のテーブル。

 

天井には豪華なシャンデリア。

 

座っている椅子も高価そうだ。

 

 

ちなみにだけど、俺達が案内された部屋もデカかった。

 

風呂、トイレ、冷蔵庫、テレビ、キッチンと生活必需品が全て揃っていた。

 

美羽の希望で兄妹同じ部屋にしてもらったんだけど、スペースはまだまだ余ってる。

 

なんと言うか・・・・家の中に家がある感じかな?

 

案内された部屋、絶対改築される前の俺の家と同じくらいのスペースがあるって。

 

 

うん。とりあえず話を夕食の席に戻そう。

 

俺の目の前にはこれまた豪華な料理がずらりと並んでいる。

 

上手くナイフとフォークを使って料理を口に運ぶ。

 

ウマい!

 

めちゃくちゃウマい!

 

 

あー、ここでも異世界を思い出すなぁ。

 

城でもこんな感じだったっけ?

 

アリスにテーブルマナーを仕込まれたけど、まさかこっちの世界でも役に立つとは。

 

これはアリスに感謝しないとな。

 

 

俺の隣に座る美羽も優雅に食べている。

 

流石は魔王の娘で魔族の姫。

 

その辺りも仕込まれてたか。

 

 

「うむ。リアスの眷属諸君、ここを我が家だと思ってくれると良い。もちろん、美羽さんもだ。冥界に来たばかりで勝手が分からないだろう。欲しいものがあったら、遠慮なく言ってくれたまえ」

 

朗らかに言うジオティクスさん。

 

これ以上欲しいものなんてないかな。

 

 

いや、待てよ・・・頼んだらメイドのお姉さんもくれるのかな!?

 

夜伽の相手が欲しいです!

 

「お兄ちゃん、顔がニヤけてるよ」

 

おっと、美羽に注意されてしまったぜ。

 

まぁ、美羽と同じ部屋だからどの道、夜伽は無理だけどね。

 

「ところで兵藤一誠君」

 

ジオティクスさんが俺に顔を向ける。

 

「あ、はい」

 

「ご両親はお変わりないかな?」

 

「いやー、二人とも元気ですよ。冥界に行くって言ったら、二人とも行きたがっていましたからね。残念ながら仕事の都合で来ることは出来ませんでしたけど・・・・」

 

「そうか。それなら、ご両親の都合の良い日にいつでも気軽に来るように言っておいてくれないかな? 歓迎するよ。君の父上殿には連絡先も渡しているからね。連絡さえしてくれれば、迎えの者をよこそう」

 

 

それは初耳だぞ!?

 

父さん、連絡先もらってたの!?

 

もしかして、ジオティクスさんとサーゼクスさんが家に来たときか!?

 

 

あ、今の話で思い出した。

 

そういえば渡すものがあるんだった。

 

「えっと、これ、父さんが持たせてくれたお土産なんですけど・・・・」

 

俺はテーブルの下から紙袋を取り出す。

 

「ほう、それは?」

 

「この間、父さんが仕事で京都に行ってまして、その時に買ってきた漬物です」

 

 

父さん・・・・

 

貴族相手に漬物って・・・・

 

 

 

「おお! それは素晴らしい!」

 

ジオティクスさん、テンション上がってる!?

 

「よし、明日の朝食は和食にしよう。頼めるかな?」

 

「かしこまりました、旦那様」

 

執事さんが引き受けた!

 

明日の朝食決定ですか!?

 

この人、そんなに漬物好きなの!?

 

意外すぎる!

 

つーか、ヴェネラナさんも喜んでる!?

 

 

そういえば、部長も家では漬物を好んで食べていたな。

 

まさか、グレモリー家の人は漬物好き・・・・?

 

 

「そうそう。兵藤一誠君、私もイッセー君と呼んでもいいかね?」

 

「ええ、もちろんです。皆からはそう呼ばれてるんで」

 

実際、サーゼクスさん達にもそう呼ばれてるしな。

 

俺がそう答えるとジオティクスさんとヴェネラナさんは凄く喜んでいた。

 

「では、イッセー君。君が冥界で話題となっているのは知っているかな?」

 

「え、ええ、まぁ・・・・」

 

 

そう、なぜか俺は冥界で有名人となっていた。

 

新聞だけでなく、冥界のテレビ番組でも三大勢力の和平と共に俺のことについて語られていたんだ。

 

俺とヴァーリが戦っている映像が流され、テロを防ぎ和平を無事に成立させた立役者としてニュースキャスターの人が紹介していたんだけど・・・・・。

 

 

正直言って、超恥ずかしい!!

 

だって皆、俺のこと過大評価し過ぎだろう!

 

確かにコカビエルを倒したし、ヴァーリも倒した。

 

でも、ここまでお祭り騒ぎしなくてもいいと思うんだ・・・・

 

 

この原因は分かってる。

 

テレビに出演していたサーゼクスさんとセラフォルーさんだ。

 

あの二人が会談に出席した代表者として、語っていたんだけど、その時に俺のことをベタ誉めしていたらしい。

 

それがテレビや新聞で大きく取り上げられて、今に至るという・・・・。

 

 

どうしよう・・・。

 

冥界に来て早々、町を歩けなくなったぞ・・・・。

 

美羽と一緒に冥界観光しようって言ってたのに・・・・。

 

 

 

とりあえず、苦笑いしながら俺は答える。

 

「まさか、俺のことがこんなに取り上げられるとは思いませんでしたよ・・・・」

 

「いやいや、これは当然の結果だと私は思う。実際、君の活躍はかなりのものだ」

 

ジオティクスさんの言葉に全員がうんうんと頷く。

 

うーん、そんなもんなのかな?

 

今までに色々あったから、どの程度がスゴいのかよく分からないけど・・・・。

 

と言うより、俺は俺が出来ることをやっただけというか何というか・・・・・。

 

「イッセー君、これからもリアスのこと、よろしく頼む」

 

「もちろんですよ。リアス様のことは俺が全力で守りますよ」

 

俺がそう答えるとジオティクスさんとヴェネラナさんは満足気な笑みを浮かべた。

 

 

ただ、なぜか部長が顔を真っ赤にしていた・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

部長の実家に到着した次の日。

 

 

「つまり、上級悪魔にとって社交界とは―――」

 

俺は朝から悪魔社会、特に貴族が何たるかについて勉強させられていた。

 

部長のご両親が用意してくれた勉強の場なんだけど・・・・

 

なぜに俺だけ?

 

 

まぁ、冥界について知らないことだらけだからいい機会なんだけどね。

 

教育係の人も俺の質問に快く答えてくれるし。

 

とにかく俺は遅れないように、ひたすらノートにペンを走らせている。

 

うぅ・・・・勉強は苦手だぜ!

 

 

隣の席にはミリキャスもいて、一緒に勉強している。

 

小さいのに真面目に授業を受けてるな。

 

うーん、俺がこのくらいの時は勉強よりもサッカーしたり、ドッチボールしたりして、友達と遊んでばっかりだったような・・・・

 

 

他のメンバーはグレモリー領の観光に行ってる。

 

くそぅ! 羨ましいぞ!

 

俺だって行きたかったよ!

 

「若様、悪魔の文字はご存じでしょうか?」

 

「まぁ、少しなら。リアス様が教えてくれたので」

 

「なるほど。では、現状を確認しながら学んでいきましょう」

 

「・・・・あの、その前に一つ質問が」

 

「なんでしょう?」

 

「その『若様』ってのはいったい・・・・・?」

 

そう。

 

昨夜からグレモリーのメイドさんや執事さん、それにこの教育係の人まで俺のことを『若様』って呼ぶんだ。

 

「・・・・さあ、さっそく書き取りの練習をしてみましょう」

 

あ、はぐらかされた。

 

気になる。

 

なぜ、俺が若様なのか!

 

悪魔社会の勉強なら同じ新人悪魔のアーシアとゼノヴィアも受ける必要があるんじゃ・・・・?

 

 

ガチャ。

 

ドアが開き、入ってきたのはヴェネラナさんだった。

 

「おばあさま!」

 

あー、ミリキャスにとっては祖母に当たるのか。

 

俺にはどう見ても部長のお姉さんにしか見えん。

 

「二人とも勉強ははかどっているかしら?」

 

やさしい笑みを浮かべながらそう聞いてくる。

 

そして、ノートに書かれた俺の拙い悪魔文字を見、微笑んだ。

 

「サーゼクス達の報告通りね。確かに文字は上手とは言えませんが、一生懸命に覚えようとする姿勢が見てとれます」

 

そう言うと、ヴェネラナさんはお茶を入れてくれた。

 

あ、美味しいなこのお茶。

 

「もうすぐリアス様が帰ってきます。今日は若手悪魔の交流会の日ですから」

 

そういえば、今日だったな。

 

部長と同世代の若手悪魔が一堂に会するらしい。

 

全員が名門、旧家といった由緒ある貴族の跡取りがお偉いさんのもとに集まって挨拶をすると聞いている。

 

部長だけでなく、眷属の俺達も参加しなければならない。

 

勉強に会合、それから修業か。

 

はぁ、冥界に来てから色々忙しいな・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

部長達が観光から帰ってきてから直ぐに俺達は列車で魔王領へと移動した。(美羽はグレモリー本邸でお留守番だ)

 

列車に揺られること三時間。

 

到着したのは近代的な都市部だった。

 

人間界のものとは多少デザインが違うけど、建物も最先端の様相を見せていた。

 

ちなみに、俺が一番最初に気になったのは駅の前にあったゲームセンターとファーストフード店。

 

 

・・・・サーゼクスさん、本当に作ったんですね。

 

「ここは魔王領の都市ルシファード。旧魔王ルシファー様がおられたと言われる冥界の旧首都なんだ」

 

と、木場が説明してくれる。

 

旧魔王ルシファーってことはヴァーリの家族がここにいたってことか・・・・

 

「表から行くと騒ぎになるから、地下鉄に乗り換えるよ」

 

木場がそう言う。

 

へぇ、地下鉄もあるのか。

 

人間界と変わらないんだな。

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁああ!!!リアス姫様ぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

うおっ!?

 

突然の黄色い歓声に俺は驚いた。

 

歓声が聞こえた方を見るとホームにはたくさんの悪魔の人達。

 

なんかアイドルがファンに浴びせられる声援みたいだな。

 

「リアスは魔王の妹。しかも容姿端麗ですから、下級、中級悪魔から憧れの的なのです」

 

朱乃さんが説明してくれた。

 

やっぱり、部長はどこでも人気者なんだな。

 

学園でもお姉様として人気があるしな。

 

 

すると、さらに声が聞こえてくる。

 

 

 

「確か、リアス様の眷属に赤い龍を宿した人がいたわよね?」

 

「あ、それ知ってる! テレビで見たわ! どの人かな?」

 

「名前は・・・ヒョウドウ、イッセイ・・・・だったような・・・」

 

 

 

 

おお!?

 

それ、俺のことじゃん!

 

まさかのここで俺の話題がでますか!

 

俺って本当に有名みたいだな・・・・

 

 

部長が付き添いの黒服男性の一人に聞く。

 

「困ったわね。急いで地下に行きましょう。専用の電車も用意してあるのよね?」

 

「はい、ついて来てください」

 

この人達はどうやら俺達のボディーガードらしい。

 

 

『(相棒にそんなものは必要ないと思うがな)』

 

でもよ、部長はグレモリー家の姫様なんだぜ?

 

そういう人をつける必要があるのだろう。

 

見たところ、それなりの実力はあるみたいだし。

 

 

こうして、俺達はボディーガードさんの後に続いて、地下鉄の列車へと移動した。

 

 

 

 

 

 

 

地下鉄に乗り換えてから数分後、俺達は都市で一番大きい建物の地下にあるホールに到着した。

 

ボディーガードの人達は中には入れないらしく、エレベーター前で別れることになった。

 

「皆、何が起こっても平常心を保ってちょうだい。これから会うのは将来の私達のライバルよ。無様な姿は見せられないわ」

 

気合いの入った部長。

 

声音も臨戦態勢の時のそれだ。

 

 

ふと隣を見るとアーシアが生唾を飲んで落ち着こうとしていた。

 

緊張しているのかな?

 

「アーシア、大丈夫か?」

 

「き、緊張はしていますが、だ、大丈夫です!」

 

 

・・・・ガチガチだな。

 

ここは手を握ってやるべきなのだろうか。

 

 

すると、エレベーターが停まり、扉が開く。

 

出ると、そこは広いホールだった。

 

エレベーターの前には使用人らしき人がいて、俺達に会釈してきた。

 

「ようこそ、グレモリー様。こちらへどうぞ」

 

使用人の後に続く俺達。

 

すると、通路の先の一角に複数の人影が見える。

 

「サイラオーグ!」

 

部長がその内の一人に声をかけた。

 

知り合いなのかな?

 

あちらも部長を確認すると近づいてくる。

 

 

俺達と歳もそう変わらないか。

 

黒髪の短髪で野性的なイケメンだ。

 

瞳は珍しい紫色。

 

そして、その体はプロレスラーのような良い体格をしている。

 

それにこの濃密なオーラ。

 

・・・もしかしたら、俺と似たような戦闘スタイルかもしれないな。

 

 

「久しぶりだな、リアス」

 

男性は部長とにこやかに握手を交わす。

 

「ええ、サイラオーグ。変わりないようで何よりよ。初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ・バアル。私の母方の従兄弟に当たるの」

 

へぇ、従兄弟なのか。

 

そういえば、何となくだけどサーゼクスさんに似ているような。

 

「サイラオーグ・バアルだ。バアル家の次期当主だ」

 

バアルってことは魔王の次に偉い『大王』だ。

 

ということはヴェネラナさんはバアル家の出身だったのか。

 

 

サイラオーグさんの視線が俺に移ったので自己紹介をする。

 

「はじめまして。リアス様の兵士をしている、兵藤一誠です」

 

俺が名乗るとサイラオーグさんの後ろにいる眷属らしき人が驚いていた。

 

サイラオーグさんはどこか納得のいったという表情をしているけど・・・・

 

「なるほど、やはりおまえがそうだったか。その鍛え上げられた体、その身に纏うオーラが別格だったからな。直ぐに気づいたぞ。おまえの武勇は聞いている。かのコカビエルを倒し、会談の場では歴代最強と称される今代の白龍皇を倒したそうだな」

 

「ええ、まぁ」

 

なんか、あっちこっちで噂されてるな・・・・

 

そんな大したことはしてないんだけど・・・・・

 

 

すると、部長がサイラオーグさんに尋ねた。

 

「それで、サイラオーグはこんな通路で何をしていたの?」

 

「ああ・・・・くだらんから出てきただけだ」

 

「・・・・・くだらない? 他のメンバーも来ているの?」

 

「アガレスとアスタロトもすでに来ている。あげく、ゼファードルだ」

 

サイラオーグさんがそう答えると部長も「ああ」とどこか納得しているようだった。

 

何かあったのか?

 

 

すると―――

 

ドオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 

 

通路の奥から巨大な破砕音が聞こえてきた!

 

おいおい、この感じってまさか!

 

 

部長とサイラオーグさんが嘆息しながら破砕音が聞こえた部屋に入り、俺達もそれに続く。

 

部屋の中はボロボロで、テーブルも椅子も全てが破壊つくされている。

 

部屋の中央には会場をそうしたと思われる人物が二人。

 

それに二人の後ろにはそれぞれの陣営に別れた悪魔達が強いオーラを発しながらにらみ合いをしていた。

 

武器も取り出していて、一触即発の様相だ。

 

「ゼファードル、こんなところで戦いを始めても仕方なくては? あなたは馬鹿なのかしら? いっそのことこの場で殺してやろうかしら?」

 

「ハッ! 言ってろよ、クソアマッ! こっちが気を利かして別室で女にしてやろうとしてんのによ! アガレスのお姉さんはガードが堅くて仕方ねえな! そんなんだから未だに処女やってんだろう!? だからこそ俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」

 

メガネをかけた美少女と顔に魔術的なタトゥーを入れたヤンキーみたいな男性が言い争っている。

 

・・・・悪魔にもヤンキーっていたのか。

 

 

部屋の端には優雅にお茶をしている少年悪魔とその後ろには眷属悪魔。

 

一見優しそうな雰囲気だけど・・・・

 

・・・なんだ?

 

さっきからアーシアを見てる・・・・?

 

不気味なやつだな。

 

俺はそいつの視界にアーシアが入らないよう、二人の間に立つ。

 

すると、そいつは一瞬、俺を睨んできた。

 

・・・・一応、警戒しておくか。

 

 

 

「ここは若手悪魔が軽く挨拶をする場だったんだが・・・血気盛んな若手悪魔を一緒にしたとたんこの様だ」

 

サイラオーグさんが俺の隣に立ち、そう言ってきた。

 

さて、どうするかな。

 

どのみち、あの二人のケンカは止めないといけないだろうし・・・・

 

俺がいくか。

 

俺が仲裁に入ろうと一歩前に出るとサイラオーグさんに肩を掴まれた。

 

「ここは俺がいこう。ここで間に入るのも大王家次期当主の仕事だ」

 

そう言うとあの睨み合う二人の元へと歩を進める。

 

「アガレス家の姫シーグヴァイラ、グラシャラボラス家の問題児ゼファードル。これ以上やるなら、俺が相手をする。これは最後通告だ」

 

サイラオーグさんからピリピリと物凄いプレッシャーが放たれる!

 

おいおい、本当に部長と同世代か!?

 

 

「誰が問題児だ! バアル家の無能が!」

 

ヤンキーがサイラオーグさんに殴りかかろうと―――

 

ドゴンッ!

 

激しい打撃音と共にヤンキーは広間の壁に叩きつけられた。

 

 

まぁ、当然の結果か・・・・

 

よく殴りかかったな、あのヤンキー。

 

「言ったはずだ。最後通告だと」

 

「おのれ!」

 

「バアル家め!」

 

迫力のあるサイラオーグさんの言葉にヤンキーの眷属悪魔が飛び出しそうになる。

 

「これから大事な行事が始まるんだ。まずは主を回復させろ」

 

『ッ!』

 

その一言にヤンキーの眷属たちは動きを止めて、倒れる主の元へと駆け寄っていった。

 

 

 

「イッセーの目には彼のこと、どう映ったのかしら?」

 

部長が聞いてきた。

 

彼というのはサイラオーグさんのことだ。

 

俺は正直に答える。

 

「いやー、かなり強いと思いますよ。・・・・・部長、とんでもない人がライバルになりましたね」

 

俺の言葉に部長は苦笑するだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

現在、会長達も到着し、ヤンキーを抜いた若手悪魔が修復された広間で顔合わせをしている。

 

「私はシーグヴァイラ・アガレス。大公アガレス家の次期当主です。先程はお見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

 

と、先程のメガネのお姉さん、シーグヴァイラさんがあいさつをくれた。

 

この人が大公の次期当主なのか。

 

確か、大公って魔王の代わりに俺達に命を下すのが仕事だったな。

 

まぁ、今はそれ以外の仕事もしているようだけど。

 

 

「ごきげんよう。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」

 

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

 

「俺はサイラオーグ・バアル。大王、バアル家の次期当主だ」

 

「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さん、よろしく」

 

シーグヴァイラさんに続き、主達があいさつをしていく。

 

ちなみに俺達、眷属悪魔は主の後ろで待機している感じだ。

 

えっと、さっきのヤンキーも次期当主なんだよな?

 

あんなのが次期当主で良いのか?

 

「グラシャラボラス家は先日、お家騒動があってな。次期当主とされていた者が不慮の事故で亡くなったそうだ。先程のゼファードルは新たな次期当主候補となる」

 

サイラオーグさんが説明してくれた。

 

マジか。

 

グラシャラボラス家は今、大変なことになっているんだな。

 

でも、流石にあれは酷いんじゃないのか?

 

こう思っているのは俺だけではない・・・・はず。

 

 

それにしても、すごい面子が揃ったな。

 

グレモリーがルシファー、シトリーがレヴィアタン、アスタロトがベルゼブブ、グラシャラボラスがアスモデウス、そして大王と大公。

 

ドリームメンバーって感じだな。

 

 

「兵藤。おまえ、緊張してないのか?」

 

匙が聞いてきた。

 

「いや、全く。それよりも俺は朝から悪魔の勉強してたから少し眠いくらいだ」

 

「おいおい・・・・それは流石にマズいんじゃないか? あくびとか絶対にするなよ?」

 

「分かってる。だから今、必死に自分と戦っているんだ」

 

「・・・・負けるなよ」

 

うん。

 

俺、頑張る。

 

俺はやれば出来る子だからな!

 

 

扉が開かれ、使用人が入ってきた。

 

「皆様、大変長らくお待ちいただきました。皆様がお待ちです」

 

どうやら行事の準備が整ったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが案内されたところは異様な雰囲気の会場だった。

 

俺達眷属悪魔は主を先頭にして一列に並んでいる状態だ。

 

俺たちが立っている斜め上の方に席がいくつも並んでおり、そこには上級悪魔と思われる初老の男性が数人座っている。

 

さらにその上、一番上の席にはサーゼクスさん、セラフォルーさん、アジュカさん、それからもう一人、魔王らしき人が座っている。

 

たぶんあの人が魔王アスモデウスだ。

 

アクビしてるよ、あの人・・・・

 

うーん、こうして改めて見てみると今の四大魔王様は全員かなり若いよな。

 

少し歳上のお兄さんとお姉さんにしか見えない。

 

 

 

お偉いさんの一人が威圧的な声音で話し始めた。

 

「よくぞ集まってくれた、次世代を若き悪魔たちよ。この場を設けたのは一度、この顔合わせで互いの存在の確認、更には将来を競う者の存在を認知するためだ」

 

「まぁ、早速やってくれたようだがな」

 

老人風の悪魔がそう言った後、その隣の年老いた悪魔が皮肉を言う。

 

まぁ、これは言われても仕方がないね。

 

顔合わせした直後に広間を破壊とか、流石にあれは・・・・。

 

 

サーゼクスさんが口を開く。

 

「君たちは家柄も実力も共に申し分ない。だからこそ、デビュー前に互いに競い合い、力を高めてもらいたいと考えている」

 

するとその時、サイラオーグさんが挙手をした。

 

「我々、若手悪魔もいずれは禍の団との戦に投入されるのでしょうか?」

 

これまた直球な質問だな。

 

すごいことを聞くもんだ。

 

「私達としては、できるだけ君たちを戦に巻き込みたくはないと思っている」

 

サーゼクスさんはそう答える。

 

だけど、サイラオーグさんはその答えに納得がいかないようだ。

 

「なぜです? この場にはテロ組織と戦い、生きて帰った者達もいます。我らとて悪魔の一端を担うもの。冥界のため、尽力を尽くしたいと―――」

 

「サイラオーグ。君のその勇気は認めよう。しかし、無謀だ。なにより、君達ほどの有望な若手を失うのは冥界にとって大きな損失となるだろう。理解してほしい。君達は我々にとって宝なのだ。だからこそ、じっくりと段階を踏んで成長してほしいと思っている」

 

この言葉にサイラオーグさんは「分かりました」と渋々ながら一応の納得はしたようだ。

 

 

 

 

 

 

その後、お偉いさん達の難しい話や魔王様からの今後のゲームについての話が続いた。

 

正直、悪魔歴の浅い俺にとってはちんぷんかんぷんな話ばかりだった。

 

特にお偉いさんの話はよく分からないことばかりで、何度アクビが出そうなのを堪えたことか。

 

「さて、長話に付き合わせてしまって申し訳なかった。なに、それだけ君達に夢を見ているのだよ。最後に君たちの目標を聞かせてくれないだろうか?」

 

サーゼクスさんの問いかけに最初に答えたのはサイラオーグさん。

 

「俺は魔王になることが夢です」

 

いきなり、言い切ったな!

 

凄いよ、この人。

 

お偉いさん達も今の目標に感嘆の声を漏らしている。

 

「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」

 

お偉いさんの一人がそう言う。

 

「俺が魔王になるに相応しいと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」

 

また言い切ったな!

 

やっぱり、凄いよ。

 

 

サーゼクスさん。

 

あなたは以前、俺に魔王にならないか?と聞いてきたけど、俺なんかよりもこういう目標を持った人の方が魔王に向いてると思いますよ。

 

 

次に部長が答える。

 

「私はグレモリーの次期当主として生き、レーティングゲームの覇者となる。それが現在の、近い未来の目標ですわ」

 

初めて耳にしたけど、部長らしい答えだ。

 

部長がそれを望むのなら眷属である俺達はそれを支えるまでだ。

 

 

その後も若手の人が目標を口にし、最後にソーナ会長の番が回ってきた。

 

 

「私の目標は冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」

 

へぇ、ソーナ会長は学校を建てたいのか!

 

いい夢じゃないか。

 

と、俺は感心していたのだが、お偉いさんたちは眉をひそめていた。

 

「レーティングゲームを学ぶ学校ならば、すでにあるはずだが?」

 

「それは上級悪魔や特例の悪魔のための学校です。私が建てたいのは平民、下級悪魔、転生悪魔、全ての悪魔が平等に学ぶことのできる学校です」

 

おお!

 

流石は会長だ!

 

差別のない学校。

 

これからの冥界にとっていい場所になるんじゃないかな。

 

匙も誇らしげに会長の夢を聞き入っている。

 

 

しかし―――

 

 

『ハハハハハハハハハハッ!!』

 

お偉いさん達はまるで可笑しなものを聞いたかのように笑う。

 

俺は意味が分からなかった。

 

なんで、笑うんだよ?

 

「なるほど! 夢見る乙女と言うわけですな! これは傑作だ!」

 

「若いというのは実に良い! しかし、シトリー家の次期当主よ、ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったというものだ」

 

なんで、会長の夢がバカにされてるんだよ?

 

「いまの冥界が変革の時であっても、上級や下級といった差別は存在する。それが当たり前だと思っている者も多いんだ」

 

木場が淡々と口にした。

 

 

なるほど・・・・・

 

つまり、このお偉いさん達はそれが当たり前だと考えているから、会長の夢を否定するってことか。

 

 

 

なんだろうな。

 

これには俺も怒りが沸いてきたぞ・・・・ッ。

 

 

「私は本気です」

 

会長が正面からそう言うが、お偉いさんは冷徹な言葉を口にする。

 

「ソーナ・シトリー殿。そのような施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰すことになりますぞ? いくら悪魔の世界が変革期に入っているとは言え、たかだか下級悪魔に教えるなどと・・・・」

 

その一言に俺よりも早く黙っていられなくなったのは匙だった。

 

「なんで・・・・なんでソーナ様の夢をバカにするんですか!? こんなのおかしいっすよ! 叶えられないなんて決まった訳じゃないじゃないですか!」

 

「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ・シトリー殿、躾がなっておりませんぞ」

 

「・・・・申し訳ございません。後で言い聞かせます」

 

会長は表情を一切変えずに言うが、匙は納得出来ていない。

 

「会長! どうしてですか!? この人達は会長の、俺たちの夢をバカにしたんすよ! どうして黙ってるんですか!?」

 

匙のその叫びを聞いてお偉いさんはフンと鼻を鳴らす。

 

「全く、主も主なら下僕も下僕か・・・・。これだから人間の転生悪魔は」

 

 

 

ああ、とことん腐ってるなこいつら・・・・。

 

部長、すいません。

 

俺は心のなかで謝ってから、一歩前に出る。

 

 

「あんた達に人の夢を否定する権利があるのかよ?」

 

俺の一言に視線が匙から俺に集まる。

 

「誰が貴様の発言を認めた? リアス・ グレモリー殿もどうやら下僕の躾がなっていないようだ」

 

「そんなものはどうでも良い。聞いてるのはこっちだぜ。・・・・もう一度聞く。あんたらに会長の夢を否定する権利があるのか?」

 

俺の言葉にお偉いさんの一人が怒りの形相で怒鳴る。

 

「立場をわきまえろ、若僧! 貴様、何様のつもりだ! 消されたいか!」

 

「やれるもんならやってみろよ。その代わり、あんたにもそれなりの覚悟はしてもらうぜ?」

 

俺から発せられるオーラが会場を覆いつくす。

 

そして、俺の背後にオーラが集まり、赤い龍が姿を現した。

 

オーラで形成された赤い龍の目が光り、お偉いさん共を睨み付ける。

 

「こ、これは・・・・!?」

 

驚愕するお偉いさんに俺は告げる。

 

「いいか? 俺は別にあんた達とやり合いたい訳じゃないし、謀反とかそんなものを起こす気もない。・・・・ただし、俺の仲間をこれ以上バカにするのなら容赦はしない。よく覚えておけ」

 

「そうよそうよ! おじ様たちはよってたかってソーナちゃんを苛めるんだもの!! 私だって我慢の限界があるのよ!これ以上言うなら、私も赤龍帝君と一緒におじさま達を苛めちゃうんだから!」

 

セラフォルーさんが涙目で俺に続く。

 

しかも、その身からは凄まじい魔力を発している。

 

まぁ、セラフォルーさんはソーナ会長を溺愛してるから、ブチ切れるのは当然か。

 

下からは俺、上からはセラフォルーさんに睨み付けられ、お偉いさんさん達はタジタジだ。

 

 

 

すると、サーゼクスさんが間に入る。

 

「セラフォルー、イッセー君。気持ちは分かるが落ち着きたまえ。皆さま方も若者の夢を潰さないでいただきたい。どんな夢であれ、それは彼らのこれからの動力源になるのですから」

 

サーゼクスさんの言葉に俺とセラフォルーさんはオーラを発するのを止め、お偉いさん達も「・・・すまなかった」とソーナ会長に詫びた。

 

 

「そうだ! ソーナちゃんがレーティングゲームに勝てばいいのよ! ゲームで好成績を残せば叶えられることも多いもん!!」

 

「それはいい考えだ」

 

セラフォルーさんの提案にサーゼクスさんは感心したような表情を浮かべ、俺達に提案してきた。

 

「リアス、ソーナ。二人でゲームをしてみないか?」

 

そうきたか!

 

これは予想外だ!

 

部長も会長も顔を見合せ、目をパチクリさせている。

 

「もともと、近日中に君達、若手悪魔のゲームをする予定だったのだよ。アザゼルが各勢力のレーティングゲームのファンを集めてデビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったからね」

 

マジか!

 

グレモリー眷属の初戦の相手がシトリー眷属かよ!

 

駒王学園に通う悪魔同士の対決じゃねえか!

 

 

部長は挑戦的な笑みを浮かべ、会長も冷笑を浮かべる。

 

「公式ではないとはいえ、はじめてのレーティングゲームがあなただなんて運命を感じますね、リアス」

 

「そうね。でも、やるからには絶対に負けないわよ、ソーナ」

 

おお!

 

さっそく火花を散らせてるよ!

 

二人ともやる気満々だな!

 

「リアスちゃんとソーナちゃんの試合! 燃えてきたかも!」

 

セラフォルーさんも楽しげだ!

 

「対戦の日取りは人間界の時間で八月二十日。それまでは各自好きなように過ごしてくれてかまわない。詳しいことは後日送信しよう」

 

サーゼクスさんの決定により、部長と会長のレーティングゲームの開催が決まった!

 

 

 




次回は修業に入ります!

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