1話 夏休みが始まります!!
三大勢力の和平から二日ほどが経ち、夏休みとなった。
そんな日の早朝。
俺は違和感を感じて起床した。
下半身に妙な感触があったんだ。
さっきから何やら気持ちが良い。
なんだ?
タオルケットの中で動く何かは徐々に胸のところまで上がって来て―――
「とーちゃく♪」
長い黒髪の美少女、朱乃さんが現れたぁぁぁぁ!!
しかも、裸!
おっぱいやら太ももやらが俺の体に当たって、その柔らかい感触が伝わってくる!
朱乃さんの体は極上に柔らかい!
「うふふ、イッセー君は朝から元気一杯ですわね。朝からあんなに大きくなってるんですもの」
朱乃さんが頬をほんのり赤く染めながら言ってきた。
大きくなって・・・・?
ま、まさか・・・・!
「あ、朱乃さん、み、見たんですか・・・・?」
「服の上からですが・・・・」
ウソッ!?
直では無いとはいえ、大きくなってるところを見られてしまった!
最悪だ!
「あらあら、そんなに恥ずかしがることはありませんわ。男の子ですもの」
朱乃さん!
慰めになってませんよ!?
朱乃さんが細い指先を俺の体に這わせる。
「イッセー君の体って、やっぱりたくましいわ。それに男性の肌って思っていたより気持ちが良いのね。イッセー君だからかしら? イッセー君、私の体はどうかしら?」
「は、はい! 最高です!」
「うれしい。私の体、もっと楽しんでくれても良いのですよ? 隣に人がいるけど、気づかれないようにこっそりするのもいいのかしらね」
ブッ
鼻血が出てきた。
朱乃さん、エロ過ぎる!
この人、俺よりもエロいんじゃないのかと時折思えてくるよ!
朱乃さんが少しだけ身を起こして俺に覆い被さると、まっすぐ俺を見下ろしてきた。
「ねぇ、このまま私と・・・・」
朱乃さんの顔がどんどん近づいてくる。
こ、これはまさか!
俺のすぐ横では美羽や部長、アーシアが寝息をたてている。
こんな中でしちゃうんですか!?
俺の理性がそう叫ぶ!
だが、しかし!
それに逆らえないのは男の性か!
俺はそのまま朱乃さんを受け入れ―――
「朱乃、何をしているのかしら?」
隣から声が聞こえ、恐る恐る視線をそちらに向けてみる。
そこには怒りのオーラを纏った部長がいた!
こ、怖い!
リアスお姉さま、怖いっす!
そんな部長を見て朱乃さんが部長に見せつけるように俺に抱きついてくる。
「スキンシップですわ。私のかわいいイッセー君と素敵な朝を始めるつもりですの」
朱乃さんの一言に部長の機嫌が一気に悪くなる!
全身を震わせながら部長は言う。
「『私』の? あなた、いつの間にイッセーの主になったのかしら?」
「主でなくても先輩ですわ。後輩を可愛がるのも先輩のつとめですわ」
「先輩・・・・そう、そうくるわけね。・・・・ここは私にとって聖域なの。アーシアや美羽ならともかく、他の者まで入れるわけにはいかないわ! ここは私とイッセーの部屋よ」
俺の部屋、いつの間に部長と兼用になりましたか!?
初耳だよ!
「あらあら。リアスお嬢様は独占欲が強いですわね。・・・・私に取られるのが怖いのかしら?」
「・・・・・あなたとは話し合う必要があるようね」
部長のオーラが膨れ上がる!
朱乃さんも黄金のオーラを纏い始めたよ!
二人のオーラがぶつかりあい、バチバチと音をたてる。
おいいいいいっ!
朝から何してるんですか!?
原因は俺ですか!?
俺にあるんですか!?
つーか、アーシアも美羽も起きようよ!
よくこの状況で眠れるな!
起こすか!?
いや、二人の寝顔が可愛すぎて起こせねぇ!
ぼふっ! ぼふっ!
音がする方へ振り向けば、二人のお姉さまが枕投げて合戦が始まっている!
本当に朝から何してるんですか!?
「だいたい、朱乃は私の大事なものに触れようとするから嫌なのよ!」
「ちょっとぐらい良いじゃない! リアスは本当にケチだわ!」
「この家だって、改築したばかりなのに、朱乃の好き勝手にはさせないんだから!」
「サーゼクス様だって仲良く暮らしなさいとおっしゃってたじゃない!」
「お兄様も朱乃も私の邪魔ばかりするんだもの! もういや!」
「サーゼクス様のご意向を無視する気なの!? 私にもイッセー君を貸しなさいよ!」
「絶対に嫌よ!」
おおう!?
いつものお姉さま口調が無くなって、年頃の女の子みたいなケンカになってますよ!?
うーん。
二人とも普段はお姉さまとして高貴な雰囲気を出してるけど、素は年頃の女の子なんだなぁ。
俺がそんな風にしみじみ思っていると二人の口ゲンカは更にヒートアップする。
「そんなこと言うわりには、未だにイッセー君と何もないじゃない! そんなことだから、あなたは処女なのよ! ○×△すらも出来ないくせに!」
「あなただって処女じゃない! 私だって×△□くらい出来るわよ!」
あー、プールの時と同じ流れだ・・・・
俺を取り合ってくれるのは、うれしいけど、ここまで激しいと困っちゃうぜ。
・・・・ん?
ちょっと待て。
俺は部長達の口ゲンカの内容を思い出す。
家を改築・・・・?
そういえば、ベッドがやたらと大きい・・・・。
今、俺を含めて5人がいるけど、まだまだ余裕がある。
上を見上げると天蓋まで着いてる!?
部屋もかなり広くなってる!
以前の三倍、いや五倍はあるぞ!?
テレビも最新の薄型に変わってるし、ゲーム機も最新のものに!?
知らねぇぇぇぇ!
こんな部屋知らねぇぇぇぇえ!
俺は急いで部屋を出た!
家の中が昨日とは別物だ!
廊下も倍くらいの幅になってる!
ここどこ!?
まるで、高級ホテルじゃないか!(テレビでしか見たことないけど)
階段を駆け下りながら、昨日のことを思い出す。
えーと、昨日はオカ研女子部員が引っ越してきたんだ。
それで、やっぱり家が狭いから改築するとか言ってたけど・・・・・
まさか、俺が寝てる間に!?
玄関を飛び出て、外から家の全容を見た。
「こ、これは・・・・・!」
俺の家は倍以上敷地に加えて、六階建てになっていた。
「なんじゃこりゃぁああああああああっ!?」
▽
「いやー、悪魔の力って凄いんだな。寝てるあいだにリフォームされるとは」
朝食の席。
以前の五倍は広くなった食卓で父さんが感心しながら部屋を見渡す。
食卓の席には俺、俺の両親、美羽、部長、アーシア、朱乃さん、ゼノヴィア、小猫ちゃん、レイナが集合していた。
俺も父さんに同意する。
悪魔の力って凄いんだな・・・・。
まさか、朝からとんでもないビフォーアフターを見れるとは思わなかったよ。
匠もビックリだ。
部長が父さんに頭を下げる。
「お父様、お母様、部員の皆を受け入れて下さり、本当にありがとうございます」
「いいのよ、リアスさん。私達も家庭が賑やかになって嬉しいもの。部員の皆さんも私達のことを本当の家族だと思って接してくださいね?」
母さんの言葉に部員全員が頷いた。
父さんも母さんも三大勢力のことはすでに知っていて、和平が成立した時は自分のことのように喜んでいた。
だから、ここに堕天使のレイナがいても驚いてないんだ。
そういえば、ここには悪魔と堕天使がいるけど、天使も住むことになるのかな?
まぁ、父さんも母さんもこの性格だから受け入れるとは思うけどね。
母さんが家の図面を持ってくる。
「一階は客間とリビング、キッチン、和室。二階はイッセーと美羽とリアスさんにアーシアちゃんのお部屋。三階は私とお父さんの部屋と書斎、物置など。四階は朱乃さんとゼノヴィアちゃん、小猫ちゃん、レイナちゃんのお部屋ね」
部員全員が各部屋を持ってる訳か。
いったい何部屋あるんだ?
この部屋もシャンデリアや巨大テレビまで置いてるし。
母さんが部屋割りの説明を続ける。
「五階と六階は空き部屋ね。今のところはゲストルームや会議室にするつもりよ。悪魔の仕事とかで使うんでしょう?」
「はい。今後、ミーティングなどに使用する予定ですわ」
「その時は私もお茶を用意したりするから、遠慮なく言ってね」
「ありがとうございます、お母様」
・・・・母さん、悪魔の仕事の方にも気を使うようになったのな。
ここまでくると流石としか言いようがないな・・・・
この後も部屋割りの説明が続いた。
分かったことはこの家は地上六階、地下三階の九階建ての豪邸になっていたということ。
エレベーターだけでなくシアター、トレーニングルーム、屋内プール、大浴場まで備わっていた。
やっぱ、悪魔の力ってすげぇ・・・・・。
「あ、そういえば、ティアさんもここに住む予定よ」
「ええええええええ!?」
母さんの言葉に俺は本日二度目の絶叫をあげた。
▽
「冥界に帰る?」
朝食を終えて部屋でまったりしていると部長に言われたんだ。
ちなみに今までの数倍にまで大きくなった俺の部屋には木場やギャスパーも来ているのでオカ研のメンバー全員が集まっている状況だ。
「ええ、そうなの。毎年、夏には冥界に帰っているのよ」
なるほど。
じゃあ、今年の夏休みはどうしようか。
今のところ何の予定も入ってないんだよなぁ。
「美羽は何か予定入れてるのか?」
「特には無いよ。宿題やって、あとはまったりするくらいかなぁ」
「あ、俺と同じか。松田と元浜に海に誘われてるけどどうする?」
「海かぁ。それもいいね」
俺と美羽がそんな会話をしていると、部長が苦笑しながら言う。
「悪いけど、イッセーにはついてきてもらうわ。というより、冥界に帰るときは眷属の皆にはついてきてもらうことになっているのよ」
あ、マジですか・・・・
まぁ、よくよく考えれば下僕が主についていくのは当然と言えば当然か。
と、なると松田達の誘いは断らないといけないのか・・・・。
後でメールしておこう。
オカ研悪魔メンバーは冥界行きか。
あれ?
じゃあ、レイナはどうするんだろう?
「レイナはどうするんだ? 俺達と一緒に冥界に行くのか?」
「私? 残念だけど、私はこの町で仕事があるから冥界へは行けないの」
「仕事?」
「えっと、私が総督の秘書的な仕事を任されていることは前に話したよね?」
「あー、そういえば、そんなことを言っていたような・・・」
あれはアザゼル先生が自分の正体を俺に明かした時だっけ?
あの時のレイナは印象的だったなぁ。
「私、それ以外にもグリゴリの外交局の副長をしているのよ。代理だけどね」
レイナの言葉に全員が驚く。
「この町は三大勢力にとって重要拠点になったでしょ? それで、私も外交官として悪魔側の人や天使側の人と話し合いをしないといけないのよ。この町のセキュリティとか他にも色々」
・・・・レイナちゃんは優秀な娘だった。
堕天使総督の秘書を任されるだけあって優秀なんだなぁ、とは思ってたんだけど、ここまでだったとは。
「話し合いのことは知っていたけど、堕天使側の使者がレイナだったなんて知らなかったわ・・・・」
「ははは・・・・。まぁ、代理なんですけどね。本来の副長は忙しすぎて倒れちゃったから・・・・」
レイナが苦笑いしながら答える。
おいおい・・・・。
もしかして、その副長って病院に行ったという人達のうちの一人なんじゃ・・・・。
「冥界かぁ」
美羽がそう呟いた。
まぁ、悪魔じゃない美羽が冥界に行くことなんて基本的にはないからな。
一度行ってみたいのだろう。
「美羽も予定がないのなら一緒に来る?」
「いいんですか、リアスさん?」
「ええ、若手悪魔の会合には参加できないけれど、冥界の観光くらいなら大丈夫でしょう」
ん?
なんか部長が気になる単語を口にしたな。
「部長、若手悪魔の会合って?」
「今回の里帰りはただの里帰りではないの。お兄様の提案で次世代の冥界を担う若い悪魔の交流会が開かれることになったのよ。私もグレモリーの次期当主として参加しなければならないのよ」
なるほど。
確かに、そんなところに悪魔じゃない美羽がいれば違和感丸出しだろうなぁ。
観光でも町の人から注目を浴びそうな気もするけど・・・・
それはそうと、
「アザゼル先生は何しに来たんですか?」
「「「えっ?」」」
俺の一言に全員が振り向く。
そこには渋い色の和服を着た堕天使の総督兼オカ研顧問のアザゼル先生がいた。
手に紙袋を持ってるけど、あれは何だろう?
「ど、どこから、入ってきたの?」
部長が目をパチクリさせながらアザゼル先生に訊く
「うん? 普通に玄関からだが?」
「……気配すら感じませんでした」
木場がそう言葉を漏らす。
まぁ、今の木場達じゃあアザゼル先生の気配を捉えるのは難しいだろうな。
「そりゃ修行不足だ。俺は普通に来ただけだからな。イッセー、今日はご両親はいないのか?」
「父さんは仕事で母さんは買い物に行ってますよ」
「・・・・そうか。それはタイミングが悪かったな。一応挨拶をしとこうと思ったんだが・・・・」
「挨拶?」
「ああ。受け持った生徒が世話になるんだ。挨拶くらいするさ。とくにここの家族には三大勢力のことで迷惑をかけるかもしれんしな」
アザゼル先生の言葉に全員が「へぇ」と感心していた。
この人、以外とこういうところはしっかりしてるんだな。
俺達のこの反応にアザゼル先生は目元をひくつかせる。
「・・・・おまえら、なんか失礼なことを考えてないか?」
俺達は苦笑いしながら首をブンブンと横に振る。
そんなこと考えてませんよ。
いや、本当。
「ところでその紙袋は?」
「おー、そうだった。良い地酒が手に入ったんでな。イッセーのご両親に渡そうかと持ってきたんだった。渡しといてもらえるか?」
「あ、はい」
俺はアザゼル先生から紙袋を受けとる。
二本も入ってる。
うーん。
ここまでしてくれると、逆に申し訳ないような気がするよ。
▽
「それよりも冥界に帰るんだろう? なら、俺も行くぜ。なにせ、俺はお前らの『先生』だからな」
アザゼル先生はそう言うと、懐から手帳を取り出してパラパラとページを捲っていく。
「冥界でのスケジュールはリアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介。例の若手悪魔達の会合、それとあっちでお前らの修業だ。俺は主に修業に付き合う訳だがな。お前らがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクス達と会合か、ったく、面倒くさいもんだ」
本気で面倒くさそうだな。
この姿だけを見ていると部下からの信頼が厚いなんて思えないよなぁ。
部長がアザゼル先生に言う。
「ではアザゼル―――先生はあちらまで同行するのね? 行きの予約をこちらでしておいていいのかしら?」
「手間かけさせて悪いな、よろしく頼む。しかし、悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだ。楽しみだぜ。いつもは堕天使側のルートだからな」
冥界かー。
以前行ったのは悪魔に転生してぶっ倒れたときだったな。
確かあの時は魔法陣で行ったっけ。
今回も魔法陣?
▽
とりあえず、松田と元浜にメールをしておいた。
『俺と美羽は、海行くのはパスな! 部長達と旅行に行ってくるぜ!』
と送ったところ・・・・・
『死ね! 地獄に堕ちろ!』
『せめて、美羽ちゃんだけでも!』
おまえらなんぞに可愛い妹を預けてたまるか!