ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

408 / 421
68話 降臨! 超フルパワーおっぱいドラゴン!

[アザゼル side]

 

 

「ちぃっ!」

 

眷獣から吐き出された火炎を防御魔法陣で受けながら、光の槍を投擲する。

光の槍は眷獣の肩を貫くが………大して効いてはいないな。

アスト・アーデでもそうだったが、こいつらは完全消滅させなければ倒れない。

よくもまぁ、これだけ面倒な奴等を量産してくれたもんだな。

おかげで部下達の疲労も溜まってきている。

中には過去の大戦を生き抜いた実力者もいるが………かなり厳しい状態だ。

 

「ヤバいやつは後ろに回れ! 回復しつつ、支援攻撃をしろ!」

 

そう指示を出す俺だが、正直いつまでもつのか分からない。

サーゼクス達も今は手が離させないようで、こちらには加勢できない。

ここを突破されるのも時間の問題だろう。

 

各神話の神々がアセムと攻防戦を繰り広げているが、ハッキリ言って押されている。

アセムの放つ大規模かつ凶悪な魔法は神々の魔法すら打ち砕き一帯を焦土へ変える。

肉弾戦となれば、神速を越えた拳で一軍を蹴散らしてしまう。

 

向こうは神クラスをも容易く屠る力を持っているに対し、こちらはトライヘキサを取り込んだアセムに有効な攻撃手段を持っていない。

化け物め………。

あんなやつをどうしろってんだ?

 

いや、希望はある。

リーシャが言っていた策だ。

トライヘキサを捕縛用に開発した術式を改造し、トライヘキサとアセムの繋がりを断つというものだ。

確かにそれが可能なら相手の大幅な弱体化を見込むことが出来る………が、効果時間にはあまり期待できない。

その僅かな時間でアセムを止められるかと問われると、恐らく無理だ。

 

となるとだ、イグニスが提唱した『超フルパワーおっぱいドラゴン』とやらを待つしかない。

あの女神は言うことやること無茶苦茶ではあるが、結果を出している。

もうそこに賭けるしかない………ないのだが………。

 

俺は後ろにある光の柱を見る。

あれはイッセー達が立っていた魔法陣から放たれた光だ。

イッセー達があの魔法陣の光に包まれてから………一時間以上が経過している。

 

「………長すぎやしないか?」

 

俺は光の槍を投げながらそう呟いた。

 

いくらなんでも長すぎじゃないだろうか?

乳を吸うだけじゃなかったのか?

乳の宴とやらに参加したメンバーはそれなりの数がいたが、乳を吸うのに一時間は長すぎだろう。

 

あれか、中でハッスルしているのか?

乳だけじゃ満足出来なくなったのか?

もしくは、イッセーが中で搾り取られてるんじゃあるまいな?

 

もし、そうだとしたら怒るぞ?

温厚な俺でもマジで怒るぞ?

 

まぁ、俺もイッセーに乳を吸えと言ったから、あまり強くは言えないが………。

正直、ノリノリだったからな。

 

近くにいた眷獣が細切れにされる。

そこでは紅のコートを纏った木場が一人で複数の眷獣を相手取っているのが見えた。

木場の周囲にはドラゴンの兜を持つ紅色の甲冑騎士達が眷獣に斬りかかっている。

 

一体の龍騎士が破壊されると、破壊した眷獣は氷付けにされる。

破壊された龍騎士は再び創造され、先程とは違った動きで眷獣に仕掛けていく。

その繰り返しだ。

 

あれが『聖剣創造』の第二階層。

モーリスから話は聞いていたが、かなりの代物だ。

単純に言えば、禁手の強化型になるのだろうが、強化の度合いが恐ろしいレベルで高い。

 

あれでも尋常ではないが、木場はそこから神器の融合まで果たしたと聞く。

『魔剣創造』と『聖剣創造』。

相反する能力を持つ二つの神器を同時に発動し、更に高い力を発揮する………か。

 

こいつは新規神滅具確定じゃないだろうか?

ギャスパーの神器『停止世界の邪眼』も新規神滅具として認定するか協議中だが、ほぼ確定みたいなものだ。

 

木場の所有する神器はどちらも所有者が思い描く魔剣、聖剣を創造するというものだが、この戦いにおいては、創造可能な範囲が異常なまでに拡大されている。

創造された剣の性能も伝説の聖剣、魔剣クラス。

加えて、木場自身の身体能力も大幅アップときたもんだ。

 

フフフフ………これは楽しくなってきたな。

神器研究者としてはじっくり調べてみたいもんだぜ。

こんなことを考えられる俺はそれなりに余裕があるってことなのかね?

 

「面白いものを見つけたという顔だな」

 

そう声をかけてきたのはヴァーリだった。

ヴァーリは魔王化の鎧から通常の鎧に戻り、戦っているようだ。

 

「チームの奴らはどうした?」

 

「向こうで暴れているさ」

 

ヴァーリの視線の先では美猴達が眷獣相手に大暴れしていた。

特に目を引くのは―――――フェンリル。

十メートルほどの大狼が凄まじいスピードで戦場を駆け抜け、神殺しとされる牙と爪で敵を悉く斬り裂き、砕いている。

フェンリルの牙と爪は眷獣にも大きなダメージを与えているようで、傷口の回復が遅くなっている。

どうやら、こいつらに神殺しの力は有効らしい。

 

他にもアーサー、黒歌、美猴、ルフェイ、それからゴグマゴグが互いに連携を取って、目の前の敵を蹴散らしている。

ヴァーリチームは流石の戦いぶりだな。

 

俺はヴァーリに問う。

 

「激戦真っ只中のチームメンバーを置いて、一人で何をしに来たんだ?」

 

「こちらが押されているようだったからね。人手が足りてないんだろう? あんたに死なれては楽しみが減る」

 

確かに、俺がいるこの場所は押され気味ではある。

こちらで上位種の眷獣に対して一人で当たれるのは俺を除けば木場、モーリス、ストラーダの三名。

他の『D×D』メンバーは別の場所で力を振るっているだろうが………イッセーやリアスがいない今、この場の戦力はがた落ちも良いところだ。

 

正直、ヴァーリ一人が来るだけでもかなりマシになるだろう。

 

「そりゃ、ありがたいことで」

 

俺が礼を言うとヴァーリはフッと軽く笑んだ。

 

ヴァーリは視線を後ろで輝く光の柱に向けると訊いてくる。

 

「兵藤一誠はまだ出てこないのか?」

 

「………それなんだよな」

 

こんな会話をしている間に出てこないかと思ったんだが、まだ出てこない。

あいつら、マジで何をしてるんだ?

 

頼むから、出てきてくれ。

さっさと無敵のおっぱいパワーで蹴散らしてくれよ………。

 

そう切に願った時だった。

 

 

ドォォォォォォォォォォォォォンッッッッ

 

 

突然、大地が激しく揺れた!

凄まじい衝撃波が俺達を襲い、辺りを吹き飛ばしていく!

 

なんだ………!?

何が起きた………!?

 

土煙が舞い上がり、周囲が焦げ茶色に染まる。

そして、その数秒後―――――濃密な瘴気が一帯を覆った。

 

「この瘴気は………! トライヘキサと同じものだと………!?」

 

ヴァーリが驚愕の声をあげた。

 

確かに一帯を満たすこの瘴気はトライヘキサのそれだ。

だが、どういうことだ?

なぜ、トライヘキサの気配がアセム以外にもあるんだ?

 

いや、待てよ。

もし、吸収したトライヘキサを再び顕現出来るとすればどうだ?

トライヘキサは首の数だけ分裂が可能だった。

その能力を吸収した今でも使えるとしたら―――――。

 

土煙の向こうに巨大な影が映り込む。

煙が薄まると、そいつは姿を現した。

 

『ゴァァァァァァァァァァァッッッ!!!!』

 

天地を揺らす獣の咆哮!

俺達の前に出現したトライヘキサの分裂体!

黙示録の獣が再び立ち塞がろうというのか!

 

ちくしょう、嫌な予感が当たっちまった………!

アセムの方を見ると、七つあった尾の内、三つが無くなっている。

つまり、ここ以外にトライヘキサの分裂体が二体も現れているということだ。

 

アセムが神々を吹き飛ばしながら笑みを見せた。

 

『これで君達は戦力を更に分散せざるを得ない。さて、どうする?』

 

まるで、俺達を試すような言い方だな。

アセム自身、そこまで力が落ちているようには感じない。

俺が感じられる上限を超えているからかもしれないが………。

何にしても、この状況は不味すぎる!

 

「ヴァーリ、奴を止めるぞ!」

 

「異世界の神アセム、とことんまでやってくれるな………! 受けてたとうか!」

 

ヴァーリは再び、呪文を唱えると魔王化を果たす。

通常の禁手、白銀の鎧では倒しきれないと判断したからだろう。

とっくに俺を超えた力ではあるが、まだヴァーリは魔王化に慣れていない。

しかし、短時間で倒せるような甘い相手ではないのは明らかだ。

 

一足先に突撃したヴァーリの背中を見ながら俺は通信用の魔法陣を展開して、付近の戦士達に告げる。

 

「奴には生半可な攻撃は効かない! 実力の足りない奴は他の獣の相手に徹しろ! 下手に相手して無駄に命を散らすなよ!」

 

通信を終えた俺のところにバラキエルが飛んできた。

バラキエルが訊ねてくる。

 

「アザゼル、例の隔離結界は使えないのか? あれを使えばこの場をしのげるのではないか?」

 

「無理だ。あれはトライヘキサの動きを止めていることが前提に使うもの。発動しても取り込めなければ意味がない。それから、アセムの奴にこちらの策が漏れていた以上、奴もそこは理解しているはずだ。隔離結界に閉じ込めようとした瞬間に攻撃してくるか、再び自らに取り込もうとするだろうよ」

 

仮に隔離結界で出現した分裂体を閉じ込めることが出来たとしても、アセムの中にはまだトライヘキサが残っている。

一時的に状況はやり過ごせても、その後が苦しくなるだろう。

 

俺は舌打ちしながら、トライヘキサの分裂体への攻撃を仕掛けた。

 

 

[アザゼル side out]

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

状況は非常に厳しい段階に入っていた。

突如として現れたトライヘキサの分裂体。

アセムが取り込んだ力の一部を解放したと思われるそれは出現と同時に猛威を振るっている。

眷獣だけでもこちらは苦しい戦いだったのが、ここに来て絶望的なものへと変わり、戦線は瞬く間に崩れ始めた。

 

「木場さま、そこをお願いします!」

 

「分かりました!」

 

僕は今、ワルキュリアさんと組み、眷獣の討伐に当たっている。

ワルキュリアさんが特殊なワイヤーで足を止め、僕と龍騎士が再生できないレベルまで斬り刻む。

これで何体目か、もう数えるのも馬鹿らしくなるくらいの眷獣を倒してきたが………終わりが見えない。

 

アザゼル先生達がトライヘキサの分裂体の相手をしている間、そちらに眷属が行かないようにする。

それが僕達の役目だ。

 

「いい加減にしてもらいたいですね。私もそろそろ限界が近いのですが………」

 

肩を上下させるワルキュリアさん。

真正面から戦う力が弱い分、彼女はサポート役に徹してくれているが、やはり肉体が悲鳴をあげ始めたようだ。

 

僕もそろそろ、この第二階層を維持するのが辛くなっている。

この状態で、あと何度剣を振るえるか………。

 

僕は背中合わせのワルキュリアさんに問う。

 

「まだ武器はありますか?」

 

「一応は。しかし、かなりの数を使ってしまいました。散らばっているものを回収すればそれなりに戦えると思いますが、これまでのような戦いは難しくなります」

 

僕達の回りには彼女が使用した武器が散らばっている。

全て、メイド服の中から出来たものだけど………本当にその服はどうなっているのか聞きたくなる数だ。

しかし、今の話だとその武器も底を尽きかけているようだ。

 

「危なくなったら後ろに下がってください。ここであなたに何かあれば僕はイッセー君に顔向けできません」

 

「お気遣いは感謝します。ですが、それでは木場さまが危なくなります。あなたに何かあれば、私はリアスさまに顔向けできなくなってしまいます」

 

全く同じ台詞で返されてしまった。

参ったね、そう言われると、こちらは何も返せなくなってしまう。

 

剣を構えて、僕達を取り囲む眷獣と対峙する。

すると、彼らの足元が突然、黒く染まり、暗闇の中から伸ばされた手によって闇に引きずり込まれていった。

 

《祐斗先輩! 大丈夫ですか!》

 

「ギャスパー君! やっぱり今のは君だったんだね。ありがとう、助かったよ」

 

ここまでの間、ギャスパー君は闇の獣を量産しながら戦ってくれている。

また、闇の領域を広げ、眷獣を闇の中に引きずり込んで完全消滅させていた。

どんなにしぶとい眷獣でも今のギャスパー君に捕まればそれまでのようで、闇の中から這い出すことは叶わないようだった。

 

僕はギャスパー君に問う。

 

「ヴァレリーさんは?」

 

《ヴァレリーなら僕の中にいます。他の場所に置くよりは闇の力で守った方が確実ですから。それに、聖杯の力で負傷者の回復もしてくれています》

 

なるほど、アーシアさんがいない今、ヴァレリーさんがその役目を果たしていると。

恐らく、アザゼル先生の協力もあって、回復の力をこの短期間で身につけることが出来たのだろう。

しかし、

 

「ヴァレリーさんは目覚めてから間もない。あまり力を使わせてはいけないよ」

 

《分かっています。でも、ヴァレリーは皆のために力を使おうとする。だから―――――》

 

ギャスパー君の全身から闇が広がり、一帯を覆う。

闇の中には数百体の眷獣と眷獣と戦う味方の戦士達。

広がった闇の中から無数とも思える獣が現れ、闇の手が伸びてくる。

それらは一斉に眷獣に飛びかかり、肉を引き裂き、砕き、闇の中へと消し去ってしまう。

 

ギャスパー君は熱の籠った声音で言う。

 

《ヴァレリーが力を使わなくても良いように、僕がまとめて片付けてやる!》

 

この状況下でも勇ましく力を振るうギャスパー君。

巨大な闇の獣の姿で豪快に敵を殴り付けているが………動きに鋭さが欠けている。

 

「全員、その場から退避しろぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

聞こえてくる味方の声。

見れば、トライヘキサの分裂体が目の前まで迫っていた!

 

そんな………!

あれはアザゼル先生達が抑えているはずだ!

いや………これは違う。

 

「もう一体召喚したと言うのか!」

 

その証拠にアセムの尾が更に一本減っている。

戦況を見ながら、召喚の数を増やしたのだろう。

トライヘキサを召喚する分だけ、アセムの力は落ちると思うけど、今でも神々を片手であしらっているところを見ると、かなりの余裕があるらしい。

 

新たに召喚されたトライヘキサの分裂体が巨大な口を開き、火炎をチャージしていく。

常軌を逸した熱が眷獣と対峙している僕達へと向けられる。

ダメだ、あれは防ぎようがない………!

黙示録の獣が吐き出した炎が僕達を容赦なく襲う―――――。

 

 

 

 

「え………?」

 

 

 

誰かが間の抜けた声を漏らした。

何が起きたのか理解できていない、そんな声だ。

それもそうだろう、なにせ僕達を焼き尽くすはずの炎が、こちらに触れる直前に消えたのだから。

まるで、今の光景が幻だったかのように。

 

何が、起きたんだ………?

確かにトライヘキサの炎は存在した。

夢でも幻でもなかった。

あの炎は僕達を跡形もなく消し去るはずだった。

なのに、なぜ、僕はこうして生きている?

なぜ、炎は消えた?

 

いくつもの疑問が頭の中を駆け巡る中、眩い光が僕の隣を通り抜けた。

それは人の形をしていた。

光を人型にしたようなそれはゆっくりとトライヘキサの分裂体へと近づいていくと、手をかざし―――――分裂体を遥か彼方へと吹き飛ばした。

 

「なっ………!?」

 

あれだけの動作でトライヘキサを吹き飛ばした!?

そんな馬鹿なこと………神々ですら敵わない存在なのに………!

 

《イッセー先輩………?》

 

ギャスパー君が人型の光を見て、そう呟いた。

 

あれが、イッセー君なのか?

でも、僕達の後方ではまだあの光の柱が存在している。

リアス前部長や朱乃さんの姿も見えない。

 

人型の光に変化が訪れる。

表面の光が剥がれ、宙に消えていく―――――。

 

その瞬間、とてつもない熱気が一帯を支配した。

これはまるでイッセー君がイグニスさんを使用した時のような感覚。

気温が急激に上昇し、汗が噴き出してくる。

 

全身を覆っていた光が全て剥がれ消え、内側から姿を見せるのは彼だ。

姿を確認した瞬間に放たれる圧倒的なプレッシャー。

そして、この熱量。

 

彼の力を危険と判断したのか、周囲にいた眷獣達が一斉に襲い掛かる。

あんなものに数百体規模で飛び掛かられてはひとたまりもないだろう。

 

 

しかし―――――彼は片手を凪いだだけで、全ての眷獣を消し去ってしまった。

 

 

誰もが自らの目を疑っただろう。

僕達があれだけ苦戦していた存在をこうも簡単に消滅させてしまったのだから。

 

あれは………本当にイッセー君なのか?

姿はイッセー君だ。

しかし、少し前とはまるで別の存在――――――。

 

僕達が唾を飲み、様子を見守る中、彼は天を仰いだ。

そして―――――――

 

 

 

 

「おっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッッッ!!!!!!!」

 

 

 

あ、うん………イッセー君はどんな時でもイッセー君だった。

 

 




イッセー「これがおっぱいの力だぁッ!」

イグニス「違うわ! 未来を切り開くおっぱいの力よ!」

木場「それはもうおっぱいの力で良いのでは!?」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。