ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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フリーザさまではありません(笑)


63話 復活の不死鳥

「そらッ!」

 

「はっ!」

 

赤いオーラと蒼炎に煌めくオーラを撒き散らしながら、敵を一体一体確実に倒していく、俺とゼノヴィア。

俺が相手の攻撃を流し、ゼノヴィアが一撃で仕留める。

この流れが完璧にはまっているようで、今のところ順調に前に進むことが出来ていた。

 

アセムが作り出した眷獣を倒しながら俺はふと思う。

それは隣で戦うゼノヴィアについてだ。

両手にデュランダルとエクスカリバーを握り、華麗に剣を振るう彼女からは、以前とはまた違う魅力があるように思える。

 

それに驚くべきなのは、ゼノヴィアが俺と完璧に呼吸を合わせていること。

俺の消耗具合を考慮して、俺が動きやすいように、尚且つ、自分も存分に戦えるように動いてくれているのだ。

脳筋、パワーバカと言われていたゼノヴィアが………グスッ。

こんなにもテクニカルな面を見せてくれるなんて、俺は嬉しいぜ!

ま、まぁ、それも『剣聖』の地獄の特訓を味わったからだろうけど。

 

ゼノヴィアが不機嫌そうな表情で言ってきた。

 

「イッセー………すごく失礼なことを考えてないか?」

 

「い、いや!? 考えてないぞ!? その、あれだ………ゼノヴィアがいてくれて凄く助かるな~って」

 

「そうか。それなら良いのだが………」

 

ゼノヴィア、勘まで鋭くなったのな。

 

さて、ゼノヴィアばかりにパワープレイを任せるのは、俺的に面白くないところも本音としてはある。

やはり、圧倒的な火力で敵を凪ぎ払ってこそ、赤龍帝というものだろう?

 

ドライグが言ってくる。

 

『白いのばかりに活躍されるのはな』

 

少し離れたところを見ると白銀と漆黒の鎧―――――魔王化形態のヴァーリが圧倒的な力で眷獣を吹き飛ばしているのが見えた。

俺が使うようなビットを複数飛ばして、それぞれが半減空間を構築する。

半減空間に巻き込まれた眷獣達は半分、更に半分と圧縮に圧縮を重ねられ、ついには塵一つ残さずに消滅した。

本人も凶悪な魔力の塊を撃ち出し、一気に屠っていく。

ヴァーリが仕留めた眷獣の中には龍王クラスに匹敵するものもいた。

 

活躍しているのはヴァーリだけではない。

覇獣を解放したサイラオーグさんも、ただの拳一振りで何百という眷獣を薙ぎ倒している。

デュリオも禁手を発動しており、空にいる眷獣の大群をシャボン玉で囲んでいる。

シャボン玉の中に囚われた眷獣は例によって、内側で巻き起こるありとあらゆる天災により、消滅させられている。

改めて思うが、デュリオの禁手はこういう集団戦においてかなり便利な能力だ。

広範囲に、多くの敵を倒せるが、味方を巻き込む心配もいらないというのはでかい。

曹操も同じく禁手状態で、流れるような動きで眷獣の攻撃を制し、槍で確実に貫いている。

 

ふと、犬の遠吠えが聞こえてきた。

何かと思い、そちらに目をやると、そこにいたのは―――――人型の黒い狗。

そして、その後ろには人型の狗に付き従うようにして待機している狗の群れ。

人型の狗は闇で形成された鎌を握っていて、音もなく駆け出すと、一振りで眷獣の首を斬り落としていた。

背後にいた狗の群れも一斉に眷獣へと飛びかかり、屠っていく。

 

あれは………幾瀬さんの禁手か!

これまたとんでもなく強いオーラを放ってやがる!

 

流石に神滅具所有者は圧倒的と言うか、なんというか………。

まぁ、俺も神滅具所有者なんだけどね!

 

『Boost!!』

 

籠手から倍加の音声が鳴り響く。

俺は他の神滅具メンバーみたいに禁手を発動せず、通常の状態で神器を使用していた。

 

『相棒は禁手を使うほどの力は戻っていないからな。今もギリギリのところで能力を使っている』

 

というのが俺の現状だ。

つまり、神器自体は使えるが、鎧を纏うほどのスタミナがないってこと。

なので、生身のまま籠手の力で倍加しつつ、錬環勁気功による体術で戦っている。

 

『Boost!!』

 

と、そうこうしている内にある程度、倍加が溜まったか。

そんじゃ、行きますかね!

 

『Explosion!!』

 

倍加を止め、溜めていた力を解放する!

赤いオーラが膨れ上がり、力が涌き出てくる!

 

「はっ!」

 

突き出した掌底が人型の眷獣の腹を捉えると、衝撃が背中まで突き抜けていく。

膝から崩れる眷獣。

頭を垂れるように倒れた眷獣の頭上を飛び越えた俺は、宙で体を捻り、回転の勢いをプラスした蹴りを放った!

蹴りは眷獣の側頭部にめり込み、頭蓋を砕く!

 

「おおっ、流石だな、イッセー!」

 

ゼノヴィアが頼もしそうに言うが、俺は首を横に振った。

 

「いや、まだだ! こいつは頭を破壊されたくらいじゃ動きを止めない!」

 

ロスウォードの時もそうだったように、この眷獣。

頭を破壊されようと、腹にでかい風穴を空けられようとも動きを止めない。

こいつらを完全に止めるのなら、四肢をもぐか、完全に消滅させるかのどちらかだ。

 

「だから、こいつをくらわせてやる!」

 

俺は右腕を引き、拳に気を溜める。

圧縮と循環を幾重にも繰り返していくと、甲高い音が鳴り響く!

 

「射線よし、味方もいない! 吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

手を突き出すと共に放たれる光の奔流!

赤い極太の光は目の前の眷獣だけでなく、その後ろにいる―――――アグニの射線上にいる全てを呑み込んでいった!

 

『Reset』

 

籠手からその音声が聞こえると、全身から力が無くなっていく感覚が俺を襲った。

今のアグニで倍加の力を使いきったか………。

予想以上に今の俺は弱っているらしい。

 

俺はゼノヴィアと背中合わせになりながら、周囲を見渡す。

チーム『D×D』メンバー、神滅具所有者はなんとかなっているようだ。

グレモリー眷属は何度もやりあってあるし、対処の仕方も分かってる。

木場は紅い龍騎士団を創造して、一度に複数の敵を斬り伏せてる。

リアスと朱乃はあの時のように、滅びの力で形成したドラゴンと雷光龍で眷獣を飲み込んでいる。

変わったとすれば、以前よりも精密な力の操作と出力か。

滅びのドラゴンと雷光龍が荒れ狂いながら、敵を屠っていく光景は圧倒される。

 

この辺りのメンバーは問題ないとして、初めて戦う戦士達は眷獣のタフさに少々押され気味だ。

 

「ぐあっ!?」

 

近くで悲鳴が聞こえた。

振り向くと、一人の妖怪が蜘蛛の形をした眷獣に追い詰められていた。

蜘蛛の牙が妖怪へと向けられる!

 

「ゼノヴィア!」

 

「分かっている! だが、こちらも手一杯なんだ!」

 

俺もゼノヴィアも次から次へと襲ってくる敵の対処に追われている。

あちらまで手が回らない!

 

その時――――――黄金の光がその妖怪を包み込んだ。

黄金の光は眷獣の攻撃を弾き、内側にいる妖怪を守っている。

更には体の傷も瞬く間に治ってしまう。

 

「アーシアか!」

 

後方を見れば、黄金のオーラを纏うアーシア。

アーシアの隣にはファーブニルもいる。

これはアーシアの禁手か!

自分を中心にオーラを広げるのではなく、危険な状態の者へ守護のオーラを飛ばしているんだ。

そうすることで、自身の消耗を減らしているのか。

 

アーシアに近づこうとする敵はファーブニルが放つ火炎で焼き払われている。

普段は変態でも、やるときはやってくれる龍王だな!

 

 

 

 

仲間の頼もしさも感じる反面、敵の凄まじさも感じるのがこの戦場。

下級の相手なら、何とかなるが上位クラス―――――龍王、神、超越者に匹敵する力を持つ眷獣は一筋縄ではいかない。

下級の眷獣に比べ、数では百もいないだろう。

だが、奴らは数を補うだけの力を持った怪物。

並外れたパワーにスピードは一撃でこちらに甚大な被害を与え、堅牢な肉体は並の攻撃ではビクともしない。

嫌なことに回復機能もついているらしく、腕がもがれても一瞬で再生してしまう始末。

 

こちらはサーゼクスさんやセラフォルーさん達が当たっているが、中々、滅しきれていないようだ。

 

………いくらトライヘキサを取り込んだとは言え、ここまでの手勢を一瞬で作り出すとはな。

トライヘキサの無限にも等しい力と、アセムの持つ知識と技術が合わさることで、初めて可能になったのか………。

 

そんなことを考えながら、進んでいると―――――。

 

「イッセー様! 逃げてください!」

 

少し離れたところで、レイヴェルが叫んだ。

 

一瞬、フッと影が辺りを覆ったと思うと、上空を飛んでいたドラゴン型の眷獣から莫大な火炎が吐き出された!

この規模は………ッ!

 

「ちぃッ! ゼノヴィア!」

 

「な、なに!? うわっ!」

 

俺は傍で戦っていたゼノヴィアの腕を掴み、レイヴェルの方へ思いきり放り投げた。

宙に放り出されたゼノヴィアがレイヴェルに受け止められたことを確認した直後―――――火炎が俺を呑み込んだ。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

咄嗟に張った気のバリアーを熱が通り抜けていく!

とてつもない熱量が肌を焼き、俺の意識まで焼き尽くそうとしてくる!

 

火炎放射が終わった後………俺は力なくその場に崩れ落ちた。

 

「ガハッ………」

 

全身から煙があがる………。

ヤバい、手足の感覚がない………。

視界が霞んで前がよく見えない………。

 

ズゥゥンと地面が揺れた。

恐らく、俺を焼いてくれたドラゴン型の眷獣が近くに降り立ったのだろう。

そこから奴の足音らしき音が徐々に大きくなってきて、辺りが暗くなった。

 

どうやら、俺の息があることを理解しているらしい。

とどめをさす気か?

 

『しっかりしろ、相棒!』

 

ドライグの焦る声が頭に響く。

俺も何とかして起き上がりたいが、今の一撃でかなりのダメージを受けてしまった。

 

「イッセー!」

 

「イッセー様!」

 

ゼノヴィアとレイヴェルの悲鳴が聞こえる。

その声が聞こえたのかリアス達も俺の危機を察知して、こちらに駆けつけてくるのを感じた。

 

「そこを………どきなさいッ!」

 

だが、リアスの声から察するに他の眷獣が立ち塞がっているみたいだ。

美羽達も応戦しているようだが………。

 

「がぁ………ッ!」

 

俺は痺れる体に命じて、何とか体を起こす。

起き上がると同時に焼けた全身から赤い血が滴り落ちていく。

俺はフラつきながらも、目の前のドラゴン型の眷獣を睨んだ。

眷獣もまた赤い瞳で俺を見てきて―――――口を大きく開け、そこに炎の塊を作り出した。

 

「イッセー! 逃げなさいッ!」

 

「お兄ちゃん! このッ!」

 

アリスと美羽が眷獣を蹴散らすが、一向に進めていない。

こいつら、連携でも取っているのか………?

 

目の前の眷獣の波動は龍王クラスは確実だ。

上位の眷獣がそれぞれ司令塔の役割を持っているとすれば………かなり、ヤバいな。

一体一体でも厄介極まりない相手だと言うのに、そいつらが徒党を組み、連携するとなると………。

 

まぁ、俺の現状もかなり危機的なんだが。

手足は動かないし、攻撃できる力が出てこない。

逃げるにしても、一歩も動けないんじゃ逃げようがない。

 

「くそったれ………!」

 

俺が短くそう発した―――――その時。

 

ドラゴン型の眷獣の足元から莫大な炎が巻き起こり、奴の体を包み込んだ!

超高温の炎が地面を溶かし、眷獣の肉体を焼いていく!

 

なんだ………誰がこれを………?

少なくともリアス達じゃない。

リアス達は今も他の眷獣と激戦を繰り広げている真最中だ。

それなら、一体―――――。

 

「フハハハハ! 危ないところだったな、兵藤一誠!」

 

高らかな笑い声。

若い男の声だった。

そいつは上空から―――――炎の翼を羽ばたかせながら、俺の目の前に降り立つ。

 

俺はそいつの顔を見て、目を見開いた。

 

「ライザー!?」

 

そう、俺を助けてくれたのはライザーだった!

まさかの登場にレイヴェルも仰天していて、

 

「お兄さま!? うそっ!?」

 

と、離れていたところで、素頓狂な声をあげているほどだった。

 

「なんだなんだ、その顔は? 俺がこの場にいるがそんなにおかしいか? というか、『うそっ!?』とはなんだ、レイヴェル!」

 

俺とレイヴェルの反応に不服そうなライザー。

 

いやいやいやいや、これは驚くだろう?

だって、このタイミングでライザーの登場は予想外だろう?

うん、俺達の感想は間違っていないはずだ!

助けてもらっておいて、なんだけども!

 

俺はライザーに問う。

 

「ライザー………おまえ、大丈夫なのか?」

 

ライザーは皇帝とのレーティングゲームで行方不明になった後、アジュカさんの手回しもあって、フェニックス家に届けられたはず。

まぁ、アジュカさんから無事とは聞いていたが………。

 

ライザーが言う。

 

「今の貴様の方がボロボロだろうに。それにな、おまえ達はいつの話をしている? あんなもの、何日も前の話だろう。魔王ベルゼブブ様からの説明もいただいたし、父上達からも俺が気を失っている間のことは聞いている。………というよりな、こんな事態なのだぞ? フェニックス家の男として、参戦するのは当然のことだろう?」

 

と、呆れたような口調で言ってくる。

まぁ、今のライザーらしいと言えばそうなるのかな?

 

「ユーベルーナ。それから、おまえ達は兵藤一誠を守ってやれ。その状態ではまともに戦えんだろうからな」

 

その指示にユーベルーナさんは頷くと、ライザーに聞き返した。

 

「分かりました。ライザー様はどうなさるおつもりで?」

 

「ふん、決まっている」

 

ライザーは上着を脱ぎ捨てると、ドラゴン型の眷獣に視線を移し、不敵な笑みを浮かべた。

 

「兵藤一誠。今は届かなくとも、俺はいつかおまえを倒す。だからこそ、死ぬな。このような場所で死んでくれるな。おまえに死なれると目標が消えてしまうのでな。………まぁ、任せておけ」

 

刹那、ライザーの体から濃密なオーラが滲み出す。

広げたフェニックスの翼から放出される熱も更に温度を増していく。

 

おいおい………ライザーの奴、いつの間にここまで力を上げたんだ?

以前、軽く手合わせした時よりも遥かに力を上げてやがる………!

 

「さぁ、やろうか。フェニックスの業火、存分に味わうがいい!」

 

蘇った不死鳥がその力を見せつける―――――。

 




~あとがきミニストーリー~

アーシア「え、えっと………ワルキュリアさんはどうして小さな女の子が好きなんですか?」

ワルキュリア「これを見てください、アーシア様」

アーシア「これは………アルバムですね。ここに写っている二人の女の子はもしかして………」 

ワルキュリア「そうです。幼き日のアリス様とニーナ様です。この頃はそれはもう可愛くて………。お二人の成長の記録を着けることが私の義務、使命………趣味なのです」

イッセー「ちょっと待った。その話、詳しく。ロリアリスとロリニーナの話をもっと詳しくッ!」

アーシア「イッセーさん!?」

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