ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

37 / 421
4話 授業参観です!!

プールのあった次の日。

 

「部長。俺、今日は日直なんで先に行きます」

 

「分かったわ。また、学校で会いましょう」

 

俺は今日、家を早目に出た。

理由は部長にも言った通り、今日の俺は日直だ。

早目に登校して、担任の坂田先生のところに行ったり、黒板をキレイにしなければならない。

 

ただあの先生、結構寝坊が多いからな………大丈夫かな?

 

まぁ、それは置いておこう。

家を早目に出た理由はもう一つある。

それは人に会うためだ。

いや、この場合は会いに来たのを対処しに行く、といった方が正しいかな?

 

俺は自販機で缶コーヒーを2つ(・・)購入。

買った缶コーヒーを鞄のポケットに入れ、学園に向かう。

 

学園の周りには既に同じ駒王学園の生徒の姿がちらほらあり、俺はそれに混じって正門へと歩を進める。

正門の前にはダークな銀髪をしたイケメン。

年は俺と同じくらいか?

 

「やぁ」

 

「おう」

 

俺は軽くあいさつを交わし、缶コーヒーを投げ渡す。

銀髪のイケメンは受け取った缶コーヒーを見ながら言う。

 

「これを用意してたってことは、俺が来ることを分かっていたのかな?」

 

「まぁな。朝起きた時に気配は感じてたし」

 

「なるほど。では、改めて自己紹介しよう。俺の名前はヴァーリ。今代の白龍皇だ」

 

「今代の赤龍帝、兵藤一誠だ。よろしくな、ヴァーリ」

 

俺達は笑みを交わしながら自己紹介をする。

そして、俺は白龍皇―――――ヴァーリに問う。

 

「さて、早速だけど用件は? 今日、日直だからあんまり、のんびりは出来ないぞ?」

 

俺がそう言うとヴァーリは少し残念そうな表情をする。

 

「そうなのか? まぁ、そこまで時間は取らせないよ。今日来たのは軽く挨拶をしに来ただけさ」

 

挨拶ねぇ………。

俺は橋の手摺を背もたれのようにして、缶コーヒーのプルタブを開けた。

 

「そういえば、アザゼルがぼやいてたぞ」

 

「アザゼルさんが? なんで?」

 

「君がレイナーレにアザゼルの所在を明かしただろう? シェムハザに連れ戻された後、椅子に縛り付けられ無理矢理、仕事をさせられていたからな」

 

あー、あの後そんなことになっていたのか。

そうなったのはあの人が仕事をサボったせいだから、自業自得だ。

俺は悪くない。

つーか、椅子に縛り付けられるって、どれだけ信用されてないんだよ………子供か!?

 

「何て言うか、シェムハザさんも苦労してるな………」

 

「いつものことさ」

 

いつものことなのね………。

 

俺達は苦笑いしながらコーヒーを飲んだ。

すると、今度はヴァーリが尋ねてきた。

 

「兵藤一誠。君は世界で何番目に強いと思う?」 

 

「………? さぁな、考えたことが無いから分からん。俺は目の前の敵を、仲間に危害を与える奴を倒してきただけだからな」

 

「そうか。はっきり言って君は世界でも強者の部類に入る」

 

へぇ、そうなのか。

自分でもそこそこに強いとは思ってたけどな。

これは決して自惚れているわけじゃない。

これまでの修業と経験で得られたものを総合的に評価した結果だ。

 

「で? それがどうしたんだよ?」

 

「俺は君と出会った時、歓喜したよ。今代の赤龍帝が想像以上の強さだったのだからね」

 

俺は橋の手摺から腰を上げてヴァーリと向き合う。

 

「………つまり、俺と闘いたいのか?」

 

「ああ、そうさ。出来ることなら俺は今すぐ君と闘いたい………!」

 

ヴァーリが好戦的な目つきで俺にそう言ってきた瞬間だった。

風を切る音が聞こえたと思うと、ヴァ―リの首元に二つの剣が向けられていた。

 

「そういう冗談は止めてくれないかな」

 

「ここで赤龍帝と闘わせるわけにはいかないな白龍皇」

 

そうヴァーリに言うのは聖魔剣を向ける木場とデュランダルを向けるゼノヴィアだ。

二つの剣を首元に向けられているにも関わらずヴァーリは依然として平然としている。

こいつにとったら、こんなのは大したことはないだろうな。

 

はぁ………全くこいつらは………。

俺はため息を着くと振り返り二人の頭に軽いチョップをいれる。

 

「痛っ」

 

「うっ………なぜだ、イッセー!?」

 

ゼノヴィアが俺に突っかかる。

俺は再びため息をついた後、理由を説明する。

 

「こんな公衆の面前で物騒な物出すんじゃねーよ。一般の人に見られたらどうするんだよ?」

 

ここは学校の前。

一般人に思いっきり見られる可能性がある。

ただでさえ美少女で目立つのに、そこに剣を握っていたら尚更目立つ。

というか、普通に銃刀法違反じゃね?

 

俺の言葉に二人はしぶしぶ剣をしまう。

 

「それにこいつはここで俺とやり合うつもりは無いよ。だろ、ヴァーリ?」

 

俺がヴァーリに尋ねるとヴァーリは笑みを浮かべながら頷いた。

 

「ああ、兵藤一誠が言うようにここでやり合う気はない。挨拶をしに来ただけだからな。それに、俺も色々と忙しくてね。やることが多いんだ」

 

ヴァーリが俺の後ろに視線を向ける。

そこには部長を先頭にオカ研のメンバーが揃っていた。

 

「兵藤一誠は貴重な存在だ。大切にすると良い、リアス・グレモリー」

 

「言われなくても、そのつもりよ」

 

不機嫌そうに答える部長にヴァーリはフッと軽く笑うと部長の方へと歩を進める。

 

「二天龍に関わった者はろくな人生を送らないらしい。君達はどうなんだろうね?」

 

「ろくな人生かどうかは私が決める。他人にどうこう言われたくは無いわね。少なくとも今はイッセーと過ごせて幸せだと思っているわ」

 

「そうか」

 

ヴァーリはそれだけ言うと俺達の前から去って行った。

ヴァーリの姿が消えるのを確認した後、部長達は緊張していたのか、深く息を吐いた。

 

「イッセー、彼は――」

 

部長が俺に何かを尋ねようとした時、

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「げっ! もうこんな時間かよ! 部長、話は後でします! それでは!」

 

学園に響くチャイムに焦りながらダッシュで教室へと向かった。

 

 

 

 

実は今日は授業参観の日だ。

そのため、教室の後ろにはたくさんの親御さんが来ている。

家の両親も来ている。

まぁ、あの人達が見に来たのは美羽とアーシアだけどね。

それだけなら特に問題ない。

そう、それだけなら。

 

親御さんの中にひときわ目立つ、長い青髪をした美女がいた。

その人に男子生徒や父兄、教卓に立っている男性教師も釘付けになっている。

 

「よう、イッセー。来てやったぞ!」

 

「なんで、ティアがここにいるんだよ!?」

 

「む? イッセーの部屋でこの紙を見つけてな」

 

ティアの手には授業参観のプリントが握られていた。

 

確かにティアは家に良く遊びに来るけどさ!

まさか、授業参観にまで来るとは思わなかった!

 

って………なんだ?

クラス中から視線が集まっているような………。

辺りを見渡すと男子生徒から睨まれていた。

 

おいおい、こいつら………。

 

「オホン! では授業を始めましょう!」

 

先生が咳払いをして、授業を始める。

そして、生徒に教材を配り始めた。

 

これは………粘土?

今の授業は英語のはずだけど………。

 

「さぁ、今日は紙粘土で好きなものを作ってみましょう。そういう英会話もある」

 

ねーよ!

なに考えてんだ、この人は!

楽な授業だけども!

 

こうして授業参観が始まったのだが………好きなものか。

何を作るかな?

うーん、悩むところだ。

 

………よし、決めた。

 

俺の脳内保存データとプラモ作りで鍛えた手先なら出来ないこともない。

思い立ったら実行だな。

俺は手を動かし、思い描いたものを作っていく。

 

 

それから数分後。

 

 

「「「おおっ!」」」

 

 

クラス中から驚きの声が上がる。

 

俺の机には水着を着たオカ研部員全員(木場は除く)の小型フィギュアが出来上がっていた。

昨日の記憶を頼りに作ったんだけど、我ながら中々の出来だと自負している。

これは捨てるのが惜しいな。

 

「兵藤君! 君にはこんな才能があったのか!」

 

おお、なんか先生も興奮してるな。

すると、松田が俺の前に自分の作品を持って現れた。

 

「イッセー、俺のと交換してくれ!」

 

そんな変なイモムシみたいなやつ誰がいるか!

一昨日来やがれ!

すると、今度は元浜が現れた。

その手には財布。

 

「イッセー、五千円で買おう! 売ってくれ!」

 

それを皮切りにクラス中から声が上がる。

 

「私は七千円だすわ!」

 

「なにを! なら俺は八千円だ!」

 

次々と手を挙げていくクラスメイト達。

おいおい、マジかよ!

授業中に作った工作が買取り合戦の対象に!

 

「私は一万円だす!」

 

先生まで手を挙げた!

何してんだ、あんた!

止めろよ、教師だろ!?

 

こうして、粘土工作(英語の授業)は俺の作ったオカ研部員のフィギュアをめぐるオークション会場と化した。

 

 

 

 

授業は終わり、昼休み。

 

「へぇ、良くできてるじゃない」

 

「本当、イッセー君の新たな才能ですわね」

 

「お兄ちゃん、こんなことも出来たんだね」

 

部長と朱乃さん、美羽が俺が作ったフィギュアを触りながら微笑んでいた。

 

結局、あのフィギュア達はオカ研のメンバーにそれぞれプレゼントすることにした。

 

皆に受け取ってもらえて良かったが………木場が自分の分が無くてへこんでいた。

うん、誰が野郎のフィギュアなんぞ作るか。

 

「それにしても精巧に作られていますわね。部長にそっくりですわ」

 

「そうね。朱乃の方も本当に良くできてるわ」

 

お二人からお褒めの言葉をいただいた!

いつも、皆の姿を見るたびに脳内インプットしてきたからな。

これくらいは余裕だぜ!

 

元浜が女性のスリーサイズを見るだけで測定できる能力を有しているが、俺はその領域をも越えようとしている。

俺のエロの進化はまだまだ止まらないぜ!

 

「リアスさん、これ部室に飾りましょうよ」

 

美羽がそう提案する。

 

俺の作品を部室に飾るのか。

少し恥ずかしい気もするが、良いのかもな。

 

「そういえば、サーゼクスさんは来たんですか?」

 

俺が尋ねると部長は額に手を当てて大きくため息をついた。

 

「ええ、来たわ。お父様も一緒に」

 

部長のお父さんも来たのか。

すると、後ろから声をかけられた。

 

「やぁ、イッセー君」

 

声の主はサーゼクスさんだった。

その後ろには紅髪の男性。

サーゼクスさんより年上に見えるけど………まさか………。

 

「初めまして、兵藤一誠君。リアスの父です。いつも娘がお世話になっているようだね」

 

やっぱり、部長のお父さんだったのか!

第一印象は若い!

サーゼクスさんの兄と言っても通用するんじゃないのかな。

それくらい若くてカッコいいお父さんだった。

 

「こちらこそ初めまして。兵藤一誠です。こっちにいるのが妹の美羽です」

 

「初めまして。兵藤美羽です。リアスさんにはいつもお世話になってます」

 

俺達が挨拶をすると部長のお父さんは微笑む。

 

「美羽さんか。君のこともサーゼクスから聞いているよ。リアスは君にも色々と助けられているようだ。ありがとう」

 

うーん、僅かなやり取りでも分かる気品の高さ。

この人からは風格が感じられるよな。

流石は部長とサーゼクスさんのお父さんだ。

 

「リアス、セラフォルーを見かけなかったかな?」

 

「セラフォルー様ですか? いえ、見ていませんが………。あの方もこちらに?」

 

「ああ。そうなのだ。途中まで共にいたのだが、いつの間にかはぐれてしまってね」

 

セラフォルー?

もしかして、セラフォルー・レヴィアタン様のことかな?

四大魔王唯一の女性とは聞いているけど、なぜにこの学園に来ているのだろうか?

 

すると、向こうから走ってくる女子生徒の姿が見えた。

あれは………会長?

 

「ひ、兵藤君!!」

 

「のわ!? な、どうしたんですか、会長!?」

 

「私を匿ってください!」

 

「は?」

 

訳のわからないことを言われた俺は思考がフリーズした。

匿ってと言われても………。

 

 

「待ってーー!! ソーナちゃーーーーん!!」

 

おお!?

今度は魔女っ子のコスプレをした女の人が走ってきた!

あの人から逃げてるのか?

いや、そもそも、なんであの人は魔女っ子のコスプレをしてるんだ?

 

会長は俺の背中に隠れ、俺の隣では部長がため息をついている。

あの人、誰よ?

 

「ソーたん! なんで逃げるの!? 私はただ、妹とラブラブしたいだけなのに!」

 

「それが嫌なのです! 場を弁えてください! それから、『たん』で呼ばないでください!」

 

あの~、俺を壁にして話さないでくれませんか?

 

どうやら、知り合いらしい。

真面目な会長と目の前の魔女っ子。

全く接点がないように思えるんだけど。

 

「あ、サーゼクスちゃんもここにいたの?」

 

「セラフォルー、君の妹への愛情はいつ見ても凄まじいね」

 

俺はサーゼクスさんの言葉に耳を疑った。

 

セラフォルー………妹………。

えーと、つまり目の前の魔女っ子は魔王セラフォルー・レヴィアタン様で、会長はその妹………ていう認識で良いのかな?

 

俺は部長の方を見る。

部長は何となく俺の考えていることが分かったようで、苦笑いしながら頷く。

 

えええええええええ!?

マジで!?

マジでこの人、魔王なんですか!?

マジでこの人、会長のお姉さんなんですか!?

 

「え~と、会長?」

 

「兵藤君、何も言わないで。何も言わず、目の前の魔王を倒してください」

 

「俺に死ねと!?」

 

「あなたなら出来るでしょう!?」

 

あー、無茶振りだ。

会長がとんでもない無茶振りをしてきやがったよ………。

普段のクールな会長の面影が全く感じられないよ。

 

「あ、兵藤。大変なことになってるな」

 

「よう、匙。突然で悪いんだけどさ、代わってくれないか? おまえ、生徒会メンバーだろ?」

 

「絶対無理。会長とふれ合えるのは嬉しいけど、流石に身が持たない」

 

あの熱い匙にクールに断られた!

ドンだけだよ!

魔法少女ならぬ魔王少女!

 

「ねぇ、サーゼクスちゃん。彼が噂のドライグ君?」

 

「そうだよ。彼が今代の赤龍帝、兵藤一誠君だ。そして、彼は私の―――同志だ」

 

セラフォルー様は俺をまじまじと見てくる。

 

俺の自己紹介まだだったか。

 

「初めまして。兵藤一誠です。リアス・グレモリー様の兵士をやってます。こっちは妹の美羽です」

 

「初めまして! 兵藤美羽です」

 

「うんうん、はじめまして☆ セラフォルー・レヴィアタンです☆ 気軽に『レヴィアたん』って呼んでね☆ それにしても、君がコカビエルちゃんを倒してくれたんだよね? ソーたんを助けてくれてありがとう☆」

 

ペコリ、と頭を下げるセラフォルー様。

 

良いお姉さんじゃないか。

スキンシップが激しいところ以外は。

 

「そういえば、セラフォルー様も授業参観に?」

 

「そうなのよ、リアスちゃん! ソーたんったら酷いのよ! 私に今日のこと黙ってたんだから! もう、お姉ちゃん悲しくて、天界に攻め込もうとしたんだから!」

 

おいおい、それで良いのか魔王少女! 

天界の人もとんだとばっちりじゃねぇか!

コカビエルの時、部長や会長はサーゼクスさんだけを呼んでたみたいだけど、その理由が分かった。

この人を呼んだら話が余計にややこしくなっただろうな。

この人のシスコンぶりは俺やサーゼクスさんを超えているよ。

 

「お姉さま、ご自重ください! もう、いや!」

 

会長が顔を真っ赤にして走って行った。

 

「あ、待ってーー! ソーたぁぁぁぁぁぁあん!!!」

 

「『たん』を着けないでとあれほど!」

 

魔王姉妹の追いかけっ子か。

間違っても学園を吹き飛ばさないでくださいよ?

 

「うむ、シトリー家は今日も平和だ。リーアたんもそう思わないかい?」

 

「『たん』を着けて呼ばないでください」

 

サーゼクスさん、グレモリー家も十分平和ですよ。

 

「で、美羽はなんでこっちを見てるんだ?」

 

「いや、お兄ちゃんも『たん』を着けるのかなって」

 

「流石にそれはない」

 

「そっかぁ」

 

なんで、残念そうな顔してるの!?

『美羽たん』って呼んでほしかったの!?

 

この後、俺の両親と部長のお父さんが合流。

今日は家で夕食を食べていくことになった。

そして、夕食の席では授業参観のビデオを再生して大いに盛上がった。

ただ、部長が赤面しながら俺の部屋に閉じ籠ることになった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。