ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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2話 お泊り魔王様です!!

「妹がご迷惑をおかけしてなくて安心しました」

 

「そんなお兄さん!リアスさんはとっても良い子ですよ」

 

「そうですよ。家に来てくれて私達も色々と助かってます。全く、イッセーには勿体ない人だ」

 

現在、サーゼクスさんは家に来て、母さんの手料理を食べている。

 

そう、俺の出した提案とはサーゼクスさんとグレイフィアさんを家に泊めることだった。

 

連絡を入れたときは魔王が来るとのことなので、流石の父さんと母さんも身構えていたけど、今は完全に打ち解けている。

 

どこからどう見ても魔王というより好青年だからなぁ。

 

物腰も柔らかいし。

 

「それにしても、そんなに若いのに悪魔のトップを務めているなんて凄いですな。イッセーに貴方の爪の垢を飲ませてやりたい」

 

すると、サーゼクスさんは微笑みながら答えた。

 

「いや、イッセー君は我々、悪魔にとって重要な存在です。いずれ、冥界を支える柱になってくれるでしょう。というより、私は将来、彼に魔王になってほしいと思っていますよ。彼にはそれだけの魅力がある」

 

今の発言には俺も驚きだ。

 

サーゼクスさん、そんなに期待してくれてるんですか!?

 

部長も俺の隣で頷いてるし………。

 

ところで、父さんはなんで泣いてるんだよ?

 

「うぅ、なんて勿体ない言葉なんだ………。おい、イッセー。おまえ、しばらくサーゼクスさんのところに行って勉強してこい。今のおまえの頭で魔王になったら悪魔の皆さんにご迷惑をかけかねない」

 

なんて酷い言われようだ。

 

悪かったな、バカで!

どうせ、前回のテストで追試をくらった愚か者だよ、俺は!

 

「いやぁ、来てくれるなら私は大歓迎だよ、イッセー君。受け入れる準備は出来てるからね」

 

笑いながらそう答えるサーゼクスさん。

 

マジですか!?

もう受け入れ態勢万全ですか!?

 

俺、行っちゃおうかな。

 

そんなことを考えていると、突然、肩と腕を捕まれた。

 

「まだ行ってはダメよ、イッセー」

 

おお、部長が凄い真剣な目付きだ。

 

「イッセーさん、何処かに行ってしまうのですか………?」

 

「………そんなの嫌だよ」

 

アーシアと美羽がうるうるした目で聞いてきた!

 

うん、無理。

 

こんな目で引き止められたら、行けるわけないじゃないか!

 

「………えっと、またの機会で良いですか?」

 

「もちろんだとも。その気になったら何時でも来なさい」

 

俺とサーゼクスさんの話が終わると父さんがキッチンから酒を持ってきた。

 

「サーゼクスさん!お酒はいけますかね? この間、良い日本酒が手に入ったんですよ!」

 

「それは素晴らしい! 是非ともいただきましょう!」

 

うーん。

 

悪魔になってから、それまで抱いていた魔王のイメージが崩壊したような気がする。

 

めちゃくちゃフレンドリーだ。

 

それにしても、魔王か………俺にそんな素質があるのかね?

 

 

 

 

「そ、そんな………イッセーと寝てはダメなのですか?」

 

宴の時間も終わり、今はもう就寝時間となっていた。

 

今、俺の部屋の前では部長、アーシアが目を潤ませている。

 

「今夜は彼と話ながら床につきたいんだ。今夜だけは彼を貸してくれないか?」

 

そう、サーゼクスさんが俺と話がしたいらしく、今日は俺の部屋で眠ると言ってきたんだ。

 

ほぼ毎夜と言って良いほど、俺と就寝を共にしている二人は俺と眠れないことが心底悲しいらしい。

 

ちなみに美羽は一足早く自室で眠っている。

 

昨日は夜更かしをしたらしく、限界だったようだ。

 

あいつ、夜更かしの癖がついてないか?

 

それはともかく、魔王様に頼みは断れないようで、部長はしぶしぶ頷く。

 

「………分かりました。イッセー………お休みなさい………」

 

「………私も今日は自分の部屋で寝ます………イッセーさん、お休みなさい」

 

うっ………なんだか、罪悪感が………。

 

「………お、お休みなさい」

 

ポツリと残された俺とサーゼクスさん。

 

「さ、中に入ろうか」

 

「そうですね」

 

そう言うと、俺達は部屋の中に入りドアを閉めた。

 

「本当に良いんですか?」

 

「何がだい?」

 

「いや、布団でいいのかなと」

 

俺の部屋にはベッドが一つしかない。

 

よって、どちらか一人が床に布団を敷いて寝ることになる。

 

サーゼクスさんは客人だし、それに魔王でもあるから、流石に布団はマズいんじゃないかと思い、ベッドを譲ろうとしたんだけど、サーゼクスさんはそれを断ったんだ。

 

「気にしないでくれたまえ。私は普段はベッドで寝ているからね。こういうのは新鮮なんだ」

 

まぁ、確かに。

布団を敷いて寝る魔王なんて想像できないな。

 

サーゼクスさんからしたら滅多に出来ない体験ってところか。

 

「さて、今晩は君と色々話したいんだが、その前にお礼を言わないとね」

 

「お礼?」

 

俺、サーゼクスさんからお礼を言われるようなこと何かしたかな?

 

「まずは、リアスの婚約の件。リアスを勝利に導いてくれたこと、兄として感謝しているよ。私は立場上、リアスを助けるわけにはいかなかったからね」

 

ライザーの一件か。

 

やっぱりサーゼクスさんも反対だったんだな。

 

「それに、あのゲームで神器を使わなかったのはリアスの先を案じてのことなのだろう?」

 

サーゼクスさん、気づいてたのか………。

 

ドライグ以外、誰にも言ってなかったのに。

 

俺は人差し指を口元に当てる。

 

「それ、部長や皆には黙ってて下さいね?」

 

「もちろんだとも。君の気遣いを無駄にするつもりはないよ。ただ、リアスのことを本気で考えてくれていたことにお礼を言いたかった。ありがとう」

 

サーゼクスさんは俺に頭を下げる。

 

魔王という立場ではなく、一人の兄として。

 

「俺は部長の眷属であり、家族です。俺は部長に幸せになってほしかった。それだけですよ」

 

「ふふふ。君がリアスの眷属になってくれて本当に良かった。これからもリアスのことを頼むよ、イッセー君」

 

「ええ、任せてください」

 

 

 

 

それから話は、コカビエルの話題になった。

 

「コカビエルの件はご苦労だったね」

 

サーゼクスさんが労いの言葉をかけてくる。

 

「それにしても、報告を受けた時は驚いたよ。あのコカビエルを圧倒したそうじゃないか」

 

「いやー、神器の調整がギリギリだったんで、少し焦りましたけどね。間に合ってくれたおかげで何とかなりました」

 

俺は頭をかきながら答える。

 

もし神器の調整が終わらず、禁手が使えなかったらコカビエルには勝てなかった。

 

まぁ、その場合はティアを呼んでただろうけど。

 

「君のことは初めて出会った時から強いとは思っていたが、正直言って想像を遥かに超えていたよ。神器を使わずにフェニックスを打ち倒し、聖書にも記されしコカビエルを圧倒するんだからね」

 

「まぁ、それは修行の賜物というか何というか」

 

俺は苦笑いを浮かべる。

 

そう答えるしかないよなぁ。

 

異世界に行って、そこで魔王を倒してきました、なんて言えるわけがない。

 

下手に異世界の話をすれば大問題になりかねない。

 

これはドライグの助言だ。

 

まぁ、修行の賜物っていうのは事実だから嘘は言ってないよな。

 

すると、サーゼクスさんは俺の目をじっと見てきた。

 

「確かに君の強さは厳しい修行で得たものなのだろう。だが、それだけではその眼にはなれない」

 

「眼、ですか?」

 

「そう、眼だ。君の眼は強く、優しい。多くの試練を乗り越えた者の眼をしている」

 

「………」

 

正直、俺は少し驚いている。

 

まさか、こうも簡単に見透かされるとは思わなかった。

 

サーゼクスさんは続ける。

 

「それ故に君は強い。力だけではなく、その心も」

 

「でも、俺はまだまだです。至らないところばかりで」

 

「君はまだ若いのだ。至らないところがあって当然だ。いや、むしろその若さでそこまでの領域に至れたこと自体が驚きではあるよ。………君は一体、どんな経験をしてきたのだろうね」

 

興味深そうに俺を見てくる。

 

この人は何となく気づいてるのかもな。

 

『そうだな。異世界のことはともかく、なにかしら大きな悲劇を経験していることくらいまでは察しているのかもしれんな』

 

やっぱ、凄いよこの人は。

 

すると、サーゼクスさんは唐突に尋ねてきた。

 

「イッセー君。魔王を目指してみないかい?」

 

「夕食の席でも言ってましたね。俺には魅力があるって」

 

サーゼクスさんは頷く。

 

「そう。君とは出会って間もないが、どこか感じるところがあってね。その器があると思った。今すぐというわけにはいかないが、将来の夢として考えてはもらえないだろうか?」

 

将来の夢、か………。

一応、俺には上級悪魔になって、ハーレム王を目指すっていう夢があるけど。

 

ハーレム王になったら(なれるのかは怪しいところではあるが………)、その先を考えなければならない。

 

そう考えたら、とりあえず魔王を目指してみるのもありか?

 

まぁ、こんな軽い気持ちで務まるものじゃあないだろうけど、視野に入れるのは悪くない。

 

「そうですね。一応、考えてみます。当分先のことになると思いますけど」

 

俺がそう答えるとサーゼクスさんは満足そうな笑みを浮かべた。

 

でもよ、俺が魔王になったらどうなるんだ?

 

確か、現魔王って襲名制だったはずだ。

 

サーゼクスさんも、サーゼクス・グレモリーからサーゼクス・ルシファーになってるわけだろ?

 

例えば俺がサーゼクスさんの跡を継いだとすると――――。

 

イッセー・ルシファー………。

 

………合わない。

 

日本人の名前じゃまったく様にならないような………。

 

 

 

 

「さて、堅苦しい話はここまでにしようか。次は君と同じ兄として話がしたい」

 

「?」

 

頭に疑問符を浮かべる俺。

 

兄としてって………。

 

まぁ、俺もサーゼクスさんも妹がいるけど………何を話すんだ?

 

サーゼクスさんは持ってきていた鞄から一冊の本らしきものを取り出す。

 

「それは?」

 

「これはね―――リアスの成長を記録した写真集だよ」

 

な、なんですと!?

 

そんな物が存在していたのか!

 

いや、この人は部長を溺愛している。

 

あって当然といえるだろう。

 

「映像記録もあるのだが、流石にそれも持ってくるとグレイフィアにバレそうでね………。今日はアルバムだけを持ってきたのさ」

 

「な、なるほど」

 

「それで、君には妹を愛する兄として私の気持ちを共有して欲しかったのだ! 今日、リアスに君を貸してもらったのはこのためだ」

 

こっちがメインですか!?

さっきまでの真面目な話はついでだと!?

 

「さぁ、見てくれたえ。これがリーアたんの五歳のころの写真だ」

 

サーゼクスさんが指差す写真には幼い頃の部長が大きな熊のぬいぐるみと遊ぶ姿が写っていた。

 

か、かわいい………!

 

あのお姉さまキャラの部長にもこんな時代があったのか!

 

ヤバイ、鼻血が。

 

「イッセー君、これを使いたまえ。ティッシュだ」

 

「あ、ありがとうございます。ってサーゼクスさんも鼻血出てますよ」

 

「おっと………これでよし」

 

俺達は二人、鼻にティッシュを詰める。

 

幼い部長の写真を見ながら鼻にティッシュを詰める魔王ルシファーと赤龍帝か………。

 

他人には見せられない姿だ。

 

「で、どうだい?」

 

「めちゃくちゃ可愛いです!」

 

「そうだろう!」

 

ページをめくるたびに現れる可愛い部長。

 

サーゼクスさんが部長を溺愛する理由が分かったぜ。

 

これは溺愛しない方がおかしい!

 

なるほど………。

 

サーゼクスさんには見せてもいいのかもしれない。

 

俺は立ち上がり、本棚の方へと向かう。

 

そしてそこから一冊の本を取り出した。

 

それを見てサーゼクスさんはハッとなる。

 

「それは、まさか………」

 

「ええ、これは俺が撮りためていた美羽の写真集ですよ」

 

そう、実は俺も美羽の写真を撮り、アルバムを作っていた。

 

中学から今に至るまでの美羽の日常の写真が納められている。

 

その価値はエロ本をも凌ぐ。

 

実は、このアルバムは誰にも見せたことがない。

 

なぜなら、自分でもシスコンと思えるくらいに日常生活の細かいところまで写真を撮っているからだ。

 

いつからだ!?

 

いつから俺はシスコンになったんだ!?

 

この写真集を見るたびに俺は自分に問いただすが、何だかんだで、止められずにここまで来てしまった。

 

だが、この人になら見せてもいいかもしれない………。

 

俺はページを開く!

 

「このページは美羽の寝顔を集めたものです!」

 

「おおっ! やはり君も!」

 

サーゼクスさんがアルバムを眺め、ページを捲る。

 

そして涙を流す。

 

「素晴らしい………! 君の彼女への愛情が伝わってくるよ。君も私に劣らず、妹のことを溺愛しているようだ………。イッセー君、君のことを同志と思ってもいいかい?」

 

「もちろんです!」

 

俺達は互いの手を取り感動の涙を流す。

 

ああ………ここに同志がいた………!

 

エロの同志は松田や元浜がいた。

 

だけど、妹を愛でる同志はこれまでいなかった。

 

想いを共有してくれる人がいなかったんだ!

 

「イッセー君………いや、我が同志よ! 今日は語り合おうか!」

 

「はい!」

 

その日、俺達は互いの妹について夜が明けるまで熱く語り合った。

 

 

 


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