ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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いよいよ、アグレアス突入です!


15話 アグレアス奇襲作戦開始! 

黒歌達から情報がもたらせてから半日が過ぎた頃。

 

兵藤家地下の巨大転移型魔法陣のある部屋に集う『D×D』メンバー。

赤龍帝眷属にグレモリー眷属、シトリー眷属、イリナ、グリゼルダさん、デュリオ、レイナ、刃狗の幾瀬さん、黒歌、ルフェイ。

 

今回の作戦は奇襲になる。

相手はこちらにアグレアスの場所を突き止められていないと思っているはずで、ほぼ間違いなくクリフォトにとって予想外の襲撃になるだろう。

向こうもいつ襲撃されても良いように対策ぐらいはしているだろうけど。

 

ともかく、今回は俺達にとっても初めての攻勢となる。

ヴァーリの執念がアグレアスの居場所を突き止めた格好で、これがなければ今回の作戦はなかった。

 

………よくもまぁ、各地を転移して移動している浮遊都市を見つけられたと思うが、ヴァーリにとってはそうまでしなければならない相手ということだ。

 

この場にいないサイラオーグさん率いるバアル眷属とシーグヴァイラさん率いるアガレス眷属は冥界で待機しており、いつでも出られるようにしてもらっている。

こちらも頃合いを見て、合流する予定になっており、一気にアグレアスに転移、相手を殲滅する作戦だ。

 

アザゼル先生が俺達を見渡しながら言う。

 

「黒歌からアグレアスが留まっている場所の座標は教えてもらった。アジュカの協力でアグレアスまで転移させてもらうことになっている。ただし、使用する転移型魔法陣は禁術の類らしくてな、一度に飛ばせる人員は限られている。まぁ、その禁術でもない限り、アグレアスに張られた結界を突破して転移するのは不可能らしいからな」

 

そういや、この魔法陣はいつもと模様が違うな。

いつの間に仕様を変更したんだか…………って、先生ならすぐに出来るか。

 

アジュカさんの協力で、この魔法陣が禁術の類なら遠くでこの魔法陣を操作してるんだろうな、あの人。

 

ティアはまだあの人と共にやることがあるって言ってたけど………。

魔王の仕事の手伝いだ、言えないこともあるのだろう。

 

先生が言う。

 

「部隊は大きく二つに分ける。まず一つ目が陽動部隊。その役は―――――」

 

ソーナとシトリー眷属の面々が前に出る。

 

「私と眷属が第一陣として向かいましょう。敵の目を引いて突破口を作るつもりです」

 

「俺も行くってね」

 

第一陣はシトリー眷属とデュリオ、グリゼルダさんと『御使い』の転生天使が数名。

都市部に現れて暴れだし、相手の注意を引き付ける。

 

先生がリアスと俺に視線を向ける。

 

「続いて第二陣。本隊はリアス、イッセー。おまえ達に任せる」

 

ソーナ達が相手の気を引き付けている間に俺達が第二陣として仕掛ける。

 

メンバーは俺が率いる赤龍帝眷属とリアス率いるグレモリー眷属、そしてイリナにレイナだ。

 

俺達の役目はクリフォトの戦力を確実に削ぎ、アグレアスを奪還すること。

ようするにリゼヴィムのクソ野郎をぶちのめす役だ。

 

リアスが頷く。

 

「ええ、分かっているわ。お義父さま、お義母さま、仲間を傷つけた彼らを許すわけにはいかない。ここで全てのケリをつけるわ」

 

その言葉に全員が首を縦に振って頷いた。

 

リーシャが言う。

 

「相手の本拠地を攻めるのです。私達が赴く場所には彼らが――――アスト・アーデの神とその眷属達がいる可能性が高いでしょう。その時は私達が相手をします」

 

「あの兄ちゃん達の相手は俺達がするべきだろうしな」

 

アセムやその配下であるラズル達が現れた時は、俺達が相手にすることになるだろう。

場合によっちゃ、本隊を俺とリアスで分けることになるかもしれないな。

 

ちなみに、うちの眷属で行くのは俺とアリス、美羽、レイヴェル、モーリスのおっさんとリーシャだ。

 

新しく『騎士』として眷属入りしたディルムッドは暫く安静にしなくちゃいけないため、無理はさせられない。

ニーナは元々戦闘要員じゃないし、ワルキュリアにはニーナの付き添いでこちらにいてもらう。

 

ニーナとワルキュリアには戦う以上にやってもらいたいことがあるんだ。

 

「二人とも父さんと母さんのこと頼むな」

 

俺達が戦っている間、父さんと母さんにはかなり心配をかけてしまうことになる。

ニーナとワルキュリアには二人の側にいて、少しでも不安を和らげてもらいたいんだ。

 

ニーナが胸を張る。

 

「任せて! 私のお父さんとお母さんになる人だもの。ちゃんと支えてみせるよ」

 

「ニーナさまと理由は異なりますが、こちらのことは心配なさらずに。私も役目を果たしましょう。ディルムッドさまとオーフィスさまのこともお任せを」

 

ワルキュリアもそのように答えてくれた。

 

ディルムッドとオーフィスは傷は癒えたけど、まだまだ体調が優れていない。

二人には看病もしてもらわないとな。

 

アザゼル先生が言う。

 

「それと鳶尾はリアス達と一緒に行ってすぐに単独行動で裏のサポートに回ってくれ。俺も後から行くつもりだ。アグレアスの深部、動力室にいく。停められるなら停めてくるさ」

 

なるほど、アグレアスそのものの動きを停めるつもりか。

確かにそれが成功すれば、アグレアスごと転移することは出来なくなるし、アグレアスの奪還は叶うだろう。

 

そのあたりは技術屋の先生に任せるのが一番良さそうだ。

 

アグレアスの奪還―――――あそこはレーティングゲームの聖地であり、冥界には色々な意味で重要な場所だ。

俺にとっても、初めてレーティングゲームに出場した場所で、サイラオーグさんと己の全てをぶつけ合ったところでもある。

これ以上、悪用させてたまるかよ。

 

先生がルフェイに訊く。

 

「ルフェイ、ヴァーリはどうした?」

 

「他のメンバーの方々と共にアグレアスの近くで待機しています。下手に動くとアグレアスごとヴァーリのお祖父さまが消えるかもしれないと」

 

黒歌がカラカラと笑う。

 

「攻めるなら、そっちを利用してまで一気に決めたいそうよ? ヴァーリったら、ようやく相手の尻尾を掴んだから、二度と逃がしたくないんだと思うにゃ」

 

今回の奇襲で一気にカタを着けると。

ここで逃がしたら次は難易度が一気に上がるだろうしな。

 

今回でケリを着けたいのは俺達も同じだ。

 

先生は頷きながらも、若干解せないような表情を浮かべていた。

 

「ヴァーリの執念が奴の居場所を掴んだ。それもあるのだろう。しかし、今回のリゼヴィムの行動は粗が目立つ。オーフィスを狙うのもイッセーの両親を拉致しようとするのも確かに効率的だ。だが、やはり性急過ぎる。焦っているようにしか思えん。それとも、こちらにそう思わせるのも奴の計算の内なのか………?」

 

リゼヴィムの野郎が何を考えて、俺の親を襲うという手段に出たのか…………。

そいつは今の俺には分からない。

 

だが、ディルムッドが必死の想いで守ってくれたおかげで何の心配もなく奴を殴れる。

 

先生は改めて俺達に告げてくる。

 

「奴が何を考えているかは分からん。だが、どちらにしろ、気を付けろよ? あいつがろくでもないことは確かなんだ。先日のヴァルブルガに使われていた強化のこともある」

 

木場が先生に問う。

 

「あれの正体はまだ?」

 

「ヴァルブルガが倒れた後、その強化剤は綺麗さっぱり消えていてな。映像でしか判断できなかったが………。おそらくはオーフィスの力が絡んでいる。ただ、丸っきり同じと言うわけではなく、何らかの調整はしているようだ。残念だが、現状で解っているのはここまでだ。実物が無いことにはなんともな………」

 

ヴァルブルガか使っていた強化剤、か。

 

オーフィスの蛇は使用者の力を一気に底上げできる。

旧魔王派の奴らも蛇を使って、力をあげていた。

シャルバなんて魔王クラスまで力を伸ばしていたしな………。

 

それを超越者のリゼヴィムが使う………。

しかも、何らかの調整まで施して。

 

嫌な予感しかしないな。

 

妙な不安を感じていたのだが、先生は笑みを浮かべて言った。

 

「色々の不穏な因子はある。だがな、これも頭に入れておけ。―――――奴は入っちゃいけない領域に土足で踏み込んだ。万死に値するだけの連中だ。絶対に許すな。倒せるなら、やっちまえ。俺が許す」

 

『はいっ!』

 

その通りだ!

あいつは………あのクソ野郎だけは何があっても許してはおけない!

絶対にぶっ潰す…………それだけだ!

 

第一陣たるシトリーチームが転移の準備を始め出した。

 

―――――アグレアス奇襲作戦が始まる!

 

 

 

 

「おーおー、さっそくやってるじゃねぇの。若い奴らは元気が良いこった」

 

モーリスのおっさんが遠くを眺めながらそう呟く。

 

本隊たる第二陣―――――俺達が転移した時には、既に至るところから炸裂音、爆音が鳴り響いていた。

ここからでも匙の黒炎が立ち上っているのが見える。

シトリーチームは相当派手にやっているようだ。

 

俺達が転移した場所は都市の中央広場から西部に位置するところで、ここは広大な公園となっており、緑が多く繁っている。

 

到着したと同時に刃狗(スラッシュ・ドッグ)の幾瀬さんが黒い狗―――――刃と共に一歩前に出た。

 

「悪いが、俺は俺の仕事をさせてもらうよ。――――健闘を祈る。君たちも大暴れしてやればいいさ」

 

頷く俺達。

 

それを確認すると刃と共に音もなくこの場を去っていく幾瀬さん。

幾瀬さんはアザゼル先生の指示で裏のサポートとして単独で動くそうだが…………。

 

あの人も人間なのか疑いたくなるレベルだよな。

この間だって、ヴァルブルガの転移を封じるために脱出ルートを全て断ったというし。

 

刹那、リーシャが魔装銃を取り出した。

一瞬で狙いを定めると引き金を引く。

銃口から光線が高速で放たれ―――――近くの空で飛んでいた量産型邪龍を五体ほど撃ち落とした。

 

赤い瞳のリーシャが言う。

 

「さぁ、行きましょう。皆さんはただ全力で進んでください。遠くの敵は私が狙い撃ちますから」

 

モーリスのおっさんが剣を引き抜いた。

 

「そんじゃ、俺は寄ってくる虫を斬っちまうかね」

 

神速を超えた神速。

超神速で振るわれる剣。

 

刀身から放たれた剣圧が周囲の緑を上下真っ二つに斬り裂いた。

すると、倒れる巨木の裏にこれまた胴体を真っ二つに別けられた邪龍がいた。

黒い巨体が血を噴き出しながら崩れ落ちる。

 

「俺達の転移場所が分かっていたのか、それとも偶然か。まぁ………この程度なら何も問題ないな」

 

「ですね」

 

不敵に笑むおっさんとリーシャ。

転移して早々やってくれるな、この二人。

 

なんだか、ラスボスを連れてボスを攻略しにきた気分だ。

 

木場が微妙な顔で言う。

 

「もうこの二人だけで十分な気がしてきたよ」

 

「うんうん」

 

レイナも何とも言えないといった感じだ。

 

…………なんか、ごめんね。

 

俺達はリゼヴィムがいるであろう浮遊都市アグレアスの庁舎を目指して駆け出した。

庁舎は公園を抜けて、北西へ暫く進んだところにあるという。

 

道に明るいリアスとレイヴェルを先頭に俺達は走っていく。

一応、目立たないように空を飛ばないようにしているが…………。

どうやら、先程、おっさんとリーシャが倒した邪龍は偶然、近くに居合わせただけらしい。

空を見上げれば、無数の量産型邪龍が陽動部隊のいる方角に飛んでいっているからな。

 

アリスが顔をしかめる。

 

「うわぁ………うじゃうじゃ。何匹いるのよ………? 万単位でいるんじゃない?」

 

「クリフォトの本拠地だもん。十万くらいはいるんじゃない?」

 

空を見上げる美羽がうんざりしているような表情で答えた。

 

聖杯の力に複製した赤龍帝の力を加えて数を増やしてるんだろうな。

下手すりゃ十万どころか、その十倍以上いるかもしれない。

 

相手の数を想像しながら進んでいると、公園の出口が見えてくる。

そこから向こうはビルや店が並ぶ市街地。

 

この向こうにリゼヴィムが―――――。

 

 

その時だった。

 

 

俺達の視界にある人物達が入ってくる。

 

公園の出口のすぐ横にある二つのベンチ。

そこに腰を下ろす四人組。

 

そのうちの一人、巨漢がこちらに手を振った。

 

「おっ、来たか。よー、勇者殿」

 

声をかけてきたのは『破軍』のラズル。

その他にもヴァルス、ヴィーカ、ベルとアセムの下僕達が勢揃いしていた。

 

俺達はそこで足を止めて、一気に警戒を高める。

 

俺は一歩前に出た。

 

「………ラズルか。やっぱいるよな、おまえらは」

 

「まぁな。一応は協力関係………って、もうこれは良いか。ぶっちゃけ、俺はあの爺さんが嫌いでな。端から協力なんて思っちゃいねぇ」

 

「だろうな。おまえの性格だと、そうなると思ってたよ」

 

どうにも、こいつらアセム一派はリゼヴィムと協力しているように見えるが、そこまで良い感情は持ってなさそうなんだよな。

もし、こいつらが本当に意気投合するような仲なら、被害は凄まじいことになっていただろう。

 

俺はそれを理解した上でラズルに問う。

 

「………で? おまえ達はまだ俺達の邪魔をしようってのか? ―――――生憎、おまえ達と遊んでいる暇はねぇんだよ………!」

 

俺の殺気に反応して、地面に亀裂が入り、周囲の木々がザワザワと騒ぎだす。

一陣の風が吹き、木の葉が激しく舞った。

 

ラズルはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「荒れてんな。おまえの両親が襲われたらしいじゃないか」

 

「その通りだ。………あいつは俺の家族を傷つけた。だからよ、俺はあいつをぶちのめしに行くのさ。そのためにここに来た」

 

俺がここに来た理由はただ一つ。

あいつを………リゼヴィムをぶん殴るためだ。

 

怒りに呑まれたりはしない。

だがな、怒りの炎は今もなお俺の内側で燃え盛ってるんだよ………っ!

あいつを燃やし尽くすまで、この炎は消えやしない………!

 

俺は地面を踏みしめて、ラズルに言った。

 

「退け! 邪魔するって言うのなら………潰すぜ?」

 

「はっ! 良いねぇ! やってみろよ………っと言いたいところだが―――――」

 

ラズルは道を開けた。

 

「いいぜ。行きな」

 

あまりに素直に立ち退いたので、俺達は呆気に取られた。

 

いや、確かに退けとは言ったけど…………。

ここまであっさり退かれるとな。

逆に罠だと思って警戒してしまう。

 

しかし、ラズルの言葉はどうにも嘘を言っているようには見えない。

 

すると、ラズルの隣にいたヴァルスが前に出てくる。

 

「此度の一件、我々は勇者殿(・・・)に手を出すつもりはありません。これはあなたとリゼヴィム殿で着けなければならないケリなのでしょう」

 

俺とリゼヴィムで着けるべきケリ。

そうだろうな。

その通りだ。

 

美羽もリアスもアーシアもうちの親を、オーフィスを、ディルムッドを襲われて悲しみ、怒っている。

他の皆もそうだ。

 

でもな―――――あのクソ野郎を殴るのは俺の役目なんだよ。

っと、ヴァーリも忘れちゃいけないな。

 

リゼヴィムはヴァーリにとってもケリを着けなければいけない敵なんだ。

 

俺は深く息を吐いた後、浮かんできた疑問をヴァルスに投げ掛けた。

 

「さっき、俺には手を出さないと言ったな? つまり、他の皆には手を出すと?」

 

ヴァルスは不敵に笑みを浮かべると、その視線をモーリスのおっさんへと移した。

 

「―――――剣聖殿。再び、私と剣を交えていただきたい」

 

「おいおい、俺にそんな暇があると思うか? ………っと、言うべきなんだろうな。――――良いぜ。こうも堂々と挑まれてしまえば、断る訳にもいくまいよ」

 

モーリスのおっさんは鞘に納めていた剣を引き抜き、ヴァルスの前に立った。

 

二人とも尋常じゃないレベルのオーラを身に纏うと、静かに一歩を踏み出した。

一歩、また一歩と間合いを詰めていく。

最終的に二人は振れば刃が届く距離まで近寄ってしまった。

 

そして――――――。

 

「「オォォォォォォォォっ!」」

 

その場で高速の斬り合いが開始される!

激しく鳴り響く金属音!

二人の間合いの間では幾重にも火花が咲き乱れる!

 

二人ともその場から動いてはいない。

ただ剣捌きだけで相手の攻撃をいなし、己の刃を届かせようと剣を振るう。

初めは目で捉えられる剣速だった。

それが一撃、二撃、三撃とぶつかり合う度に二人の剣速はギアを上げていった。

 

今となっては霞む程度にしか目に捉えることができない。

 

暫し撃ち合ったところで、二人は剣を振るうのを止めた。

 

おっさんが感心したように口笛を吹いた。

 

「この短期間でここまで腕を上げてくるたぁ、大したもんだ」

 

「フフフ……これくらいで驚いてもらわれては困りますな。私はまだ本気を出していませんよ?」

 

「だろうな。悪いが、俺もだ。こいつはウォーミングアップ、準備運動みたいなもんだ。―――――本当の斬り合いはここからだ」

 

次の瞬間―――――二人は俺達の右手へと駆け出した。

高速、神速の領域で剣を振るいながら、緑の中へと入っていく。

 

ズゥゥゥゥンと音を立てて、二人が入っていった周囲の木が倒れていく。

二人の振るった剣圧で斬られたのだろう。

次々と木々が薙ぎ倒されていく。

 

「ははははははっ!」

 

おっさんが笑いながら鞘に納めていたもう一本の剣を抜き放った。

 

同時に放たれる黒い剣圧!

 

ヴァルスはそれを体を捻って回避すると、お返しと言わんばかりに自らも剣圧を飛ばして応戦する。

 

………ヴァルスのやつ、以前よりも遥かに力を上げてやがる。

力だけでなく、剣技も。

 

しかし、ヴァルスの武器は剣だけじゃない。

魔法もあいつの力の一つ。

 

ヴァルスは後ろに飛び退くと、手元に魔法陣を展開。

 

「炎獅子よ!」

 

魔法陣から出現したのは炎で形作られた獅子。

炎の獅子が空を蹴って飛び出し、おっさんへと迫る!

 

かなりの熱量を持った炎だ。

『戦車』の防御力があるとはいえ、受ければ相当なダメージを受けるだろう。

 

おっさんは炎の獅子を前にして――――――。

 

「喝ッッッッッ!」

 

炸裂する気合い!

大気を伝って俺の肌をビリビリ刺激してくる!

 

その気合いを受けてヴァルスの放った炎獅子は霧散、かき消されてしまった。

 

気合いだけであの炎の魔法を………打ち消した………?

 

あまりの光景に絶句する俺達。

ヴァルスもどこか呆れた表情を浮かべ、言葉も出ないといった雰囲気で………。

 

「やれやれ………あなたはどこまで底無しなのです?」

 

悪神の下僕ですら呆れる『剣聖』の実力は、仲間の俺達にすら測れない――――――。


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