ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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10話 赤龍帝 復活!!

[美羽 side]

 

お兄ちゃん達が結界の中に入ってから十分が過ぎた。

 

ボクはシトリー眷属の皆と結界を張り続けている。

 

「ぐっ」

 

隣で気張っているのは匙君。

 

今は何とか耐えてるけど、もうすぐ魔力が底をつきそう。

 

匙君だけじゃない。

 

会長さん、副会長さん以外の人はもう限界が近い。

 

「不味いですね。私の眷属はもう私と椿姫以外は限界が近いです。美羽さんはどうですか?」

 

「ボクはまだまだいけます。だけど、コカビエルが本気で暴れだしたら、長くはもたないかもしれません」

 

「そうですか………。サーゼクス様が到着されるまでまだ時間がかかります。やはり、学園の崩壊は免れそうにありませんね。耐え難いことですが………」

 

会長さんは苦い顔で学園の方を見た。

 

その時だった。

 

赤い光の柱が現れ学園を照らした。

 

「この波動、魔王クラス!? まさか、サーゼクス様が? いや、違う。それに、まだ時間はかかるはず。一体………」

 

いつもクールな会長さんが驚いていた。

 

会長さんだけじゃない、シトリー眷属の皆がいきなりのことに驚きを隠せないでいた。

 

ボクはこの力を知ってる。

 

だって、お父さんと戦っていた時もそうだったから。

 

赤く激しいオーラ。

 

でも、とても優しい―――

 

「お兄ちゃん………」

 

ボクはこの戦いの行方が見えたような気がした。

 

 

 

 

[美羽 side out]

 

 

 

 

俺の体から赤いオーラが発せられている。

 

ドライグ、これは―――

 

『ああ。遅くなってすまない。今しがた、最後の調整が完了した』

 

いや、ある意味良いタイミングだったよ。

 

今、俺は目の前のクソ堕天使を殴りたくてしょうがないからな。

 

完了したってことはアレ(・・)も使えるんだよな?

 

『もちろんだ。かなりの時間を要してしまったがな。ただ、今回は止めておけ。アレは負担が大きすぎる。まずは普通の状態で体を慣らしていけ』

 

了解だ。

 

『まぁ、コカビエル程度ならアレは使う必要もないと思うがな』

 

コカビエルが驚愕しながら尋ねてくる。

 

「これは………っ! 赤龍帝、おまえは力を隠していたというのか?」

 

「別に隠してたわけじゃねぇよ。ただ、神器が不調だっただけだ」

 

俺から発せられるオーラが更に膨れ上がる。

 

地面にヒビが入り、大気を揺らす。

 

『さぁ、いこうか相棒。やつに分からせてやれ。自分が誰にケンカを売ったのかを』

 

そうだな。

 

いくぜ、ドライグ!

 

俺達、赤龍帝の力を存分に見せつけてやろうぜ!

 

『応ッ!』

 

俺は強く言葉を発した。

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ!!!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』

 

籠手の宝玉が赤い閃光を解き放つ。

 

赤いオーラが激しさを増し、俺を包み込む。

 

そして、俺は赤い龍を模した全身鎧を身に纏う!

 

禁手(バランス・ブレイカー)、『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』!! さぁ、覚悟しろコカビエル。散々やってくれたツケはきっちり払ってもらう!」

 

 

 

 

俺はゆっくりと歩み始める。

 

対してコカビエルは一歩後退りした。

 

どうやら、今の俺の力に驚きを隠せないでいるようだ。

 

「この波動、魔王クラスだと!? バカなッ!」

 

「今更、後悔しても遅いぞ。てめぇは俺が今、ここで滅ぼす!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

一瞬の倍加、久しぶりの感覚だ。

 

禁手を使ったのなんてシリウスと戦ったときが最後だったからな。

 

背中のブースターが大出力でオーラを噴出させ、コカビエルと距離を一瞬で詰めた!

 

「なっ!?」

 

「まずは一発!」

 

鋭いアッパーがコカビエルの顎を捉えた!

 

打撃音が周囲にこだまする。

 

「ガッ、ハッ」

 

コカビエルの体が宙に浮く。

 

今の一撃はかなり効いたはずだ。

 

なにせ、赤龍帝の力と錬環勁気功で高めた一撃だからな。

 

俺はそこから更にもう一撃を加えてコカビエルを吹っ飛ばす!

 

コカビエルが上空で体勢を建て直す。

 

「くっ、ここまでとは! だが!」

 

手元には巨大な光の槍を作り出して俺に放ってくる。

 

体育館を吹き飛ばしたものよりもデカい。

 

後ろの方で焦る皆の声が聞こえてくる。

 

コカビエルの全力の一撃か。

 

あんなのくらえばアウトだろうな。

 

―――普通なら。

 

「そんなもんで、俺がやられるかよ!」

 

避けるまでもねぇ!

 

真正面から打ち砕く!

 

衝突する俺の拳と光の槍。

 

一瞬の拮抗。

 

 

――――砕けたのは光の槍だ。

 

 

「この程度かよ?」

 

「何だと?」

 

俺の言葉にコカビエルは眉をひそめる。

 

「この程度でサーゼクスさんにケンカを売ろうとしてたんだろ? おまえじゃあ、サーゼクスさんには勝てねぇよ。何も守ろうとしないおまえ程度じゃな!」

 

「貴様ァ!」

 

激昂してコカビエルは突っ込んでくる。

 

手元に光の剣を作り出し、斬りかかってきた。

 

俺はそれを左手で受け流し、ボディブローをぶち込む!

 

「ぐぅ!」

 

コカビエルは耐えられず、その場に崩れ落ちそうになる。

 

だけど―――

 

「この程度で終わらせるわけがねぇだろ!」

 

俺は右足を踏み出し、更に気を練り上げる。

 

錬環勁気功で高めた気が俺の体を駆け巡る。

 

そして、両の拳を握り、連続で繰り出す!

 

放つのは拳の弾幕だ。

 

「オオオオラァアアアアァ!!!!」

 

マシンガンのごとく絶え間なく続く俺の拳はその全てがコカビエルの体を抉る。

 

コカビエルは抗うことも出来ず、ただ俺の拳をくらうだけ。

 

反撃の隙なんて与えねぇ!

 

こいつはここで徹底的に潰す!

 

コカビエルの体が宙に浮く。

 

歯が砕け、羽根は抜け、見る影も無いくらい無惨な姿になっている。

 

『相棒、もう決めてしまえ』

 

ああ、こいつで終らせる!

 

 

「これで終わりだ!!」

 

 

 

ドゴンッ!!

 

 

 

最後に放ったトドメの一撃。

 

生じた衝撃波が周囲にまで影響を及ぼし、学園を覆っていた結界にヒビが入る。

 

ついにコカビエルは崩れ落ち、その場から全く動かなくなった。

 

全身の骨を砕いて、完全に意識を絶った。

 

もうこいつが起き上がることはない。

 

俺はコカビエルに背を向け、部長達の元へと歩いていった。

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

イッセー君が強いことは分かっていた。

 

フェニックスすら打ち倒すその力。

 

その力を扱いきる技量。

 

それら全てが僕達よりも遥かに上だった。

 

 

だけど、僕達が今まで見ていたのはイッセー君の力の一端だったのかもしれない。

 

初めて見るイッセー君の禁手。

 

赤い龍を模した全身鎧。

 

 

その力は僕達の想像を絶していた。

 

ほんの数分前までは圧倒的に優位に立っていたコカビエル。

 

僕達が束になっても敵わなかったあの強敵を、力を完全に取り戻したイッセー君は圧倒していた。

 

あのコカビエルが手も足も出ないなんて………。

 

そして、イッセー君はとうとうコカビエルを撃ち破った。

 

校庭に展開されていた魔法陣も消えた。

 

どうやら、コカビエルが倒されることで魔法陣も消えるようになっていたらしい。

 

これで僕達の町は消滅の危機を脱したことになる。

 

色々な事が起こったけど全てが終わった。

 

全員がそう思った。

 

 

「―――これが今代の赤龍帝か。面白い」

 

 

空から聞こえてきた突然の声。

 

儚い音と共に学園を覆っていた結界が砕け散る。

 

空を見上げるとそこにいたのは白。

 

白い全身鎧を纏った者が僕達を見下ろしていた。

 

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 

「―――これが今代の赤龍帝か。面白い」

 

結界が砕けると共に現れたのは白い鎧を纏った誰か。

 

声からして若い男だとは思う。

 

すげぇプレッシャーだな。

 

コカビエルの比じゃねぇぞ。

 

「何者なの!」

 

部長が叫ぶ。

 

コカビエルと事を終えた後なので警戒しているようだ。

 

「我が名はアルビオン。二天龍の一角、白龍皇だ」

 

「「「!?」」」

 

男の言葉にこの場にいる全員が戦慄する。

 

白龍皇ってドライグが前に言ってた白い龍だろ?

 

赤龍帝の俺と相反する存在。

 

マジかよ。

 

このタイミングで白龍皇が現れやがったのか!

 

「それで? 白龍皇が何の用だよ? まさか、俺と戦いに来た、なんて言うんじゃないんだろうな?」

 

勘弁してくれよ。

 

久しぶりの禁手で結構疲れてるんだぜ?

 

「俺としては今すぐ君と戦いたいところなんだが、俺も色々と忙しくてね。今回はアザゼルに頼まれてコカビエルを回収しに来ただけさ。あと、そこのはぐれ神父もな」

 

アザゼル………堕天使のトップか。

 

「回収してどうするつもりだよ?」

 

「そいつらを堕天使側で裁きたいそうだ」

 

「なるほどな。組織の問題児は組織で何とかしたい、ってところか」

 

「まぁ、そんなところだ」

 

「分かった。さっさと連れていけよ」

 

「案外、すんなり認めるんだな」

 

「下手に断ったら、それを理由におまえと戦うことになるかもしれないしな。それに………そいつら邪魔だし」

 

「なるほど。今代の赤龍帝は色々と面白いな」

 

白龍皇はそう言うと地面に伏しているコカビエルとフリードを担ぎ、踵を返す。

 

『無視か、白いの』

 

籠手からドライグの声が発せられる。

 

『やはり、起きていたか、赤いの』

 

『まぁな。そちらの所有者はかなりのもののようだな』

 

『それはお互い様だろう? だが、赤いの。以前のような敵意が感じられないが?』

 

『それこそお互い様だ。俺もおまえも、今は戦い以外の興味対象があると言う事だ』

 

『そう言うことだ。こちらはしばらく独自に楽しませて貰うよ。偶には悪くないだろう? また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

二体の龍はそれを最後に会話を終了させたようだ。

 

「では、また会おう。我がライバルよ」

 

白龍皇は俺を一瞥すると、そのまま飛び去って行った。

 

ライバル、ねぇ。

 

なんか、勝手にライバル認定されたんだけど………。

 

『相棒、気を付けろよ。今代の白龍皇はかなりの力量だぞ』

 

それは会ってみて感じ取れたよ。

 

『恐らく、相棒と同レベルと考えても良い』

 

だろうな。

 

全く、厄介なやつに目をつけられたもんだ。

 

白龍皇が飛びっきりの美女だったら俺もやる気出すんだけどなぁ。

 

ライバルから恋人へ的なムフフな展開があるかもしれないし。

 

『やつは男だぞ?』

 

そうなんだよ!

 

過去に女性の赤龍帝とかもいたみたいだから、少し期待してたのに!

 

俺の夢は砕け散ったよ!

 

ドライグ、俺の夢を返してくれ!

 

『知るか、そんなもん!』

 

はぁ、白龍皇のことは後回しにしよう。

 

今考えても仕方がないしな。

 

とりあえず、部長達の所に戻ろう。

 

俺は鎧を解除して、今度こそ部長達のところに戻ることにした。

 

 

 

 

「お疲れさまです、兵藤君。あなたのおかげで学園は救われました。本当にありがとう」

 

俺が戻るとソーナ会長がお礼を言ってきた。

 

「いや、俺だけの力じゃないですよ。皆がそれぞれの役割を果たして、今回の事件を解決したんです。俺は俺が出来ることをしたまでですよ」

 

俺がそう言うとソーナ会長は頭を上げて微笑んだ。

 

今の会長を可愛く思ってしまった。

 

なんだろう、普段厳しいイメージがあるからかな。

 

すごいギャップを感じた。

 

匙が惚れるのも分かるかも。

 

「さて、私達は学園の修復をしなければなりませんね。朝までに終わるかどうか・・・・」

 

会長の言葉にハッとなる俺。

 

周囲を見渡すと校庭のあちこちに大きなクレーターができ、被害が無かったはずの校舎にまで損壊が見られる。

 

『まぁ、主に相棒の禁手による余波だな』

 

皆の視線が俺に集まる。

 

何で俺を見るの!?

これやったの俺ですか!?

俺のせいなんですか!?

いや、そんな苦笑いを返さんで下さい!

 

「なんか、もう、すいませんでしたぁ!!」

 

「だ、大丈夫よイッセー。お兄様達がもうすぐ到着するし、何とかなるわ。気にしないで」

 

うぅぅ、部長の優しさがしみるぜ!

 

俺、後片付けも頑張ります!

 

そこで、俺の視界に一人で聖魔剣を見つめる木場の姿が映った。

 

「やったな。木場」

 

「うん。イッセー君の、皆のおかげでとりあえずの決着を着けることが出来たよ。ありがとう」

 

そう言う木場の顔は憑き物が取れたように晴れやかなものだった。

 

すると、気絶から目が覚めたアーシアが木場の元に寄る。

 

「………木場さん、また一緒に部活できますよね?」

 

神の存在を否定され、かなりのショックを受けたはずのアーシアだけど、今は木場の心配をしている。

 

木場がそれに答えようとしたとき、部長が木場の名前を呼ぶ。

 

「祐斗」

 

木場は部長の方へと振り返る。

 

「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手だなんて、主として誇らしいわ」

 

木場はその場に膝まづく。

 

「部長。僕は部員の皆を、何より命を救っていただいたあなたを裏切ってしまいました。お詫びする言葉が見つかりません・・・・」

 

「でも、あなたは帰ってきてくれた。それだけで十分よ。皆の想いを無駄にしてはダメよ」

 

「部長………。僕はここに改めて誓います。僕はリアス・グレモリーの騎士として、あなたと仲間たちを終生お守りします」

 

木場がそう言うと、部長は木場の頬をなで、抱き締めた。

 

「ありがとう、祐斗」

 

こんなときに思うのもなんだけど………。

 

部長に抱きしめられてる木場が羨ましい!

 

ちくしょう、イケメン王子め!

 

俺と変われ!

 

………なんてことを考えると俺の隣にいつの間にか美羽がいた。

 

「どこに行ってたんだ?」

 

「学校の修復だよ、早くしないと朝になっちゃうし」

 

「へっ?」

 

美羽に言われて俺は校舎を見る。

 

 

 

………直ってる。

 

 

 

さっき会長と話してる時はボロボロだった校舎がいつの間にか完全に直っていた。

 

あれからまだ数分しか経ってない。

 

「いつの間に!?」

 

「え~と、お兄ちゃんが禁手になったときに術式を仕込んどいたの。すぐ終わるかなって思ってたから。流石に運動場とか体育館とかは修復出来てないけど・・・・」

 

テヘヘと笑う美羽。

 

いやいやいや、優秀すぎるだろ!

 

美羽ちゃん、普段の生活と魔法使ってる時の差が激しすぎるよ!

 

普段のどこか抜けてる天然ドジッ子娘は何処へ!?

 

いや、全然良いんだけどね!

 

実際、助かったし!

 

「それより、お兄ちゃん。リアスさんに抱きしめられてる木場くんを見て羨ましがってたでしょ?」

 

なぬ!?

 

「何故にそれを!?」

 

「見ればすぐ分かるよ。でもね、あれはどう?」

 

美羽が指差す方向には木場。

 

いや、正確には部長に尻を叩かれている木場の姿。

 

「皆に心配をかけた罰よ。きっちり一万回受けてもらうわ」

 

「は、はい!」

 

一万!?

 

俺達の時の十倍じゃねぇか!

 

俺と匙、小猫ちゃんは咄嗟に尻を手で隠してしまう。

 

あれは俺達にとってトラウマ以外の何物でもねぇよ!

 

「部長、一万も数えれるんですか? 途中で何回か分からなくなるんじゃ………」

 

「心配いらないわ、イッセー。朱乃がカウンターで数えてくれるから」

 

「ええ、私がしっかりカウントしますから、何の問題もありませんわ」

 

朱乃さんが手にカウンターを持ちながら言う。

 

そのカウンター、どっから出したの?

 

というより、どこか楽しそうですね朱乃さん!

 

完全にS顔になってるじゃないですか!

 

「し、心配いらないよ、イッセーく、ん。これも部長………の愛のムチだと、うっ………思えば耐えられるから………うっ!」

 

尻を叩かれながら笑顔を見せる木場。

 

うん………とりあえず、頑張れ。

 

「美羽」

 

「何?」

 

「尻叩きはもういいや………」

 

この後、木場は尻を押さえたまま、しばらくその場から動けなくなった。

 

 

 

 

コカビエル襲撃事件から数日後。

 

「やあ、赤龍帝」

 

部室に入った俺を出迎えたのは駒王学園の制服を着たゼノヴィアだった。

 

「な、なんでここに?」

 

俺が尋ねた瞬間、ゼノヴィアの背中から黒い翼が生えた。

 

気配で何となく分かってたけど俺は驚きを隠せないでいた。

 

だってこいつ、この間まで悪魔を敵視してたじゃん!

 

そのゼノヴィアが悪魔になったなんて信じられねぇ!

 

「ぶ、部長、これはどういう………」

 

「ゼノヴィアはね、私の騎士として悪魔になったの。これからよろしく頼むわね」

 

よろしく頼むと言われても………。

 

俺はまだ状況を理解できてないんですけど………。

 

すると、ゼノヴィアが答えた。

 

「神がいないと知ってしまったのでね。破れかぶれで頼み込んだんだ」

 

おいおい、破れかぶれすぎるだろ!

 

君の信仰はそれで良いのか!?

 

「デュランダル使いが眷属に加わったのは頼もしいわ。これで祐斗とともに剣士の両翼が誕生したわね」

 

部長は楽しげだ。

 

細かいところにこだわらないのが部長らしいというか何というか。

 

まぁ、聖剣使いのゼノヴィアが眷属入りしてくれたのは頼もしいとは思うけど。

 

レーティングゲームの時なんか、相手は悪魔だから大活躍しそうだ。

 

「今日からこの学年の二年に編入させてもらった。よろしくね、イッセーくん♪」

 

「真顔で可愛い声を出すな」

 

「むぅ、イリナの真似をしたのだが、上手くいかないものだ」

 

はぁ、なんか出会ったときのイメージがかけ離れていくような………。

 

「でもよ、本当にいいのか? 悪魔になってしまって」

 

「神がいないと知った以上、私の人生は破綻したに等しいからな。………だが、敵だった悪魔に下るのはどうなのだろうか? いくら魔王の妹とはいえ………。私の判断に間違いはなかったのか? ああ、お教え下さい、主よ! はうっ!」

 

何やら自問自答した上、祈りを捧げて頭痛をくらってるよ。

何してんだか。

 

こいつも結構、変なヤツだよね。

 

ここで、俺は一つ疑問に思った。

 

「そういえばイリナは?」

 

ゼノヴィアがいるのにイリナがいないのはなぜだ?、

 

ゼノヴィアは嘆息しながら答える。

 

「本部に帰ったよ。………イリナは私より信仰が深い。神の不在を伝えたら、心の均衡はどうなるか………」

 

イリナのことを思って伝えなかったのか。

 

だけど、これはゼノヴィアとイリナは味方から敵になったということだ。

 

ゼノヴィアはそれが分かっているのか、何処か覚悟を決めているようだ。

 

ゼノヴィアは続ける。

 

「私は最も知ってはならないことを知ってしまった厄介者、異端の徒になってしまった。………私はキミに謝らなければならない、アーシア・アルジェント」

 

「え?」

 

「主がいないのならば、救いも愛も無かったわけだからね。本当にすまなかった。キミの気が済むのなら殴ってくれてもかまわない」

 

ゼノヴィアは深く頭を下げる。

 

突然の謝罪にアーシアは慌てるが、宥めるように言った。

 

「ゼノヴィアさん。私はこの生活に満足しています。今は悪魔ですけど、大切な方々に出会えました。私は本当に幸せなんです」

 

アーシアは聖母のような微笑みでゼノヴィアを許した。

 

やっぱりアーシアはいい子だよなぁ。

 

「そうか、ありがとう。………そうだ、一つお願いを聞いてもらえるかい?」

 

「お願い、ですか?」

 

首をかしげて聞き返すアーシアにゼノヴィアは笑顔で言う。

 

「今度、この学園を案内してくれないか?」

 

「はい!」

 

アーシアも笑顔で答えた。

 

初めの出会いは最悪なものだったけど、こうして仲良くしてくれるのは良いことだ。

 

ゼノヴィアも悪いヤツじゃないと思うしな。

 

「我が聖剣デュランダルの名に懸けて、そちらの聖魔剣使いと赤龍帝、キミとも手合わせしたいものだね」

 

「いいよ、今度は負けないよ」

 

「ああ、いつでも相手になるぜ」

 

俺と木場も笑顔で返した。

 

部長が手を鳴らす。

 

「さぁ、新入部員も入ったことだし、オカルト研究部も再開よ!」

 

「「「はい、部長!」」」

 

全員が元気良く返事をする。

 

この日、オカ研に久しぶりに笑顔が帰ってきた。

 




なんとか第三章を書き上げることが出来ました!

ヴァーリが出てきましたが、本作ではヴァーリも強化していきます

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