ニーナ達を眷属に迎え入れたその日の夜。
「………それは本当なんだな?」
『ああ』
自分の部屋にいた俺は通信用魔法陣を耳元に展開して、連絡を取っていた。
通信の相手―――――ティアは俺の問いに肯定を示した。
『フェニックス家の三男坊は無事だ。その事に間違いはない。現に私はそれを確認しているからな』
そうか…………ライザーは無事だったか。
俺の予想通り、ティアはライザーのことを把握していた。
あの映像の輝きはティアが使う転移魔法陣と同じ輝きだったから、気づけたわけだが…………。
俺はライザーの無事に安堵しながらも、疑問を覚えた。
「無事が確認できているなら、なぜ教えてくれなかったんだ?」
疑問は他にもある。
ティアが把握しているなら、冥界側も把握しているはず。
なぜ未だ行方不明ということになっているんだ?
それに一緒に消えた
すると、通信用魔法陣の向こうからティアの重い声が聞こえてくる。
『すまないが、言えない』
「言えない…………? どういうことだよ?」
『そのままの意味だ。
あいつ…………?
ティアは誰かに口止めされているのか?
というか、根本的な話なんだけど、なんでティアがあの場に転移できたんだ?
しかし、今のティアの口調だとそれも教えてくれなさそうだ。
俺はティアの言葉に更に疑問を抱きつつも、別の質問をした。
「ライザーの無事を皆に教えても良いのか? 少なくともレイヴェルには伝えて起きたい」
『そうだな…………詳しいことは言えないが、ライザー・フェニックスが無事であることは教えても良いだろう。ただし、駒王町の「D×D」メンバーに限るがな。それ以外への通達は認められない』
「よっぽど、秘匿性が高い情報ってことらしいな」
『そうだ。今回の件には色々と面倒なことが絡んでいてな。簡単に表に出すわけにはいかないんだ』
ティアがそこまで言うか。
一体、今回の騒動の裏にどんな闇が潜んでいるのだろう?
話を聞く限りではかなりヤバそうだが…………。
俺は少し考えた後、返事を返した。
「了解だ。ライザーが無事なことが分かっただけでも大きいよ。ありがとな、ティア」
『礼には及ばない。それに連絡が遅れたことは申し訳なく思っている』
「いいさ。ティアにはティアの事情がある。それに面倒なことが絡んでいるのなら尚更だよ。本当にありがとう」
『それではこれで切らせてもらうぞ? 近々、そちらには改めて連絡がいくだろう。その時にまた会おう』
「分かった」
▽
ティアとの通信を終えてからのこと。
俺は家に住む女性陣達と一緒に地下の大浴場にいた。
ニーナとリーシャ、それから小学生くらいの姿となったサリィとフィーナもいる。
皆の表情はこの二日間の暗さを感じさせないほど明るいものになっていた。
理由はもちろん、ライザーの無事を確認できたことを伝えたからだ。
伝えた時には皆一様に安堵しているようだった。
特にレイヴェルは今まで張りつめていたものが解かれたような表情をしていたな。
「もう、お兄さまったら本当に心配をかけて…………。でも、無事だということが分かって良かったです…………」
「ああ。本当に良かったよ。色々不明なところも多いけどさ、とりあえずは無事が確認できた。今はそれだけで十分だ」
「はい。…………しかし、お父さまやお母さま、他のお兄さま方にも知らせてはいけないのですよね?」
「………悪いな。今はまだダメらしい。だけど、ティアが言うには近々俺達に通知が来るらしい。もしかしたら、その時にライザーに会えるかもしれな」
「そうですか…………。ティアマットさまがなぜ、お兄さまの行方を知っているのか気になりますが、それでも気持ちがかなり楽になりましたわ。本当………」
「そうだな…………」
俺は風呂場に立つ湯気を見ながらそう呟く。
色々分からないところもある。
ティアが言っていた闇も気になる。
でも、今は、今だけはライザーの無事を喜ぼう。
今日はそれで良いだろう?
生きているならまた会える。
不敵な笑みを浮かべて業火を燃やす姿を見れる。
あいつとはもう一度戦おうと約束したしな。
ライザーを心配していたリアス達も疑問を抱きながらも、今日はただ無事を喜ぶことにしている。
俺はふっと笑みを浮かべた。
「今日は眷属も増えたし、ライザーの無事も確認できた。良いことづくめの一日だったなぁ」
モーリスのおっさんにリーシャ、ニーナにワルキュリア。
昔の仲間と今の仲間とでまた賑やかな日々を送れる。
うちの眷属もメンバーが増えたし、これからは本格的に動けるかな?
そんなことを考えていると…………。
「お兄さんの背中おっきいね♪」
背中にとてつもなく柔らかいものが押し付けられる!
コリッとしたものが当たっていて…………これは!
これはまさか…………!
ニーナが生おっぱいを押し付けてきたぁぁぁぁ!
「レイヴェルさんのお兄さんのことも良かったし、今日は遠慮なくお兄さんに甘えられるかな♪」
ニッコリと微笑むニーナ。
湯船ではアリスが悔しそうな表情で拳を握り、その横では美羽が苦笑している。
リアス達もどこか羨ましげな視線をこちらに送っていてだな…………。
とりあえず、今の状況を詳しく説明しよう。
俺は今…………ニーナとレイヴェルに背中を流してもらっています!
ニーナは背中、レイヴェルは腕をタオルでごしごししてくれているのだ!
少し前に女性陣がじゃんけんをしていたんだが、今日はこの二人が勝ったらしい。
ニーナが俺に抱きつきながら言う。
「私もお兄さんの眷属だもん。しっかりご奉仕しなきゃ。レイヴェルさん、これからよろしくね♪」
「こちらこそよろしくお願いしますわ、ニーナさま」
微笑みあう二人。
うんうん、我が眷属達は仲良くしてくれているようで何より!
ダブル金髪美少女に挟まれている俺の横ではリーシャがサリィの頭を洗ってあげていた。
「はい、流しますよ」
「ぷはぁ。サッパリした! ありがと、リーシャ」
プルプルと子犬のように頭を振るって髪の水滴を飛ばすサリィ。
お姉さんが子供の面倒を見ているような光景でこちらはこちらで微笑ましい。
サリィとフィーナって見た目通りの性格だから、ほんとに子供なんだよね。
何をするのにも二人一緒。
この間は二人でテレビゲームしてたっけな。
グリゴリの研究施設を見学していた時もそうだったけど見るもの全てが新鮮でいつも二人ではしゃいでいる。
もしかしたら、九重と仲良くなれるかも?
で、我らがお姉さんのリーシャなんだが…………。
体にタオルを一枚巻いただけの姿!
細くしなやかな四肢と、豊かなおっぱい!
上から覗けば先っちょが見えてしまいそうだ!
太もももただ細いだけじゃなくて、綺麗なんだよ!
腰から太ももにかけてのラインが最高!
そして、何より…………。
「うふふ、どうしたのですか、イッセー?」
このお姉さんスマイル!
あぁ…………いかん!
いかんよ、これは!
リーシャの裸なんて久しぶりだから、色々と元気になってしまう!
お、落ち着け、俺!
ここにはチビッ子もいるんだぞ!
それに――――――。
「なにをじろじろ見ているのでしょうか?」
フィーナの体を流しているワルキュリアが汚物を見るような視線を向けてくる!
そう、この場にはワルキュリアもいるのだ!
しかも、リーシャと同じくタオルを一枚だけ巻いたお姿で!
ワルキュリアが混浴している理由はニーナに誘われたからなんだが…………。
くぅぅ…………ワルキュリアも綺麗なんだよなぁ!
同じ銀髪美女だけど、ロセとはまた違った魅力があるんだよね!
ま、まぁ、あまり見ていると鋭い視線と共に毒舌が飛んでくるんだけど…………。
「混浴なので、見えてしまうのは仕方ありませんが…………あまり凝視されるのはいささか感心しませんね。先程からリーシャさまや私の体を舐め回すように見ているようですが」
「んな!? べ、別に舐め回すように見てなんか…………」
「…………」
「すいません、見てました! ごめんなさいです!」
「相変わらずイッセーさまは―――――ド変態ですね」
ぐはっ!
ナイフのように鋭い視線と心を抉るような口調が俺を痛め付けてくる!
ごめんなさい!
俺は変態です!
おっぱい大好き野郎でごめんなさい!
風呂に入ってから、お二人のおっぱいを凝視してました!
舐め回すように見てました!
揺れるんだもん!
あ、あれ…………?
俺ってワルキュリアの主になったんだよね?
立場、逆じゃね?
なんだろう、この躾られているような感覚は…………?
妙な感覚を覚えていると、ニーナが言ってきた。
「お兄さんお兄さん、こんなのはどうかな?」
ニーナは俺の背中に密着した状態で―――――体を上下に動かしてきた!
首だけ振り替えると、胸の谷間には石鹸!
泡立ち、ヌメリを持ったニーナのおっぱいが俺の背中を洗っていくぅぅぅぅぅぅ!
「んしょ、よいしょ…………。どうかな? ニーナの洗い方は?」
頬を赤らめながら微笑むニーナ。
ヤバい…………石鹸のヌメリとニーナの体の柔らかさ、体温が気持ちよすぎて…………!
すると、左手にも極上に柔らかい感触が。
こちらはレイヴェルが洗ってくれていた手で―――――。
「い、イッセーさま…………私もやってみたのですが…………。いかがでしょうか…………?」
れ、レイヴェルのおっぱいが俺の腕をサンドしている!
俺の左腕が左右から挟み込まれてごしごしされている!
二の腕から指の先まで、次々と制覇されてしまっている!
ダブル金髪美少女によるご奉仕!
最高じゃないか!
しかし、ここで動く者がいた。
「わ、私もイッセーさんのお体を洗いますぅぅ!」
「あ、アーシアさん!? わ、私もする!」
お湯につかっていたアーシアとアリスも参戦!
湯船から出てきて俺の元に駆け寄ってきた!
アーシアは俺の正面、アリスは俺の右手を押さえる。
二人とも俺に抱きつくような形で、ニーナ達と同じく体を動かし始めた!
「ど、どうですか、イッセーさん? わ、私だってこれくらいは…………」
アーシアが潤んだ瞳でそんなことを言ってくる!
「ニーナばかりにさせないわ…………。わ、私もやるもん…………。私は…………イッセーのお嫁さんだもん」
本日二度目のぐはっ!
上目使いのアリスとか反則過ぎる!
そんなアリスにニーナが言う。
「お姉ちゃん、本当にデレッデレッだね」
「う、うるさいわね…………。素直になれって言ったくせに…………」
ぷくっと頬を膨らませるアリス。
なんということだ…………。
前にアーシア、左にレイヴェル、右にアリス、そして後ろにニーナ…………だと。
四方を裸の金髪美少女達に囲まれ、その上、体を洗われている。
これが――――――
「お兄さん? 泣いてる?」
「ああ…………感動にうち震えているのさ!」
今日は本当に最高の日だ!
もうこれで終わりで良いだろ。
眷属も新たに迎えて、ライザーの無事も分かった。
おまけに金髪美少女達によるご奉仕。
一日を締めるのには完璧だと思うんだ。
すると…………。
「あ、イッセーのタオルが盛り上がってる。それ、どうしたの?」
「サリィさま、気になさらない方が良いかと。イッセーさまはケダモノですから」
▽
「今日はお兄さんと一緒に寝たいな」
風呂から上がった後、ニーナがそう言ってきた。
湯上がりでしっとり濡れた髪から落ちた滴が鎖骨のラインを通って胸元へ流れ落ちていく…………。
今までで一番色っぽいニーナにゴクリと喉がなる。
俺は飲み干した牛乳瓶を洗った後、ニーナの頭を撫でた。
「いいよ。今日は一緒に寝るか」
「うん!」
あぁ…………その天使スマイルが相変わらず可愛いなぁ!
まぁ、転生して悪魔になったんだけども。
寝ると言ってもまだ夜の九時。
就寝にはまだ早いだろう。
ということで、俺とニーナはリビングに出しているこたつに入り込む。
「ふぅ…………」
「はぁ…………」
二人揃ってこたつの暖かさに息を吐く。
ニーナは俺に甘えるようにして、肩に頭を乗せてくる。
そして、安心したような笑顔を見せた。
「うん、やっぱりお兄さんといると落ち着くなぁ。昔からね、お兄さんとくっついているとポカポカするんだよ?」
「ポカポカ?」
「うん。こうしてるとね、すっごく気持ちいいの。まぁ、お姉ちゃんの手前、我慢した場面もあったけど。でも、これからは存分に甘えられるね。お姉ちゃんも上手くやれているようで安心したよ」
「そっか」
やっぱり姉妹だもんな。
姉が去ったのだから、心配もするか。
それでも、ニーナはあの時、アリスの背中を押した。
俺の元へと送り届けてくれた。
「ニーナには色々と感謝だな」
「えへへ。だったら、ご褒美ほしいな」
「ご褒美?」
俺が聞き返すと、ニーナは頷く。
体を一旦起こすと―――――俺の膝に頭を寝かせてきた。
何ともニヤけた顔でニーナは、
「お兄さんの膝枕~」
くっ…………!
なんて可愛いおねだりなんだ!
この可愛さは美羽に通じるところがあるな!
すると、後ろから抱きついてくる者がいた。
「もうっ、ボクもかまってほしいな。ボクはお兄ちゃんの妹なんだから」
ぷくっと頬を膨らませてそう言うのは美羽。
「私もあんたの眷属なんだし、交ぜなさいな」
「私も参加しますわ」
こたつに侵入してくるアリスとレイヴェル。
「うふふ、今日はイッセーの眷属になった記念日です。色々とお話しするのも楽しいかもしれませんね」
「ゲームしよー! トランプ!」
「人生ゲームも面白そうです」
俺の向かいに座るリーシャと、こたつの上にトランプと人生ゲームを広げるサリィとフィーナ。
「では、お茶を淹れましょう」
キッチンに立ち、お湯を沸かすワルキュリア。
ふいにリビングの扉が開く。
部屋に入ってきたのはモーリスのおっさんだった。
「おいおい、おっさんをのけ者にするたぁ、寂しいことするじゃねぇの」
「のけ者って、おっさんは父さんと飲んでたんだろ?」
「おまえの親父殿は早々に寝ちまったよ。つーわけで、イッセー。一杯付き合えよ」
「あのなぁ、こっちの世界では俺は十七なんだよ。未成年は飲酒はダメだっての」
「バレなきゃ良いのさ。バレなきゃな」
うわぁ、絶対にアリスの性格を構成した一部はおっさんだわ。
だって、聞き覚えあるもの、そのセリフ。
と、ここで美羽の背後にディルムッドがいたことに気づく。
こいつ、いつの間に来たんだよ?
「マスター、ミカンはありますか?」
「ディルさん、あんまり食べると太っちゃうよ?」
「心配には及びません。肉がつきにくい体質ですので」
「なにその体質!? すっごく羨ましい!」
ワイワイと賑やかになるリビング。
賑やかな声を聞き付けてかリアス達も俺達の輪に参加。
こたつの周囲にも人が集まり、より賑やかになっていく。
異世界での仲間とこっちの世界での仲間、家族と笑顔で過ごす。
良いもんだよな、こういうの。
―――――――。
「ん?」
「どうしたの、イッセー?」
「何か…………いや、なんでもない」
「?」
この時、俺は気づいていたのかもしれない。
自分の体に起きている変化を。
でも、俺ははっきりとそれを認識できていなかった。
――――――君は変革しつつある。それは人間でも悪魔でもドラゴンでもなく、そして神でもない。君は全く違う存在に変わろうとしている。
――――――その力はこの世界を繋ぐ力だ。
――――――目覚めの時は近い。