ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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番外編 剣聖の手ほどき  

早朝。

この時間帯は朝の修業時間なので体内時計で起きることが出来る。

いつもなら、美羽の寝顔に癒されながらも体を起こし、ランニングへと向かうのだが…………。

 

この日はいつもと違っていた。

 

それは――――――。

 

「あ、起きた! イッセー、おっはよー!」

 

「おはようございます、イッセーさん」

 

腹の上にロリっ娘が二人いた。

活発そうな赤髪の女の子と大人しそうな水色の髪色の女の子。

歳でいえば、小学二年生くらいだろうか。

そんな二人が腹に跨がり、朝の挨拶をくれた。

 

「え、えーと…………おはよう、サリィ、フィーナ。…………何してるの?」

 

そうこの二人はリーシャと契約している妖精の二人組だ。

二人は自身の魔力で体を大きく出来るらしく、手のりサイズから小学低学年くらいまでなら姿を変えられるとか。

この二人はこう見えて神霊に仕えていたそうだから、こういうことが出来ても不思議じゃない。

 

そのため、二人が大きくなっていても特に驚くことではない。

 

俺が疑問に思うとすれば、そう…………。

 

「なにしてんの?」

 

「イッセーのお腹に乗ってる」

 

見りゃわかるよ!

そうじゃなくてね!

 

フィーナが苦笑しながら言う。

 

「えっとですね、この時間に起きられると聞きましたので、起こしにきたと言うか…………。そしたら、サリィが…………」

 

「あーそーんーでー!」

 

そう言ってサリィが抱きついてくる。

パジャマを引っ張り、髪の毛をいじくり回してきやがった。

 

…………子供か!

いや、見た目子供だけど!

別に違和感ないけど!

 

仮にも神霊に仕えてたんでしょ!?

 

つーか、この時間から遊ぶの!?

まだ五時前だよ!?

元気良すぎるだろう!?

 

そんな感じで早朝ツッコミを入れていると、隣で寝ていた美羽がまだ眠たそうな眼を擦りながら起きてきた。

 

「ん~………ふぁぁぁ…………。んん………お兄ちゃん…………おはよ?」

 

胸元のボタンが外れているため、あくびと共にポヨンと弾むおっぱい。

しかも、ノーブラのため生だ。

さきっちょなんて見えそうで見えなさそうで…………ギリギリ見えてる。

綺麗なピンク色がはだけたパジャマの間から覗かせていた。

 

…………朝から眼福です!

ありがとうございます!

あぁ…………美羽のおっぱいも相変わらず大きいなぁ!

お兄ちゃんは嬉しいよ!

 

瞼を擦る美羽と俺の腹の上に乗っているサリィ&フィーナの目があった。

 

そして――――――。

 

「お兄ちゃんがロリッ娘属性に………? というか、朝這い!?」

 

「なんで前、外れてるの!? あ、もしかしてセッ――――」

 

「サリィ! 朝からそんなこと言っちゃダメです!」

 

早朝からちょっとした騒ぎが起きた。

 

ちなみにだが、美羽のボタンが外れていたのは…………俺が寝ぼけて外したみたいです。

 

 

 

 

そんなこともあり、早朝から精神を磨り減らした俺。

今は朝の修業を終えて、朝食タイムだ。

 

先日の教会のクーデター組との一件を終えてから、こうして食卓を囲むメンバーが増えた。

 

それはもちろん、俺がアスト・アーデから連れてきたメンバー、モーリスのおっさんとリーシャ、そしてサリィとフィーナの四名。

 

初め、モーリスのおっさんは家に住むとなった時、遠慮していたんだ。

というのも、

 

『ここはおまえのハーレムみたいなもんだろ? 若いもんの中におっさんが住むってどーよ?』

 

と、俺達に気を使って、別の住みかを探そうとしていたんだ。

 

ま、まぁ、俺以外は全員女の子(両親は除く)、美女美少女達と一つ屋根の下ってところにおっさんが入り込む…………。

そう考えると何とも言えないものがある。

 

だけど、おっさんは俺の恩人だし師匠の一人だ。

そんな理由で追い出したりは流石にしない。

 

ただ一つ、俺が殺意を持ってしまったとすれば―――――。

 

『俺もハーレムに組み込まれるのか…………』

 

と、冗談でもそんなことを言ってきた時にはマジで殴ってやろうかと思った。

あと、吐き気がしてきたので、トイレに駆け込んだね。

 

それから、おっさんが家に住むことになった理由としては父さんと母さんの希望によるところが大きい。

俺が世話になった人にお礼をしたいというところと、向こうでの俺の話をおっさんの視点で聞きたいそうだ。

 

最近では、父さんと母さん、それからモーリスのおっさんの三人で酒を酌み交わすことが多くなった。

 

父さんがおっさんに言う。

 

「いやー、昨日は楽しかった。まさか、イッセーがあんなことをしているとは」

 

あんなこと!?

それはどんなことだよ!?

 

「まぁな。ま、こいつもそれなりに頑張ってたってことだな」

 

おっさんもニヤリと笑むが…………何を話した!?

 

その隣ではリーシャがニコニコ顔で味噌汁を啜っていた。

 

「うふふ。あのアリスが、あんな風に大胆になるなんて思ってもみませんでした。成長しましたね」

 

リーシャが言う『大胆』というのは、昨日、風呂場でアリスが俺の背中を流していたことだ。

 

最近では普通の光景になってきたけど、よくよく考えれば昔のアリスではあり得なかった。

…………確かに大胆になったよなぁ。

 

それで、俺もアリスに関して一つ驚いたことがある。

それはだな…………。

 

リーシャが微笑みながら言う。

 

「まぁ、あの日記にはイッセーへの気持ちをこれでもかと綴ってましたから。成就してくれたのは姉としては何よりです」

 

「イヤァァァァァァァ! それ言っちゃダメェェェェェェ!」

 

「『イッセーと添い寝しちゃった! ドキドキが止まらない!』って書いてたけど、今はどうなの?」

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇ! そんな暴露しないでぇぇぇぇぇぇぇ! 死ぬ! 心が死んじゃうぅぅぅぅぅ!」

 

微笑むリーシャと絶叫するアリス。

首をブンブン振りながらリーシャの口を塞ぎにかかってる。

 

日記…………旅の途中で書いていたのは知ってたけど、まさかあんな内容だったとは。

リーシャ曰く、

 

『ほとんどイッセーの観察日記でした』

 

とのこと。

 

その…………俺をそういう風に見てくれていたのは正直嬉しいが、少し恥ずかしい思いもあるかな。

手を繋いだとか、俺に背負われたとか、日常の何気ないところまで書き込んでいたようで…………。

 

「はぅぅぅ…………」

 

くっ…………!

恥ずかしがってるアリスが可愛すぎる!

俺を悶死させる気だな!

 

「なんつーか、少し見ない間にこいつも変わったな…………。ニーナが見たらどんな反応するやら」

 

モーリスのおっさんが沢庵をポリポリさせながら半目で呟く。

 

ニーナが今のアリスを見たらどんな反応するか。

多分…………いじりに来るな。

姉のこの変わりよう、妹としてはいじらずにはいられないだろう。

 

と、ここでモーリスのおっさんが皆を見渡しながら言った。

 

「そうだ。後で修業つけてやるよ。祐斗も呼んどけよ?」

 

その発言にオカ研メンバーの顔が青ざめていくのだった。

 

 

 

 

「よーし、集まったな」

 

帯剣したモーリスのおっさんが俺達を見渡す。

 

ここはグレモリー地下の修業用の空間。

そこにジャージ姿のオカ研メンバーと生徒会メンバーが集合していた。

本当なら他の『D×D』メンバーも呼ぶつもりだったんだけど、今日は都合が悪いらしく、ここにはいない。

我らがリーダー、デュリオに関してはまた一人で食べ歩きに出掛けただけだけどね。

 

おっさんが言う。

 

「先日の戦闘を見させてもらった。全員中々の動きだった。おまえらの歳を考えると十分過ぎる実力だろう。………だが、相手はおまえらの成長を待ってはくれん」

 

クリフォト―――――ヴァルブルガか率いてきた邪龍軍団の中には俺の複製体や新型の邪龍もいたという。

あの場にいたメンバーだけでも対処は出来ただろうが…………犠牲が出たかもしれない、というがあの場にいたリアス達の感想だった。

 

クリフォトの連中も奪った聖杯や複製した赤龍帝を使って力を着けてきている。

今後の戦闘は益々激しいものになっていくだろう。

 

「そこでだ。今日からおまえらをみっちり鍛えることにした。短期間で力をつけるのは難しいが、おまえらの足りないところを俺が見てやる。というわけで、祐斗、ゼノヴィア。それから、イリナ。まずはおまえらからだ」

 

おっさんの視線はまず、木場とゼノヴィア、イリナの三人に向けられた。

 

向こうの世界に行ったとき、木場とゼノヴィアがおっさんに相手をしてもらっているところは見たことがある。

それに俺が師匠のところへ行っている間、イリナもおっさんに相手をしてもらっていたそうだ。

 

今回、おっさんが三人を指名したのはその関係もあるのだろう。

 

「はい」

 

「ああ。よろしく頼む」

 

「前は全然歯が立たなかったけど…………今回はそうはいかないわ!」

 

三人はおっさんの前に立つとそれぞれ、獲物を握る。

木場は第二階層へと至り、手には日本刀の形状をした聖魔剣。

ゼノヴィアはデュランダルとエクスカリバーの二刀流、イリナはオートクレール。

先の戦いを経て、三人は足りないところを見つけ、更に成長した。

 

向こうの世界に行ったときと比べると実力はかなり上がっているだろう。

 

シトリーの『騎士』巡さんが訊いてくる。

 

「…………この三人を一度に相手するの? 兵藤くん、これは流石に無茶なんじゃ…………」

 

そういや、匙以外のシトリー眷属はおっさんの戦いを直接見たんじゃないんだっけか。

 

オカ研メンバーの剣士組の実力は彼女達も十分知っている。

正直、上級悪魔とだって余裕でやりあえるレベルだ。

特に木場に関しては騎士王を使えば更に上のレベルに手が届くだろう。

 

でも…………。

 

「いや…………あれでも足りないかな」

 

俺は苦笑しながらそう返した。

 

そうこうしている間におっさん対オカ研剣士三人組の戦いが始まる。

 

まず飛び出したのは木場。

思わず見入ってしまうほど綺麗な刀身の聖魔剣を握り、『騎士』のスピードでおっさんへと迫る。

真正面から撃ち合っては勝てないと踏んだのか、ジグザグに駆け、おっさんを翻弄しようとする。

 

剣が届く距離まで詰めた木場はおっさんの手前で残像を生み出した。

姿を消し、次に現れたのはおっさんの左手側。

 

「はぁっ!」

 

気合いと共に一閃する――――――。

 

が、いつの間にか抜刀されていたおっさんの剣がそれを阻む!

 

「っ!」

 

驚く木場。

抜刀の瞬間が見えなかったこともそうだろうが、今のスピードを容易に見切られたことに驚きを隠せないみたいだ。

 

剣を受け止めながら、おっさんは笑む。

 

「確かに前よりは速くなった。…………が、いくら速くなろうが今のままじゃ、どこから来るのか丸分かりだぞ」

 

そう告げると、おっさんの右手が動いた。

 

右手の剣はちょうど斬りかかっていたゼノヴィアの剣を上へと弾いた。

 

今のはデュランダルとエクスカリバーに濃密な聖なるオーラを纏わせ、破壊力を上げた状態で繰り出された剣戟だった。

それを意図も簡単に弾き返しやがったんだ。

 

ゼノヴィアは目を見開くが、不敵に笑んだ。

 

ゼノヴィアの背後から――――――オートクレールを構えたイリナが突貫をしかけていた!

天使の翼を羽ばたかせ、オートクレールに聖なるオーラを纏わせる。

あれに斬られたら戦意を失ってしまうそうだ。

 

エヴァルド・クリスタルディはギリギリ耐えたそうだが、それでもオートクレールの浄化の力に戦意を持っていかれそうになっていたとのこと。

 

いかにおっさんと言えども、オートクレールに斬られれば剣を降ろしてしまうだろう。

 

―――――斬られればの話だが。

 

「そいつも丸分かりだな」

 

おっさんは右手の剣を構えると鋭い突きを繰り出した。

おっさんの握る剣の切っ先がオートクレールの切っ先を捉える。

そして――――――イリナのオートクレールが弾き飛ばされた。

 

オートクレールがくるくると回転しながら、宙を舞い、離れた場所に突き刺さった。

 

「ウソッ!?」

 

「イリナ、気配がだだ漏れだ。そんなことじゃ、ゼノヴィアの後ろに隠れていても意味はねぇ。そんでもって――――」

 

おっさんがイリナに話している隙に木場とゼノヴィアが同時に剣戟を繰り出していく。

高速かつ破壊力の籠った剣が、あらゆる包囲からおっさんを襲う。

 

だが、そらは全て弾かれてしまう。

ただの二振りの剣によって。

 

「速い。高速で動くのは相手を翻弄する一つの手だろう。だがな、相手を翻弄するのにあちこち動き回る必要はないぜ?」

 

刹那、おっさんの体がぶれた。

 

ゼノヴィアが勢いに任せて斬る…………が、彼女の剣は虚しく空を斬った。

 

「なに…………っ!」

 

目を見開くゼノヴィア。

 

「ほれ、こっちだぜ」

 

そう言うおっさんが立つのはゼノヴィアの右手側だ。

 

端から見れば今のはただおっさんが横に動いただけ。

単純な動きだ。

 

しかし、そんな単純な動きをゼノヴィアは見失った。

 

「翻弄なんてのはな、最小限の足捌きでできるもんさ。肝心なのは相手の認識をずらすことにある。ま、幻術とか使えたら楽なんだけどよ」

 

そこへ、オートクレールを再び握ったイリナが上段からの一撃を放つ!

木場もそれに合わせておっさんの動きを止めようとする。

 

おっさんが言う。

 

「祐斗、受け身取れよ?」

 

「なっ―――――」

 

おっさんは剣を地面に突き刺すと、木場の間合い、その内側へと入り込んだ。

木場の手首を掴み、動きを封じ、そのまま足を払う。

 

バランスを崩した木場の体は宙で一回転。

地面に叩きつけられた。

 

「カハッ」

 

木場の口から空気が漏れる。

 

大したダメージは受けていないだろう。

その証拠に木場はすぐに立ち上がり、おっさんと距離を取った。

だけど、戸惑いは隠せていない。

 

おっさんは魔法の類が使えない。

最低限の魔法………転移や通信といったものなら使えるが、それ以外は全く使えないそうだ。

保有している魔力量が低い上、魔法に対する適正がないかららしい。

 

だから、おっさんは魔力、魔法に頼らずに勝てるように自らを鍛え上げた。

それが剣術、そして――――――体術だ。

 

「剣士ってのはただ剣を鍛えれば良いってもんじゃない。状況に合わせて動ける力が必要だ。得物が無かったら戦えない………ってのは論外だ。おまえらはもうちょい体術の方も鍛えた方がいいな。それと………」

 

おっさんの視線がイリナを捉えると、剣を引き抜いた。

 

次の瞬間、イリナが剣を上に構えて防御の構えを取る。

上からの攻撃を防ぐためだ。

 

だが―――――おっさんの剣はイリナの脇腹に触れていた。

イリナを横に斬り裂く、その直前で刃は止められていたんだ。

 

イリナが戸惑いの声を漏らす。

 

「どうして………!? 確かに上から来ていたのに………!」

 

その問いにおっさんはニヤリと笑んで答えた。

 

「おまえさんに見えていたのは俺の殺気が見せた幻覚みたいなもんだ。本物は上段からではなく、この横凪の一撃。ここで止めてなかったら今頃真っ二つだぞ?」

 

殺気のコントロール。

おっさんは殺気を操って、相手の認識を狂わせることができる。

 

今のように本当は横凪に剣を振るっているのに、相手は上からの一撃と誤認してしまう。

ほんの僅かに見せる殺気による幻覚。

これがどれだけ厄介なことか………。

 

おっさんは剣を収めると俺達を見渡して言う。

 

「いいか? あのストラーダのじいさんが言った通り、おまえらは神器の力に、剣の力に頼りすぎているところがある。頼るなとは言わん。神器や剣、使う獲物は言わば相棒だ。俺で言えばこいつらだな」

 

納刀した二振りの剣に視線を移した。

 

あの二振りは亡くなった親父さんから受け継いだ剣ではあるが、デュランダルやオートクレールのような聖剣でもなければグラムのような魔剣でもない。

良く斬れること以外は普通の剣だ。

 

それでも、今のように聖魔剣、デュランダル、エクスカリバー、オートクレールといった伝説に名を残す剣を相手にしても互角以上に渡り合った。

 

「武器は己の相棒だ。相棒は頼ってもいい。だが、頼りすぎれば相棒ばかりに負荷をかけることになる。そして、相棒ばかりに頼っているようじゃ、更なる高みは目指せん。つまりだ、相棒の力を引き出せるようにしつつも、己自身の力を高めていけ。そうすれば、おまえらはまだまだ強くなるぜ」

 

相棒の力を引き出せるようにしつつ、己自身の力も高める………。

 

おっさんが言うと説得力があるな。

剣本来が持つ力を遥かに超える力を振るってるもんな。

 

先日の戦いの記録映像を見せてもらったが、あのストラーダのじいさんとエヴァルド・クリスタルディも凄まじかった。

デュランダルのレプリカとエクスカリバーのレプリカ。

レプリカの力は本物の五分の一にも満たないと聞いているが、彼らは性能以上の力を引き出していた。

俺も彼らの動きに色々と学ぶべきところがあった。

 

おっさんの言葉に剣を交えた三人以外のメンバーも思うところがあるようで、頷き、考え込んでいた。

 

モーリスのおっさんは俺達の表情に笑む。

 

「ま、出来る限りの範囲でそれを教えてやるよ。いずれはおまえらも――――――」

 

収めた剣の一振りを引き抜く。

すると、刀身が濃密な剣気に包まれて―――――――黒く染まった。

 

おっさんが軽く剣を振るう。

 

その瞬間、このフィールドの地面が真っ二つに裂けた。

 

おっさんの立っている地点からフィールドの端まで。

断面は鋭利な刃物で斬られたように綺麗で、地中深くまで続いている。

 

おっさんは爽やかな笑顔で、

 

「これくらいは出来るようになるぜ」

 

「「「「それは無理ッ!!」」」」

 

 

 

 

 

 

おっさんによる修業が終わった後。

 

修業用のフィールドに横たわる複数の屍達(グレモリー眷属とシトリー眷属の近接戦メンバー)

おっさんのしごきを受けたメンバーは全員が汗だくになり、フラフラになっていた。

 

当のおっさんはというと、

 

「はっはっはっ。やっぱり若い奴らは元気があって良いな!」

 

と、ものすごく爽やかな笑顔を浮かべていた。

 

いやいや、その若者よりも元気そうじゃん!

おっさんの相手をした若者の方が死にかけてるんですが!?

 

木場なんて自慢の足がプルプル震えてるからね!?

 

「あぁ、トスカ………。僕はもうダメみたいだ………」

 

「おい、木場!? しっかりしろ! トスカさんを一人置いて逝く気か!?」

 

「………川の向こうに………同志たちが見えるよ………あ、あははは」

 

「木場ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

木場が壊れたよ!

渡るなよ!?

その川、絶対に渡るなよ!?

 

修業はおっさん一人対グレモリーとシトリーの近接戦メンバーの全員(俺とアリスは除く)で行われたんだが、誰の攻撃も掠らず、超絶的な足捌きに翻弄されまくっていた。

たまに飛んでくるおっさんの斬撃(手加減)に冷や汗を流し、攻撃すれば手足を掴まれて投げられる。

この繰り返し。

 

ボロボロになった匙が言う。

 

「こ、ここのところ、とんでもないジジイばかり相手にしているような気がする………」

 

龍王の鎧を纏った匙の攻撃も一蹴されてたな。

ラインは全て斬られるし、邪炎を放っても剣圧(手加減)で相殺されてたな。

鎧もスパスパ斬られてたし。

 

見学していたウィザード組はもう何と言ったらいいか分からないという表情だ。

 

リアスが呟く。

 

「何と言うか………滅茶苦茶ね」

 

「これが異世界の剣士、イッセーくんの師の力ですか………」

 

ソーナも眼鏡を直しながら、汗だくで倒れている眷属たちに視線をやる。

 

ふいにソーナが訊いてくる。

 

「イッセーくん、一ついいかしら?」

 

「どうしたの?」

 

「彼は………モーリスさんを眷属にする予定はあるのか気になってしまいまして。そこのところを聞かせてもらえますか?」

 

その質問にこの場の全員の視線が俺に集まった。

見学していたメンバーも、屍のように倒れているメンバーも。

 

確かに俺が眷属にしたいと思っているメンバーの一人はモーリスのおっさんだ。

ただ、おっさんは騎士団のことがあるから、受けてくれるか微妙なところなんだよね。

 

試しに訊いてみるかね?

 

「おっさん、俺の眷属になってくれないかな? おっさんがいてくれると心強いなんてレベルじゃないんだけど」

 

「ん? ああ、良いぜ」

 

………二つ返事で頷いた。

 

あ、あれ………?

俺としてはもうちょっと悩んだりするかと思ったんだけど………。

断られることも考えてたし………これはかなり予想外だ。

 

「ま、マジ?」

 

「んだよ? 眷属にしたいんじゃないのか?」

 

「い、いや、騎士団の方は? おっさんが抜けても大丈夫なの?」

 

「あ~、それか。それなら問題ねぇよ。近く団長の座を後進に譲るつもりだったからな。いつまでも俺が居座ってたら、後の奴らが経験を積めんだろう?」

 

マジでか。

おっさん、引退するつもりだったのか。

 

「俺も最近は衰えて来たしなぁ」

 

「どこが!?」

 

バリバリ現役じゃん!

体力も力もチートじゃん!

むしろ全盛期だろうが!

 

「ま、そんなわけよ」

 

「ちなみに次の騎士団長は誰が?」

 

「アーデルハイドだ。あいつなら実力もあるし、頭も切れる。騎士としても一流だ。問題はないだろうよ」

 

アーデルハイド………アーデルハイド・シルヴァスさんか。

 

女性だけど槍の達人で、剣を握っても強い。

炎の魔法を得意としていて、その実力はモーリスのおっさんを除けば騎士団でもトップ。

騎士団長ともなれば、その役職上、政治的なことにも取り組む必要があるけどアーデルハイドさんって頭いいもんな。

 

おっさんが団長の座を譲るのも納得の人選だ。

 

おっさんは言う。

 

「手続きとかがまだだからな。今すぐ眷属になるのは無理だが、それが済んだらなってやるよ。そのためには一旦向こうに戻る必要があるな」

 

そうなると、俺もおっさんについていった方が良いか。

 

今後の予定にふむふむと頷く俺。

 

 

 

とりあえず――――――――。

 

 

 

「えーと、なんかOKらしいです」

 

固まる皆の表情。

 

そして――――――。

 

「「「「えええええええええええええええええええええええええっ!!!!!」」」」

 




モーリス、眷属入り決定!
さて、どの駒になるかな~。

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