教会の戦士達の挑戦を受けた翌々日。
俺達の元を訪れる者がいた。
それはなんとタンニーンのおっさんだった!
「今日は済まんな」
「それはいいけど、おっさんが家に来るなんてどうしたの?」
兵藤家地下にある転移型魔法陣を通ってきたミニドラゴン姿のおっさんに訊ねてみる。
「実は頼みがあるのだ」
「おっさんから頼られるとはこれまた珍しい」
「うむ。俺の領民は大半が人間界から平穏を求めて流れてきたドラゴン達なのは知っているな?」
その話は以前聞いたことがある。
そもそも、タンニーンのおっさんが悪魔に転生したのはドラゴン達を守るためだと聞いているし。
ドラゴンアップルという果実の研究とかもしてたっけ。
「領民の一種族に『
ほう、たまごですか。
そいつはめでたい。
俺と美羽、アリスの三人がへぇとおっさんの話を聞いている横ではほかのメンバーが度肝を抜かれていた。
リアスが慌てふためいて言う。
「虹龍!? た、確か、個体数が数えるほどしか残っていないと聞いているわ」
「その通りだ。だからこそ、今回生まれたたまごがどれ程待ち望まれていたものか。だが、虹龍の孵化は難しくてな………。冥界の風はたまごに良くないのだ。このまま冥界で孵化を待てば、孵化の前に腐ってしまうかもしれん」
「それじゃあ、ここに来たのは―――――」
リアスの言葉におっさんは頷く。
「たまごにとって人間界の空気は冥界のものよりも環境がいい。そこでこの町の地下にある空間を借りようと思ったのだ」
「でも、ここって結構危ないぞ? クリフォトに狙われてるし」
三大勢力の会談の時と、ユーグリッドの時だな。
今では結界も強化されて、以前よりも安全にはなっているけど、それでも完璧とは言い難い。
俺の問いにおっさんは指であごをかいた。
「人間界で他に妥当な場所がなかったのだ。希少なたまごゆえにクリフォトや他の者にも狙われる可能性がある。ここ以外の場所ではどうもセキュリティ面で不安でな。確かにこの町はクリフォトに狙われている場所ではあるが、強固な結界がある。孵化するまでの間だけでも預かってもらいたいと思ったのだ」
リアスが問う。
「どのくらいで孵化するのでしょうか?」
「人間界であるなら思いのほか早いだろう」
「わかりました。私達もできうる限り見守りましょう」
「すまないな。礼はする」
俺達がたまごを預かることを了承すると、おっさんは魔法陣を開く。
たまごを持ってくるという係の者に連絡を入れたとのことだ。
待つこと数分。
転移の光と共に虹色の光沢を持つ大きなたまごを抱えた者が現れた。
それは黒いコートの男。
そいつはよく知ってる………というより、やりあったことがある奴だった!
「クロウ・クルワッハ!? なんでおまえが!?」
そう!
虹色のたまごと共に現れたのはクロウ・クルワッハ!
最強の邪龍さまだった!
まさかの相手にかなり焦る俺。
リアスたちも構えるが………。
俺はふと考える。
こいつは他の邪龍と比べて話も分かる。
それにタンニーンのおっさんがこうして連れてきているということは――――――。
「とりあえず、説明頼んでいい?」
「………うーむ、話すと長くなるのだが………クロウ・クルワッハは俺の食客になっているのだ」
『ええええええええええええええええええええええええ!?』
大声を出して驚愕する俺達!
ちょっと、これは予想外すぎる!
クロウ・クルワッハがおっさんの食客!?
なにやってんの!?
最強の邪龍さまは淡々と言う。
「俺は今タンニーンに衣食住を提供してもらっている。今はその礼を果たしているに過ぎん」
「クロウ・クルワッハは邪龍ではあるが、生粋のドラゴンだ。同じドラゴン同士なら通ずるものもあると思ってな」
タンニーンのおっさんの言葉に静かに頷くクロウ・クルワッハ。
いやはや、何と言いますか………。
天界から降りた後は冥界に移動して、タンニーンのおっさんと出会って、同じドラゴン同士で意気投合したと。
ま、まぁ、タンニーンのおっさんが大丈夫と言うのなら、大丈夫なんだと思う。
それにこいつはそんなに質が悪い奴ではないのは俺も感じていたことだ。
『言わんとすることは分かるが、油断はしないことだな』
ドライグは一応の忠告をする。
「うむ、肝に銘じておこう。だがな―――――」
タンニーンのおっさんがクロウ・クルワッハに視線を送る。
とうのクロウ・クルワッハは我が家のマスコットことオーフィスと対峙していた!
戦闘大好きな最強の邪龍さまと無垢な龍神さまがぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ちょ、ここでドンパチは始めないでね!?
二人が戦い始めたら家どころか町そのものが吹き飛ぶわ!
クロウ・クルワッハはたまごを床に置いてバナナを握るオーフィスに言った。
「オーフィスか。俺と勝負しろ」
「無理。我、ケンカしないようにイッセーたちと約束してる」
「………そう、なのか? ならば、どういう手順を踏めば可能となる?」
「わからない」
「………そうか」
そのやり取りののち、クロウ・クルワッハは再びたまごを抱えて無言となった。
オーフィスは興味深そうにたまごをペチペチ触り始めた。
う、うーん………なにこの不思議空間。
最強の邪龍さまが龍神さまにケンカ売って、ソッコーで拒否られて………。
「やっぱり強いドラゴンって変人が多いのかな?」
「そうねぇ………イッセーもおっぱいドラゴンだし」
美羽とアリスが何か言ってる!
そうだね!
俺もドラゴンだったね!
強いドラゴンは変人が多いって、俺も含まれてるのな!
と、ふと気になったんだけど――――――。
「おっさんはオーフィスを見ても驚かなかったな」
「ああ、魔王殿から聞いているのでな。心配せずとも、誰にも言わんさ。それにおまえ達と共にいるというのなら、それだけで安心できる」
「そいつはかなり買ってくれてるんだな」
「俺は実際におまえ達を見てきたからな。現にオーフィスはあんな感じだ」
タンニーンのおっさんはオーフィスを見て笑んだ。
オーフィスは………バナナの皮を剥いて二本目に突入していた。
どっから出した、その二本目!?
うん、うちの龍神さまは微笑ましい限りだよ!
タンニーンのおっさんはクロウ・クルワッハのことを語りだす。
「クロウ・クルワッハは人間界を長く見てきたようだ。俺もこの歳まで各世界を見てきたが、そのおかげなのか、奴の心情も何となくわかるのだ。時代の移り変わり、人間の文化、人間の善悪、それに応じた異形たちの変化。それらを永い年月をかけて見てくれば、強いドラゴンといえど、価値観は変わってくる。人間も短い生の中で変わっていくだろう? ドラゴンも同じということだ」
「なるほど」
確かにそうだよな。
おっさんたちに比べると、僅かな時しか生きていない俺でも色々なものを見て、経験して、そして変わってきた。
人間も悪魔もドラゴンも常に同じというわけじゃない。
何かに触れることで変わる。
それが良い方向なのか悪い方向なのかは分からないけどな。
俺は………とりあえず、これまでは良い方向に変わってこれたと自分では思ってる。
そして、これからもそうでありたいと思う。
すると、タンニーンのおっさんが何か気になったようで訊いてきた。
「ところで………ティアマットはなんで、部屋の隅にいるのだ?」
おっさんが指さす方――――――部屋の角には青髪のお姉さん、ティアがいた。
特に何をしているわけでもなく、ただ立っているだけ………なのだが、遠い。
部屋の隅でこちらの様子を見守っている。
俺と視線が合うと、顔を赤くして目を反らされた。
「おまえを避けているようにも見えるのだが………仲違いでもしたか?」
「い、いや………そういうわけじゃないんだ。な、なんと言うか………」
そこから言葉を続けようとする俺だが――――――――。
なんとも言えるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
媚薬飲んで発情したティアとエッチしたなんて言えるかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
媚薬の効果を散らせるためにひたすら合体してました、なんて言えねぇぇぇぇぇぇよ!
事務所に行ってみたら、ティアが汗びっしょりの状態で一人で慰めていたんだよ!?
その時の俺の衝撃が分かるか!?
俺を見たとたんにティアは抱きついてくるし、更には「滅茶苦茶にしてくれ」なんて言ってくるし!
注意書見たら、媚薬を原液で飲んでしまった場合、ひたすら気持ちよくさせるとしか書いてなかったし!
悪魔の仕事も何もかもキャンセルして、『休憩室』に突撃したわ!
しかも、途中から実体化したイグニスまで参加してくるし!
俺とイグニスでティアを相手にしつつ、俺は二人に絞られました!
二十四時間フルコースでした!
最強の龍王と最強の女神さまの腰遣いは半端じゃなくて、このままではと感じた俺は精力剤飲んで―――――トランザム!
「うふふ♪ あの時のイッセー凄かったわぁ。ね、ティアちゃん♪」
「ぅぅぅっ………すまない。わ、私があの時確認しておけば………。そ、その、うぅぅぅぅぅ」
涙目になって申し訳なさそうにするティア!
あのティアが顔真っ赤でアーシアみたいな声出してる!
「気にしないでくれ! 俺が悪いんだ! 俺があんなところに仕舞ってたから!」
「だ、だが………わ、私は………あんなに乱れて………」
「イッセーにおっぱい吸われて悦んでたもんねー♪」
「トドメをさしてどーする!?」
「ぅぅぅぅぅ………。は、恥ずかしぃ………」
ああっ、ティアがプルプル震えだした!
可愛い反応だけど、この場でそれはダメだ!
「ティアマット、乳吸われると嬉しい?」
オーフィスは何を訊いているのかな!?
今のティアにそんな質問しないで!
つーか、さっきまでたまごの方に興味津々だったじゃん!
なんでおっぱいに反応した!?
「………ティアマットも、変わったな」
おっさんんんんんん!
その『変わった』は意味が違うから!
あれ、媚薬のせいだから!
イグニスが微笑む。
「ティアちゃんは変わってないわ。元々、エッチなのよ」
「エッチじゃないもん! ティア、エッチな子じゃないもん!」
「エッチな龍王?」
「エッチな龍王じゃないもん!」
どうやら、ティアには心のケアが必要らしい。
『もん』って言ったしな………。
こうして、なんやかんやありつつも、俺達はたまごを預かることに。
たまごは駒王町に設けられた地下空間に安置された。
▽
それから数時間後のことだった。
俺はサーゼクスさんに呼び出され、冥界の魔王領、サーゼクスさんの職場を訪れていた。
いきなり通信で「今すぐ魔王領に来てほしい」なんて言ってくるあたり、かなりの緊急事態と見える。
………まさかの妹談義だったら、それはそれで最高だけど。
「私まで来ても良かったの?」
そう訊いてくるのはアリス。
今回の冥界入りはアリスを伴ってのものだ。
「おまえも俺の『女王』だしな…………一応」
「一応ってなによ、一応って」
半目で見てくるアリス。
こいつ、『女王』としての仕事ほとんどしてないじゃん。
何度も言ってるが、書類系の仕事はほぼ投げてくるし。
そりゃ、戦闘の時は心強いけど…………。
やっぱり、こいつも脳筋?
俺は浮かんだキーワードを頭を横に振ってすぐに否定した。
うちのアリスは脳筋じゃないもん!
作戦会議とか交渉の場ではしっかり働いてくれるし、脳筋ってことはない!
ちょっとサボり癖が強いだけ………だよな!
そんな俺の心中など知らないアリスは周囲を見渡していた。
「それにしても、派手ね~。流石は魔王の職場?」
俺達が案内された部屋は床には赤いカーペット、天井にはシャンデリアがあり、家具も高級感漂うものばかりだ。
確かに派手だと思う。
けど、どこか重厚感もあってだな………。
なんと言うか、流石は魔王って感じだ。
しかし、一つ気になることがあって………。
「なんで窓がないのかしら?」
そう、この部屋には窓がない。
外の景色が伺えない…………いや、これは外から中の様子を伺えないようにしているのか?
今回の話はそれだけ機密性の高い話ということだろうか?
二人でそんな疑問を抱いていると、部屋の扉が開かれる。
入室してきたのは紅髪のイケメン、サーゼクスさんだ。
「やぁ、イッセーくん。それからアリスくん。よく来てくれた」
「よー、イッセー。悪いな」
「お待たせしてすいません、兵藤一誠くん」
なんと、サーゼクスさんに続いて入ってきたのはアザゼル先生とミカエルさんだった!
アザゼル先生は何となく予想してたけど、ミカエルさんまで来るとは想定外過ぎる!
まさかまさかの三大勢力トップ集合!
この三人が映像越しでなく、こうしてテーブルにつくシーンを見るのは三大勢力の会談以来じゃないのか!?
三人に続き、グレイフィアさんも入室してくる。
ティーポッドとかティーカップが置かれた台を持ってきているところを見ると、グレイフィアさんは給仕係のようだ。
グレイフィアさんが紅茶を入れ、この場にいる五人の前に置いたところで、俺は口を開いた。
「この密閉された部屋に、しかも、ミカエルさんも直接来たということは………内容は………」
「うむ、これから話す内容はまだ各勢力のトップ陣しか知らないことだ」
サーゼクスさんは静かに言った。
サーゼクスさんを始め、アザゼル先生とミカエルさんの表情に何やら緊張が見てとれる。
この三人がそれほどと感じることなのか?
「それで俺だけを呼んだのはどういう…………?」
「それは今回の件に対して最も対処できるのがイッセーだと考えたからだ」
「俺が、ですか?」
「そうだ」
各勢力のトップ陣しか知らない情報。
そして、その件に対して対処できるのが俺。
まさか………まさか――――――。
「………アセムが動いた、そういうことなんですね?」
あいつらと戦闘経験があるのは俺と俺の眷属だけだ。
いや、正確には木場とティアもいるけど。
だけど、この三人の表情と今の言葉を合わせると頭に浮かぶのは奴の存在だ。
天界で会った時、あいつは各勢力の神に殴り込みにいくみたいなこと言ってた。
もしかして、どこかの神がやられた…………?
すると、ミカエルさんが真剣な表情でこう言った―――――。
「―――――冥府が異世界の神によって蹂躙されました」
「「なっ!?」」
驚愕の声を漏らす俺とアリス!
ミカエルさんからの報告はあまりに予想を越えたものだったからだ!
冥府が蹂躙されたってことは冥府の神ハーデスがやられたということ。
ハーデスはトップ陣の中でも上位に入る実力者。
その周囲には死神達もいるはず。
特に最上級死神ともなると、ファーブニルの鎧を纏った先生と互角にやりあえるクラスだ。
それを考えれば冥府の戦力はかなりのものと言える。
アザゼル先生は顎に手を当てる。
「ハーデスは今、ゼウスのオヤジのところにいる。他の死神も連れてな。………あと一歩で消滅するところだったそうだ。俺個人の意見としちゃ、今まで散々やってくれた分、ざまぁみろって感じだが…………流石に見過ごすことは出来ん」
「はい。冥府の神ハーデスは世界にとっても影響力の強い神です。消滅を免れたから良かったものの、仮に消滅していればどれだけの影響が出たことか」
死神達の報告によれば、相手は一人。
フードを被った小さな少年が攻めてきたとのことだ。
相手はたった一人の子供。
それなのにハーデスを含め、死神達は手も足も出なかったとか。
…………あの野郎、ヴィーカ達の手も借りずに一人で冥府を潰したのか。
規格外も良いところだぜ。
アリスが顎に手を当てて考え込む。
「態々一人で行ったのは何か理由が………? 一人でも余裕だから? それとも、下僕達は別で動いていた、とか?」
~その頃、冥府では~
「親父殿! 一人でやるこたぁねぇだろ!?」
「そーですぞ! 私も戦いたかった!」
「まーまー、そんなに怒らなくてもいーじゃん」
声を荒げてアセムに突っかかるラズルとヴァルス。
そして、それを宥めるアセム。
二人はアセムが一人でハーデス達と戦ったことに不満があるらしい。
なぜ、彼らがいなかったのか。
その理由は――――――。
「私達がTSUTAYA行ってる間にそんな………ズルい! あ、父上!? 逃げないでください! 父上ぇぇぇぇぇぇぇ!」
~その頃、冥府では 終~
「下僕達の行動か。確かにそれも気になるな。あいつらは一騎当千の猛者ばかり。バラバラに動かれても中々に面倒なところがある」
一人一人が厄介な能力と強大な力を持つ。
そんな奴らがついに動き出した、か。
しかも、アセムに関してはたった一人、僅かな時間で冥府を潰した。
「これで各勢力のトップ陣はアセムの恐ろしさを知ることになりましたね。………あいつの強大さはリゼヴィムの比じゃありません」
「その通りだ。今まではリゼヴィムばかりに目がいきがちだった奴らも今回の一件でかなりの衝撃を受けていてな。早くも冥府を奪還しようという動きも出てきている」
アザゼル先生はそう教えてくれるが…………。
むやみに突っ込むのは悪手だ。
各勢力のトップ陣が直々に行って、奴らに消滅させられる事態になるのは避けたい。
かといって、並の実力者じゃ話にならない。
なんせハーデスをボコボコにできる奴だしな。
なるほど、つまり俺が呼ばれたのは――――――。
サーゼクスさんが言う。
「イッセーくん。君を呼び出したのは他でもない。冥府へと向かってほしい。現状、彼らと戦えるのは実際に戦闘経験のある君達だけだと私達は考えている。もちろん、出来る限りのバックアップはする。用意して欲しいものがあればすぐにでも手配しよう」
「ええ、それは構わないのですが…………。俺達が冥府に入っても良いんですか? あとでハーデスとかが文句言ってきません? まぁ、そんな事態でもないんですけど」
「それに関しては今、ギリシャ勢力と協議中だ。すぐにでも許可が降りるだろう。なんせ、『D×D』は各勢力公認の対テロリストチームだ。こんな時だからこそ、その権利をフルで活用できる。だが…………」
先生はそこまで言うと難しい表情を浮かべた。
「おそらく、冥府へ向かってもらうのは明日になる。その翌日には教会の戦士達と一戦。まぁ、それに関しては互いに死人を出さない方向で動くだろうから、心配はしてないんだが…………。問題はクリフォトの横槍だ。どのタイミングで、どれだけの手勢を連れてくるのかが分からん。強力な力を持つ赤龍帝眷属の力ならもしもの時でも押し返せるだろうと考えていたんだが………」
「俺達は冥府に行かなければいけない。戻ってくるにしても、果たして間に合うか………と聞かれると、間に合わないでしょうね」
「俺もそう思う。おまえ達が抜けた分をどいつで補うか………」
「ヴァーリは冥府に連れていきますよ? あいつの戦力はデカいですから」
「それは別にいい。つーか、あいつが教会とのいざこざに関わるとマジの殺し合いになりそうでな」
ま、まぁ、ヴァーリチームって血の気多いしなぁ。
サイラオーグさんとシーグヴァイラさんは冥界の守護がある。
黒歌、ルフェイ、アーサーは駒王町に残って教会の戦士達との戦いに参加。
黒歌とルフェイはバックアップらしいけど。
ミカエルさんが言う。
「予めこちらの軍勢を配置しておくことも出来ますが、裏をかかれることも考えられます。そうなると、誰を配置するべきか………」
手薄になったところを狙われる可能性もある、か。
リゼヴィムなら、手薄になったところに邪龍軍団送ってきそうだよな。
下手に動けない中、俺達が抜ける分を補う戦力。
クリフォトがどんな手を打ってきても対処できる猛者。
―――――やっぱ、あの人しかいないか。
「イッセー? なにニヤついてんだよ、気持ち悪い」
「ニヤついてました? いえ、まぁ、あれです。ここら辺りで投入するっていうか…………アセムが動き出した以上、必要な戦力といいますか。ともかく、いますよ。俺達の切り札」
俺の発言に三大勢力のトップ達は興味深げにこちらを見てくる。
ああ、いるさ。
最強とも言える切り札が。
俺はついついニヤリと笑みを浮かべながら、三人に言った。
「まぁ、任せてください。マジでチートですから」
というわけで、今回の章は少しばかり流れが変わります。