[美羽 side]
「レイナさん、そっち持っててくれる?」
「分かったわ」
レイナさんと一緒に少し重たい物を運ぶボク。
今のところ、大掃除は何事もなく捗ってる。
今日来れたメンバー全員が協力して取り込んでるからね。
分からないところは過去に経験があるリアスさん、朱乃さん、小猫ちゃん、木場くんに聞いて動いているし。
「マスター、この供え物はどこへ?」
「あ、それはあっちだって言ってたよ」
ディルさんも手伝ってくれている。
彼女も巫女服姿なんだけど、すごい似合っているんだ。
不思議な魅力が出ていて、神秘的に思えてしまうほど。
「ディルさんの巫女服姿、可愛いね」
「ありがとうございます。ですが、マスターには及びません。マスターは神々しくもあり、可愛らしさも兼ねてますので。私にはそこまで着こなせる自信はありません」
ディルさんは謙遜気味に言うけど…………。
そうかな?
ボクはディルさんの方が着こなしていると思うんだけど…………。
ディルさんって、見た目はボクよりも大人っぽいし。
まぁ、でも…………。
「マスター! ここにある物は食べても良いのですか?」
「ダメだよ!? それ、食べちゃダメなやつだからね! お腹壊すよ!?」
食いしん坊なところは相変わらず。
ボクからすれば可愛いんだけどね。
なんか、こう妹ができたみたいな感じで。
お兄ちゃんがボクを妹として受け入れた時もこんな感覚だったのかな?
「こら! 待て、イグニス!」
「やーん! ティアちゃんに脱がされるぅ♪」
ドタバタと畳の上を駆けていくのは小さくなったイグニスさんとそれを追いかけるティアさん。
イグニスさんの巫女服がはだけていてほとんど裸なんだけど…………。
ティアさんが叫ぶ。
「誰がだ! 脱いだのはおまえだろう! さっさと下着を着ないか!」
「私は下着は着けない派なの。こっちの方が開放的じゃない」
「開放しすぎだ! 場所と時間を考えろ! まだ夕方にもなっていないぞ!? そういうのは夜にしろ!」
「明るいときにさらけ出す! だから燃えるんじゃない!」
「えぇい! この露出狂め!」
「あらん、今ごろ気づいた? いっそのこと、ティアちゃんも脱いじゃいましょう! 半脱ぎの巫女服なんて、そそるじゃない!」
イグニスさんが逃げるのを止めて、ティアさんに飛びついた!
ティアさんの白衣に手をかけて、整っていたものを乱していく!
「バカ、止めないか!」
「良いではないか♪ 良いではないか♪」
「どこの悪代官!?」
「うーん、ティアちゃんのおっぱい、モチモチのふにふに~」
「あぁん! こら、そんな………んんっ! そこ、摘まむなぁ!」
…………ティアさんがイグニスさんに捕まっちゃった。
助けにいきたいところだけど、行ったら行ったで巻き添えをくうのは目に見えてるからね。
他のメンバーもボクと同じことを考えているのか、せっせとお掃除再開。
すると、ティアさんの体から青いオーラが吹き荒れた。
莫大な力を解き放ったことで、イグニスさんとの立ち位置が逆転。
ティアさんは息を荒くしながらも、不敵な笑みを浮かべる。
「はぁ……はぁ……。ふっふっふっ………私がそう簡単に堕ちると思うなよ、イグニス! このティア姉の力! とくと見せてくれるわ!」
「あれれ!? ティアちゃん、顔がマジよ!?」
「私はマジだぁぁぁぁ!」
ティアさんはそう叫ぶと、小さいイグニスさんを脇に抱えて全力で走り始めた!
「いやーん! ティアちゃんに犯されるぅぅぅぅ♪」
イグニスさんの声がこだまするけど…………なぜだろう、楽しんでいるようにしか見えない。
最後の絶叫のようで、絶叫じゃなかったもん。
いったいどこまで行こうというのか、ティアさん達の姿は遥か遠くまで行ってしまった………。
ボクの視界にリアスさんと話をするアーシアさんとイリナさんが映る。
イリナさんがリアスさんに言う。
「というわけで、私達は教会に行きます」
「ええ、分かったわ。二人とも今日はありがとう。とても助かったわ」
リアスさんは微笑みながら、そう返しているけど………。
気になったボクは二人に声をかけてみる。
「アーシアさんとイリナさん、帰っちゃうの?」
「はい。すいません、美羽さん」
「さっき、シスター・グリゼルダから私達に呼び出しがかかったの。何でもダーリンのことで聞きたいことがあるって」
ダーリン………。
イリナさん、最近、お兄ちゃんのことを『ダーリン』って呼び始めたんだよね。
お兄ちゃんに聞いたところ、かなり昔に流行った呼び方らしいんだ。
それを聞いたアリスさんも『ダーリン』って呼ぼうとしたら、お兄ちゃんに止められてたのをこの間、見かけたけど。
それで、二人がグリゼルダさんから呼び出されたとのことだけど…………。
この時点で察するよね。
お兄ちゃんのこと聞きたいって、それしかないよね。
ゼノヴィアさん………なに話したんだろう?
この後、二人はすぐに着替えて、教会に行ってしまった。
うーん………お兄ちゃん、大丈夫かな…………。
「…………」
ふいに小猫ちゃんの表情が陰る。
レイナさんもそれに気づいたのか、小猫ちゃんに訊く。
「どうしたの?」
すると、小猫ちゃんは一度、この場にいるメンバーを見渡して呟いた。
「………皆さん、イッセー先輩と………その、したんですよね? 美羽先輩もアリスさんも部長もレイナ先輩も………レイヴェルも…………。私、遅れてます」
その言葉にボク達は互いの顔を見合わせる。
先日、アーシアさん達がお兄ちゃんとベッドインしたから、オカ研女子部員で抱かれていないのは朱乃さんと小猫ちゃんの二人だけになる。
ボクなんて何度も…………。
気持ちいいのもあるんだけど、お兄ちゃんに愛されてることをより実感できるから………ね?
リアスさん達も自分達のことを思い出したのか、頬がほんのり赤い。
アリスさんに至っては皆に感づかれない程度にお腹を擦ってるし。
小猫ちゃんは呟く。
「やっぱり、私、魅力がないのでしょうか? 皆みたいに胸が大きくないから…………。それに、アリスさんやアーシア先輩のような魅力もありませんし………」
自身の胸に手を当てて深く落ち込み始める小猫ちゃん。
ボクはそんな小猫ちゃんの前に屈んで、両肩に手を置いた。
「そんなことないよ。小猫ちゃんだって可愛いし、お兄ちゃんだってそう思ってる。魅力なんて人それぞれだよ」
「ですが………」
「ボクを含めて、お兄ちゃんから求められたわけじゃないよ? ボク達からお兄ちゃんにお願いしたんだ。自分の気持ちをぶつけて、どれだけ好きなのか伝える。これが第一関門だよ?」
最初は必ずボク達から求めてる。
………まぁ、二度目以降はお兄ちゃんから求めてくることもあるけど。
「小猫ちゃんだって、一度はプロポーズしてるんだし、アタックしてみようよ。大丈夫、お兄ちゃんは絶対に受け止めてくれる。お兄ちゃんの夢はハーレム王だもん」
「最近は美羽ちゃんがハーレム計画進めてるような気もするけどね」
アリスさんが何やら言ってるけど、そこはスルーしよう。
ボクは続ける。
「順番なんて関係ないよ。小猫ちゃんは小猫ちゃんのタイミングでアタックしよう。はい、これ」
ボクは小猫ちゃんに一つの箱を渡す。
箱には『30個入り+1個増量』の文字。
「赤ちゃんはまだダメだけど、練習なら大丈夫! 小猫ちゃん、ファイトだよ!」
ボクは親指を立ててウインクを送った。
うん、小猫ちゃんなら大丈夫!
絶対に大丈夫!
「………いつも思うけど、美羽ってどこから入手しているのかしら?」
リアスさんの疑問だけど…………お店に買いにいくのは恥ずかしいので、基本的に通販です。
桐生さんからオススメのサイトを教えてもらいました。
[美羽 side out ]
▽
絶体絶命。
困難・危険から、どうしても逃れられないさま。
追いつめられ、切羽詰まったさまを意味する。
俺はこの絶体絶命という状況に何度も遭遇してきた。
危うく命を落としかけた経験もあるし、アスト・アーデでは一回死んだ。
絶体絶命という言葉は俺にとって馴染み深い言葉でもある。
…………しかし、現在、俺は過去に経験したものとは違う『絶体絶命』を体験していた。
畳の敷かれた部屋。
ここは以前、朱乃が堕天使の血が混じっていることを明かしてくれた部屋だ。
そして、俺はその部屋でバラキエルさんと向かい合っていた。
「お茶を淹れましたわ」
「すまんな」
「あ、ありがと………」
朱乃がテーブルに湯呑を置き、バラキエルさんと俺がお礼を言う。
ば、バラキエルさんからの重圧………プレッシャーが半端じゃねェ!
そりゃ、そうなるよね、大切な一人娘を脱がそうとしてたんだもん!
何をしようとしてたかなんて、言うまでもないよ!
「…………」
じっと俺を見て、目を細めてるけど…………睨んでる!?
睨んでるんですか、バラキエルさん!?
この無言の時間が辛い!
けど、こちらから何かを言ったりするのも…………無理!
無理無理無理!
一言でも言葉を発すれば、雷光が飛んできそうだよ!
特大の!
だ、誰か…………この心身共に押し潰されそうな空間から俺を救い出してぇぇぇぇぇ!
朱乃が口を開く。
「父さま、今日はどうなされたのですか?」
「副総督としての仕事でな。アザゼルに用があったのだ。近くに寄ったので、少し顔を見に来たのだ。朱乃、元気そうで何よりだ」
朗らかに笑うバラキエルさんと朱乃。
以前のような雰囲気はなく、仲の良い親子の会話だった。
うんうん、関係が修復できたみたいでなによりだ。
と、思っているとバラキエルさんの視線が俺を捉えた!
鋭い視線が俺を射抜く!
「………久しぶりだね、兵藤一誠くん」
「お、おひさしぶりです、バラキエルさん」
「君も元気そうで何よりだ」
「は、はい………。バラキエルさんもおかわりなく………」
こ、怖い!
言葉の一つ一つにとんでもない重みを感じてしまう!
朱乃に助けを求めたいところだが、少しでも視線を外せば雷光が飛んできそうで怖い!
バラキエルさんが言う。
「………先程の件だが、君は朱乃に何をしようとしていたのかね」
ぐはっ!
す、ストレートだ!
言葉のボディーブローを思いっきり決められたよ!
「あ、お、俺はその…………」
「なんだね? ハッキリと言いたまえ」
ダメだ、下手に言い淀めばそれだけ俺の印象は悪くなる!
こ、これは正直に言うしかない!
「俺は朱乃と…………子作りしようとしていました!」
「ブフゥゥゥゥゥゥゥッ!」
あ、あれ?
バラキエルさんがお茶を噴き出したぞ!?
バラキエルさんは咳き込みながら、苦しげに言う。
「き、君! もう少しオブラートには包めないのか!? あと、いきなり子作り!? 最近の若者はそこまで進んでいるのかね!?」
あ、バラキエルさんの時は超特急ではなかったんだな。
俺の回りの女の子って皆、超特急だから…………。
バラキエルさんは袖で口許を拭う。
「朱乃はまだ高校生だぞ! 来年は大学生、つまり学生だ! もし子供が出来たら、朱乃は満足のいく学生生活を送れなくなるではないか!」
「そ、そこは練習です! 避妊具は着けます! ちゃんとした子作りは学生を終えてからするつもりです!」
「そ、そうなのか! い、いや、そ、そもそも、私は君と朱乃の交際を認めた記憶はないのだが!?」
「あ…………」
そ、そういえばそうだったぁぁぁぁぁぁ!
そうだよ!
俺と朱乃って親公認じゃなかったよ!
それなのに俺は『子作り』を連呼してしまった!
バチッ バチチチチチッ
バラキエルさんの体が黄金のオーラを纏っていく!
雷光がバチバチいってるぅぅぅぅ!
ヤバい!
バラキエルさんが戦闘体勢に入り始めたよ!
「兵藤一誠くん…………君は朱乃のことをどう思っているのかね?」
体をプルプル震わせながらバラキエルさんが訊いてきた。
俺が朱乃のことをどう思っているか?
その答えは決まっている!
「好きです! いつも素敵な微笑みを見せてくれる女性です! 傷つきやすいけど、俺達と一緒に強くなろうとする心を持った魅力的な人です! だからこそ、俺は朱乃を守りたいと思っています!」
心から思っていることだ。
普段の朱乃は大人っぽくて、後輩や年下のメンバーを導くグレモリー眷属の『女王』。
しかし、本当は年相応の女の子で少しのことでも傷つきやすい繊細な心の持ち主でもある。
堕天使の血を受け入れる前は特にそうだった。
だけど、今は一緒に強くなろうとしている。
体もだけど、それ以上に心を。
俺はそんな朱乃を傍で守りたい。
「だが、君は複数の女性と関係を持っていると聞いた」
「誰からですか!?」
「アザゼルだ」
あんの暴露癖はぁぁぁぁぁぁ!
他にも俺の印象を下げるようなこと言ってるんじゃあるまいな!?
ツイン・おっぱい・システムとかバラキエルさんに言ってないだろうな!?
「君はハーレム王を目指しているそうじゃないか。も、もしだ。朱乃がそこに加わった時、君は朱乃をどう見るつもりだ? ハーレムを築く者の中には女性を己の欲を満たすための物として見る者もいる。君は―――――」
その言葉に俺の中で何かがキレた。
己の欲を満たすための物?
ふざけるなよ…………!
「そんなことするわけないでしょうが! 俺は俺を想ってくれる女性には全力でその想いに応えます! 全力で幸せにします! 全力で守ります!」
美羽達は心の底から俺を想ってくれている!
こんなスケベでダメダメな俺をだ!
俺の回りの女の子達は俺にはもったいくらいに全員が魅力的だ!
俺なんかじゃ釣り合わないだろうと思うときだってある!
それでもだ!
こんな俺を好きだと言ってくれる!
俺も皆が好きだ!
だからこそ!
「俺は朱乃を幸せにしてみせます! この先ずっとです! だから、バラキエルさん―――――いえ、お義父さん!」
俺は必殺の『ムーンサルト・ジャンピング土下座』を決め、頭を畳に擦り付けた!
そして――――――
「娘さんを―――――朱乃を俺にくださいぃぃぃぃぃぃ!」
言った!
言ってやったぞ!
バラキエルさんに渾身の一撃を入れた!
『ムーンサルト・ジャンピング土下座』は奥の手――――モーリスのおっさん直伝の必殺技!
これ以上の武器は俺にはない!
頼む!
届いてくれ、この想い!
「イッセーくん…………!」
朱乃が手で口元を押さえて、涙を流しているのが見えた。
朱乃が必死になって声を押さえようとするものの、僅かに漏れる声が静かになった部屋にこだまする。
それから、室内に沈黙が訪れた―――――。
障子から夕日が差し込んできたと思えば、日は沈み、空は暗くなる。
十分、三十分、一時間、二時間と時間が流れていくのを体で感じながら、俺は畳に頭を擦り付けた状態でバラキエルさんの言葉を待った。
待ち続けた。
そして、遂にその時が訪れる。
「―――――何人だ?」
ようやく出てきたバラキエルさんの言葉がそれだった。
え…………何人?
「あ、あの………何人とは?」
恐る恐る聞き返すと、バラキエルさんは、
「孫は何人見せてくれるのだ?」
孫ですか!
しかも、その『何人』!?
あなたも孫を見せろと急かす人なんですか!?
いや、しかし、この場合、なんと答えるべきか………。
一人………二人………いや、三人と答えるべきなのか?
回答に困る俺だったが、朱乃が涙を拭いながら微笑んで答えた。
「ベタですけど、サッカーチームを作れるくらいというのはどうでしょう?」
サッカーチームですか!?
え、あれ………サッカーチームって何人いれば作れるんだっけ?
とにかく子沢山なのは間違いないか!
つーか、そんなに作るの!?
ま、まぁ、朱乃って安産型だと思うけど………。
いや、そもそも悪魔は出生率が低いからそれって…………それだけ励めということですか!?
じっと見てくるバラキエルさん!
俺の答えを待ってる!?
「え、えっと、頑張ります」
「よし」
よしって言ったよ!
マジでサッカーチームをご所望ですか!?
…………いったい、どれだけ励めば良いんだろう?
毎日が運動会になりそうな気がする…………。
美羽達もいるし。
…………俺、死ぬかもしれないけど、頑張る!
途端にバラキエルさんがぶわっと滝のような涙を流し始める。
「あぁ………朱璃よ。私達の娘がこんなにも立派な男を連れてくるようになったぞ…………。あの幼かった私達の娘が………うぅ………うぉぉぉぉぉぉぉ!」
お、男泣きしてる…………。
まぁ、でも、これが父親ってものなのかな?
俺も子供を持ったわけじゃないし、まだ先だと思うけど…………自分の娘が恋人を連れてきた時は俺も男泣きするのかな?
「もう、父さまったら」
朱乃も頬を染めて、恥ずかしいようで、嬉しそうな、そんな表情をしていた。
すると、次の瞬間―――――
バンッ!
痛いほど力強く、俺は両肩をバラキエルさんに叩かれた!
「兵藤一誠くん!」
「は、はいっ!」
「娘を………私達の娘を頼む!」
「はい!」
「あと、サッカーチームも頼む! 朱璃に見せたい!」
「あ………は、はい!」
俺、頑張る。
▽
バラキエルさんが帰った時には外は真っ暗になっていた。
携帯を見てみると、美羽から先に帰るというメールが送られていた。
更に、追伸のところに…………
『今夜はファイトだよ! 美羽より♡』
我が妹は全てお見通しらしい。
一応、返信はしておいた。
時間も時間とのことで、俺は今日は神社に留まっていくことに。
夕食は朱乃が作ってくれた和食。
そして、その後は――――――
「うふふ、こうして旦那さまのお背中を流せるのは…………幸せですわ」
俺の背中をタオルでゴシゴシしながら、声を弾ませる朱乃。
俺達は二人で神社のお風呂に入っていた。
檜風呂なので、木の良い香りが浴室に漂っているが…………それ以上に朱乃の姿が刺激的だった!
朱乃は裸ではなく―――――薄い白装束を身に纏っているのだ!
お湯に濡れてあちこちが透けてる!
肌に張り付いてボディーラインもくっきりしていて…………正直、裸よりエロいよ!
暫く、背中をゴシゴシされていると、朱乃が背中に手を添えて頬を当ててきた。
「嬉しかった。………あんな風に思っていてくれたなんて…………。父さまに真正面からあんな………」
「アハハ………。滅茶苦茶緊張したけどね」
下手すりゃ、殺されると思ったもん。
マジで死ぬかと思った。
俺が苦笑していると、朱乃は俺の前側に回ってきた!
憂いのある表情を浮かべていて―――――
「今夜は………。ようやく私の初夜………。私、あなたに抱かれるなら、この場所だと決めていたんです」
「この場所………この神社で?」
俺が聞き返すと朱乃は頷く。
「ここはイッセーくんが私を受け入れてくれた場所。私を怒ってくれた場所。あの時、私の心は完全に奪われてしまいました。だから、私はこの場所であなたと―――――」
そ、そうか………。
以前、朱乃が言っていた『あそこ』ってこの神社のことだったのか。
そして、その背景にはあの時のことがあると。
まぁ、受け入れるもなにも、俺は元から朱乃のことは優しい女性だと思ってたし、大したことを言ったつもりはないけど………。
朱乃にとっては嬉しかったのだろう。
その時―――――浴室の扉が開いた。
何事かと驚く俺と朱乃だったが、そこに立っていたのは―――――。
「あの、イッセー先輩。私も………私もお願いします」
白装束姿の小猫ちゃんだったぁぁぁぁぁぁ!?
白装束に猫耳!
お尻からは尻尾がふりふりしてる!
とってもラブリーな姿の小猫ちゃんがいた!
「え、えええええ!? 小猫ちゃん!? 帰ったんじゃなかったの!?」
「一度、帰って夕食を済ませた後に戻ってきました」
「なんで!?」
「そ、その………朱乃さんが今夜、その………イッセー先輩と………ゴニョゴニョ………だそうなので………私もと思いまして………。美羽先輩から、これも貰ってますし」
そう言って小猫ちゃんが取り出したのは一つの箱だった。
その箱には見覚えがある!
だって、箱には―――――
『30個入り+1個増量』
リアスとロセの時に使ったやつじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!
美羽ちゃーん!?
君、用意よすぎだろう!?
つーか、『今夜はファイト』ってこういうこと!?
「美羽先輩もアリスさんもリアス部長も…………それにレイヴェルもイッセー先輩とエッチなことしてます。………私だけのけ者は嫌です」
「い、いや、のけ者にしたわけでは………」
「朱乃さんには悪いと思ってます。でも、これ以上、のけ者は嫌です。………イッセー先輩!」
突然、小猫ちゃんが抱きついてきた!
胸にしがみつくようにして、俺を上目使いで見てくる!
「前の時みたいに本能じゃありません。私も………イッセー先輩が好きです。大好きです。………弱かった私を強くしてくれました。体だけじゃありません。心も強くなれました。私を変えてくれたのはイッセー先輩です」
――――――っ!
そういえば、小猫ちゃんも少し前までは自分を受け入れられずに悩んでいた時期があったな。
猫又の力は使いたくない。
使えば自分はどうなるか分からないって、自分の力に怯えてる時があった。
自分を受け入れられなかった。
だけど、今は受け入れて前に進んでいる。
朱乃と小猫ちゃんに共通しているところだ。
その点では二人は似た者同士なのかもしれない。
ふと小猫ちゃんの体が白い光を放ち始め―――――白音モードに変身した!
うぉぉぉぉぉぉ!
ナイスバディな小猫ちゃんが目の前にぃぃぃぃぃ!
成長したおっぱいが白装束を押し退けて、俺の目の前で揺れる!
「この体なら乱暴にしてくれても耐えられます。浄化の力も抑えてあります。…………これでも、ダメですか?」
ダメってことはないが…………。
俺は横に視線をやると、朱乃が微笑んでいた。
「うふふ、イッセーくんと二人っきりでないのは残念ですが、ここは似た者同士で仲良くいきましょう。それに二人だと何かと安心もしますし」
ま、まぁ、二人とも初めてだからね。
初めてって結構不安あるよね。
ゼノヴィアはそうでもなかったようだけど…………。
朱乃と白音モードの小猫ちゃんが俺に詰め寄ってくる。
「イッセーくん…………」
「イッセー先輩…………」
▽
翌朝。
朝起きると、俺は布団の上。
朱乃と小猫ちゃんが俺の腕を枕にして寝ていたんだが、二人とも穏やかな寝息をたてていて、幸せそうな顔をしていた。
もう可愛いのなんの。
二人の寝顔に癒されながら、俺はもう一度眠りについた―――――。