ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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本章ラスト!


22話 聖なる夜に 

「「「メリークリスマス!」」」

 

乾杯する俺達オカ研メンバー、生徒会メンバー、そして企画参加者たち。

ついでに黒歌とルフェイも。

 

そう、今日は少し遅めのクリスマスパーティーだ。

 

広い兵藤家地下に長机がいくつもおかれ、その上には様々な種類の料理が所狭しと並べられている。

出前もあるが、母さんや参加したメンバーで作った料理もあったりする。

 

天界の一件から数日、俺達は無事にクリスマス企画を為し遂げ、プレゼントも配り終えた。

 

もちろん、配る際はサンタコスで全員がサンタの格好!

空飛ぶトナカイにも乗ったぜ!

オカ研メンバーの可愛くてエッチなサンタ姿は脳内保存しております!

 

アリスがビールをぐいっと飲み干す。

 

「プハァー! あー、生き返る! ここ数日、書類溜まってたから、お酒が美味しい!」

 

「………おまえ、報告書を俺に丸投げしといて良く言えるな。滅茶苦茶大変だったんですけど」

 

「あ、このポテト美味しい!」

 

「聞けよ!?」

 

アリスさん、君、俺の『女王』だよね!?

デスクワークでは機能停止してるんだけど!?

 

こいつ、天界の騒動の報告書、俺に丸投げしたんだぜ!?

鬼か!?

おっぱい揉むぞ!?

 

………あれ、そういや、アリスのおっぱい…………。

 

「アリス………おまえ、まさか………!」

 

俺は指を震わせながら、アリスの胸を指を指す。

 

アリスはビールをテーブルに置いて、胸を張る。

 

「ふっふっふっ………また大きくなってたわ! ブラが合わなくなってたもん! ほら!」

 

アリスは俺の手を取ると自身の胸に当てた!

 

むにゅんと極上に柔らかいものが俺の指に触れる!

 

こ、この感触はノーブラか!

いや、それ以上にこのサイズは………!

 

「アリス………グッジョブ!」

 

「でしょ!」

 

感動の涙を流す俺とアリス!

 

あぁ………最近のアリスのおっぱいの成長は著しいなぁ!

 

この成長スピードでいくと、ゼノヴィアやイリナ、レイナクラスになるのは近い!

 

アリスはほのかに頬を染めながら言う。

 

「………イッセー好みのスタイルに近づけてるかな?」

 

 

ブハッ

 

 

くっ………なんで急に可愛くなるんだ!

いや、いつも可愛いけど!

 

「お兄ちゃん、これどうかな?」

 

そう言って、サンタコスの美羽が腕に抱きついてきた!

 

肩紐のないタイプのコスチュームで、胸の谷間がこれでもかと強調されている!

しかも、今はそのおっぱいが腕に押し当てられて………腕を挟んできている!

 

やべぇ………涙が止まらねぇ!

 

「可愛いぞ! 後で写真撮ろう! 俺のお宝コレクションに加える!」

 

「えへへ」

 

少し照れ顔で微笑む美羽。

 

あぁ、今日も今日とて我が妹はかわゆい………。

 

シトリー眷属からは、

 

「うん、兵藤兄妹は完全にカップルだよね」

 

「まぁ、前からだけどね~」

 

などという声が聞こえてくるが、否定はせん!

 

美羽は俺の妹にして、俺のお嫁さんだから!

またウェディングドレス姿の美羽を見てみたい!

 

と、ここで俺の視界に教会の人達と楽しげに話す教会トリオが映る。

多分、クリスマス企画とか信仰の話をしてるんだろうけど、グリゼルダさんが混じってきた途端にゼノヴィアがタジタジになりだした。

 

やっぱり、グリゼルダさんには頭の上がらないゼノヴィアか。

 

………根性を見せたファーブニルはアーシアにケガを治してもらった後、深い眠りについた。

死んだわけではないが、ダメージが大きすぎたようで、しばし休むとのことだ。

なので、いずれは目が覚めるらしい。

 

アーシアはそれを聞いて安心していた。

 

先日の一件で、俺はファーブニルにドラゴンの意地を見た。

いつもはパンツ龍王だけど、やるときはやる誇り高い龍王の一角なのだと改めて認識した。

 

トウジさんは解毒の予後を見るため、無理はできないとプレゼント配りは娘に任せることになった。

今日は検査ということで、残念ながらこのパーティーには出席できていない。

 

ただ、通信で話したところ、八重垣さんと改めて話をしているそうだ。

 

許されなくても、償うために生きていく。

その覚悟を改めて聞いてもらっているとのこと。

 

今の八重垣さんならトウジさんの後悔と懺悔を聞くことができると俺は思う。

 

皆が食事に舌鼓を打っていると、リアスと朱乃が前に出た。

 

二人が言う。

 

「皆に聞いてもらいたいことがあるの」

 

「うふふ、こんなときに突然かと知れませんけど、あえてクリスマスというタイミングたからこそ、お伝えしようとリアスと決めてましたわ」

 

二人が頷き合うと、改めて俺達に言った。

 

「――――オカルト研究部の新部長と新副部長について、発表するわ」

 

――――っ!

 

このタイミングで発表か!

 

これには俺達オカ研メンバーだけでなく、生徒会メンバーも驚いているようだった。

 

唯一驚いていないのはソーナぐらいだ。

 

リアスが言う。

 

「私はオカ研を立ち上げて三年間、部長を続けてきたけれど、特別、強いルールを下の世代に残さないようにしてきたわ。それはこれから継いでいく部員達にも覚えていてほしいことなの。オカ研はその時々のルールで動いて運営していった方がいいわ」

 

それを踏まえた上で、とリアスは断って咳払いする。

 

そして、ついに人事を発表した。

 

「新しい部長はアーシア、副部長は祐斗よ」

 

そ、そうきたか…………!

 

木場はともかく、アーシアが部長!

これは予想外の人選だ!

 

俺を含めた他のメンバーも驚いているが、とうのアーシアが一番驚いているようだった。

というか、あまりに予想外だったためか、ポカンと口を開けて、状況を呑み込めずにいる!

 

リアスが人選の理由を語りだす。

 

「アーシアにした理由は、きっとこの中で一番新しいオカ研を作ってくれそうだと思ったから。私とは違う方向で部を動かしてくれそうで、面白そうだと考えたからよ」

 

「祐斗くんが副部長なのは、単純に二代続けて部長と副部長を女性で固めてしまうのも、という面もありましたし、男子との架け橋になってくれるのではという理由もあります。それに、今の二年生の中では一番の古株ですので、アーシアちゃんのサポートには向いてると考えました」

 

朱乃がリアスに続いて、新副部長の人選理由を言った。

 

木場が男子との架け橋………。

イケメン過ぎて逆に恨まれそうだが………。

 

まぁ、オカ研の活動を一番知っているのは木場だし、新部長のサポートとしては適任だろう。

 

リアスが俺に視線を移す。

 

「イッセーもどうかと考えたのだけれど、ただでさえ忙しい身だから………」

 

「うん。うちの『女王』が仕事してくれないんだぁ………」

 

俺は遠い目でそう返す。

 

アリスはというと………、

 

「エヘ☆」

 

こいつ、今後も仕事しないつもりだな!?

 

なんてやつだ!

 

やはりここは―――――

 

「レイヴェルゥゥゥゥ! うちの事務は君にかかってるよ! これからも頼むぅぅぅぅぅ!」

 

レイヴェルに泣きつく俺!

 

レイヴェルがいなくなったら、俺達は終わりだ!

事務的に!

多分、仕事終わんない!

 

だからこそ、レイヴェルにはずっと側にいてもらわなければ困る!

 

「あ、あははは………お任せください、イッセーさま」

 

苦笑しながら、俺の頭を撫でるレイヴェルだった。

 

まぁ、ともかく、リアスが新部長にアーシアを指名したのは今までにないオカ研を作ってくれそうだったということね。

 

リアスが二人に言う。

 

「それで、二人は引き受けてくれるかしら?」

 

「僕はかまいません。光栄なくらいです」

 

木場は快く応じた。

 

アーシアはというと、

 

「わ、わ、わ、私は………そ、その………はぅっ!」

 

「ダメ、かしら?」

 

「い、いえ! 本当に私で良いのかなって思ってしまいまして………。他の皆さんの方が向いてると思いますし………。人見知りの激しい私なんて、きちんと勤められるのか、不安で………」

 

まぁ、リアスの後を継ぐとなるとアーシアは上手くできるか不安になるよな。

 

でも、問題はないだろ。

 

俺はアーシアの肩に手をおいた。

 

「心配すんなって。アーシアは俺達全員でサポートするしさ。それにアーシアが部長ってのは可愛いから皆で支えてあげたくなるんだよな」

 

「あら、私は可愛くなかったのかしら?」

 

あぁっ!

リアスが半目で見てくる!

 

俺は慌てて首を横に振った!

 

「いや、リアスも十分すぎる程、可愛いって! 嫁にほしいって! で、でも、アーシアとは可愛さのベクトルが違うというか何というか………」

 

慌てる俺にリアスはクスッと笑む。

 

「うふふ、分かってるわ。ありがとう、イッセー」

 

そう言って、ちょんと指先を俺の鼻に当ててくる。

 

その微笑みはどこか母性があって………。

 

うーむ、やっぱりリアスは学園のお姉さまって感じだよな。

俺の方が実年齢上なんだけど………。

 

アリスがアーシアに言う。

 

「ま、私でも一国の王女できたしね。私も昔は人見知りだったし? 大丈夫よ、アーシアさん」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「いや、それは嘘だぞ、アーシア。アリス! おまえは人見知り違うだろ! モーリスのおっさんから聞いてるからな! このお転婆娘め!」

 

「あれは………勉強が嫌だっただけよ! キリッ」

 

「アリスさん、『キリッ』って口で言うものじゃないと思うな。あと、使うタイミングも違うような………」

 

さりげにツッコミを入れる美羽。

 

しかし、美羽もアリス同様、アーシアに言った。

 

「でも、誰にでも初めてはあるし、失敗しても良いんじゃないかな? それに、アーシアさんならやり遂げられると思うよ?」

 

木場もそれに続く。

 

「そうだね。僕も副部長としてアーシアさんと皆を支えていくつもりだよ」

 

ゼノヴィアがアーシアの肩に手をやる。

 

「良い機会だ。やってみるのもいいと思うぞ? 部活の部長なんて二度と出来ないかもしれない」

 

「うんうん! 私もアーシアさんのためなら張り切っちゃう!」

 

イリナも合意の様子だ。

 

「アーシアが部長………。なんだか、嬉しくて涙が………」

 

「レイナ先輩、泣くのは大袈裟と思います。でも、アーシア部長という響きは良いと思います」

 

「僕もアーシア先輩………アーシア部長のためなら頑張れますぅ!」

 

「私も問題ありませんわ」

 

レイナ、小猫ちゃん、ギャスパー、レイヴェルも賛成のようだ。

 

「俺も良いと思うぞ、アーシアさんが部長!」

 

匙を初めとしてシトリーの面々からも賛成の声が上がる。

 

「マスター! このフライドチキンは美味です!」

 

料理を片っ端から食べてるディルムッド。

 

うん、おまえは黒歌と静かに食べてなさい。

 

さて、全員から賛成の声が出ているということは、あとはアーシアの意思だけだ。

 

アーシアはしばし考えた後、笑顔で頷いた。

 

「わ、わかりました! 慎んでお受けいたします! 若輩者の私ですが、一年間よろしくお願い致します!」

 

「「「はい、部長!」」」

 

頭を下げるアーシアに皆で一斉に答えた。

 

こうして、次世代なオカ研部長、副部長が決定した。

 

部長はアーシア、副部長は木場。

 

三学期が始まってから、この二人がオカ研の中心になって部活が動いていくわけだが、どうなるか…………。

 

それを想像するのも楽しいだろう。

 

 

 

 

少し疲れたとうことで、俺が部屋の隅に置かれた椅子に腰を下ろしている時。

 

ワイワイと賑やかに過ごす皆の姿を眺めている時だった。

 

――――――。

 

「………?」

 

気のせいか、何かの声が頭に過った気がした。

 

これは………あの時の感覚に似ている。

リゼヴィムと戦った時、あの虹色の粒子が漂う空間で体験したあれと。

 

天翼のブラックボックス―――――イグニスの本来の力の一端。

 

元々、天翼はイグニスの力も混じって生まれた力、俺の可能性だ。

 

だから、イグニスの力を発現してもおかしくはないんだけど…………。

 

すると、後ろから抱きついてくる者がいた。

 

実体化したイグニスだ。

 

「うふふ~♪ 楽しんでいるかしら、イッセー?」

 

「まぁな。そう言うイグニスはかなり楽しんでるな」

 

このお姉さん、ビールからワインから日本酒までありとあらゆるお酒を飲み続けてるからな。

 

顔も赤いし、テンションも上がってる。

 

イグニスは俺にほっぺをスリスリしてくる。

 

「そりゃあ、これだけ楽しい場所にいるんですもの。こっちだって楽しまなきゃ損でしょ。それに、皆の温かい想いがお姉さんの中に流れ込んできて~、お姉さんはハイになってます!」

 

「それ、お酒じゃね!? 酔ってる!?」

 

「大丈夫! 私、女神だもん! 酔わないもん! だから、裸踊りしまーす☆ イエーイ!」

 

「絶対酔ってるだろ! って、脱ぐなぁぁぁぁ!」

 

美女の裸体を見れるのは嬉しいが、流石に今はいかん!

皆、そういう感じじゃないから!

 

必死でイグニスを止める俺!

 

「えぇい! 脱がせてなるものか!」

 

「ふっふっふっ、甘いわね、イッセー!」

 

イグニスは俺の羽交い締めから脱出すると、俺を床に押し倒して脱がし始めた!

一瞬で服持ってかれたよ!

 

こいつ、マジで何してんだぁぁぁぁ!

 

「人呼んで、イグニススペシャル!」

 

「なにそれ!? 初耳なんだけど!?」

 

「あえて言おう、お姉さんはイッセーを食べちゃうと!」

 

そう言って、イグニスは俺の顔をガッチリホールド!

強引に唇を重ねてきた!

 

「「「「ああああああああああっ!?」」」」

 

この光景に悲鳴をあげる女性陣!

 

ゼノヴィアが駆け寄ってくる!

 

助けてくれるのか!

 

「そのイグニススペシャルとやら、私に教えてくれ!」

 

「そっちかいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

この後、泥酔したイグニスをティアが引きずっていくことで、事態は収拾した。

 

 

 

 

後片付けが済むと、楽しかった宴も終わる。

 

家に集まっていたメンバーはそれぞれの家に帰宅し、俺達も各自で一休みだ。

 

………イグニスはティアの部屋で爆睡してた。

 

あのお姉さんは…………はぁ…………。

やっぱり駄女神だわ。

 

イグニスの様子を見た後、俺は一人、兵藤家屋上にいた。

 

この時期だから、流石に夜は冷えるが………それも良い。

 

だって、今日は―――――。

 

「―――――雪だね」

 

声がした方を振り向くとパジャマ姿のイリナが立っていた。

 

俺は微笑みながら言う。

 

「ホワイトクリスマスってやつだな。天気予報じゃ、晴れ時々曇りだったけど」

 

そう、俺が屋上に来た理由はこれ。

 

雪が降る町の風景を眺めにきたんだ。

 

いつからかな………昔はこういうのはあまりしないタイプだったけど、今ではこういう光景をぼんやり眺めるのも悪くないと思っている。

 

イリナは俺の横に来ると雪の降る空を見上げた。

 

「クリスマスの約束どうしよっか」

 

「あー、サンタの襲撃な。子供の頃の約束とはいえ、流石に過激だよなぁ。というか、今の俺達じゃ成し遂げられそうで怖い」

 

今の俺達ならサンタ襲撃して、プレゼントの強奪までやってのけるぞ、多分。

 

まぁ、サンタがどこにいるかは知らないんだけどね。

 

俺が苦笑していると、イリナが呟く。

 

「あのね、イッセーくん」

 

「ん? なんだ――――」

 

そちらに顔を向けた時だった。

 

―――――イリナの唇が俺の唇と重なった。

 

…………。

 

…………ん?

 

固まる俺を置いて、イリナは頬を赤く染めて言う。

 

「えっと………天使のキッス。こんなシチュエーションだし、良いよね?」

 

…………ま、まぁ、雪が降る中で天使が微笑むってのも最高のシチュエーションだと思うけど…………。

 

完全な不意打ちだ…………!

 

イリナは更に続ける。

 

「実はセカンドキスだったりするのよ? 初めてもイッセーくん」

 

「なぬっ!? いつ!?」 

 

「うふふ、子供の頃にね。私の家で寝ているイッセーくんにキスしちゃったの」

 

イタズラな笑みを浮かべるイリナ!

 

マジでか………!

となると、俺のファーストキスって………!

 

幼馴染みがその相手だったとは…………俺もビックリだよ!

 

とりあえず、俺は…………。

 

「イリナ―――――」

 

俺は肩に手を置いて―――――イリナに唇を重ねた。

 

今度はイリナが固まる。

 

「え………い、イッセー、くん…………?」

 

「二回ともイリナからだったからな。今度は俺からだ」

 

ニッと微笑みながら言った。

 

イリナの顔はさっきよりも赤くなり、頭から湯気が出ている程だ。

 

イリナは指先で自身の唇をなぞる。

 

「こ、こんなの………イッセーくんって、やっぱり大胆よ」

 

「アハハ………ま、まぁ、そうなるよね」

 

「ねぇ、イッセーくん。………ちょっと来てくれる?」

 

「…………え?」

 

 

 

 

俺がイリナに手を引かれて連れてこられた場所。

 

そこは―――――

 

「あ、あのー………イリナさん、これは?」

 

俺が問うとイリナは頬を染めてモジモジしながら言う。

 

「え、えっとね………。わ、私も超特急だとは思うんだけど…………その、ミカエルさまのご期待もあるし………イッセーくんと、その………天使と悪魔の架け橋になっちゃおうかなって」

 

俺達がいるのは例のドアノブの部屋―――――子作り部屋だ。

天使の放つ光力に似た波動が伝わってきており、ご利益のありそうな雰囲気を醸し出していた。

 

俺はイリナにこの子作り部屋に連れてこられたわけだが…………。

 

「い、いや…………あのさ、なんでこの二人までいるの? というか待機してたの?」

 

俺が指差したところには―――――下着姿のアーシアとゼノヴィア!

 

ベッド上で既に戦闘モードに入ってるんですけど!?

 

なにやってんの!?

 

ゼノヴィアが無駄に堂々としながら言う。

 

「なに、イリナが覚悟を決めたからね。私達も覚悟を決めたわけだ」

 

「………そ、その………私も、イッセーさんの…………赤ちゃん生みたいです!」

 

途切れ途切れの言葉でかなり恥ずかしそうにしているが………なぜかものすごい覚悟を決めた目をしていた。

 

つーか、赤ちゃんですか!

こうもハッキリ言われると、どう返せば良いのか分からねぇ!

 

ゼノヴィアが俺をベッドに引きずり込んでくる!

 

「私達は決めていたんだ」

 

「決めていた………? 何を………?」

 

俺が聞き返すと、ゼノヴィアは一つ頷く。

 

そして―――――

 

「生まれた場所、時は違えど―――――イッセーに抱かれる時は一緒だ!」

 

「どこの三国志だぁぁぁぁぁぁ!」

 

桃園の誓いですか!?

なんつー誓いを立ててんの!?

 

三人同時に抱けと言うことですか!?

 

君達、全員初めてだよね!?

初めてにしてはレベル高すぎませんか!?

 

「ああ、出来ればイクときも一緒がいいな」

 

「難易度高すぎだろぉぉぉぉぉ!?」

 

すると、この部屋に一つの気配が現れる。

 

それは俺達の傍に表れて、

 

「いえ、頑張ればできるわ! イッセーなら!」

 

イグニス登場!

寝てたんじゃないの!?

 

つーか、登場と同時に無茶苦茶なこと言ってるよ!

 

「さぁ、イッセー! いきましょう! 4P!」

 

「なんでテンション高いの!? まだ酔ってる!?」

 

ツッコミを入れる俺だが、イグニスはそれを無視。

 

俺の両肩にそっと手を置いて微笑んだ。

 

「繋がることで、世界は廻っていく。分かり合うことが大切。そうよね?」

 

「あ、ああ」

 

「なら繋がりましょう―――――下半身で」

 

「この人、最低なこと言ったよ! おまえ、本当に女神か!?」

 

「身体で分かり合う。そんな相互理解もあるわ」

 

この駄女神ぃぃぃぃぃぃぃぃ!

 

言ってることはマジで最低だよ!

 

下半身で繋がるとか、完全にアウトじゃん!

分かり合うってそういうことじゃないと思うんだ!

 

しかし、この場において俺のツッコミなど通じる訳もなく…………。

 

「イッセーさん…………私、イッセーさんと分かり合いたいです」

 

「そうだぞ、イッセー。繋がることで分かることもある」

 

「イッセーくん! 私達…………分かり合えてるんだよね? 私の気持ちも…………わかる、よね?」

 

…………っ!

 

そ、そんな潤んだ瞳で詰め寄られたら…………!

 

えぇい、ままよ!

 

俺だって、この三人のことを…………!

 

俺の覚悟を見たのかイグニスが微笑む。

 

「それじゃあ、私は行くわ。四人には女神さまからのご加護を」

 

イグニスの手から赤いオーラが放たれ、俺達を包み込む。

 

温かいオーラが…………俺達の心に溶けていく―――――。

 

聖なる夜は長くなりそうだ。

 

 

 

 

[三人称 side]

 

 

時は少し飛ぶ。

 

年が明け、駒王学園では三学期を迎えた後のことだ。

 

ゼノヴィアの生徒会選挙、アーシア率いるオカルト研究部がスタートしている中、新たな波乱が彼らに迫っていた。

 

しかし、それとは関係ない場所でも嵐が巻き起ころうとしていた。

 

 

冥府―――――。

 

 

それは冥界の下層に位置する死者の魂が選別される場所。

 

ギリシャ勢力の神、ハーデスが統治する世界だ。

 

そこに踏み込む者がいた。

 

《と、止まれ…………!》

 

「アハッ♪ 止まれと言われて止まる人ってあんましいないよねー」

 

白いパーカーの少年が手を横に凪ぐと彼を制止させようとした死神は消え去る。

 

上級死神が子供の一振りで消されたのだ。

 

その事実に少年を取り囲む死神達は戦慄する。

 

少年は動揺する死神達を無視して歩を進めていく。

向かうは神殿の最奥。

 

そこにいるのは当然―――――

 

《ほう………これはまた予想外の訪問だな。貴様は――――》

 

冥府の神ハーデスは不気味な眼光を放ちながら、その少年を見る。

 

世界でもトップクラスの神が放つ殺気だ。

並みの者………いや、実力者であってもその殺気に推され、冷や汗を流すだろう。

 

しかし、少年はフードの下から余裕の笑みを見せる。

 

「やぁ、冥府の神ハーデス。僕はアセム…………って、自己紹介はいらないよね? ずーっと、僕のこと覗いていたみたいだし」

 

少年―――――異世界の神アセムはニッコリと微笑みながらそう言った。

 

「アポプスくんから契約を結ぶ条件の一つとして、僕の居場所を聞き出したんでしょ? 監視してくるなんて、ストーカーかい?」

 

《なに、世界の脅威となろう者がいるのだ。それを監視するのは当然のこと。…………して、何用か? 貴殿も私と契約でも結びにきたか?》

 

「まさか。僕はね、ストーカー気質の陰険なおじいちゃんにお仕置きしにきたのさ」

 

アセムがそう告げた瞬間、周囲の死神の殺気が膨れ上がった。

中級や上級はもちろん、最上級死神までもがそれぞれの武器を構え、アセムに斬りかかろうとしている。

 

《ファファファ………中々面白いことを口にする。私に仕置きか。だが、貴殿の力は耳にしている。果たして仕置きで済むかどうか》

 

「アハハ♪ 大丈夫大丈夫♪ おじいちゃんだから手加減してあげるって♪ ここで消したら、各勢力の神に僕の危険性を伝えられないでしょ? おじいちゃんには僕の広告になってもらうよ」

 

愉快に笑うハーデスとアセム。

 

ふとハーデスが訪ねる。

 

《貴殿の目的はなんだ? 異世界の神がこの世界に来てまで何をしようとしている?》

 

「んー、気になる? それじゃあ、少しだけ教えてあげよう。―――――思い上がりの激しい神には破滅を、知らぬ振りをする弱者には現実を見せる。この世界は変わる必要があるんだよ。あっちの世界のように」

 

その時、アセムの左手に黒い籠手が現れる。

 

それはまるで―――――。

 

「この間、天界で『システム』を覗いたんだけど、それを参考にしたんだ♪ ベルの力でも神器の全てを明らかにするのは難しくてねぇ。いやー、聖書の神さまは凄い技術を持ってたんだねぇ。この世界の神さまも中々にやる。ま、それは置いといてだ。―――――君、半殺しで良いよね? ストーカーさん♪」

 

冥府に破滅の蝶が羽ばたいた――――――。

 

 

[三人称 side out]




これにてファニーエンジェル編完結です!
次回は番外編かな~。

コラボもぼちぼち進めていきまーす(。・ω・。)

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