ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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21話 分かり合います!

クリフォトがアグレアスと共に去った後、俺達は第四天で一息ついていた。

 

トウジさんだけは解毒の途中だったので、第五天の医療施設に運ばれることになったが、掠り傷以外で目立った外傷は特にないので解毒の続きをやるそうだ。

 

クリフォトを離れた八重垣さんは現在、重要参考人として天界側で取り調べを受けている。

共闘したとはいえ、テロリストとして教会の要人やバアル関係者を殺害したことには変わりはないため、天叢雲剣は取り上げられ、拘束はされているが…………。

 

残った邪龍の群れもアグレアスと共に消えた。

天界側の被害も相当なもの。

 

で、肝心の『システム』への影響なんだが………。

 

ミカエルさんが言う。

 

「先程、『システム』の様子を見てきましたが特に影響を受けた様子はありませんでした。…………異世界の神の力…………恐ろしい限りです。私も含め、セラフの誰もが感知できませんでした。それに『システム』を覗き見ることに成功するなど、私達の理解を越えた力を持っているとしか言いようがありません」

 

ミカエルさんの報告にこの場のメンバー全員が息を呑んだ。

 

アセムのやつ、マジで何の痕跡も残さずに第七天に侵入していたのか…………。

 

まぁ、第七天に侵入したと嘘を言っている可能性もあるけど…………あの口調じゃ、それはないだろう。

 

ミカエルさんが俺に訊いてくる。

 

「かの神は何が目的なのでしょう?」

 

「あいつは神器システムについて感心を持っているようでした。それに………去り際、あいつは『創る』という言葉を残していきましたから…………おそらく――――」

 

「神器に似た何かを作ろうとしている、ですか」

 

俺はミカエルさんの言葉に頷いた。

 

何のために、どんな物を創るかは分からないけどね。

 

現段階であれほどの力を持っているのに、更に力を求めているのか…………?

 

いや………あいつの場合、興味本意かもしれんが………。

つーか、そっちの方があり得そうで逆に怖い。

 

ミカエルさんが壁にもたれている曹操に視線を移した。

 

「帝釈天さまからの加勢、ありがとうございました」

 

曹操も今回は味方としてラードゥンや量産型グレンデルとかいう新型の邪龍と戦ってくれた。

おかげでラードゥンも無事撃破、封印することができたそうだ。

 

「こちらも天界に入ることができるとは思っていなかったものでね。これでも俺は咎人ですよ。それに今回の加勢はハーデスさまからのタレコミです」

 

その報告に全員が驚いていた。

 

ハーデスからの情報?

今回、クリフォトに天界への裏口を教えたのは奴なんだろう?

 

「………ハーデスはこれでイーブンだと思っているのかしら? それとも、両陣営の邪魔をして楽しんでいるだけ?」

 

リアスは一人、考え込むが…………。

 

どっちにしても最低な神さまには違いないよ。

とりあえず、一発殴ってやりたい。

そうじゃないと、こっちはおさまらないからな!

 

ミカエルさんが曹操に言う。

 

「一応、あなたは聖槍に選ばれし者。敵意がないのであれば、無下にはできませんよ」

 

「ふふふ、聖槍はイエスを貫いたんだがな。天使長殿は寛大のようだ」

 

曹操は踵を返す。

 

「ではな」

 

「おう、お疲れさん」

 

俺がそう返すと曹操は不思議そうな表情を浮かべた。

 

「やけにあっさりしているな」

 

「まぁな。ミカエルさんが言った通りだ。敵じゃないのなら、仲間に危害を加えないならそれでいいさ。あと、『英雄』の意味を理解したのなら。なぁ、ただの曹操」

 

俺はそう言うと笑む。

 

奴も苦笑する。

 

「そうか。そうだな。今の俺はただの曹操。英雄でもなく、異形の毒でもない、ただの一人の人間だ。その上で君に挑むよ。君は俺の好敵手であり、目標のようだ。リベンジをさせてもらう」

 

「ああ、いつでも来いよ。汚い真似をしなけりゃ、俺も真正面から殴ってやるさ」

 

「それは怖いな。君に殴られるとそれだけで致命傷だ」

 

ま、人間のこいつからすれば、俺の拳は一撃必殺になり得るからな。

何としても避けたいところだろう。

 

リアスが問う。

 

「他の神滅具所有者は?」

 

「ゲオルクとレオナルドか? 彼らはまだ冥府だよ。ゲオルクは冥府で死神が使う術の研究をしている。というよりもあそこは過去に送られた著名な魔術師の魂がいてね、彼らと魔法の議論に没頭しているさ。レオナルドもあそこの空気が気に入ったようで、ゲオルク同様戻ってくる気はないそうだ」

 

自ら冥府に残っていると。

英雄派の連中も変人が多いような…………。

 

あれ…………?

 

そういや、あいつ来てなくね?

 

元英雄派のタダ飯ぐらいは…………?

 

俺が辺りをキョロキョロ見渡すと、美羽が言った。

 

「もしかして、ディルさん探してる?」

 

「あ、うん。あいつ、来たのか? こっち来るみたいな感じだったけど」

 

「ううん。来てないよ。というより、さっき気になって連絡したら、途中で道に迷って迷子になったって」

 

「はぁ!?」

 

 

~少し前のディルムッドちゃん~

 

 

「…………ここはどこだ?」

 

天界に向かうため、冥府を通り煉獄へ向かうはずだった。

 

しかし、いる場所は…………全く違う場所。

 

「………迷子になったか」

 

頭上でカラスが鳴いた。

 

 

~少し前のディルムッドちゃん、終~

 

 

「あいつ何やってんだぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

全力のツッコミが天に響く!

 

迷子!?

加勢にくるんじゃなかったの!?

天界に上がる道を知ってたから、あんなこと言ってたんじゃなかったの!?

 

しっかりしろよ!

 

美羽が苦笑しながら言う。

 

「今は家にいるって。なんでも親切なおばあさんが道を教えてくれたそうだよ?」

 

「しかも、帰り道案内されてんじゃねぇか! 親切なおばあさんって誰よ!?」

 

「町内会の西村さん」

 

「あー、あの人…………って、バカ! あいつ、どこで迷った!? まさかと思うが駒王町でうろちょろしてたんじゃあるまいな!?」

 

「そこまで酷くないよ。隣町まで行ってたみたいだし」

 

「それほとんど違わねぇよ!」

 

なに、あいつ、隣町で迷子になってたの!?

アホの子だったの!?

 

御先祖さまが泣いてるぞ!

 

俺の肩にポンと手を置かれた。

 

振り返ると曹操が遠い目をして、微笑んだ。

 

「ドンマイ………」

 

「おまえ、他人事だと思ってやがるな!?」

 

「まぁ、元は同じ英雄派だったが………俺の苦労、分かってくれたかな?」

 

「分かるよ! こいつに関しては共感できちゃうよ!」

 

英雄派のリーダーも大変だったんだな!

そりゃ、苦労するよ!

働かないし、迷子になるし、大飯ぐらいだし!

 

美羽の手元に魔法陣が展開される。

通信用の魔法陣が光を放つと、美羽の掌の上に小さな立体映像が映し出される。

 

そこに映っていたのはどこかしょんぼりしたディルムッドだった。

 

美羽が気遣うように声をかける。

 

「ディルさん、そんなに落ち込まなくても………」

 

『いえ………マスターのお役に立てなかった私は………くっ! 下僕失格です!』

 

「下僕にした記憶ないよ!?」

 

このやり取りを見るのは何回目だろう…………。

 

曹操がディルムッドに話しかける。

 

「久しいな、ディルムッド。君は相変わらずといったところか」

 

ディルムッドは曹操の顔を見ると、少し目を細めた。

 

元英雄派としては久し振りに会う元リーダーに思うところがあるのかもしれない。

 

ディルムッドはじっと曹操を見つめて、一言。

 

『あぁ、おまえか。そ…………劉備』

 

「惜しい! 国が違う! というより、今、『そ』って言っただろう!? わざとか!」

 

『孫権と間違えた』

 

「それも違う! なんで残した!?」

 

『じゃあ、夏侯惇』

 

「国は同じだよな! でも、違うから! 曹操だ!」

 

『ギャーギャー喚くな。漢字の名前は難しくて覚えにくいのだ。張飛』

 

「君、実は結構、三國志知ってるだろ………!?」

 

うーん、今日の曹操はツッコミが冴えてるな!

次から次に繰り出されるボケに的確なツッコミ!

 

こいつ、やはりツッコミの才能が!?

 

「ディルムッド、君は俺のことが嫌いだろう?」

 

『それはそうだ。唐揚げ君をくれなかった恨みは大きい』

 

「いつの恨みだ!?」

 

…………曹操って唐揚げ君とか食べるんだ。

 

なんか意外だな。

 

立体映像のディルムッドが手を振る。

 

『私はこれで失礼する。ではな、曹仁』

 

「いや、曹操ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

曹操のツッコミ空しく、ディルムッドはそのまま映像を切ってしまった。

 

ちなみに家に帰ってから調べたんだが、曹仁は曹操の従兄弟らしい。

 

嵐のようなボケとツッコミの応酬が終わり、静まり返るこの場所。

 

俺やリアスはもちろん、ミカエルさんをも含めた全員の視線が曹操に集まる。

もちろん、皆の目は哀れみと同情で満ちていた。

 

………お気の毒に。

 

復活して早々にこれか。

 

まぁ、それはともかく――――――

 

「「ツッコミキャラ確定、おめでとう」」

 

俺と木場はそっと曹操の肩に手を置いた。

 

 

 

 

曹操が泣きながら去った後、天使の兵隊を退けながら、こちらに進んでくる影があった。

 

俺の前に邪龍、クロウ・クルワッハが立つ。

 

「………おまえはドラゴンか? それとも悪魔か?」

 

「へ?」

 

………いきなり、わけの分からん質問をされた。

 

まぁ、俺は悪魔だし、赤龍帝だからドラゴンでもあるけど………。

 

どう答えるべきか悩む俺に、クロウ・クルワッハは続ける。

 

「俺はドラゴンの行く末を見届けることを宿願としている。おまえは、俺の答えなのか?」

 

「知らん。俺にそんな答えを求められても困る」

 

「そうか」

 

納得したように頷くクロウ・クルワッハ。

 

しかし、次の瞬間。

 

「俺と戦え」

 

「………は? 今から………?」

 

聞き返す俺に黙って頷く最強の邪龍さま!

 

え、えぇ…………今から戦えって………。

これまた無茶な要求をしてくれる。

 

俺、そんなに動ける体力ないよ!?

 

「無理! もう疲れたから!」

 

とりあえず正直に言ってみる!

 

他の邪龍と違って、こいつはまだ話を聞いてくれるはず!

頼むから聞き入れてくれよ!

 

今からドンパチとか絶対無理だからな!

 

すると、クロウ・クルワッハは無言のまま踵を返した。

 

「…………では、俺は帰る」

 

おぉっ、聞いてくれたよ!

結構素直じゃないか!

 

「クリフォトに帰るのか?」

 

「いや、もうあそこには興味がない。好きに潜るさ。人間界は慣れている」

 

それだけ言い残して、奴は静かにこの場を後にした。

 

うーん、やっぱりドラゴンって変わった奴が多いよなぁ…………。

 

俺の周りでまともなドラゴンってタンニーンのおっさんとティアくらい?

 

『おい、なぜ俺が入っていないのだ?』

 

…………ドライグは…………うーん…………。

 

『そこで悩むなぁぁぁぁぁぁぁ! 泣くぞ!?』

 

『まぁまぁ。ドライグも落ち着きなさいな。ドライグはおっぱいドラゴンだから仕方がないわ♪』

 

『うぉぉぉん! うぉぉぉん!』

 

あ、ドライグさんが泣いた。

元気だせ、ドライグ。

 

俺がドライグを宥めていると、ミカエルさんがイリナに微笑んでいた。

 

「イリナ、よく戦ってくれました。さすがは私のA(エース)です」

 

尊敬する天使長に誉められて、頬を赤く染めるイリナ。

 

ふと、イリナが気になったようにミカエルさんに訊いた。

 

「ミカエルさま、こんなときにお訊きするのは恐れ多いことなのですが………」

 

「なんでしょう?」

 

「どうして、私をAにお選びになられたのですか?」

 

ミカエルさんがイリナをAに指名した理由か。

それは興味深い。

 

他のメンバーも気になるようで、視線をミカエルさんとイリナに注ぐ。

 

ミカエルさんはニッコリ微笑むと指を一本立てた。

 

「人間界でトランプの箱の封を切ると最初に目にするカードはなんでしょう?」

 

「………スペードのA」

 

「そうです。私はそのカードには他の何者よりも転生天使――――『御使い(ブレイヴ・セイント)』を体現できる者が良いと考えました。あなたは天真爛漫で、実直であり、敬愛の精神を持った敬虔な信徒です。そして、誰とでも打ち解けられる。あなたはこれからの天使を現す者として一番適任だったのです」

 

なるほど………。

そう説明されれば、イリナの人選は納得できるものがあるな。

 

三大勢力が和平を結ぶ前は仕方がないにしても、和平後は仲良く接して来てくれた。

 

学校の方でもそうだ。

信仰を広めようとしたりして、不思議な娘だと思われがちではあるが、それでもどんな生徒とも仲良くしている。

 

イリナをAに選んだのはミカエルさんの願いが籠められていたということか。

 

ミカエルさんが改めてイリナに言う。

 

「これからも『御使い』の顔であることを願います」

 

「はい! こちらこそ、精一杯お仕え致します! アーメン!」

 

真実を知って感動の涙を流すイリナ。

 

これで万事解決………にはまだ早いか。

 

天使の一人がミカエルさんに何やら報告する。

 

「兵藤一誠くん、天使イリナ。彼の取り調べが終わったようです」

 

 

 

 

俺とイリナはミカエルさんに連れられて、八重垣さんが収容されている施設に向かった。

 

収容所と言っても、他の施設みたいに真っ白な建物で中はかなり綺麗だ。

 

「こちらです」

 

廊下をしばらく歩いていくととある部屋に案内される。

 

中に入ると長机と複数の椅子。

そして、椅子の一つに腰かける八重垣さんの姿があった。

 

もう彼に反抗の意思はないだろうが、一応とのことだろう。

手には光力による手錠が掛けられていた。

 

俺達は八重垣さんと向かい合うように席につく。

 

ミカエルさんが言う。

 

「八重垣殿。あなたはクリフォトの手先となり、教会の信徒を殺害しました。これは許されることではありません」

 

しかし、とミカエルさんは続ける。

 

「時代が時代であったとはいえ、教会があなた方に行ったこともまた許されるものではありません。本当に申し訳ありませんでした」

 

ミカエルさんは深々と頭を下げた。

 

教会の信徒と悪魔が関係を持つ。

当時の状況からすれば、とんでもないこと。

下手すれば、それが火種になって再び争いが勃発したかもしれない。

 

それでも………やっぱり、他の道があったと思えてならない。

 

俺はミカエルさんに訊いてみた。

 

「ミカエルさん。八重垣さんの処遇はどうするつもりですか?」

 

「彼にそれだけの理由があったとしても、テロリストとして動いていたことには変わりありません。罰は受けてもらいます。ですが、それは暫しの拘束で済むでしょう。彼が手を貸したこともリゼヴィムを退かせる要因の一つになったようですから。これは大きいことです」

 

その言葉に俺は胸を撫で下ろす。

 

…………そっか。

軽い罰で済むのか。

 

それを聞いて安心した。

 

俺が安堵していると、八重垣さんが口を開いた。

 

「………どんな理由があったにせよ、罪は罪。僕は復讐を果たしたが…………彼らの親しい者からすれば、僕はただの人殺し。一度失った命を僕は新たに得た。これからは償うために生きていくよ」

 

「はい。俺も八重垣さんには生きてほしいです。クレーリアさんの分まで」

 

「彼女は悪魔だから、その分まで生きるとなると難しいだろうけどね」

 

そう言って、八重垣さんは苦笑する。

 

………良かった。

俺達はこうして笑いあえた。

 

今の八重垣さんからは以前の狂気は感じられない。

復讐にとりつかれた彼はいないようだ。

 

すると、八重垣さんが頭を下げてきた。

 

「君達にお礼が言いたい」

 

「お礼?」

 

イリナが首を傾げた。

 

お礼なんて言われることしたかな…………?

 

「今日、僕は二度、彼女に会えた。一度目は局長の娘さんが放った聖なる力に呑み込まれた時。二度目はあの虹色の粒子が漂う空間。二度目は彼女と………ほんの少しだったけど話すことができたよ」

 

「―――――!」

 

やっぱり八重垣さんはクレーリアさんの魂と話せたのか。

 

悪魔であるクレーリアさんの魂が天界…………それも第四天に運ばれたというのは考えにくい。

 

そうなると、彼女の魂はずっと彼に付き添っていた………?

死後、八重垣さんがそれに気づいてなかったのは復讐にとりつかれていたから………?

 

仮にそう考えると、イリナの持つオートクレールの力が二人を引き合わせたということなのだろうか?

 

そして、虹色の粒子が漂う空間。

 

あれは…………なんだったんだろう?

 

皆の声が頭の中に直接聞こえてきた。

不思議な感覚だったけど、すごく安心を覚えたというか………。

 

俺だけでなく、あの場にいたイリナやゼノヴィア、アーシア、八重垣さん。

それにリゼヴィムまで聞こえてたようだったし………?

 

イグニスが知っているようだったので、聞いてみたんだが…………。

 

『うふふ♪ 今はまだ不完全なようね。でも、大丈夫。一度、使えたのならまた使えるようになるわ♪ イッセーならいつかはって思ってたけど、私の見込みに間違いはなかった。―――――革新なさい。ゆっくりでいい。皆の想いを繋ぐために』

 

とのことだ。

 

………結局あれが何かは具体的に教えてもらえなかったけど、どうやら天翼に隠されたブラックボックス的な力らしい。

となると、以前に言ってたイグニス本来の力、その一端があれになるわけだが………。

 

俺は頭を切り換えて八重垣さんの顔に目をやる。

 

八重垣さんは優しげな表情で俺を見ていた。

 

「赤龍帝。君は彼女を守るんだ。僕が出来なかったことを君は―――――。心配はいらない、君ならできる。それに、君達は許される時代に生きているのだから」

 

 

 

 

八重垣さんとの面会後。

 

俺達は先程の場所で休んでいる皆の元へと戻る途中のことだ。

 

イリナが施設の窓から空を見上げて呟いた。

 

「あの人達は分かり合うことができたんだね」

 

「ああ」

 

頷きを返す俺。

 

ふいにイリナが頬を染めて訊いてきた。

 

「私達は………どうかな? 分かり合えてる、かな?」

 

イリナと俺か。

 

またあの二人と俺達を重ねているんだろうけど…………。

 

俺はニッと笑って言ってやった。

 

「もちろん!」

 

分かり合うことに種族なんて関係ない。

 

心さえ、想いさえ通じていれば大丈夫。

 

もちろん、それだけで解決するには難しい問題もある。

だけど、互いのことを理解出来ていれば、それも何とかなると思うんだ。

 

 

―――――繋がることで、世界は廻っていくのだから。

 

 

そんなことを思っていると、俺は何かに躓いてしまう!

 

いかん…………!

今回の戦いで無茶しまくったから、それの影響が!

 

この流れは―――――

 

 

むにゅん

 

 

俺の両手に伝わる柔らかい感触。

 

躓いた拍子に、俺はイリナを廊下に押し倒してしまい――――おっぱいを鷲掴みしてしまっていた!

しかも両方!

 

イリナめ、この感触はまたノーブラだな!

最高に柔らかいじゃないか!

 

って、感動してる場合じゃねぇ!

 

 

この場には―――――

 

 

「いやぁ、若いって良いですねぇ」

 

ミカエルさんが微笑ましそうに見てくるぅぅぅぅぅ!

 

違うんです!

これは転んだ拍子に偶然、偶々!

 

『流石はラッキースケベ! やっぱり〆はおっぱいなのね! 分かってるぅ!』

 

おまえは黙ってろや、駄女神ぃぃぃぃぃ!

態々、ミカエルさんに聞こえる声で言わないで!

お願いだから!

 

「い、イッセーくん………。そっか、戦いの後にもう一汗流すつもりなのね………? わ、私はイッセーくんが求めるなら…………」

 

あぁぁぁぁぁぁぁぁ!

イリナが両腕を開いて完全受け入れ体勢にぃぃぃぃぃ!

 

嬉しい!

嬉しいよ!?

でも、場所を選ぼう!

 

ミカエルさん見てるって!

ニコニコ顔でこっち見てきてるって!

 

「天使と悪魔の架け橋が誕生するのも時間の問題ですね。これは主も見守ってくれていることでしょう」

 

「ミカエルさんんんんんん! お願いだから、神々しい光出さないでぇぇぇぇ! 見守らないでぇぇぇぇ!」

 

 




次回が本章のラストになるかと。

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