ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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18話 悪意、再び  

アセムとの戦闘を終えた後、第五天に繋がる門を目指した俺。

 

門が見えかけた時、複数の影を見つけた。

 

イリナとアーシアとゼノヴィアの教会トリオにトウジさん。

 

そして―――――

 

「終わったか………」

 

地に倒れ伏す八重垣さんの姿があった。

傍らには彼が使っていた天叢雲剣。

 

『八岐大蛇の反応が消えているな』

 

ドライグの言う通り、あれだけ放っていた邪気が完全に消えている。

邪龍の気配もない。

 

俺の視界に神々しい輝きを放つ二振りの聖剣が映った。

 

イリナのオートクレールとゼノヴィアのデュランダルが聖なるオーラを纏っていた。

 

普通、聖剣がこれだけの力を放っていると肌を刺すような痛みがあるはずなんだが、今は心地よさを感じる。

心が落ち着く。

 

イグニスが言う。

 

『オートクレールは斬った相手の心まで清めるんでしょ? その効果かもしれないわね』

 

なるほど。

 

イリナの持つオートクレールは相手を清めるという聖剣。

そのオーラに触れた天叢雲剣は綺麗に浄化されたということか。

 

俺は痛む胸の傷を抑えながらイリナ達の方へと歩み寄る。

 

すると、俺を見たアーシアが悲鳴をあげた。

 

「その傷は!? 大丈夫ですか、イッセーさん!?」

 

「ああ………さっきやられてな。悪いけど、回復頼める?」

 

「はい! すぐに治療します!」

 

アーシアはそう言うと俺の胸に手をかざして、淡い緑色のオーラを傷口に当てた。

 

骨まで達していた傷もアーシアの治癒にかかれば一瞬だ。

治療開始してから数秒もせずに傷は完璧に塞がった。

 

「ありがとな、アーシア」

 

俺はアーシアにお礼を言った後、イリナに視線を向ける。

 

「イッセーくん………」

 

「親父さんは助けられたようだな」

 

「うん………」

 

イリナは憂いに満ちた表情で視線を移す。

 

その視線の先には仰向きに倒れ、天を仰ぐ八重垣さんと、その隣で膝をついて涙を流すトウジさんの姿だった。

 

「八重垣くん………私は………私がしたことは何度謝ったとしても許されることじゃない。さっき私は生きて償うと言った。それは君からすれば甘いことを言っているようにしか思えないかもしれない。………それでも、私は………!」

 

大粒の涙を流して言葉を紡いでいくトウジさん。

八重垣さんは黙ったまま、天を見つめたままだ。

 

俺は八重垣さんの隣に立つとその場に片膝をついた。

 

八重垣さんの視線が俺に移る。

 

「………赤龍帝か」

 

俺は静かに頷く。

 

小さく息を吐いた後、俺は口を開いた。

 

「………昔、俺も大切な人を失ったし、逆に奪う行為もしてきた。俺も咎人だ。だから、あなたの気持ちもトウジさんの気持ちも分かるつもりだ」

 

病室で俺はトウジさんに罪と向き合えと言った。

でも、それは自分自身に言い聞かせた言葉でもあった。

 

どんな事情があったにせよ、俺もトウジさんも罪を犯した。

トウジさんは八重垣さんを、俺は戦場で多くの人を傷つけたし、殺してきた。

 

吸血鬼の町で初めてアセムと出会った時、あいつは俺に殺人者と言った。

あれは全くもってその通り。

 

「俺やトウジさんが犯した罪は多分、消えることはないと思う。それでも、俺達はそれを背負っていくと決めた。――――俺達にとって簡単に死を選ぶことは逃げなんだよ」

 

償うために死ぬ?

 

確かに死ぬことは怖い。

死ぬのは嫌だ。

 

でも、死は一瞬だ。

果たして、それで犯した過ちを償えるのだろうか。

 

 

――――死ねばそこで終わりだ。だが、それで世界が変わるのか? 違うだろ。おまえが死んでも世界は続いていく。自分は何のために戦っている? 何のために剣を取った? 

 

 

――――償うつもりがあるのなら、死を受け入れるのではなく、死ぬ気で償え。

 

 

――――生きて、生きて、生き抜いて、自分に何が出来るかを考えろ。そして、その罪を心に刻め。逃れようとするな。真正面から受け止めろ。

 

 

昔、モーリスのおっさんが騎士団の人達に話していたことだ。

騎士団の若い人達は戦場で人を殺めた結果、相手の命を絶ったという罪悪感で心が押し潰されそうになっている人もいたんだ。

あのおっさんはそんな人達によく言い聞かせていた。

 

当時、力の無かった俺は近くで聞いていただけだったけど、今ならこの言葉の本当の意味が分かる。

 

だから、俺は死ごとき(・・・)で償えるなんて思っていない。

 

それからもう一つ。

俺は八重垣さんに言いたいことがあった。

 

「八重垣さん………。あなたは確かに教会も大王派の悪魔を恨んでた。だけど、一番許せないのはクレーリアさんを守れなかった自分じゃないのか?」

 

こんな問い、下手すれば激昂されることだってある。

 

でも、八重垣さんは静かに耳を傾けてくれていた。

 

そして、ゆっくり口を開いた。

 

「………君の………言う通りだよ。………僕達を引き裂いた教会が、大王派の悪魔が憎い。今でも恨みはある」

 

「ええ」

 

「でも………あの時、僕が彼女を守れさえしていれば、こんなことにはなっていなかったと思う。クレーリアさえ守ることが出来ていれば、僕は復讐に剣を取ることもなかっただろう」

 

八重垣さんはそう漏らすと、どこまでも白い天をじっと見つめた。

 

過去の自分を思い出しているんだろう。

 

恨みもある。

でも、それ以上に愛する人を守れなかった後悔。

今考えてもどうしようもないことを頭の中で永遠と問答し続ける。

 

――――あの時、自分はどうすればよかったのか、と。

 

今の八重垣さんの顔はそんな顔だ。

 

「君に一つ訊きたい」

 

「なんだ?」

 

「君に愛する人はいるかい?」

 

「いるよ」

 

「もしだ。君とその人を引き裂く者が現れたら、君は―――――」

 

「守るさ」

 

俺は八重垣さんがいい終える前に、その問いに答えた。

そんなこと分かりきった、迷う必要のない答えだったから。

 

「全力で守る。次元ねじ曲げても、世界の理を崩してでも守りきるさ」

 

俺を愛してくれている人がいる。

美羽もアリスもリアス達もこんな俺を好きだと言ってくれた。

 

俺も彼女達のことが好きだ。

守ると、この先ずっと一緒だと誓った。

だから、何が来ようとも守りきる。

 

八重垣さんの視線がイリナに向かう。

 

「では、悪魔である君は、そこの天使も助けることができるか?」

 

「できる。今しがた言った通りだ。次元ねじ曲げても世界の理崩してでも守る。イリナだって、俺の大切な人なんだからさ。―――――天使だとか悪魔だとか、そんなもんは関係ない。人は想いさえ通じていれば、分かり合える。理解し合える。大切なのは相手を想う『心』だ」

 

種族の違いなんて些細なこと。

 

想いが通じていれば、分かり合える。

ある意味、それが全てじゃないかな?

 

八重垣さんの目元から―――――涙が流れていた。

 

「………そうだな………その通りだよ。僕達だって――――」

 

俺は八重垣さんに手をさしのべる。

 

「俺達とあなたも分かり合える。もう互いの想いは通じただろう?」

 

「ああ、僕達は―――――」

 

八重垣さんが俺の手を取ろうと身を起こそうとして―――――。

 

俺は即座にアスカロンを籠手から引き抜いた。

 

フルスイングで後ろに振るうと、俺の背後で爆発が起こる。

 

イリナもゼノヴィアもアーシアも何事かと慌てるが――――。

 

「ありゃりゃ? バレちったかよ?」

 

もう聞くだけで不快になる声が俺の耳に届いた。

 

俺は声のした方へ顔を向ける。

そこには、銀髪の中年男性が不思議そうな顔でこちらを見ていた。

 

「あめぇよ。俺の虚を突きたかったら完全に気を消すことだな。――――リゼヴィム」

 

そう、この空気を潰すように現れたのはリゼヴィム・リヴァン・ルシファー!

新生『禍の団』の首領にして、吸血鬼の町に壊滅的な被害をもたらせたクソ野郎だ!

 

「様子見にきたら、美しい復讐の喜劇が、なーんか感動の場面になってたからさ。合いの手を入れてみたんだけどよ」

 

「空気読め、クソジジイ。今のはどう見てもおまえが手出ししていい雰囲気じゃなかっただろうが」

 

「彼は大王派と天界に起こった事件の真相を語る役と天叢雲剣の宿主という役目を立派にやり遂げたんだ。もうお役御免でしょ。それにぃ」

 

リゼヴィムは八重垣さんに指を向ける。

 

「その人、もともと死人だぞ? 殺しても問題ないっしょ! うひゃひゃひゃひゃ!」

 

「………」

 

そんな勝手な理由で八重垣さんを殺そうとしたのか。

聖杯の力で甦らせたと思えば、それを今度は簡単に消そうとする。

 

どこまでも命を弄びやがる………!

 

「吸血鬼の町、冥界の学校、そして今回もそうだ。おまえは何のためにこんなことをする………?」

 

ヴァレリーも冥界の学校に来ていた子供達もただ幸せになりたいと願っていた。

そのために動いていた。

 

それをこいつは全て台無しにしようとする。

 

リゼヴィムは平然と答えた。

 

「んー、そりゃ、おじさんが楽しむだけだよぉ」

 

「………」

 

ヴァーリ、おまえの気持ちが良く分かった。

 

………心の底から殺したいと、消したいと思えるな。

 

こんなやつなら、誰でも殺したいと思うよな………!

 

俺も目の前のクソ野郎は今すぐに消したいよ………!

 

すると、

 

「………なんで、僕を守ったんだ?」

 

後ろにいた八重垣さんがそう声を漏らした。

 

「彼の言う通り、僕は一度死んでいる。聖杯の力を使ってあの世から戻ってきた死人だ。そんな僕を君は………」

 

俺はその問いに答えた。

 

「あなたは今、生きてるじゃないか」

 

「―――――っ!」

 

この言葉に目を見開く八重垣さん。

 

俺は言葉を続ける。

 

「聖杯の力で甦ったとしても、今は生きて、こうして俺と話している。守る理由はそれだけで十分だ」

 

そう言って、俺は前に出る。

全身から赤いオーラを放って、リゼヴィムの前に立った。

 

ドライグ、神器の具合はどうだ?

 

『ギリギリといったところか。禁手は何とかできる。第二、第三階層も使える。だが、EXAと昇格強化は無理だ』

 

上等だ。

思ってたより調整が早くて助かるよ。

 

それで、例の『透過』はどうなった?

 

『悪いが、間に合わないだろう。神器の調整でそれどころじゃなかったからな。…………だから、トランザムは使うなと言っただろうに………』

 

呆れた口調で言うドライグ。

 

うん、それに関してはマジでゴメン。

心の底から謝るよ。

 

『大体な、最近の相棒は神器の使い方が荒くなってないか!? その度に調整する俺の身にもなれよ!? 今回なんてな結構ハイスピードでの調整だったから大変だったんだぞ!』

 

うぉぉぉぉぉい!

ドライグさんが怒り心頭でいらっしゃるよ!

そんなに大変だったの!?

 

いや、ほんと………すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!

 

心の中で土下座する俺!

 

調整終わるまでトランザムは使いません!

 

………と、『透過』は使えないのか。

 

『透過』――――生前のドライグが持っていた能力の一つ。

相手の能力を無視して攻撃を通せる能力だ。

 

ドライグの話だと、リゼヴィムの神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)ですらすり抜けることが可能だろうとのことだったが………。

間に合わないのでは仕方がない。

 

「んー、赤龍帝くんはおじさんと遊んでほしいのかなぁ? うひゃひゃひゃひゃ! いいぜ、勝負してやんよ!」

 

指をコキコキ鳴らせながら、リゼヴィムが俺の挑戦を受けた。

 

俺は禁手になり―――――鎧を天翼に変えた。

 

翼を広げて、瞬時に奴との距離を詰める。

拳を握り、憎らしいこいつの顔面を――――――。

 

殴る寸前で、奴が俺の鎧に軽く触れた。

 

刹那、俺の体から力が抜けていく。

鎧が一瞬で解除となり、生身の俺となった!

 

「無駄だねぇ。神器で高められた力は一才合切おさばさんには効かないのよ? もう忘れたのかなぁ? んじゃ、ルシファーパンチ! とかどうかな?」

 

ふざけた口調をしながら、奴が俺に拳を放つ。

 

「なんの!」

 

腹に突き刺さる前に俺は膝蹴りで奴の拳を阻止。

後ろに宙返りして、距離を置いた。

 

………なるほど。

 

奴に触れられると、その部位だけでなく、全身が解除されるわけね。

 

奴の能力、神器無効化はよく分かっていないことが多い。

どういう理屈でそんなことが出来るのかは当然、効果範囲すら分からない。

 

前回、俺のアグニを消し去ったことから、ビットを展開してオールレンジで仕掛けても無駄。

直接触れられると無効化される。

 

なら、次に試すことは………。

 

フェザービットを全基展開。

全砲門を奴に触れられると向ける。

 

リゼヴィムが嘲笑うように言う。

 

「んー? さっき言ったこと忘れたのかな? 神器に関係する力は俺には効かねぇって」

 

「…………だろうな!」

 

俺は前に飛び出すと同時にビットから砲撃を放つ!

 

八つの赤いオーラが奴に触れると案の定、霧散した!

 

しかし、俺は消されても消されても何度もビットからの砲撃を繰り返す。

 

その隙に奴との距離を詰めて―――――

 

「とりあえず、一発殴らせろ!」

 

赤いオーラに包まれた拳!

 

触れられたら、鎧は消えて力が抜ける。

そんなことは分かってる。

 

だから、俺は―――――触れられる直前に籠手の部分を消した。

 

そうすると現れるのは自身の気で高められた拳。

 

これは籠手の力は一切使わない攻撃。

奴の能力の対象外だ。

 

「まずは一発!」

 

叫びと共に再び、リゼヴィムの顔面を殴り付ける!

 

しかし、俺の拳は真正面から受け止められた。

 

「一応、ルシファーの息子なんでねぇ。神器無効化なしでも十分強いのよ。神器ないと、君ってザコ悪魔じゃん?」

 

「言ってくれるな。なら、今からそのザコ悪魔に負けるおまえはクソザコ悪魔になるよな!」

 

俺はそこからあらゆる体術で奴を攻め立てる!

拳、蹴りを交ぜた連続攻撃!

 

天翼の鎧でスピードを上げて、当たる直前にその部位を消す。

 

一発一発に練り上げた気を纏っているから、鎧を纏った時よりは劣るけど、かなりの破壊力があるはずだ。

現に攻撃を放った衝撃波が大気を揺らしている。

 

俺の素の実力は最上級悪魔に匹敵すると言われている。

つまり、この攻撃は最上級悪魔による攻撃と同じ。

 

それでも、目の前のクソジジイは、

 

「うひゃひゃひゃひゃ! おじさんの運動には調度いいじゃん!」

 

平然と受け止めていやがる!

 

前魔王ルシファーの息子。

あまりに他者とは違う桁違いの能力を持ち、本当に悪魔なのかさえ疑わしいとされるイレギュラーな存在――――『超越者』の一人。

 

性格はゴミだが、流石に強い!

俺のスピードでついてくるし、攻撃を余裕で受け止めてくる!

 

「だったら!」

 

俺は奴の拳を流し――――――

 

「アスカロン!」

 

『Blade!!』

 

籠手からアスカロンの刃を出す!

 

突如として飛び出した聖剣の刃がリゼヴィムの頬を掠めた!

 

「いってぇ! やりやがったな、このクソガキ!」

 

「ちぃ! 掠めただけか!」

 

その結果に俺は舌打ちする。

 

しかし、聖剣のダメージは僅かながらも通っているようで、リゼヴィムの頬にできた切り傷から煙が上がっていた。

 

『超越者』と称されていても、悪魔は悪魔。

やはり聖なる力には弱いらしい。

 

すると、俺の背後から飛び出してくる影か二つ。

 

「イッセー!」

 

「援護するわ!」

 

ゼノヴィアとイリナも互いに得物を握って飛び込んできた。

 

俺とゼノヴィア、イリナの三人でリゼヴィムに迫る!

 

「はっ!」

 

「これなら!」

 

ゼノヴィアとイリナが斬りかかるが、八重垣さんとの戦闘で相当な力を使ったのか、全快時に比べて動きにキレがない。

 

リゼヴィムは聖剣二振りの攻撃を両手の指で挟んで止めてしまう!

 

「デュランダルにオートクレール! うーん、この二本が同時に振るわれるなんて、懐かすぃ! しかも、エクスカリバーも加味してあってこれは…………いい感じ♪」

 

「そうかい! なら、そこにアスカロンも付け加えるこった!」

 

俺はアスカロンを握りリゼヴィムの頭上から振り下ろす!

 

「はっはー! これでも斬ってなぁ!」

 

リゼヴィムは腕を振るって強引にゼノヴィアとイリナを俺に投げつけてくる!

 

俺はそれまでの動きをキャンセルして、二人をキャッチした。

 

そこに―――――

 

「ほい、ルシファービームっと♪」

 

奴は指先から魔力の光線を放って、俺の左肩を貫いた。

 

濃密な魔力に貫かれたためか、体に激痛が走る。

 

「ぐっ…………!」

 

「イッセー!」

 

「イッセーくん!」

 

ゼノヴィアとイリナが心配してくれるが、俺は二人に叫んだ。

 

「今は俺よりも目の前の敵に集中しろ!」

 

奴はまだ――――――。

 

「その通り♪ ここで、俺から視線を外すのは良くないなぁ」

 

瞬時に詰め寄ってきたリゼヴィム!

 

その動きに目を見開くゼノヴィアとイリナだが、二人はリゼヴィムの放った魔力弾の直撃を受けてしまう!

 

アーシアが俺達に回復のオーラを送ってくれるので、傷はすぐに塞がるが………。

 

リゼヴィムは立ち上がろうとする俺の胸を踏みつけてくる!

 

「回復しても、何度も致命傷を負わせりゃどうよ?」

 

掌をこちらに向けて、マシンガンのごとく魔力弾を撃ち込んでくる!

 

強烈な攻撃が生身の体を撃ち抜いていく!

 

撃ち抜かれた箇所が深く抉れ、血が噴き出していく。

 

アーシアが遠方から傷を癒してくれるが、リゼヴィムに踏みつけられているせいか回復できずに傷が酷くなっていく一方だ。

 

「ガッ……! この………野郎!」

 

「この傷のお礼ってな! ここは念入りに痛めつけとこうかな! うひゃひゃひゃひゃ!」

 

血まみれになる俺を見てほくそ笑むリゼヴィム。

 

動けない状態で傷つき、苦しむ俺を見て、楽しむかのように腕、足、腹と体のあちこちを魔力弾で貫いていった。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!」

 

「イッセーくんを離して!」

 

ゼノヴィアとイリナが俺を助けようと同時に斬りかかる。

そこでようやくリゼヴィムは俺から足を退けた。

 

ゼノヴィアは天閃と破壊を混ぜて、高速で剣を振るうがそれを余裕で捌いていくリゼヴィム。

 

「これならどうだ!」

 

ゼノヴィアは擬態の力で刀身を鞭に変えてるが、それを手で捕まれてしまい、奴に引き寄せられて、腹へまともに蹴りを浴びてしまう!

 

「がはっ…………!」

 

口から血を吐き出しながら、ゼノヴィアは遥か彼方に吹っ飛ばされていく!

 

「ゼノヴィア! よくも!」

 

イリナがオートクレールの聖なる波動を高めて、リゼヴィムに斬りかかるが、それすらもリゼヴィムは受け止める。

 

「太刀筋はいいよ。でも、この程度じゃ、俺には届かんわな」

 

そう言うなり、リゼヴィムは回し蹴りをイリナの体にめり込ませた。

 

「かはっ………!」

 

イリナもゼノヴィア同様、勢いよく吹き飛ばされていった。

 

俺もゼノヴィアもイリナも少なくないダメージを負ってしまう。

 

特に俺は全身を撃ち抜かれて、穴だらけ。

あの野郎、たかだか掠り傷負わされた程度でここまでやるか。

 

奴がイリナとゼノヴィアに掌を向けた。

 

「とりあえず、悪魔っ娘とエンジェルちゃんも痛めつけとっか!」

 

魔力が渦巻いていき、二人を狙う。

 

そこへ―――――

 

「おいおい、それが生き返らせてあげた恩人にたいしてすることかねぇ?」

 

「あなたは恩人などではない。僕の、いや………僕達の敵だ」

 

天叢雲剣を握った八重垣さんがリゼヴィムに刃を向けた。

 




原作とちょっと流れを変えます。

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