ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今回はシリアス!


14話 先に行け! 

第三天に通じる門を塞ぐラードゥンを筆頭にした邪龍軍団。

 

リアスが俺に先に行くよう言った直後のことだった。

 

あの男が再来したのは。

 

漢服を羽織った若い男。

異様な雰囲気を纏う、その男の手には聖なる波動を放つ槍。

 

最強の神滅具―――――『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)

 

俺はその男を見て目を細めた。

 

「――――曹操。話には聞いていたけど、戻ってきたか」

 

そう、俺達の眼前にいるのは元英雄派の首魁――――曹操!

 

こいつは俺に敗れた後、冥府に堕とされた。

その後、自力で冥府から上がってきて、帝釈天の尖兵となったと先生から聞いている。

 

俺が潰した右目には眼帯をつけていた。

 

俺は曹操に問う。

 

「どうしてここに? つーか、どうやって上がってきた?」

 

奴は嫌味な笑みを見せる。

 

「邪龍狩りに興じようと思ってね。奴らと同様煉獄の門から上がってきたのさ」

 

なるほど………煉獄か。

ハーデスのところにいたときに、煉獄に通じる道を見つけたとでもいうのかね?

 

………もしかしたら、ディルムッドも煉獄から上がってくるのか?

通信では特になにも言わなかったけど………。

 

曹操が槍をくるくる回して、その切っ先をラードゥンに向けた。

 

「ここの邪龍を俺も引き受けよう。だが、君は英雄――――ヒーローなんだろう? なら、悪の幹部を倒すべきだ。俺を倒したようにね」

 

「おまえは悪の幹部ですらなかったよ。あの時のおまえはただ英雄の意味を勘違いしていたアホだ」

 

俺の辛口コメントに曹操は苦笑する。

 

「ああ、その通りだ。俺は『英雄』の血に縛られ、そうでなくてはならないと思っていた。………そんな考えなど君が粉々にしてしまったけどな」

 

「それで? 今のおまえは何だ? まだ英雄を名乗るか?」

 

こいつがそれでもなお、英雄を名乗ろうとするのなら俺はこの場で―――――。

 

しかし、曹操は首を横に振った。

 

「いや、本物の英雄にああ言われてはね。―――――異世界より帰還した勇者。それが君なんだろう? 道理で勝てないわけだ。でき損ないの紛い物が本物に勝てる道理がない」

 

曹操は聖槍から聖なる波動を解き放つ。

 

それを邪龍の群れに向けると―――――極大の爆発と共に邪龍の群れが一気に吹き飛んだ!

 

相変わらず………いや、以前よりも聖槍の威力が上がっているのか?

 

曹操は槍を回しながら、不敵に言う。

 

「今の俺はただの曹操だ。それ以上でもそれ以下でもない。人間であることの誇りと聖槍を持ったただの人間さ」

 

「そうかい。なら、この場は任せる。リアス! 皆! 俺達は先に行く!」

 

俺は皆にそう告げると眷属とアーシア、ゼノヴィア、イリナを連れて先を急いだ。

 

曹操の横を通り過ぎるとき、奴は俺に告げた。

 

「今度はただの曹操として君に挑もう」

 

挑戦か。

 

俺に関わった男共はどうして、俺に挑んでくるのかね!

 

まぁ、でも―――――

 

「ああ、いつでもかかってこい」

 

 

 

 

 

 

門を潜り、第三天―――――天国のある階層に辿り着いた俺達。

 

俺達が走るのは第三天の中央通り。

この道を真っ直ぐに進めば、次の門に辿り着く!

 

途中で邪龍共が襲ってくるが、

 

「邪魔!」

 

先陣を切るアリスの一撃で四散していく。

 

このレベルの邪龍なら俺達の相手にはならない。

アーシアを除いた他のメンバーも襲いくる邪龍を次々に屠っていく。

 

量産型邪龍の厄介な点は強さじゃない。

その数だ。

 

クリフォトの連中がどんな生産の仕方をしているのかは知らないが、湯水のように次から次へと沸いてくる。

それこそ、数百、数千単位で。

下手すれば万単位で襲ってきそうだ。

 

中央通りを駆けていると、美羽が言ってくる。

 

「ねぇ、少し変じゃない?」

 

「変? 何が?」

 

イリナが首を傾げながら訊く。

 

「さっきから襲ってくる数が疎らというか、妙に少ない気がしない?」

 

確かに。

 

奴らは大群で来ているのだから、ここは数を揃えてから襲う方が定石だろう。

 

それが、この階層に着いてから襲ってくる数は多くても十程度。

妙に少ない。

 

違和感を覚えながらも、俺達は次の門を視線の先に捉えた。

 

だが、

 

「おほほほほ♪ こんにちは~♪ 燃え萌えさせにきたわよん」

 

ゴスロリ衣装の魔女がいた。

紫炎のヴァルブルガだ。

 

「相変わらず趣味悪」

 

ヴァルブルガを見てのアリスのコメントがそれだった。

 

あー、ヴァルブルガのこめかみに血管が………。

自分の趣味を言われるのは嫌なのかね?

 

まぁ、俺もあれはないかな………性格も悪いし。

 

俺達の前にもう一つの影が現れる。

 

「今日はねぇ、クロウさんも来てくれているのん」

 

ヴァルブルガの横に黒コートの男が立った。

 

―――――邪龍クロウ・クルワッハ。

 

俺とアリスが二人でかかっても倒せなかった………いや、僅かに傷を負わせた程度だった。

 

そうか、ここでこいつが来るか。

 

「おほほほほ♪ 今日は二人で相手しちゃうわねん!」

 

ここで二人を相手にしている暇はない………が、やるしかないか。

 

クロウ・クルワッハの能力は知らないが、単純に強い。

今の俺では勝つのは難しいだろう。

 

………EXA形態を使えば何とかなるかもしれないが、後のことを考えると、早々に使うのはダメだ。

 

ヴァルブルガの紫炎は俺達悪魔にとって必殺。

こちらは相性が最悪。

 

この場にいるのは俺、アリス、美羽、レイヴェル、イリナ、アーシア、ゼノヴィア。

 

少なくとも教会トリオだけは先に進ませてやりたいところ。

 

そのとき――――――

 

 

「いんやー、これはまた大変なことになってんね」

 

軽口を叩きながら現れたのは――――――ジョーカー・デュリオ!

翼を広げて宙を飛んできた!

 

デュリオは俺達のもとに飛来してくる。

 

その登場にヴァルブルガが笑みを見せる。

 

「わーお♪ もしかして、ジョーカー? これはこれはすんごいのに遭遇しちゃったん♪ ねぇ、この第三天にいた邪龍くん達は?」

 

ヴァルブルガがデュリオにそう訊く。

 

すると、デュリオは遠くを指差した。

 

遠目に巨大な雷雲が見える。

そこから、いくつもの激しい雷が落下していた。

 

「今も攻撃しているよ。残骸ぐらいは残るかもね」

 

――――っ!

 

逆方向に目をやると、そちらでは巨大な竜巻が邪龍を呑み込んでいた。

 

雷雲と竜巻で広範囲に攻撃を仕掛けていたのか!

 

第三天に入って感じた違和感はデュリオが一人で邪龍を片付けていたからなのか。

 

デュリオの神器は天候を操る。

その真価がこの戦場で発揮されている。

 

規格外だ。

その能力も、それを操るこの男の力量も。

 

これが天界の切り札の力――――――。

 

デュリオがヴァルブルガに言う。

 

「ここは天国だ。静かにしなきゃ、ここにいる魂が可愛そうじゃん? せっかく、現世でのお役目を終えたんだから、ここでは静かに過ごさせないとさ」

 

軽口を叩いているように見えるが、デュリオの目は真剣そのもの。

 

グリゼルダさんが語ってくれたことが脳裏によぎる。

 

 

『デュリオは戦災孤児です。とある国の内乱で両親を失い、幼い頃から教会の施設で暮らしていました。神器に目覚めたのもその頃です』

 

神器、しかも上位神滅具を宿していたデュリオの生活は一変した。

力に目覚めた後、すぐに施設を出て戦士育成機関で教会の戦士としての訓練を受けた。

 

非凡すぎる才能と能力は幼いデュリオを戦士として覚醒させる。

 

『教会の施設には特異な力を先天的に有し、それに対する抵抗力を持たない子供達もいるのです。デュリオは同じ境遇ゆえにその子達を「弟」「妹」と呼んで可愛がっています』

 

異能を持った子供達の中には育つ前に宿した力に呪い殺されることもあるそうだ。

そして、デュリオはそれをずっと見てきたという。

 

『彼がジョーカーになった一番の理由は………天国に行き着いた子供達の魂に会えるからです。天界の切り札とされるジョーカーであれば、その領域に足を踏み込めますから。あの子は教会一の実力者でありながら、教会一優しすぎる青年なのです』

 

グリゼルダさんは涙を流しながらそう教えてくれた。

 

改めてデュリオを見ると翼を広げて、黄金のオーラを纏っていた。

とても静かな波動だけど、相手を食い止めるという強い意思が感じられて――――。

 

「この先は通すわけには行かないんだよねぇ。ここは俺の弟と妹達が何も苦しい思いをすることなく、走り回れる唯一の場所なんだ。だからさ、ここであんた達を暴れさせるわけにはいかない。―――――天国は天使が守ってなんぼさ」

 

次の瞬間、ヴァルブルガの目が怪しく輝いた。

 

デュリオの周囲に紫炎の火柱が上がる―――――が、それをデュリオは手を横凪ぎにしただけで凍りつかせた!

 

デュリオはイリナに言う。

 

「さ、Aのイリナ。先に進んでちょ」

 

「ジョーカーさま! 私たちも―――――」

 

イリナは自分達も戦うと言いたかったのだろう。

 

しかし、俺はそれを止めた。

 

「イリナ、おまえは先に行け」

 

「イッセーくん!? なんで!?」

 

「おまえが今するべきことはなんだ? 皆が俺達を先に行かせた意味は分かるだろう?」

 

「っ!」

 

リアス達が俺達を―――――イリナを先に行かせた理由はトウジさんを救わせるためだ。

 

イリナは天使として天界を守らなければいけない。

でも、今は一人の娘として父親を救うことが優先だ。

 

仮に天界を守れても、トウジさんを守れなければイリナは一生後悔する。

 

そうさせないためにも、

 

「ここは―――――」

 

俺が残る、と続けたかった。

 

だけど、その言葉は阻まれた。

 

「私達が残るわ。イッセー、あんたも先に行きなさいよ」

 

アリス、美羽、レイヴェルがクロウ・クルワッハの前に立った。

 

三人とも体からオーラを放ち、ヤル気まんまんといったところだ。

 

「おいおい………」

 

アリスは槍をくるくる回しながら言う。

 

「別に選択的には間違ってないでしょ? 目の前の邪龍は別格。ここで足止めを食らうわけにはいかない」

 

「そりゃそうだけど…………」

 

「それにあの悪神の下僕達に会ってもあいつらはバトルマニア。多分、一対一しか仕掛けてこないと思う。そう考えれば………ね?」

 

アリスの言う通り、ラズル達は強者と戦うことを望むバトルマニアだ。

弱者は相手にせず、ただ強い者と戦うことを楽しみにしている。

 

こう言ってしまってはあれだが、現段階でラズル達はイリナたちのことは見向きもしないだろう。

 

そう考えると………。

 

俺は頷いた。

 

「分かった。任せるぞ、おまえら」

 

そう言うと、レイヴェルが言う。

 

「私の力がどこまで通じるか分かりませんが………サポートなら何とかなると思います」

 

「頼む。―――――無茶すんなよ?」

 

「分かってるよ」

 

俺の言葉に三人は頷いた。

 

眷属を信じるのも主の役目。

 

なら、俺がするべきことはこいつらを信じて先に進むことだ!

 

「イリナ! 行くぞ! 親父さんを助けるんだろう!」

 

「う、うん! ありがとう、皆!」

 

俺達はそう言い残すと、駆け出した。

 

クロウ・クルワッハもヴァルブルガも追いかけてくる気配はない。

 

途端、背後から激しい戦闘の音が鳴り響いた。

 

デュリオはヴァルブルガ、アリス達はクロウ・クルワッハ。

 

デュリオはともかく、アリス達が心配ではあるが………俺は眷属を信じて先に進む。

 

 

 

 

第三天の門を潜った俺達は第四天―――――エデンの園に突入した。

 

見渡す限り、色鮮やかな草木が咲き誇り、遠くに見える小山や木々も盛観だった。

 

今が戦闘中でなければ、寝転がって昼寝でもしたいと思える。

それほどに静かで美しい場所。

 

ここがアダムとイブの話で有名なエデンの園か。

 

第四天に入って感じたことは違和感だった。

 

………邪龍が入り込んだにしては綺麗すぎる。

 

グリゼルダさんからは第三天から第五天まではクリフォトが優勢だろうと聞いていた。

 

上の階層から部下を率いて出陣したというセラフの人達が入り込んだ邪龍を殲滅した、とも考えられるがそれもないだろう。

 

この第四天は戦った痕跡がまるでない。

 

どういうことだ………?

 

妙な感覚を覚えながら、辺りを見渡す。

 

すると、第三天と第四天をつなぐ門から少し離れたところから覚えのある気配を感じ取った。

 

この野獣のようなオーラは………!

 

奴がいる―――――!

 

俺はその方向を睨んだ。

 

 

そこには――――――

 

 

「ベル、口にケチャップついてるわよ?」

 

「ん……。ありがと、ヴィーカ」

 

「ベルはもう少し女性としての自覚が必要ですね」

 

「ガハハハ! 今更だろう! つーか、ベルには今のままでいてほしい!」

 

シートを広げて、その上でお弁当を食べてる微笑ましいファミリーの姿があった。

 

 

ズッシャァァァァァァァァァァァッ!

 

 

俺、イリナ、ゼノヴィアは盛大にヘッドスライディングを地面にかました。

 

アーシアだけはポカンとしているが…………。

 

「おまえら、ピクニックかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

なんで………なんでこうなる………!

 




すいません、前書きウソです。

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