ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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8話 復讐者

儀式を終えて家に戻ってきた俺達。

 

儀式を終えたばかりだからか、体が少し怠い。

まるで、体に錘でもぶら下げているような感覚で、頭が重い。

 

アリスと美羽も同様だった。

 

というわけで、俺達は兵藤家リビングのソファで団子になっている。

 

「うー………クラクラするぅ………」

 

「同じく………」

 

「ボクも………」

 

アリスに続き、俺と美羽が呻く。

 

これも疑似神格とやらを体に埋め込んだ影響か。

 

いや、美羽やアリスはともかく、俺の中にあったものなのに、なんで俺がダメージ受けてるんだ?

 

すると、そんな俺の疑問を察したのか、向かいのソファでカルピスを飲んでいたイグニスが言う。

 

「前にあの子に託された時も倒れたでしょう? 五日間も眠ったままだったじゃない」

 

「あれって、戦った疲労と一度死んだ時の影響じゃないのか?」

 

「それもあるわ。あの時のイッセーは極限まで疲弊した状態で受け取ったから、身がもたなかったのよ。だから五日も眠りっぱなしだった。今回は三つに分割したし、体力もあったから、頭がクラクラする程度で済んでいるのよ。まぁ、今日一日は続くでしょうけど」

 

なるほど………。

あの時はそういう背景があったのな。

 

まぁ、おかげで美羽や他のメンバーの看護も受けれたし、役得だったかな?

 

「皆に心配かけておいて、役得はないでしょ」

 

「すまん………って、ナチュラルに心読まないでくれる?」

 

アリスめ、こめかみを押さえながらもしっかり心を読んでくるな!

 

「ううん、今のは顔に出てたよ、お兄ちゃん」

 

「マジか………って、今のは完全に心読んだよね?」

 

美羽なんて俺の膝に顔を埋めながら読んできたし!

表情見ずにどうやって心読んだ!?

 

以心伝心が一方通行過ぎてませんか!?

 

俺のプライバシーはないと!?

 

「「「ないない」」」

 

「君達、そこでハモらないでくれる!? しかも、二回言いやがったな!?」

 

そーですか!

俺のプライバシーはありませんか!

泣ける!

 

イグニスが思い出したように言う。

 

「あ、禁手も一日は禁止ね?」

 

「マジで?」

 

「だって、神器は魂と直接結びついてるでしょ? その疲れは肉体じゃなくて魂から来るもの。そんな状態で神器を使うのはダメ。もし使ったら………」

 

「もし使ったら………?」

 

イグニスはこちらをじっと見ると一言。

 

「頭パーンってなるわよ?」

 

頭パーンってなに!?

どういう状況なの、それ!?

とりあえず、怖いことになるのは確かだよ!

 

そんなやり取りをしていると、テーブルにコップが三つ置かれた。

 

「マスター、水をお持ちしました」

 

そう言ってくるのはフリフリメイド服のディルムッド――――ではなく、なぜかサンタコスのディルムッドだった!

 

頭には定番のサンタクロースの帽子を被っているが………。

 

肩紐のない赤いベアワンピースに網タイツという、なんともセクシーなサンタ姿となっている!

 

僅かにワンピースのサイズが合っていないのか、胸の谷間が強調される形になっていて、スカートの下からは艶かしい太ももが覗かせている!

肩から鎖骨にかけてのラインも綺麗だ!

 

出るところは出ていて、引き締まるところは引き締まっている!

ディルムッドも良いお体してるよね!

 

とりあえず一言………エロい!

 

ディルムッドの無表情も相まって不思議なエロさを醸し出している!

 

よーし、感想を述べたところで、質問タイムだ!

 

「なんで………サンタ?」

 

俺が問うと、ディルムッドは素っ気ない表情で、

 

「マスターの母上殿に作ってもらった」

 

「可愛いでしょ?」

 

美羽が水の入ったコップに口を着けながら言うが………。

 

可愛いというより………エロいです。

強調されるべきところが強調され過ぎだもの。

 

母さんが作ったってことはサイズは合ってるんだな。

となると、胸のところはわざとそういう風にしたと。

 

母さん………ナイス。

 

ディルムッドはプレートに乗せていたおしぼりを美羽に手渡す。

 

「これも。冷やしてあります」

 

「わーい。ありがと、ディルさん」

 

感謝の気持ちを述べる美羽と、それを受けて嬉しそうにするディルムッド。

 

………いつも思うけど、仲良いよね、この二人。

 

ディルムッドも美羽以外にこんな表情は見せないし………。

 

「ディルさんもおいでよ。一緒に座ろ?」

 

「はいっ」

 

美羽に促され、その隣に座るディルムッド。

滅茶苦茶、嬉しそうなんだが………。

 

これって甘えてるの?

 

「えっとさ………ディルムッドって、美羽好きだよな?」

 

「当然だ。心から敬愛している」

 

何がディルムッドをそこまでさせたんだ!?

 

唐揚げか!?

唐揚げなのか!?

だとしたら、効果絶大過ぎるだろう!?

 

流石の美羽も苦笑してるし!

 

「アハハ………大袈裟だよ」

 

………こいつが、美羽に拘る理由って何なんだろう?

 

可愛いから?

 

確かに美羽は可愛いし、可愛いし、可愛いし、可愛いし、可愛いし、可愛いし、可愛いし………超可愛いし。

初めて『お兄ちゃん』と呼ばれた時は感動のあまり、涙が止まらなかったほどだ。

 

でも、ディルムッドはそれとは違う理由だろう。

 

………となると、やはり唐揚げか………?

空腹というスパイスが効いて、餌付けされたのか?

 

そんなことを考えているとアリスがイグニスに問う。

 

「そういえば、さっきの儀式のことなんだけど、私達三人で繋がったのはイッセーの魂が上位に上がるのと連動して、私達の魂も上位に上げるためなのよね?」

 

「ええ、そうよ」

 

「それなら、逆に私か美羽ちゃんの魂が上位に上がることでイッセーの魂が上位に上がったりはしないの?」

 

なるほど、逆のパターンか。

 

俺が切っ掛けを作り、それに二人が連なる形だけじゃなくて、二人のどちらかが切っ掛けを作る、と。

 

イグニスは頷く。

 

「それも可能よ。ただ、イッセーの方が切っ掛けを作る可能性が高いと思うわ。イッセーは美羽ちゃんのお父さん―――――シリウスとも繋がっていたし、ロスウォードから疑似神格を直接渡された。更に禁手の第三階層には私の力も組み込まれている。至る要因としてはイッセーの方が多いわ」

 

その解説に俺達は「へぇ」と言うしかなかった。

 

『神』になることの感覚が掴めないでいるからだ。

疑似神格を得たとはいえ、それがどのように発動するのか。

発動した場合、どうなるのかが全く予想できない。

 

イグニスは微笑む。

 

「まぁ、今はまだそんな感じでしょうね。人………あなた達の場合、悪魔だけど。それが『神』になるなんていくら頭で考えようとも理解できるものではないわ。でも、その時が来れば理解できると思う。その時まで頑張りなさいな♪」

 

イグニスはウインクすると、コップに差してあるストローを咥え、ちゅーっとカルピスを吸っていった。

 

頑張りなさい、か………。

 

まぁ、結局はそうなるんだよね。

 

鍵は得た。

後は俺達次第ってところか。

 

ふと時計を見ると午後一時を過ぎていた。

 

「こんな時間か………。そろそろ他の皆と合流しないとな」

 

「アーシアさん達のグループだっけ?」

 

「そうそう」

 

この後、俺達はクリスマス企画のために動き出す予定だ。

 

俺達は疑似神格を移す儀式をしていたので、遅れているが、他のメンバーは既に行動していて、各グループでプレゼントの下調べをしている。

 

俺達が合流するのはこの町の駅から二つ先に町に赴いているアーシアの班だ。

 

アーシア班は教会トリオとロセ、そしてトウジさんというメンバー。

 

今頃、その町の大型家電量販店や品揃えのいい本屋でプレゼントの下調べをしているだろう。

 

実際に流行のものを確認して、店員さんに品物について訊く。

クリスマスで配るプレゼントで決めかねているものは、今回の下調べを参考に用意していこうと皆で判断したんだ。

やっぱり、ある程度新しくて需要のあるものの方が、プレゼントされて嬉しいだろうからね。

 

今回の下調べは住民にリサーチ出来なかった代わりでもあったりする。

 

「まだフラフラするし………一時間ぐらいしたら出るか。コスプレ衣装置いてる店にも行くとか言ってたし、間に合うだろ」

 

なんでも、サンタのコスチュームのデザインを見に行くらしい。

女性が多いので、その辺りも気にするとのことだが………。

 

「お母さんに作ってもらうのが一番早そうだよね………」

 

「それは同意。一人一人に合ったデザインかつサイズピッタリのやつ作るぞ、あの人」

 

他の皆は流石にそこまで迷惑はかけられないと遠慮していたが………実は母さんはノリノリだったりする。

材料さえあればなんでも作ってみせると豪語しているほど。

 

ちなみに母さんの昔の二つ名は『神眼の咲さん』らしいが、他にも呼ばれていたようで………。

 

『ゴッドバンド咲』

 

『衣装の錬金術士』

 

という二つ名まであったそうだ。

これ、父さんから聞いた話。

 

アリスが言う。

 

「さっき、トイレ行ったときにお母さまとすれ違ったんだけど………。手に何枚も図面持ってたわよ? 赤い布と一緒に」

 

マジですか………。

母さん、既に製作段階に入っていると。

 

まぁ、この間はティアとイグニスの衣装作ってたし、ディルムッドが今着てるやつも母さん作だし………。

 

今年のクリスマスは母さんが製作した衣装を着たオカ研女子部員が見られそうだ。

 

「さてと………」

 

俺は一旦部屋に戻ろうとして、立ち上がる。

 

しかし、まだ体がフラフラするせいか、足元が於保つかずにバランスを崩してしまう。

 

 

そして―――――。

 

 

むにっ

 

 

顔に伝わる柔らかい感触!

目の前にはプックリとした綺麗なピンク色!

 

恐る恐る視線を上にやるとディルムッドと目があった。

 

なるほど、どうやら倒れた拍子にサンタコスを掴んでしまったらしい。

しかも、肩紐がない衣装なのでそのままズレて、おっぱいがぶるんといったと。

 

うーん、ディルムッドのおっぱいは初めて見たけど、これは中々………!

瑞々しいおっぱいなことで!

 

など感想をいだいているが、ディルムッドは無言のまま。

 

ディルムッドは暫くじっとこちらを見てくるが………次第に顔が赤くなり、プルプルと体を震わせていく。

 

え、これ………怒ってる?

 

そう感じた俺はとりあえず謝ってみる。

 

「え、えっと、ごめんな………?」

 

 

すると―――――

 

 

「~~~~~~ッ!!」

 

涙目になってる!?

 

ちょ………ポタポタと水滴が零れていってるんですけど!?

 

う、うそぉ!?

 

あのディルムッドが泣いてる!?

 

俺は慌てて飛び退き、謝罪する!

 

「ご、ごごごごごめん! わざとじゃないんだ!」

 

すると、美羽がディルムッドを庇うように抱き締め、ぷんぷん怒り始めた!

 

「もう! お兄ちゃん、ディルさん泣かしちゃダメでしょ!」

 

「わざとじゃないんだ! 不可抗力だ! つーか、この娘、この手のハプニングに弱いのな! 意外すぎる!」

 

「そうだよ! だって、ディルさん、まだ十五歳だもん! 中学生だもん!」

 

「「えええええええええええええええ!? う、うそぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」」

 

美羽から告げられた新事実に俺とアリスは驚愕するしかなかった。

 

 

 

 

「あー………こりゃ、傘持ってきておいて正解だったな」

 

「出る前に天気予報見ておいてよかったね」

 

俺と美羽、アリスの三人は土砂降りの中を歩きながら言う。

 

家を出た俺達三人は電車で二つ先の駅まで移動。

 

そこから徒歩でアーシア達と合流する予定なんだが………この雨だとどこかで雨宿りしてるかもね。

傘持っていってなかったし。

 

一応、家を出る前に天気予報を見てみたところ、雨マークが着いていたので人数分の傘は持ってきてある。

 

しかし………。

 

俺は家を出る前のことを思い出す。

 

「ディルムッドって十五歳だったんだな………」

 

気の質で歳が近いことは分かっていたけど………まさか、中学生だったとは。

あのスタイル、あの雰囲気、あの言葉使いで中三って………未だに信じられん。

 

特にショックを受けているのがアリス。

 

「………五つも歳下の娘に負けた………五つも歳下なのに………あんな………グスッ」

 

さっきから自分の胸をペタペタ触りながら涙目になっております。

 

うん、今回は俺もなんて言っていいか分からないね。

俺も衝撃だったし。

 

「美羽は知ってたんだな。………まぁ、おまえが一番会話してるけど」

 

「家に来た少し後にね、色々お話ししたんだ。その時、知ったの」

 

な、なるほど………。

 

もしかしたら、ディルムッドにとって、美羽はお姉ちゃん的な存在だったりするのかな?

美羽にはすごいなついてるし。

 

もしかしてだけど………あいつが、美羽になついている理由って………。

 

まぁ、単なる想像だから何とも言えないけど。

 

中三………十五歳かぁ………。

あの容姿で十五歳は反則だろ………。

 

少なくとも美羽よりは歳上だと思ってた。

 

美羽をこちらの世界に連れてきた時、十四って聞いて驚いたけどさ。

今回はそれ以上だ。

美羽はまだ顔つきが幼かったし………。

 

いやはや、最近の若者は発達が………って、俺もまだ若いけど。

 

それにしても意外だったのが、ディルムッドが割りと乙女なところを残していたという点だな。

 

………再会した時はダンボールハウスで暮らしてたし、餌付けされるしで乙女の純情なんてもんは消え去っているものと勝手に思ってた。

 

そういえば、ディルムッドの水着姿は見たことがあるけど、裸は見たことがないな。

 

つまり、女の子の部分を生で見られるとああなってしまうと。

いや、本来ならあれが正しい反応か。

うちの女性陣が大胆過ぎるだけで。

 

………うん、今回はどう考えても俺が悪いな。

 

「帰ったらもう一回謝ろう」

 

「そうしてあげてね? ディルさん、恥ずかしがり屋だから」

 

………あれで恥ずかしがり屋と言われても説得力の欠片もない気がするけど。

 

やっぱり、あいつはよく分からん………。

特に恥ずかしさの基準が。

いや、今回のは正常だと思うけど、それ以外がね?

 

アリスが訊いてくる。

 

「皆と待ち合わせてる場所って、この近く?」

 

「うん。ただ、この雨だから、どこかで雨宿りしてるだろうけど。傘持ってなかったし」

 

デュリオでもいれば天候を晴天に変えてもらうんだけど………。

ま、流石にそれはダメか。

 

「ま、そこまで大袈裟にしなくてもいいか………――――っ!」

 

そこまで言いかけて、俺は言葉を詰まらせる。

 

突然、妙な波動が俺達の元に届いたからだ。

 

「これは………邪龍か?」

 

「そうね。あの感覚に似てるわね。………だけど、こんな町中で? しかも、こんな日中に?」

 

一瞬、自らの感覚を疑ってしまう俺とアリスだが、その可能性はすぐに消した。

 

奴らなら昼間の人間界でも堂々とやりかねない。

 

「―――――クリフォト、だね?」

 

美羽の言葉に俺は頷く。

 

あいつらは一度、昼間の駒王学園を襲撃してる。 

二度目がないなんてことはないだろう。

 

方角は―――――。

 

「待ち合わせ場所の近くか!」

 

となると、アーシア達と戦っているのか!

 

ええい、昼間からやってくれる!

 

こちとら、儀式の影響でまだ体が怠いってのによ!

 

「走るぞ!」

 

俺達は傘をたたんで全速力で走る。

 

美羽の風の魔法で濡れないように体をコーティングして、町中を駆け抜けた。

これなら、見られても少し足の早い三人組がいたぐらいの話にしかならないから問題ない。

 

気配を辿って駆けること五分。

 

俺達は待ち合わせ場所の公園に到着する。

 

そこでは――――――。

 

八つの頭部を持つ巨大なドラゴンがいた。

真っ赤な血の涙を流し、大きな顎を凶暴なほど、開き無数の鋭い牙を覗かせている。

 

ただ、そのドラゴンは生身ではなく、どす黒いオーラが形を成したようなもので、その首を辿っていくと辿り着くのは―――――一本の剣。

 

禍々しいオーラを放つ剣とそれを握る長い黒髪の男性。

 

『相棒、あの邪龍は『霊妙を喰らう狂龍(ヴェノム・ブラッド・ドラゴン)』八岐大蛇だ。あれが持つ牙や血には猛毒が含まれている』

 

八岐大蛇!

また、伝説の邪龍かよ!

 

クリフォトのやつら、ほいほい復活させやがって!

 

なんにしてもゼノヴィア達が戦っているんだ!

加勢しないとな!

 

「ゼノヴィア! イリナ! ロセ!」

 

「イッセーか! 良いタイミングで来てくれた!」

 

俺達の登場に歓喜するゼノヴィア達。

 

どうやら、相手は相当な手練れのようで、邪龍の力も相まって苦戦しているようだ。

 

男性は俺を見ると目を細める。

 

「………赤龍帝か。やはり、この一帯は知らないうちに魔境と化しているか」

 

男性の持つ剣のオーラが膨れ上がる!

禍々しいオーラが邪龍の体をより大きく、より強大にしていく!

 

ちぃっ………。

美羽が即席の結界を張ってくれたとはいえ、こんな場所でド派手な攻撃はできない!

 

禁手を使えば楽かもしれないが………頭パーンは嫌だ!

生身でやるしかない!

 

『気を付けろ。八岐大蛇の毒は危険だ。受ければ相棒でもやられるぞ』

 

毒に注意ね………了解だ!

 

「やるぞ、アリス!」

 

「ったく、こっちは本調子じゃないってのに! 面倒ね!」

 

アリスは毒づきながらも槍を構えて白雷を身に纏う。

長い金髪が純白に変わり、戦闘体勢に入った。

 

俺も腕に気を纏い、籠手からアスカロンを引き抜いた。

 

俺もアリスも美羽も疑似神格を移した影響で絶賛不調中。

正直、戦うのはキツいところがある。

 

なんてタイミングの悪い!

 

男性が剣を振るい、八つある首のうちの一つが襲いかかってくる!

 

「こなくそ!」

 

俺は後ろに飛び退きながら気弾を放つ!

 

真正面から気弾をくらって八岐大蛇の首は吹き飛ぶが―――――何事もなかったようにすぐに再生しやがった!

 

再生機能もちかよ!

 

剣の持ち主を狙おうとすると複数の首が男性を守る!

本体狙いも想定済みってか!

 

ゼノヴィア達が苦戦するわけだ!

 

男性が俺に言う。

 

「邪魔しないでもらおうか、赤龍帝。これは復讐なんだ」

 

「復讐………?」

 

「そう、復讐だ。僕と彼女を殺した彼らへ報いを」

 

男性の視線の先にはアーシアの傍にいるトウジさんに向けられていた。

 

強い憎悪の籠った瞳。

仇敵に出会ったような目をトウジさんに向けていた。

 

トウジさんが呟く。

 

「八重垣くん………君は………!」

 

「今さら何を言っても無駄ですよ。あなたは………あなた達は僕とクレーリアの仇だ! 僕にはあなた方を殺す権利がある!」

 

「………っ!」

 

男性――――八重垣と呼ばれた男性のそのことばにトウジさんは苦し気な表情を浮かべ、何も言えなくなっていた。

 

僕とクレーリアの仇………?

 

俺は疑問に思いながらも、アスカロンを振るって迫る巨大な首を捌いていく。

 

死角から気弾を放てば他の首がそれをカバーして、こちらが一度防御に回れば複数の首で一気に攻め立ててくる。

 

首の一つ一つが意思を持っているようだ。

しかも、俺達の動きに順応してきている。

 

アリスの雷も、ゼノヴィアの斬戟も俺の気弾も邪龍によって相殺されていく!

 

舌打ちしながら、八岐大蛇の首の一つと対峙する俺だが、視界に怪しげな光景が映り込む。

 

首の一つが地面に突っ込んでいる!

 

間に合わないと判断した俺はアーシアに叫んだ!

 

「アーシアァァァッ!! ぱ………ファーブニルを呼べぇぇぇぇっ!」

 

すぐにアーシアが龍門を描こうとするが、地面を盛り上げながら邪龍は地中を突き進んでいく!

 

「させん!」

 

ゼノヴィアがデュランダルから聖なる波動を放つ。

聖なる波動は地面を抉り、地中を進む邪龍を見事分断した!

 

しかし、分断されてもそれは猛スピードで突き進む!

 

『相棒! 強烈な意思があれば、具現化した邪龍は首を斬られても動くぞ!』

 

邪龍ってのは面倒なのばっかりだな!

 

あの首が向かう先はアーシアとトウジさんのもと!

アーシアの召喚は間に合わない!

 

「ゼノヴィア! ここは俺達で抑える!」

 

「分かった!」

 

他の首を俺とアリスで抑えている隙に、ゼノヴィアが駆ける!

 

「ハハハハハハ! 紫藤局長! あなたの魂でもって僕達の怒りを精算させてもらいます!」

 

地面から勢いよく飛び出した邪龍の首!

 

即座に間に入ったロセが魔法陣を飛ばす!

 

「させません!」

 

その魔法はアーシアとトウジさんを襲う瞬間、直撃した。

 

邪龍の頭部が破裂していく。

 

だが―――――飛び散る牙の一つがトウジさんの肩を掠めた。

 

「くっ………!」

 

それを見た八重垣は涙を流すほど歓喜する表情となった。

 

「………これでいい。これでいいさ。苦しめ。苦しみ抜くんだ」

 

アーシアがトウジさんの傷を塞ぐが―――――トウジさんはその場に膝をついて、体を激しく震わせた。

 

「毒か!」

 

しまった………!

 

「パパッ! ………よくもパパを!」

 

怒りに打ち震えるイリナを見て、八重垣は満足げな表情となる。

 

「………ふふふ。それが怒りというものだ。大事な者を傷つけられた者が抱くもの。たとえ天使だろうと身内を傷つけられた激情は抑えられないだろう?」

 

「………っ!」

 

言い返せないイリナ。

 

八重垣は醜悪な笑みを見せた後、足元に魔法陣を展開する。

 

「局長! 僕は必ずあなたと天界、そしてバアル家に復讐します! 僕は絶対にあなた方を許さない! 絶対だ!」

 

転移の光に包まれていく中、八重垣は俺達に言った。

 

「君達がいる楽園という名の駒王町は多くの犠牲の上に成り立った世界だ。あの町を継いだバアルの血を引きし悪魔とその眷属。よく覚えていくと良い」

 

それだけ言い残すと、八重垣は転移していった――――。

 

 

 

 

八重垣が転移した直後、アリスが言ってくる。

 

「追わなくて良かったの?」

 

「今の俺達じゃ、キツいだろ。それにトウジさんの毒を何とかしないと」

 

邪龍の毒に対してどれ程の効果があるかは分からないが、俺の錬環勁気功で肉体の治癒能力を上げる。

それで幾分はマシになるはずだ。

 

俺は踞るトウジさんに駆け寄ろうとして、足を滑らせた。

 

 

そして―――――。

 

 

むにゅん

 

 

「あ………れ………?」

 

手に伝わる柔らかい感触。

 

ギギギと首を上げると――――――俺はロセのおっぱいを真正面から鷲掴みしていた。

両手で。

 

やはり柔らかい。

できれば、このまま揉み揉みしたい。

ここがベッドなら押し倒したい。

 

でも、こんなことしてる場合じゃないよね。

 

ロセの顔はみるみる赤くなっていき――――――。

 

「こんな時に何やってるんですかぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃっ!」

 

これも疑似神格の影響なんだ!

不可抗力なんだ!

 

そこだけはご理解いただきたい!

 




この間、260話達成したばかりなのにもう270話………。
何話までいくんだろう………(-_-;)

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