ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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5話 天界のドアノブ

天界から戻ってきた俺達。

 

地下の転移室から上がり、リビングへ行くと――――

 

「いやぁ、懐かしいですね」

 

「でしょう? この頃のイッセーったら―――――」

 

母さんが中年の男性と楽しげに話していた。

………俺のアルバムを開いて。

 

また、そのアルバムかよ!

俺の恥ずかしい過去を掘り起こさないで!

 

………男性の方には見覚えがある。

牧師の服を着た栗毛の男性だ。

 

朧気だけど、確かに記憶に残っている。

 

それにあの髪の色は………。

 

男性は俺達に気づくと、優しげな笑みを見せた。

 

「やぁ、先にお邪魔させてもらっていたよ」

 

男性がそう言うと、俺の横を通り抜けて飛び付く者がいた。

 

「パパ!」

 

「おおっ、マイエンジェル! 元気にしていたかな?」

 

イリナと抱き合う男性。

 

そうか、やっぱりだ!

この人、イリナのお父さんだ!

 

昔、イリナと遊んでいた時に何度も会ったことがある!

 

イリナも嬉しそうに父と抱擁を交わす。

 

「もちろんよ! パパこそ、元気にしてた?」

 

「もちろんだよ」

 

母さんが微笑ましく見ている中で、俺に言う。

 

「イッセーはイリナちゃんのお父さんを覚えてる? 急にこっちに戻ってこられて、驚いちゃったわ。今度のクリスマス企画で一緒に活動するのよね?」

 

マジか!

ミカエルさんが言ってたエージェントってイリナのお父さんのことだったのかよ!

 

驚く俺にイリナのお父さんが手を差し出す。

 

「やぁ、イッセーくん。私のことを覚えていますか?」

 

「ええ、朧気ですけど、なんとなく。小さな頃の記憶なんで、あれなんですけど………」

 

「いえいえ、とんでもない。君もイリナも幼かったからね。仕方のないことです。………しかし」

 

イリナのお父さんは俺のことを足元から視線をゆっくり上に移していき、パンパンと俺の両肩を叩く。

 

そして、微笑みを浮かべた。

 

「あの少年がこんなにも逞しく育つなんてね。時の流れというのは早い。君のことは聞いています」

 

「――――っ! ………ということは、俺の過去を?」

 

「はい。ミカエルさまから伺っています。それと、君のお母さんからも先程ね」

 

そっか、イリナのお父さんも俺が異世界に渡ったことは知ってるのね。

まぁ、全勢力に知られている以上、既に隠すことではない。

こちらの事情を知ってくれているのなら、美羽達のことも紹介しやすい。

 

ミカエルさんもその辺りを考えて俺のことを伝えたのだろう。

 

母さんがイリナのお父さんに訊く。

 

「イリナちゃんのお母さんは今はイギリスに?」

 

「ええ。イギリスで和食の小料理店を営んでいます。彼女も私と同様、娘が天使に転生したことも知っていますよ」

 

ご両親とも、イリナの天使化は知っているのか。

家の両親も悪魔のこととかは知ってるし、似たようなもんだな。

 

イリナのお父さんはにんまりとしながら告げてくる。

 

「さて、お仕事のお話もあるのだけど、それは後でしましょう。お土産を持ってきましたよ」

 

お土産………?

 

イギリスのお土産かな?

 

「イリナちゃんのお父さんも夕飯を食べていってくださいね? もうすぐ出来ますから」

 

「おおっ、それはありがたい」

 

それから俺達は夕飯を共に食べることになったんだが………。

 

食事の席でイリナのお父さんは娘の自慢話をしたこともあって、とうのイリナは顔を真っ赤にして耐えていた。

 

まぁ、俺としてはイギリスに行った後のイリナの様子も知れて面白かったけどね。

 

 

 

 

「もう! パパったら、私の赤裸々な過去を話しちゃうんだから!」

 

「ハハハ、ごめんごめん。パパはイリナちゃんの可愛らしさを語れればそれで良かったんだけど、つい、ついね!」

 

ぷんぷんと頬を膨らませて怒るイリナ。

 

俺は笑いながら言う。

 

「いやいや、中々面白かったぞ? まさか、イリナが――――」

 

「イッセーくんも言わないでぇぇぇっ!」

 

顔を手で覆いながらイリナが叫ぶ。

 

うん、やっぱりイリナのこういうところは可愛いね。

 

「おう、天界から帰ってきたようだな」

 

アザゼル先生が転移魔法陣から姿を現す。

 

「あんたがイリナの父親か。俺はアザゼルだ」

 

「これは元総督殿、はじめまして。プロテスタントの牧師兼エージェントをやっております、紫藤です。イリナがいつもお世話になっておりまして………」

 

握手を交わす二人。

イリナのお父さんから見れば、先生は堕天使組織グリゴリの元総督でもあり、娘の通う学校の教師に当たるんだよな。

 

先生も集まったところで、俺達はVIPルームにて企画について話し合うことに。

 

「では、改めまして。クリスマス企画の立案者である紫藤トウジです。プロテスタント側の牧師をしております」

 

「パパって、昔は教会の戦士だったのよ」

 

イリナがそう付け加えてくれた。

 

教会の戦士ってことはエクソシストだったのか。

イリナのお父さん―――――トウジさんも昔は戦っていたんだな。

 

「そのようなわけで、今回の発案理由と細かな確認だけして、当日に備えるようにしましょう」

 

そこから、トウジさんによる発案に至った経緯、企画の注意点などが説明される。

内容は今までの確認といったところだったので、特に新しいことが聞かされる訳ではない。

 

今回の説明で驚いたのはトウジさんがプロテスタント側の局長という結構なポジションにいたことだ。

 

つまり、イリナのお父さんは教会側のお偉いさんだったということだ!

 

一通り、クリスマス企画の打ち合わせを終えた後、

 

「そうそう、お土産があるんでした」

 

そう言って、トウジさんは鞄の中を探りだした。

 

取り出したのはドアノブだった。

 

………なぜにドアノブ?

 

お土産ってドアノブなの?

 

皆が首を傾げて視線を注ぐなかで、トウジさんはVIPルームのドアノブを交換しだした。

 

「これをどこでも良いので、扉に取り付けてください。このように今あるドアノブを一旦取り外して、これをつけて開くと―――――」

 

開いた先にあったのは―――――見知らぬ広々とした一室。

室内側から開けたのに廊下に出ないのは………あのドアノブを通して別の空間に出たということなのだろうか?

 

部屋は広く、改装された俺の部屋よりもずっと広い。

 

天使の像やら聖人の絵画など、ご利益のありそうな装飾が部屋中に施されている。

何より目立つのは部屋の中央にある天蓋つきの大きなベッド。

明らかに俺の部屋のものより大きい。

 

それ以外で部屋にあるのは椅子とテーブル、時計ぐらいだ。

 

しかし、部屋に入ってから妙な波動を感じてならない。

天使の光力に似ているというか………でも、微妙に違ってて………。

 

怪訝に部屋の様子を見渡す俺達にトウジさんが言う。

 

「この部屋は天使と悪魔が子作りしても何ら問題がないように作られた特別な部屋です。このドアノブが専用の異空間に繋げてくれるのですよ」

 

『―――――っ!?』

 

その言葉に皆が驚いた!

 

だって、この部屋が悪魔と天使が子作りしても大丈夫な部屋だとか言うんだもの!

 

お土産というのはこの子作り部屋のことか!

 

トウジさんは娘の肩を抱いて、力強く良い放つ!

 

「イリナちゃん、遠慮なくこの部屋でイッセーくんとの愛を育んでおくれっ!」

 

「え………ええええええええええええっ!?」

 

「な、なにぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

イリナに続いて俺まで叫んじまった!

 

俺ですか!?

俺とイリナ専用ですか、この部屋は!?

 

仰天する俺達を置いて、トウジさんは涙を流しながら語り出す。

 

「………うぅ、イリナちゃんが天使になった時、もう孫の顔は見られないと諦めていたんだ………! これも信仰のためだと、自らの夢を捨てようとしていた………!

しかし、大天使ミカエルさまの慈悲深きご配慮によって、孫の顔を見られる機会をいただけた………! 何度、感涙したことか! ああ、これも主のご加護なのでしょう! アーメン!」

 

お祈りのポーズをとりながら、トウジさんはミカエルさんのありがたいお言葉とやらを代弁する。

 

『天使イリナ、兵藤一誠くん。この部屋では何をしても何も問題はありません。色々なことを試してみてください。若い男女ですしね、何事も経験と挑戦です。そういう信仰もあるのでしょう』

 

「どういう信仰!?」

 

ついツッコミを入れてしまった!

 

いや、俺は間違っていない!

 

つーか、何をしても良いって………何を言っているんですか、ミカエルさん!?

色々なことを試すってなに!?

 

あんなプレイやこんなプレイですか!?

 

って、そういや、ゼノヴィアがイリナとあーだこーだと言っているときに口にしてた!

イリナのためにミカエルさんが一考してるって!

 

それの完成がこれか!

 

あぁっ………冥界だけでなく、天界まで変な方向に技術を使い始めたよ!

 

子作りルームのために天界の技術を使っていいんですか、ミカエルさん!?

 

号泣するトウジさんは俺の肩に手を置く。

 

「………イッセーくん………孫を………孫をよろしくお願いします!」

 

あなたも孫ですか!

 

どうして俺の周囲の大人は孫やらひ孫をお願いしてくるんだ!

この間はゲンドゥルさんだったよね!

 

ロセなんて、期待されちゃったから練習するとか言い出したし!

そんでもって、練習しちゃったし!

 

「え、えーとですね………」

 

「うんうん! 私は男の子でも女の子でもどちらでも嬉しいよ! いや、むしろ、たくさん子作りに励んで、どちらの孫の顔も見せておくれ! 女の子はイリナちゃんに似てとても愛らしいんだろうなぁ………。天使の子供だから、超天使? 男の子はイッセーくんに似て勇ましい子になるのだろうか………ドラゴンで勇者………ああ、今から期待に胸が膨らむよ!」

 

………ダメだ、この人、人の話聞かない人だ!

 

イリナの癖は父親譲りだったのか!

悪いところが遺伝しちゃったんだな!

 

これを受けてとうのイリナは―――――

 

「………バカバカバカバカ! パパのバカ! ミカエルさま! なんでパパに渡しちゃうんですか!? もうイヤ! イッセーくんに嫌われちゃう!」

 

恥ずかしさのあまりにVIPルームの隅で縮こまっていた!

 

だよね!

実の父親から持ってこられて、しかも孫の話までされたらそうなるよね!

 

俺も父さんと母さんに美羽との孫を見せろと言われたときは恥ずかしかったよ!

 

「これで、イリナさんも出来るんだね。ううん………イリナさんが、となると………アーシアさんとゼノヴィアさんも………」

 

「まさか………四人で………。あ、でも、イッセーは経験済みよね」

 

美羽とアリスが何か言ってる!

 

教会トリオをまとめて抱けと!?

 

「今度借りよう、アーシア」

 

「か、覚悟を決めるお部屋ですね!」

 

気合い入ってるゼノヴィアとアーシア!

 

「………例の『休憩室』の雰囲気も良かったのだけれど、ここもまた………」

 

「そ、そうですね………」

 

「わ、私ったら破廉恥なことを………! ああっ、でも、もうイッセーくんとは………」

 

リアス、レイナ、ロセは事務所の『休憩室』のことを思い出してるし!

 

確かにあの部屋と似たようなもんだよね!

入ったらすること決まってるもんな!

 

「姉さまには明かしたくない部屋です」

 

「連れ込まれたら、イッセーさまが干からびるまで解放しそうに………。いえ、逆にイッセーさまが解放しないかも………?」

 

「あ、それって鬼畜モードのイッセーくん? それなら、黒歌さんが足腰立たなくなるかも。あの時のイッセーくん、Sだし」

 

「あー………分かる。それにイッセーって暴走すると止まらなくなるから」

 

小猫ちゃんとレイヴェルの会話にレイナとアリスが入っていったよ!

 

鬼畜モードの俺はSですか!

ごめんね、あの時は調子に乗って!

足腰立たなくして、ごめんね!

 

「………なるほど………こうきましたか。リアスもロスヴァイセさんも交わったなら………。私もそろそろですわ」

 

朱乃が何か覚悟を決めた表情だ。

 

そろそろって何ですか!?

 

「………うーん、イリナちゃんとドッキングできるようになったのは良いのだけど………何か………」

 

いつの間にか実体化していたイグニスは顎に手を当てて何やら考え込んでいる。

 

な、何を考えているんだ………?

あの真剣な顔はエロいことを考えている時の顔だ………。

何かとんでもないことを………。

 

つーか、ドッキングって言い方止めてくんない!?

俺は合体ロボじゃねぇんだよ!

 

イグニスに恐れを抱く俺の肩にアザゼル先生が手を回す。

すんごいいやらしい顔つきだ。

 

「やったな、イッセー! 悪魔やドラゴンが天使を堕天させずに抱けるなんて、そうないぞ! いやー、この色男!」

 

「え………そ、そうなんでしょうけど………」

 

「ん? 何か不満があるのかよ?」

 

「いや………そうじゃなくて………俺、干からびるんじゃないかって………。事務所の『休憩室』もありますし………」

 

「そこは気合いと根性だろ」

 

「それで何とかなるんですか!?」

 

「おまえなら出来る!」

 

他人事だと思いやがって!

このラスボス先生め!

 

『休憩室』にこの部屋まで加わったら、マジで干からびるって!

どんだけ搾り取られるんですか!?

 

「なーに、心配するなよ。おまえに死なれちゃ、こっちも困るんでな。手助けはしてやる」

 

「手助け………ですか?」

 

「おうよ。グリゴリ開発の特性精力剤と特性媚薬を用意してやるから使ってみな。効果は抜群だぜ?」

 

な、なんつーもんを開発してるんですか!?

やっぱり、この人達、真面目な方向に技術使わないよ!

 

でも………

 

「それ………箱でくれますか?」

 

 


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