「本当によろしいのですか?」
「ええ、ここでかまいませんよ」
リアスの問いにそう返すゲンドゥルさん。
ゲンドゥルさんは現在、学校の隅にあるスペースで転移魔法陣を展開していた。
今回の件でゲンドゥルさんは酷く消耗したため、一度冥界の病院で診てもらうことに。
医療班のスタッフさんに転送を任せるか、付き添ってもらうのが良かったんだけど、一人で行けると言って申し出を断ってしまったんだ。
それを見送るのは俺とリアスとロスヴァイセさん。
「………」
「………」
特に会話のないゲンドゥルさんとロスヴァイセさん。
なんとも言えない空気に俺とリアスは苦笑いを浮かべるしかなかったのだが、こちらに駆け寄ってくる気配が複数。
見れば、子供達が手を振りながらこちらに向かってきていた。
リレンクスの姿もそこにある。
「ロスヴァイセ先生!」
「おばあちゃん先生!」
子供達は二人の元に集うと寂しそうに言った。
「先生、帰っちゃうって本当?」
「もう、この学校にこないの?」
「もっと魔法をおしえてほしいです!」
そんな子供達の頭を撫でながらゲンドゥルさんは言う。
「私はまた来ますよ。それにロスヴァイセ先生だっていつかまた必ず来てくれるはずです」
その言葉に子供達は最高に輝いた笑顔を見せ、心から喜んでいた。
ゲンドゥルさんがロスヴァイセさんに真っ直ぐな瞳で言う。
「ロセ、おまえが辿ってきた道は確かにうちの家系とは異なるものだった。でも、間違ったものではないんだよ。その答えはここにあるだろう?」
ゲンドゥルさんの視線の先には子供達の笑顔。
「この子達の笑顔はおまえが辿ってきた先に出来たものだよ。それは今のおまえだからこそ、出来たもの。もっと自分を誇りなさい。――――おまえは私の自慢の孫です」
「………はい。ありがとうございます」
ロスヴァイセさんは口元を手で押さえ、こみ上げてくるものを必死に抑え込もうとしていた。
それでも、ゲンドゥルさんの言葉に涙が溢れてくる。
ゲンドゥルさんはそれを確認して魔法陣の魔法力を高めようとする。
しかし、何を思ったのか一度中断して俺の前に立った。
じっと俺の目を見てくるんだけど………なんだろう?
怪訝に思っていると、ゲンドゥルさんは俺の手を握ってきた。
「彼氏さん、ロセをよろしくお願いしますね。あなたに任せるのが一番安心できますので」
「あ、はい………」
俺が頷くと、ゲンドゥルさんはニッコリと微笑んで続けた。
「出来れば、ひ孫もお願いしますね? 男の子でも女の子でも私は一向に構いませんので」
「「ぶふぅぅぅ!?」」
予想外の言葉に吹き出す俺とロスヴァイセさん!
ひ孫ですか!?
それって、ロスヴァイセさんとそういう関係になるってことで………いやいやいや!
この人、やっぱりストレート過ぎるよ!
「ば、ばあちゃん!? な、何を!? わたすとイッセーくんはそこまでの関係じゃ………」
ロスヴァイセさんが顔を真っ赤にしながら方言混じりで抗議するが、ゲンドゥルさんは無視して魔法陣の輝きを強くさせていく!
「それでは私はこれで。次会うときを楽しみにしています」
ゲンドゥルさんは微笑みを浮かべて転移の光に消えちゃったよ!
なんで、俺の周囲の大人達は孫とかひ孫を期待するのぉぉぉぉぉぉ!?
急ぎすぎだろぉぉぉぉぉぉ!?
ゲンドゥルさんもそういう人だったの!?
もっと厳しい人だと思ってたのに!
つーか、次会うときを楽しみにしてるって………その時までにひ孫作れってか!?
「あ、あの………ロスヴァイセさん?」
「す、すいませんすいません! まさかあんなことを言い出すとは思わなかったので!」
あー………ロスヴァイセさんが耳まで赤くなってる………。
ですよねー………。
そうなりますよねー………。
だって、いきなりすぎるもんね。
すると、ロスヴァイセさんは銀の髪を指先でクルクルしながら、恥ずかしそうに言った。
「え、えっと………かっこよかったです。そ、それに………嬉しかったです。私を追いかけてくれて………」
「当然です。ロスヴァイセさんは俺の大切な仲間ですし。それに約束しましたから。これから先、何があっても守り続けますよ」
「~~~~~っ!」
あ、れ………?
なんかすんごい顔になってる………。
俺、そんなにおかしなこと言ったかな?
ロスヴァイセさんは顔を伏せてしまうが、ぼそりと呟いた。
「………プ、プライベートの時は………ロセと呼んでください………」
「え………?」
「え、っと………あの………その………イッセーくんの方が歳上ですし………その………さん付けもどうかと思ったので………。イッセーくんなら公私の区別はつけてくれそうですし………。け、敬語もなしで、お願いします………」
ぼそぼそとそう呟くロスヴァイセさん。
ロセ、か………。
ま、まぁ、愛称で呼ぶ方が親しみやすくて良いのかな?
俺は微笑みながら頷いた。
「わかった。それじゃあ、普段はロセって呼ぶことにするよ」
「あ、ありがとう………ございます」
小さい声だけど、どこか嬉しそうなロセだった。
▽
ゲンドゥルさんを見送った後、俺とリアスは町の復興作業に取りかかるつもりだったんだけど、俺達はまだ学校の敷地内にいた。
なぜならとある光景が俺達の目に入ってきたからだ。
その光景とは―――――
「か、会長! お、おおおおお俺!」
学校の端。
人気の感じられない場所に立つ一組の男女。
滅茶苦茶噛みまくってる匙とその前に立つソーナの姿。
ソーナは顔を伏せているせいで表情が見えない。
そう、俺とリアスはばったり匙の告白現場に出会してしまったのだ。
流石に出ていく訳にはいかず、俺もリアスは近くの草むらに隠れることに。
以前、黒歌と初めて出会った時はリアスの気を隠すのを忘れて気づかれてしまったので、今回は俺とリアス二人分の気はバッチリ消してるぜ!
まぁ、ソーナも匙も気を感知する能力は持ってないけど………一応ね?
「まさか、幼馴染みが告白される現場に遭遇するんて………今日一番のイベントかしら?」
真剣な顔で言うリアス。
今日一番のイベントって………ま、まぁ、リアスからしたらそうなるのかな?
誰かが告白されている現場………特に親しい者が告白される現場なんてそう見ることはないだろうし。
匙が緊張し過ぎて、震えた声でソーナに言う。
「お、おおおおお俺! は、初めて出会った時からか、会長に惚れてて………。さ、さっきは勢いで言っちゃいましたけど、俺、本当に会長のことが………すすすす好きです! ずっと惚れてます!」
おおっ、言ったぞ!
匙のやつ、真正面から「好き」って言ったぞ!
今朝とは全然違うな!
やっぱり、あれか!
禁手に至ったことで、男も一段階上に至ったか!
「………ソーナはどう答えるのかしら? ソーナったらあまり恋愛事に興味がないから………。そういう話も聞かないし………。匙くんのことは弟のように見ていたし………」
あははは………リアス、すごい心配してるな。
以前、ソーナにそれとなく訊ねたら匙のことは弟みたいな感じだと言っていた。
多分、今日の公開告白の直前まではそうだったのだろう。
それが、あそこまでの男を見せたんだ。
ソーナの認識も変わっているとは思うけど………。
さて、匙の告白にソーナはどう答えるか。
………あ、ヤベ………こっちまで緊張してきた。
つーか、リアスも明らかに緊張してるよね。
さっきから俺の手を握りしめてくるし。
瞬きしてないし。
匙の告白聞いてからソーナが黙ったままなんだが………この無言の時間が苦しい!
お願いだから何か答えて!
見てるこっちがハラハラするから!
俺もリアスも手汗びっしょりだから!
おっ、ソーナが顔を上げた!
さぁ、ソーナの答えは―――――
ソーナが思い口を開く。
「………正直、突然のことで戸惑っています………。まさか、サジが私のことをそういう風に見ていたなんて………気づきませんでした。私は眷属のことをしっかりと見ていると思っていたのですが、まだまだということでしょうか」
ソーナは深く息を吐く。
そして、頬を染めながら続けた。
「………そ、その………今日はありがとう、サジ。あなたに私は救われました。あなたがいなければ、私と私の夢は今頃どうなっていたか………」
「い、いえ! 会長を守るのは俺の役目と言いますか………その………当然のことをしたまでです!」
匙は首をぶんぶん横に振る。
そんな匙にソーナは微笑む。
「今日のサジは格好よかったですよ。本当にありがとう。しかし………ダメですね」
「えっ………!?」
だ、ダメ!?
ま、まさか、匙の告白は失敗か!?
この流れで失敗とかありか!?
やっぱり、ソーナは厳しいのか!?
ソーナは匙の手に触れると、その手を優しく撫でる。
「命は張っても命を捨てる行為だけはしてほしくなかった。たとえ私を守るためだとしても。あそこであなたに死なれたら、私は立ち直れなかったかもしれません。いえ、仮に立ち直れたとしても、この先を今まで通りに生きていけるか………」
「す、すいません………。気づいたら勝手に体が動いていたというか………何が何でも守らないとって………」
「今日は生き残ることが出来ましたが、次はどうなるか分かりません。これからは気を付けるのですよ」
「は、はい………」
んー………なんだか、半分お説教に変わってきているような気がするんだけど………。
リアスも額に手を当ててるし………。
結局のところ、ソーナの答えはどうなんだろう?
匙が問う。
「そ、それで会長………。あの返事の方は………」
その問いにソーナは一瞬動きを止める。
そのまま匙の瞳をじっと見つめて――――振り返った!
振り返ったまま、向こうに歩いていくぞ!?
え、ええええええ!?
あのソーナさん!?
返事の方は!?
ここでまさかの未解答ですか!?
「か、会長!?」
流石の匙も慌ててソーナを呼び止める!
そりゃあ、ここまで来て返事なしじゃ消化不良も良いところだよ!
お願い、ソーナ!
お願いだから、何か答えて!
匙もそうだけど、俺もリアスも消化不良になっちゃうから!
すると、数歩進んだところで、ソーナは立ち止まる。
そして、くるりと匙の方を振り向くと見たことがないくらい可愛いスマイルで―――――
「まずはプライベートの時に『会長』は止めなさい。二人で出掛ける時も『会長』と呼ぶつもりですか? 公私を分けることも魅力的な男性のポイントの一つですよ?」
「………そ、それは………。も、もしかして………」
匙が絞り出すように声を出す。
ソーナは笑顔のまま、一つ頷く。
「これからも公私共によろしくお願いしますね、サジ」
暫しの沈黙が続く。
そのままの体勢で制止すること数秒後――――――
「や、やった………やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 本当に良いんですね!? かい………じゃなかった! ソーナさん!」
拳を振り上げる匙!
ソーナも頬を染めながら頷いた!
やりやがった………あいつ、本当にやりやがったぁぁぁぁぁぁ!
あー………もう心臓に悪い!
ソーナがこんなに伸ばすから!
いやぁ、でも、めでたいな!
リアスが微笑みながら言う。
「ふふふ、あんな顔したソーナを見るのは初めてかしら」
「そうなの?」
「ええ。さっきも言ったようにソーナはこの手のことにはまるで興味を示さなかったのよ。でも、良かったわ。本当に良かった」
うーむ、今日一日とんでもイベントがあったけど、こういうめでたいイベントがあると良いよね!
匙、よくやった!
本当におめでとう!
とりあえず、今度の休みにデート行ってこい!
そして、その時の話を聞かせろ!
………なんか俺、モーリスのおっさんみたいだ………。
「………今度は私が頑張らないとね」
幼馴染みを祝福しながらも真剣な瞳でリアスが呟いた。
ふと俺と視線が合うと、頬を紅潮させて視線を戻してしまったけど………どうしたんだろう?
この後、俺とリアスは町の復興作業へと向かうことに。
作業中に出会った匙からは告白が成功したと報告があった。
ただ………それを俺に報告した途端に気絶するように眠りについてしまったんだよね。
グレンデルやヴァルブルガにやられた傷や初めての禁手を無理して動いてたから仕方がない。
告白も済んだし、今はゆっくり休めよ、匙!
▽
町の復興作業の手伝いを終えた俺達は一先ず帰宅したのだが、俺とリアス、ソーナの三人は身仕度を整えて冥界上層部のところへ。
そこにはサイラオーグさんやシーグヴィアラさんもいて、今回の騒動の当事者として事の全てを話すことに。
これも上級悪魔――――『王』としての仕事だ。
リゼヴィムや邪龍、捕まえた裏切り者の魔法使い達とユーグリット。
そして、アセムとその下僕達。
彼らの戦力や目的を分かった範囲で説明した。
流石の上層部も俺の複製体については恐怖を覚えたようだ。
なんせ、向こうは魔王クラスを量産できる。
それを聞けば誰でも恐れるさ。
まぁ、そういうわけで、俺達は上層部で一通り話した後、ようやく帰宅。
皆よりも少し遅めに夕食を済ませ、今は風呂だ。
「うー………流石に疲れたなぁ………」
兵藤家地下の大浴場。
そこにある備え付けのサウナに俺はいた。
とりあえず、サウナでいっぱい汗を流した後に水風呂に入る!
それから、風呂上がりにフルーツ牛乳を飲むという算段だ!
これで気分爽快にして、一日を終えたい!
リゼヴィム達のせいでやることが増えてしまったが、今日はしない!
明日する!
もう今日は働きたくないです!
サウナ風呂に入り、ぼーっとすること十分ほど。
汗もほどよく全身から流れていた。
そろそろ出ようかなと思った時だった。
サウナ室の扉が開かれ―――――
「あら、イッセーじゃない」
リアスが入ってきた!
バスタオル一枚纏わない生まれたままの姿で!
どうしよう、出たくなくなっちゃった!
リアスはそのまま俺の隣に座ってくる。
「リアスは今から?」
「ええ、ついさっきまでソーナと話していたのよ。ほら、匙くんのことでね」
リアスがウインクしながら楽しげに言った。
あー、なるほど。
幼馴染みに報告ですか………。
そういや、リアスも俺とデートしたこと、ソーナに話してたっけ。
本当に仲が良いよな。
普段は学園のお姉さま。
悪魔の世界では上級悪魔で名家の次期当主。
それでも、普段の生活では年頃の女の子で。
うん、二人とも可愛いぜ!
リアスは足を組ながら、濡れた髪を優雅に払う。
足を組む瞬間が艶かしくてついつい見ちゃう!
それに………リアスの呼吸に合わせて揺れるおっぱい。
俺、あのおっぱいを吸ったんだよなぁ………。
いかんいかん。
思い出したら、色々元気になってしまいそうだ。
「久しぶりに二人きりね」
「ん? まぁ、そうかな」
リアスと二人きりになったのは………バアル眷属とのレーティングゲーム前に一緒にお風呂に入った時と、ゲーム後のデートぐらいか。
リアスは寄り添ってくると俺の手を取り―――――自身の胸に当てた。
「イッセーは………私といてドキドキする? 私はあなたと二人でいると、こんなにもときめいているわ」
手からリアスの鼓動が伝わってくる。
明らかに鼓動が早く、強くなっていた。
リアスは潤んだ瞳で顔を近づけてくる。
「あの時、あなたに胸を吸われて………体の奥が熱くなって………。あんなに激しくされたら………私、我慢出来ないわ」
リアスは俺の膝上に股がり、抱きついてくる。
リアスのむっちりとした肌が、おっぱいが俺の体に押し当てられた。
腕に、胸に、腹に、足に全てにリアスの柔らかい肌が密着している。
綺麗な紅髪から女性特有の甘い香りがして、俺の理性を壊しに来た。
リアスは艶のある表情を見せる。
「イッセーは私のこと好き? 私は大好きよ。あなたになら、私の全てを捧げられる。心も体も―――――」
だから―――――
「このまま私を押し倒して………。あなたになら何されても良いから………」
潤んだ瞳、甘い吐息、早まる鼓動。
その言葉を耳にした瞬間―――――俺はリアスを押し倒した。
サウナ室で。
リアスの上に四つん這いになって。
俺はリアスの頭を撫でながら言う。
「俺もさ………凛としたリアスも好きだし、今みたいに可愛いリアスも好きだよ。………でもさ、このままいくと俺が初めてを貰っちゃうわけで………」
「私は初めてをイッセーに捧げられるなら幸せよ?」
「そう言ってくれるのは嬉しい。でもさ………ここ、サウナ室だよ?」
ここでしたらすごいことになりそう………。
とにかく汗だくで抱き合うとか、初めてにしては激しいような気もするが………。
いや、それはそれで魅力的と言いますか何と言いますか………。
リアスはクスッと微笑むと俺の頬に手をそっと手を当てる。
「ええ、良いわよ。ここで私を愛してくれるかしら?」
あっ………いいのね。
そ、それじゃあ………。
俺はリアスに顔を近づけるとそのまま口づけを――――
その時だった。
「あっ………」
「「あっ………?」」
突如として聞こえてきた第三者の声!
俺とリアスは恐る恐るその声がした方へ首を向ける。
そこには――――――
「り、リアスさん!? イッセーくん!? な、なななななな何をしてるんですかぁぁぁぁぁぁ!?」
銀髪の女性―――――ロスヴァイセ………いや、ロセが入ってきたぁぁぁぁぁ!?
ちょ、ええええええええええ!?
なんてタイミングで入って来てるのぉぉぉぉぉぉ!?
俺達より先に風呂に入ったんじゃなかったのぉぉぉぉぉぉ!?
ていうか、俺達の状況バッチリ見られたぁぁぁぁぁ!?
今、ロセの視界に映るのはリアスを押し倒している俺という構図!
俺とリアスは慌てて手を振る!
「こ、こここここれはだな! 今からその………ね?」
「え、ええ! そ、そうよ! これは今からその………ね?」
「説明になってなってねぇべ! 何が『ね?』だぁ!? 二人ともエッチなことするつもりだっただな!?」
方言んんんんんんんん!!
方言でちゃってるよぉぉぉぉぉ!?
慌てすぎて方言出てるって!
「イッセー………。私の初めてなのに………初めてなのに………うぅぅぅっ!」
ああっ、リアスが涙目になってる!?
いい雰囲気で、これからというところに乱入されて涙目になってるよ!
気のせいか、今のリアスがアーシアに見える!
「ちょ、とりあえず二人とも落ち着こう! な!? な!? ほーら、二人とも深呼吸! 吸ってー吐いてー! 吸ってー吐いてー!」
二人とも俺の声に合わせて深呼吸する。
こんな時になんだが、リアスのおっぱいもロセのおっぱいも揺れている!
眼福だ!
何度か深呼吸して落ち着いたところで、俺はロセに問う。
「えっと………ロセはお風呂に入ったんじゃ?」
「わ、私は例の論文をもう一度見直してまして………そうしたら、入るのが遅くなってしまって………。たまにはサウナも良いかなと思って入ったら………そ、その………お二人があんな状態で………」
そ、そっかぁ………。
家に帰ってからも調べてくれていたのか。
うーん、これは悪いことをした!
流石にこれには文句を付けられず、リアスも複雑な表情に。
重たい空気がサウナ室に漂う。
ど、どうしよう………俺もリアスもその気になってたし………ここで止めてしまうのはちょっと………。
でも、ロセの前では………。
つーか、ロセに申し訳ない。
すると、ロセが頬を染めながら口を開いた。
「あ、あの!」
「どうしたの?」
「こ、このままだとお二人に申し訳ないと言いますか………あれなので………そ、その………私も………」
「え?」
「わ、私も混ぜてもらっても………良いですか?」
時が止まること一秒。
俺にはその一秒が何時間にも感じられて―――――
「「えええええええええええ!?」」
俺とリアスの驚愕の声が響く!
え、うそ!?
ここでロセ参戦!?
俺はロセの肩を掴んで言う!
「お、おおおお落ち着け! 勢い良すぎだ! これは勢いで決めていいことじゃないぞ!?」
「わ、分かってます! で、でも、お祖母さんにひ、ひ孫を………」
「いやいやいや! それでもだよ! ひ孫はまだ早い!」
「そ、それなら練習だけでも………」
「練習って………そんなに軽い考えでしちゃダメだって!」
「………イッセーくんは………私じゃダメですか?」
「っ!」
「………わ、私だって軽い考えで決めたわけじゃないです。………そ、そういう、関係になるならイッセーくんが良いなと………。イッセーくんは私じゃ嫌ですか?」
そ、それは………そんな風に言われると……!
確かにロセも魅力的な女性だ。
彼女にしたいかと言われれば即、首を縦に降る。
リアスだってそうだ。
特にリアスは俺に好意を持ってくれていることも知っている。
ロセはこの手のことには厳しいくらいなのに、こうして言ってくるということは本音なのだろう。
そうなると俺は二人の気持ちに応えたくなる。
応えたい。
言葉を詰まらせる俺にリアスとロセが潤んだ瞳で熱い視線を送ってくる。
これは………これは―――――。
俺は何も言わずに二人を押し倒した――――――。
▽
[美羽 side]
アウロス学園から帰宅後。
ボクとアリスさんはイグニスさんに呼ばれて、今はアリスさんの部屋に集まっていた。
部屋に入ると先にイグニスさんがいて、
「美羽ちゃんおーそーいー。待ちくたびれて、もうビール二つも飲んじゃったじゃなーい」
「あははは………。アリスさん、これは………?」
「見ての通りよ。美羽ちゃんが来るまで話は始められないって言って、それでね。でも、美羽ちゃんも遅かったわね。何してたの?」
「ボク? ボクはお風呂場にちょっと用があって」
「お風呂に? とっくに入ってたのに?」
「えっと、お兄ちゃんに続いてリアスさんが入って行くのが見えて………」
「あ、なるほど………そういうこと」
今ので納得してくれたんだ………。
ボクが遅くなったのはお兄ちゃんに続いてリアスさんがお風呂に入って行くのが見えたから、用意をしておいたんだ。
リアスさんが今晩辺り、お兄ちゃんに迫るかなって思ってね。
お兄ちゃんに胸を吸われてから、お兄ちゃん見るときの視線がそれだったし。
イグニスさんが言う。
「さっすが、美羽ちゃん♪ 気が利くぅ!」
「気が利き過ぎてるような気もするけどね」
アリスさんもビール片手にそう言う。
まぁ、必要なかったかもしれないけどね。
保健室でして以来、お兄ちゃんもゴムは個有の亜空間に仕舞うようにしてるし。
ボクがベッドに座ると、アリスさんがコップを渡してくる。
「美羽ちゃんはオレンジジュースでいい?」
「うん、ありがとう」
アリスさんが注いでくれたオレンジジュースに口をつけて、ボクはイグニスさんに訊ねた。
「それで、ボク達に話ってなんなの?」
「そういえば、アウロス学園で何か言いかけてたけど、それと関係することかしら?」
アリスさんも続く。
あの時のイグニスさんはとても真剣な表情で何かを考えていて、ボク達に何かを伝えようとしていた。
でも、邪龍の対応もしないといけなくて、聞きそびれちゃったんだよね。
………もしかして、おっぱいドラゴン関連なのかなぁ?
お兄ちゃんの複製体が出てきたときも真剣な顔しながら、とんでもないこと言ってたし………。
イグニスさんはビールを机の上に置くと、ボクとアリスさんの目をじっと見てくる。
………なんだろう?
今のイグニスさん、いつもと少し違う?
アリスさんも同じことを思ったのか怪訝な表情を浮かべていた。
すると、イグニスさんが口を開く。
「ねぇ、二人とも。ヴィーカちゃんとベルちゃんと戦ってみて勝てると思った?」
「「――――っ!」」
突然の質問だった。
ボク達があの人達に勝てるか………。
その質問の答えは、考えるまでもなく―――――
「今のボク達じゃ、無理だね」
「そうね………。悔しいけど、相手はかなりの強敵よ」
アリスさんは唇を噛み、悔しそうにしていた。
アリスさんはヴィーカに一度、完全に敗北している。
その時は命までは取られなかったけど、ヴィーカは去り際にこう言い残していったそうだ。
―――――このままだと、勇者くんの足を引っ張るわよ?
この言葉はアリスさんにとって屈辱的なもので………紛れもない事実だった。
もしもあの時、アリスさんが人質に取られたら?
アリスさんが洗脳されて、お兄ちゃんと敵対するようなことになっていたら?
間違いなくお兄ちゃんの足手まといになる。
これはボクにも言えることで、あのまま一人でベルと戦っていたら確実に負けていた。
イグニスさんは言う。
「相手の真の実力は神クラスとみても良いんじゃないかしら? まぁ、能力の方向は決まっているのだけれど。それでも強力な力を持つということには変わりない。今のあなた達の中で唯一対抗できるのがイッセーだけ。今回の戦いで得たEXA形態なら勝機は十分にあるでしょう。だけど、それではイッセーの負担が大きすぎるわ。このままいけば―――――いつかは倒れてしまう」
―――――っ!
ボクとアリスさんは目を見開く。
確かにお兄ちゃんは強い。
だけど、一人では限界がある。
だから、ボク達で支えていこうと誓ったのに………。
それなのに、ボク達は役に立てていない。
「もう、落ち込みすぎよ。あなた達が役に立ててないなんてことはないわ。今でもイッセーの支えにはなってる。………だけど、今後の敵を考えた時に今のままだと力不足ってだけ」
「でも、それだと、イッセーの足を引っ張ることになるわ。………そんなのは嫌よ」
「ボクだって………お兄ちゃんが倒れるところなんて見たくないよ」
もうボク達の力不足でお兄ちゃんを失うことになるなんて嫌だ。
守られてばかりではなく、ボク達が守りたい。
そのためには――――――
「強くなりたいわよね?」
ボク達の心の内を見透かしたようにイグニスさんは言う。
「今よりももっと。イッセーを守れるくらいに強くなりたい、でしょ?」
「そうね」
「うん」
ボク達が頷くと、イグニスさんはニッコリと微笑んだ。
そして、ボク達の肩に手を置いた。
「その気があるなら十分よ。あなた達には素質がある。美羽ちゃんは魔王の血を引く者。そして、アリスちゃんは霊槍『アルビリス』に選ばれし者だもの」
―――――霊槍アルビリス。
アリスさんが使っている銀の槍。
アリスさんの国、オーディリアは火、水、土、風を司る神に近い存在である四大神霊の加護を受けた国。
そのオーディリアに伝わる伝説の武具がアルビリスだ。
アルビリスは四大神霊の力で作られたとされていて、その力は強大。
極めれば貫けない物はないというほど。
まぁ、ボクが知っているのはこの程度なんだけどね。
アリスさんはというと、
「私は普通の槍だと私の力に耐えられなくてすぐに壊れるから、この槍を使ってただけなんだけど。へぇ、選ばれてたんだ、私」
て、テキトー過ぎる!
いや、アリスさんらしいといえば、そうだけど!
「アリスちゃんの場合、選ばれてるんだけど、真の力は使わせてくれてない感じね。とにかく、そういうわけで、二人には素質があるの。ここで私からの提案! これはあなた達にしか出来ないことよ」
ボク達にしかできないこと………?
魔王の血族であるボクと霊槍に選ばれたアリスさんだからこそ出来ること。
それは一体………。
ボク達はゴクリと喉を鳴らす。
そして――――――
「あなた達、『神』になってみない?」
「「………へっ?」」
それは予想を遥かに越えた提案だった。
[美羽 side out]
というわけで、イグニスにより提案がなされました!
これが美羽とアリスをどう強化していくかは今後で!
次回は番外編を予定していますが、ネタは考えてません(笑)