ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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22話 まさかの立候補です!

戦闘後の処理となったアウロス。

 

町は至るところに邪龍の爪痕が残っている。

 

特に俺達赤龍帝眷属がメインで対処したアセムの下僕達との戦いの痕跡は大きく、あちこちを更地に変えていた。

 

この町にはもうまともな家屋や畑はほとんど残っていない。

 

学校の方は美羽達がユーグリットの仕掛けを解除してくれたお陰でそこまで大きな被害は出なかったものの、ところどころで損傷が見られる。

中にはヴァルブルガが吹き飛ばした施設もあるので、完全な状態で守りきった………とはいえないだろう。

 

今は駆けつけた冥界の兵隊達が学園と町内で調査及び瓦礫の撤去作業を行ってくれている。

 

こちらでは三時間以上経過していたが、外では三分ほどしか経っていなかったそうだ。

 

そうなるとティアとディルムッドは本当に絶妙のタイミングで現れていたことになる。

 

うん、母さんマジでありがとう。

あの二人がいなかったら、もっと危なかったかもしれない。

 

奴らの主犯格であるユーグリットは先程、魔王領へと転送された。

あいつにはまだ言い足りないこともあるが、あとはサーゼクスさん達に任せよう。

これでグレイフィアさんの容疑も晴れるはずだ。

 

聖十字架の魔女、ヴァルブルガはあの後、残った量産型邪龍と共にすぐに転移型魔法陣で退散したそうだ。

 

あの聖遺物の炎は悪魔にとってかなり厄介なもの。

何とか対策を考えたいところだが………。

 

俺にはやることがある。

 

聖十字架の対策よりも今は――――――

 

「えっと………と、とりあえず、こっち向いてくんない?」

 

俺はこちらに背を向けるアリスとリアスに声をかけた。

 

俺の複製体を倒した後、二人に話しかけようとしたんだが、二人共顔真っ赤で一言も話してくれなかったんだ。

 

………恥ずかしかったのはわかるよ!?

 

俺も今回ばかりは恥ずかしかったもん!

 

でもね、しょうがないじゃん!

うちの駄女神がツイン・おっぱい・システムしかないとか言うんだからさ!

あの状況でああも熱く言われたら、それに賭けるしかなかったんだよ!

 

アリスとリアスが呟く。

 

「………イッセー、あんたさ………どさくさに紛れて私達のお尻触ってきたでしょ? む、胸吸いながら、お尻も揉んできたわよね?」

 

「うっ………!」

 

「………胸もあんなに吸って………必要以上に吸われたような気がするのだけれど。………途中から同時にとか関係なく吸ってきたし………」

 

「ううっ………!」

 

た、確かに二人のおっぱい吸いながらお尻も触っちゃったかも………。

おっぱいもいっぱい吸っちゃったし………。

 

「だ、だって、二人の声が………そ、その可愛くて………つ、つい………」

 

などと言い訳をしてみるが………、

 

「………」

 

「………」

 

二人共、耳まで赤くして顔を伏せてしまった!

 

だ、ダメだ………。

下手な言い訳で事態を改善することなどできないか!

 

いや、でも、二人の声が色っぽくて可愛かったのは事実なんだ!

二人の甘い吐息!

ビクンと震える体!

 

興奮しないわけないじゃないか!

あんな状況だったのにそういう気分になっちゃったんだよ!

戦場じゃなかったら押し倒してましたよ!

 

そこだけはご理解していただきたい!

 

しかし………それを二人に言えばこの事態は悪化しそうだ………!

 

ならば、どうするか。

 

使うしかないだろう、あの技を。

 

全てを丸く納めるモーリスのおっさん直伝のあの技を………!

 

「アリス! リアス!」

 

俺は大きな声で二人の名を呼ぶ!

 

一瞬、二人がビクッとするが、そこを俺は見逃さない!

 

俺は地を蹴って高く跳躍!

空中で高速回転し―――――二人の前で両膝と両手で着地を決める!

 

「ほんっと、すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

必殺『ムーンサルト・ジャンピング土下座』が炸裂した。

 

 

 

 

「派手にやられたな」

 

聞き覚えのある声に振り返るとアザゼル先生がいた。

 

「悪かったな、今回は参戦できなくて」

 

「いえ、俺達もこんなことになるとは思ってなかったですし………。今回はある意味運が良かったと思いますし」

 

俺はアーシアを慰め中のティアと美羽に付き従っているディルムッドの方に視線を向けながら言った。

 

先生も二人のタイミングの良さには苦笑するだけだ。

 

………リゼヴィム達はうまい具合にアグレアスを丸ごと持っていってしまった。

話では都市にいた住民やアガレス眷属、バアル眷属といったこちら側の陣営の者は全て地上に転移させられていたそうだ。

つまり、都市だけ奪い去ったことになる。

 

俺は先生に問う。

 

「………あの空中都市の何が目的なんですかね?」

 

空中都市アグレアスは旧魔王時代の技術が使われていて、未だ解明できていない未知の部分があるという。

前ルシファーの息子であるリゼヴィムはその秘密を知っているんじゃないかとソーナ達は言っていた。

 

先生が息を吐きながら言う。

 

「………実は巨大兵器かなんかで、変形でもするのかね。………あそこを担当していたアジュカ・ベルゼブブが何か知っているかもしれない。訊いてみた方が良いな」

 

先生も皆目見当がつかない様子だった。

 

奴らの目的はアグレアスとトライヘキサだ。

 

ユーグリットはロスヴァイセさんの論文についても語っていたな。

 

先生も同じことを考えていたのか、それを口にする。

 

「ロスヴァイセの例の論文、ある程度解明できた」

 

「トライヘキサの封印法ですよね?」

 

「なんだ、ユーグリット辺りが話したか? そうだ、ロスヴァイセの論文はトライヘキサの封印解除ではなく、封印そのものの術式に行き着こうとしていたのさ。ユーグリットじゃないが、あいつは本物の才女だよ。当時、興味半分で手を出して、その可能性に触れるなんてな」

 

「となると、これからはやっぱり?」

 

「ああ、あいつの術式解析が鍵を握る。まさか、ロスヴァイセが俺達の切り札になりそうだとは………世の中、何が起こるかわかるもんじゃないな」

 

ため息を吐く先生。

 

まぁ、確かに。

うちの眷属仲間ってすごいのばかりだな………。

 

先生が俺の頭を手でわしゃわしゃかき回す。

 

「帝釈天からの伝言だ。初代孫悟空が天帝のもとで行っていた対『禍の団』の先兵、その後釜が曹操となった」

 

なるほど………やっぱ、あの時の聖槍はそういうとなのか。

 

こりゃ、近いうちにまた会いそうだ。

下手すりゃ、前よりパワーアップしてそうだぞ。

 

「それと複製イッセーだが………まさか、もう量産してくるとはな。戦闘技術までは反映できていないようだが、パワーはおまえそのものなんだろう? 一体一体が魔王クラスとか………胃が痛いぜ」

 

「いや、その通りなんですよね………。今回は何とかなりましたけど」

 

「何とかするおまえもある意味恐ろしいぞ。何だよツイン・おっぱい・システムって………。なにちゃっかり、魔力とも光力とも違う未知のパワー引き出してんだよ。つーか、魔王クラス二十体を一人で片付けるとかどんだけだよ!」

 

「そ、それはうちの女神さまに言っていただけると………」

 

乳力(にゅー・パワー)だもんな………。

多分、世界中………異世界探しても俺しかいないんじゃないのか、使える奴。

 

でも、あの力――――EXA形態は強力だ。

 

方向性の違う三形態の能力を合わせる上に、リアスの滅びの魔力とアリスの白雷を使えるんだからな。

しかも出力も桁違いと来ている。

 

おっぱいパワーの二乗化は半端じゃないね。

 

ドライグが言う。

 

『だが、不安定でもある。つまり出力が安定せず、思いもよらぬところで解ける可能性もある。使いどころは限られてくるぞ』

 

イグニスがそれに続く。

 

『それにリアスちゃんの力とアリスちゃんの力はあの形態でないと使えないから要注意ね』

 

あ、やっぱり?

 

さっき、試しに使おうとしたら全然ダメだった。

 

『それはそうよ。二人の力を取り込んだとはいえ、あれはT・O・S としてイッセーの中に組み込まれているもの』

 

うーん、何となく予想はしていたけど………。

 

普段から使えるんだったら、対リゼヴィムの切り札になるかなって考えもあったんだけどね。

 

そうなると別の手を考える必要があるか。

神器ではない別の力を。

 

………それはそうとドライグは平気なのかよ?

 

『なにがだ?』

 

いや、今回もおっぱいで劇的パワーアップしちゃったし………ショック受けてないかなって。

 

『………ショックは受けているぞ。だが、俺はもう一人ではないのだ! 痛みを分かち合える者がいる! だから、後でアルビオンのところへ行ってくるぞ!』

 

………そっか。

アルビオンによろしく伝えてくれ。

 

アルビオン………ドライグの愚痴、聞いてあげてね。

 

遠い目をする俺の横で先生が険しい目をしていた。

 

「………あとは今回の事件を招いた者が把握できるかどうかだな」

 

………事件を招いた者。

 

アグレアスでは時間と空間によるテロ対策が進んでいなかった点、この町に名だたる魔法使いが集められた点。

この二つは確実に繋がっているだろう。

 

そうでなければ、脱出用の転移型魔法陣を利用してアグレアスをジャンプさせるなんて大掛かりで大胆なことは出来ない。

しかも、ゲンドゥルさん達魔法使いの術式まで封印していく念の入れよう。

 

裏で糸を引いていた者がいるはずだ。

 

「ま、おまえのおかげで裏切り者の魔法使いは全員捕縛できた。それを辿れば何か掴めるかもしれん。その辺りはこっちに任せてくれ」

 

「はい」

 

先生の言葉に頷きを返す俺。

 

と、ここで息をあげてデュリオが到着した。

 

「遅れてすみませんっ! なんというか………戦後処理頑張ります!」

 

流石の天界の切り札も三分間の出来事には対応出来なかったようだ。

 

 

 

 

俺は校庭に設置された臨時テントへ向かう。

 

消耗の激しかったメンバーは全員ぐったりしていて、各自パイプ椅子の上でおやすみ中だ。

 

うちの眷属では美羽がアーシアと肩を寄せて熟睡していた。

ギャスパーもスヤスヤ眠っている。

 

アリスとレイヴェルは戦後処理に出ているのか、この場にいない。

 

………一番、消耗が激しかった匙が見当たらないんだけど………どこ行ったんだろ?

 

俺も流石に疲労が溜まっているので、一休みすることに。

パイプ椅子の一つに腰を下ろして一息吐く。

 

「………なんか、最近バトル多くない?」

 

特に夏休み明けてから怒濤のごとく有事が起こりまくったよね。

 

旧魔王派にロキだろ、アスト・アーデにも行ったし、英雄派。

吸血鬼の一件以降はアセムとリゼヴィム。

 

あー………俺の高校生活が戦いで埋まっていく………。

俺の平和はいったいどこへ………。

 

すると、俺の隣に座ったリアスが言ってきた。

 

「冬休み、皆で集まりましょうか」

 

「冬休みの合同特訓的な?」

 

「大変な時期でもお休みさせてあげたいのは山々なのだけれど、冬休み前に教会………いえ、天界から援助を求められているのよ」

 

「天界から?」

 

悪魔が天界から援助を求められるってのも変な感じだな。

これも三大勢力の関係が良好になったということかね。

 

しかし、そうなると冬休み前は天界に行くことになるのか?

 

リアスが微笑む。

 

「師走の終わりは天使達と過ごすことになりそうね。その辺りは天使側――――イリナやシスター・グリゼルダともろもろ固めているところよ」

 

へぇ、そうだったのか。

つーか、俺にその辺りの情報が回って来てなかったんだが………。

 

と、ゼノヴィアがテントに入ってくる。

 

「ここにいたのか、部長」

 

「どうかしたの、ゼノヴィア?」

 

頷くゼノヴィアは俺達を見渡しながら言う。

 

「うん、そろそろ、話しておいた方が良いと思ってね」

 

「ん? それは前に言ってた秘密のことか?」

 

俺がそう問うとゼノヴィアは頷く。

 

「流石はイッセーだ。察しが良いね」

 

ゼノヴィアは改めて俺達を見渡しながら言う。

 

「三学期に入ったら来年度生徒会の総選挙があると聞いた」

 

「ああ、ソーナや真羅先輩も卒業だしな。新しい生徒会役員を決めないと………って、おまえ………」

 

俺はとある想像に行き着いた。

 

ここまで来たら確実にそうだろう。

つーか、ゼノヴィアのやつ、自信満々に腕組みしてるしな!

隣にいるイリナまで「えっへん!」と胸を張ってる理由は謎だが………。

 

ゼノヴィアは天に指を突き上げて宣言する!

 

「イッセー、私は今度の選挙に立候補する。――――私は生徒会長になりたいんだ」

 

「ええええええええええええええっ!?」

 

俺、木場、小猫ちゃん、レイナが仰天する!

 

寝ている美羽、アーシア、ギャスパーはともかく、驚いていないのはリアス、朱乃、ロスヴァイセさんぐらいだ。

 

マジか!

生徒会長に立候補か!

そういや、勉強や学校行事に興味津々だったのはそういうことか!

 

リアスが言う。

 

「私たちも相談された時は驚いたわ。まさか、ゼノヴィアが生徒会長になりたいなんて………。最近、学校行事に並々ならぬ関心を寄せていたのはそういうことだったのよ」

 

ゼノヴィアはうんうんと頷きながら続ける。

 

「三学期に入ったら選挙活動をするつもりだ。………オカ研を抜けることになりそうだが、どうしても生徒会長になりたいという野望をもってしまったんだ。どうか、ご了承を願いたい」

 

お、おおおおお………。

 

あのゼノヴィアが生徒会長に立候補とは………。

ソーナの後釜候補になるんだが、ゼノヴィアが生徒会長になったらどうなるんだろう?

全く想像がつかない。

 

………まぁ、賑やかにはなりそうだな。

 

リアスが皆に言う。

 

「まだ日もあるし、冬休み前から対策を立てましょう」

 

すると、いつのまにか起きていたアーシアがゼノヴィアに抱きつく。

 

「ゼノヴィアさん! 私、お手伝いします!」

 

イリナもゼノヴィアに飛び付いた。

 

「もちろん私もよ! 布教とか得意だし!」

 

「ああ、二人共よろしく頼む! 私は生徒会長になるぞ!」

 

張り切る教会トリオ。

 

布教って………それは微妙に違うような………。

 

ふとリアスに視線を向けると若干寂しそうな表情で呟いた。

 

「………オカ研も新しい部長を決めなくてはならないわね」

 

「誰にするのか決めているの?」

 

俺が問うと口に指を当ててウインクした。

 

「まだ秘密よ。けれど、朱乃と話し合ってもう決めてはいるの」

 

秘密なのね。

 

うーむ、誰が部長になるんだ?

二年でなりそうなのは………木場とか?

ありえそうだが、リアスがそんなストレートに来るかな?

 

他は………うーん………。

 

リアスが手を叩いて皆に言う。

 

「さて、冬休み前にもう一仕事しましょうか。まずはここの処理よ」

 

冥界の兵士達のほとんどが町の修復に向かっている。

 

………俺がラズルとの戦いで開けた巨大な穴とか埋めてくれてるらしい。

イグニスの炎で焼けた畑も何とかしてくれるそうだ。

 

俺達は学校の修復かね。

 

皆が立ち上がり、それぞれの持ち場に戻ろうとすると――――イリナが俺の袖を引っ張ってきた。

 

妙に笑顔だった。

 

「ところでイッセーくん。もうすぐ約束の時期だね」

 

「へ? 約束?」

 

間の抜け間返事をする俺だが、イリナはニッコリしながら続けた。

 

「………ちっちゃい頃に決めた約束、クリスマスになったら思い出すって信じているからね♪」

 

 




次回でこの章のラストかな?
番外編は………ネタが決まってないなぁ(苦笑)

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