ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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4話 共同戦線です!!

「うー、気持ちいいよ、小猫ちゃん」

 

小猫ちゃんは今、俺の肩をマッサージしてくれている。

 

最近、色々あって疲れてたからすごく気持ちがいい。

 

「イッセー先輩には修業を見てもらっていたお礼をしていませんでしたから。して欲しいときには言ってください。いつでもします」

 

くぅ~!

小猫ちゃんが優しくしてくれる!

 

いつもはツッコミと瓦礫が飛んでくるだけだったからな。

なんか感動するな!

 

「そういえば、あの二人がローブを脱いだとき、イッセー先輩、スケベな目で見てましたね」

 

うっ!

バレてたのか!

 

流石は小猫様、俺のこと良く見てるぜ!

 

俺はふとアーシアの方を見た。

 

「アーシア、大丈夫か?」

 

アーシアはゼノヴィアにきついこと言われてたからな。

 

正直、かなり心配だ。

 

「私は大丈夫です。イッセーさんが守ってくれましたから」

 

「そっか」

 

アーシアが微笑みながら答えたので俺はそう返すだけだった。

 

「それより、私は心配だったんですよ?イッセーさんが消滅させられてしまうのではないかと気が気じゃなかったんですから」

 

あー、どうやらアーシアに心配させてしまったみたいだ。

 

「心配かけてゴメンな、アーシア」

 

「いえ、私はイッセーさんが無事ならそれで十分です!」

 

おおっと、眩しいくらいの笑顔で言われてしまった。

 

なんか、立場が逆になってしまったな。

 

「待ちなさい!祐斗!」

 

部長の制止する声が聞こえてくる。

 

そちらを見ると、立ち去ろうとしている木場と激昂している部長の姿。

 

「私のもとから離れることは許さないわ。あなたは私の大切な『騎士』なのよ! はぐれになんて絶対にさせないわ!」

 

「………部長、僕を拾っていただいたことにはとても感謝してます。だけど、僕は同志達のおかげであそこから逃げ出せた。だからこそ、僕は彼らの怨みを晴らさないといけないんです………」

 

「祐斗!」

 

そう言う木場を引き留めようと部長は木場の腕を掴む。

 

その様子を見て、俺は椅子から立ち上がり部長に言った。

 

「部長、木場を行かせてやって下さい」

 

「イッセー!? 何を言うの!?」

 

まぁ、当然の反応か。

 

俺は声を荒げる部長を宥めながら続ける。

 

「今の木場の頭の中は聖剣への復讐のことで頭が一杯です。そんな状態のやつに何を言っても聞き入れませんよ」

 

「イッセー………」

 

まぁ、そんな顔しないでくださいよ部長。

 

俺は木場の方に視線を移す。

 

「なぁ、木場」

 

「………なんだい?」

 

「俺が前に言ったこと覚えているな?本当に大切なものは何なのか、頭冷やして良く考えてくるんだ。それから帰ってこい。俺達はいつでも、おまえを待ってるからさ」

 

「………」

 

そして、木場は何も言わずに部室を出ていった。

 

 

 

 

さて、木場にはああ言ったものの何もしないわけにはいかないんだよな。

 

エクスカリバーだけでなく、コカビエルなんてヤバそうなやつも絡んでいるみたいだしな。

 

ただ、部長に言うと止められるだろう。

 

そう言うわけで俺は一人で動くことにした。

 

まずは教会の人間―――イリナとゼノヴィアに接触するため、二人の気を追って町を歩いてた。

 

そして、見つけた。

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私達にお慈悲をぉぉぉぉぉ!!」

 

路頭で祈りを捧げる白いローブを纏う女の子が二人。

 

通りすぎる人々も奇異の視線を向けていた。

 

 

見つかったのは良かったんだけど………。

 

 

話し掛けたくねぇえええ!!

 

出来れば関わりたくないんですけど!

 

俺まで不審な目で見られそうでよ!

 

つーか、あいつら何してんの!?

 

エクスカリバーの奪還は!?

 

「なんてことだ。これが超先進国、日本の現実か………。誰も救いの手を差しのべてくれないとは。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒づかないでよゼノヴィア。路銀の尽きた私達はこうするしかないんだから。このままじゃ食事も取れないのよ?」

 

「ふん。もとはといえば、おまえが詐欺紛いの変な絵画を購入したのが悪いんだ」

 

そう言ってゼノヴィアが指差したところには変なおっさんが描かれた一枚の絵画があった。

 

下手くそな絵だな。

 

「何を言うのゼノヴィア!この絵には聖なるお方が描かれているのよ!展示会の人もそう言ってたわ!」

 

「ああ、どうしてこんなのが私のパートナーなんだ………。主よ、これも試練なのですか」

 

「あなたって沈むときはとことん沈むわよね」

 

「うるさい!それより、今日の食事を何とかしないとエクスカリバー奪還どころじゃない。どうすれば良いんだ………」

 

「「はぁ………」」

 

 

ぐぅぅぅぅぅぅ………。

 

 

離れて見ている俺のところまで届く腹の虫。

 

二人はその場に崩れ落ちる。

 

………昨日、やり合った娘達とは思えないな。

 

さて、どうするかな。

 

正直、一人で話しかけにいくのは世間の目が怖いところだが………。

 

まぁ、女の子二人が道端で行き倒れるところなんか見たくないからな。

 

「そこの迷える子羊達。神の手じゃないけど、悪魔の手なら差しのべるぜ」

 

 

 

 

それから20分くらいが経った。

 

正直、俺はこの二人に接触したことを後悔しかけている。

 

 

なぜなら………。

 

 

「美味い!日本の料理は、美味いぞ!!」

 

「ああ、やっぱりファミレスのメニューこそ私のソウルフード!!」

 

ガツガツとファミレスで注文したメニューをたいらげていくゼノヴィアとイリナ。

 

テーブルの上に次から次へと皿が積み上げられていく。

 

ひぃ、ふぅ、みぃ………十皿以上は積まれてるな。

 

しかも、店員さんがまだ持ってくる。

 

あの細身のどこにそれだけの量が入るんだよ………。

 

「イッセー君はなんで泣いてるの?」

 

「いや、ちょっと懐事情が………」

 

君達の飯代だけで俺の財布の中は枯渇しそうです………。

 

聖書の神様。

信仰云々の前にこいつらには遠慮というものを教えたほうが良いと思います。

 

「すまない、次はこのジャンボパフェを頼めるか?」

 

 

まだ食うのか………。

 

 

 

数分後。

 

 

「信仰のためとはいえ………まさか悪魔に救ってもらうとは………世も末だ」

 

「私達は悪魔に魂を売ったのよ! 」

 

奢ってもらっといてそれかよ!

 

「ああ、主よ! 心優しいイッセー君にご慈悲を!!」

 

イリナは胸の前で十字架を刻む。

 

うっ!

頭痛が………っ!

 

「………イリナ、た、頼むから止めてくれ………。俺、悪魔だから………」 

 

「あ、そうだった。つい、癖で」

 

てへっとイリナは可愛らしく笑う。

 

普通にしてる分には美少女なんだけどな、この二人。

 

「それで、キミが私達と接触してきた理由は?」

 

ゼノヴィアが単刀直入にそう尋ねてくる。

 

どうやら、大体は察していたらしい。

 

「単刀直入に言わせてもらう。エクスカリバーの破壊に俺も協力させてほしい」

 

俺の発言に二人は驚愕していた。

 

「………目的はなんだ? 昨日、我々と関わらないように約束してもらっていたはずだが?」

 

まぁ、ゼノヴィアの言うことは最もだ。

 

悪魔は関わるなと言った翌日に協力させてくれ、と言ってきたんだからな。

 

「理由は二つある。そっちは破壊してでもエクスカリバーを回収したい、だよな?」

 

「ああ、そうだ。昨日も言った通り、堕天使に利用されるくらいなら破壊したほうがマシだからな」

 

「一つ目の理由なんだけど、木場・・・俺のところの騎士は自分と同志の怨みを晴らすためにエクスカリバーを破壊したがっている」

 

「なるほど。エクスカリバーの破壊という点では我々の利害は一致しているわけだ」

 

「そういうことだな」

 

「それで、二つ目の理由は?」

 

「まぁ、幼馴染みが死ぬところを見たくないってところかな。昨日、イリナと戦って分かったけど、おまえ達だけではコカビエルには勝てない。それはおまえ達も分かっているはずだ」

 

「………確かに、私とイリナだけでは正直無理だ。奪還も難しいだろう。無事に帰れる確率は三割以下。そういう意味ではキミが協力してくれるのはこちらにとっても大きいだろう」

 

ゼノヴィアが俺の協力に乗り気になると、イリナがそれに異を唱える。

 

「ちょっと、ゼノヴィア。相手はイッセー君とはいえ、悪魔なのよ?」

 

イリナは俺が悪魔だってことを気にしてるのか。

 

少し強引だけど、あの手を使おう。

 

「悪魔がダメなら、ドラゴンなら良いだろ?」

 

「何?」

 

ゼノヴィアが俺の言葉に反応する。

 

「俺はドラゴン―――今代の赤龍帝だ」

 

「「!?」」

 

二人とも凄く驚いているな。

 

やっぱ、赤龍帝の名前ってスゲーな。

 

ゼノヴィアはどこか納得しているみたいだ。

 

「キミから感じられるドラゴンのオーラ。それにイリナを一瞬で倒したその力量………。まさか、キミが赤龍帝だったとは………」

 

「そういうことだ。それで、どうだ? 俺の申し出を受けてくれるか?」

 

「良いだろう。最悪、上にはドラゴンの助けを借りたと報告すれば良いからな」

 

よし、交渉成立だ!

 

ふー、呑んでくれて良かったぜ。

 

危うく、食費が無駄になるところだった。

 

『随分、回りくどいことをしたものだな』

 

まぁな。

でも、こいつらに許可を貰っておいたほうが後々、面倒にならなくてすむ。

情報も入るかもしれないしな。

 

それに、俺もコカビエルは禁手無しで戦うにはキツい。

 

ドライグ、禁手はまだ時間がかかるんだろ?

 

『ああ、もう少しなんだが、最後の最後で手間取っている。………相棒の禁手は少し特殊だからな』

 

やっぱり、アレか………。

 

まぁ、そういうことなら仕方がない。

 

『すまないな、相棒』

 

気にするなって。

 

それまでは自分の力で乗りきって見せるさ。

 

「さて、そろそろ店を出るか。木場のところに行かないとな」

 

俺は会計をするため、レジに行く。

 

そこで俺は驚愕の事実を知ることになる。

 

 

「なっ………!? 9650円………だと!?」

 

 

俺の財布が悲鳴をあげた。

 

 

 

 

ファミレスを出た俺は木場に連絡をいれた後、イリナとゼノヴィアを連れて待ち合わせの場所に向かった。

 

イリナ達と一緒にいることを伝えたらすぐに応じてくれたよ。

 

待ち合わせの場所に着くと、そこには………。

 

「あれ、小猫ちゃんと匙? なんで二人がここにいるんだよ?」

 

木場だけじゃなく、何故か小猫ちゃんと匙がいた。

 

「………私は祐斗先輩を探していました」

 

「俺は小猫ちゃんに事情を聞いて木場を探すのを手伝っていたんだ。それで今、木場を見つけたところなんだ」

 

あー、やっぱり小猫ちゃんも心配してたんだな。

 

匙も手伝ってくれていたのか。

 

最初の出会いは最悪だったけど、結構良いやつだよな。

 

「それで、イッセー先輩はその二人を連れて何をしようとしてたんですか?」

 

うっ………。

まぁ、この状況で聞かれないわけがないか………。

 

誤魔化しも通用しなさそうだ。

小猫ちゃんって、かなり鋭いからな。

 

木場もいるし、ここは正直に言おう。

 

「実は―――」

 

俺は事情を話していく。

 

全てを聞き終えた後、匙が目玉が飛び出るかというくらいに驚愕していた。

 

「な、なにぃ!? 兵藤、おまえ、正気か!?」

 

「………連絡が取れないと思ったら、そんなことをしていたんですか」

 

俺がエクスカリバーの破壊に協力することにしたことを話すと匙も小猫ちゃんも驚いていた。

 

当然の反応か。

 

その横では木場とゼノヴィアが睨み合っている。

 

「エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは、正直、遺憾だね」

 

「随分な言いようだ。そちらがはぐれなら問答無用で斬り捨てているところだ」

 

おいおい、共同作戦前なんだから、ケンカはやめてくれよ。

 

「キミが聖剣計画を憎む気持ちは分かるつもりだ。………あの事件は私達の間でも最大級に嫌悪されている。だから、計画の責任者は異端の烙印を押されて追放されたよ」

 

イリナがゼノヴィアに続く。

 

「バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男よ。今では堕天使側についているわ」

 

聖剣計画の首謀者が堕天使側に?

 

「バルパー………。その男が僕の同志を………。情報の提供には感謝する。そのお礼として僕も情報を提供しよう。この間、僕はエクスカリバーを持った者に出会った。その男の名は―――フリード・セルゼン」

 

フリード、か。

死んではいないと思ってはいたけど、まさか今回の事件に関わっているとはな。

 

木場の情報にゼノヴィアとイリナが目を細める。

 

「なるほど、奴か」

 

「あいつを知ってるのか?」

 

俺がゼノヴィアに尋ねると、ゼノヴィアの代わりにイリナが答えた。

 

「ええ。フリード・セルゼンは十三才でエクソシストになった天才よ。多くの悪魔や魔獣を滅して功績を残していったわ」

 

「だが、奴はやり過ぎた。同胞すらも次々に手をかけていったのだからね。その結果、奴は異端として追放された。………なるほど、教会から追放された者同士が結託することはそう珍しいことでもない。もしかしたら―――」

 

「今回の件にバルパーってやつが関係しているかもしれないってことか」

 

俺がそう言うとゼノヴィアは頷いた。

 

それを見て木場の瞳には決意が生まれていた。

 

「それを聞いて、僕が協力しないわけにはいかなくなったよ」

 

木場もこの共同作戦に参加してくれる気になったみたいだ。

 

「じゃあ、話はついたわね」

 

イリナはメモ用紙にペンを走らせ、連絡先を渡してきた。

 

「何かあったらここに連絡してね」

 

「サンキュー。じゃあ、俺のも―――」

 

「イッセー君のケータイ番号はおばさまからいただいてるから大丈夫よ」

 

イリナが微笑みながら言う。

 

「マジで!?」

 

母さん、何やってんの!?

 

絶対軽いノリで小猫ちゃんと教えただろ!

 

『幼馴染みなんだし、連絡してみたら?』なんて、言ったに違いない!

 

「では、そういうことで。食事の礼はいつか返そう。赤龍帝の兵藤一誠」

 

ゼノヴィアはそう言うと踵を返した。

 

「またねイッセー君!」

 

イリナは手をブンブン振りながらゼノヴィアと共に去っていった。

 

はぁ………とりあえず、何とかなったな。

 

これで、俺の財布も報われる。

 

すると、木場が俺に言ってきた。

 

「イッセー君、君は―――」

 

「おっと、手を引けってのは無しだぜ」

 

「でも、これは僕の復讐だ」

 

「それでもだ。おまえは俺の友達だ。友達を助けないわけにはいかないだろ?」

 

「………」

 

まだ納得していない表情の木場。

 

どうしたものか。

 

俺はふと傍に立つ小猫ちゃんと匙を見る。

 

本当にタイミングが悪いところで会ってしまった。

 

眷属の皆には黙って事を進めるつもりだったんだけどな。

 

「小猫ちゃん、匙。この事は部長や会長には黙っててくれないか?」

 

そう言って、俺は二人に頭を下げる。

 

すると、返ってきたのは予想外の返事。

 

「………私もお手伝いします」

 

そう答えたのは小猫ちゃんだった。

 

小猫ちゃんは俺と木場の裾を掴み、顔をあげる。

 

その表情は寂しげなものだった。

 

「………祐斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは寂しいです。それに、イッセー先輩も。一人で危険なことをしようとしないでください………。お願いします………」

 

なんだろう、普段と違う小猫ちゃんにときめいてしまった。

 

とりあえず、心配させてしまったんだ。

謝らないとな。

 

「ゴメンな、小猫ちゃん」

 

木場はというと、困惑しながらも苦笑いしている。

 

まさか、小猫ちゃんがこんな表情を浮かべるとは思わなかったのだろう。

 

「まいったね。小猫ちゃんにそんなことを言われたら、僕も無茶できないよ。本当の敵も分かったことだし、二人の好意に甘えさせてもらうことにするよ」

 

おお、木場も俺達の協力を受ける気になってくれたか!

 

流石の木場も小猫ちゃんには勝てないようだ!

 

俺もだけどね!

 

すると、匙が手をあげながら言った。

 

「えーと、すまん。俺はこの話に全くついていけてないんだけど………。エクスカリバーの破壊を会長やリアス先輩に黙っといてほしい、ってのは分かる。だけど、エクスカリバーと木場の関係が分からん………」

 

あれ?

小猫ちゃんから事情を聞いたんじゃなかったの?

 

「………すいません。祐斗先輩とエクスカリバーの関係までは話していませんでした」

 

今度は小猫ちゃんが答えた。

 

ああ、なるほど。

 

それだと、匙からすれば、さっきの話は理解出来てないだろうな。

 

そんな匙を見て、木場が言う。

 

「そうだね、僕の過去を話そうか」

 

木場は自分の過去を語り始める。

 

 

 

 

 

 

カトリック教会が計画していた聖剣計画。

 

被験者は剣に関する才能を持つ少年少女。

 

自由を奪われ束縛され、非人道的な実験を繰り返される毎日を送っていただけの日々だった。

 

だが、彼らは耐えていた。

 

自分たちは神に愛された特別な存在だと信じこまされていたから。

 

いつか特別な存在になれる。

 

いつか聖剣を扱える者になれる。

 

そう希望を持ち、過酷な日々に耐えていた。

 

だが、誰一人として聖剣に適合しなかった。

 

実験は失敗に終わる。

 

そして、そのことを隠匿するために行われたのが、毒ガスによる処分。

 

木場は他の仲間たちによって何とか逃れたそうだが、既に身体を毒が蝕んでおり、最早手遅れの状態だった。

 

そこに部長が現れ眷属悪魔として新たな生を得ることになった。

 

 

 

 

 

 

「僕を眷属として迎え入れてくれたリアス部長には感謝している。だけど、僕は同志達が逃がしてくれたおかげであそこから抜け出せた。………だからこそ、僕は彼らの怨みを魔剣に籠めてエクスカリバーを破壊しなければならない。これは唯一、生き延びた僕の贖罪であり、義務なんだ」

 

部長から聞いていたとはいえ、凄まじい過去だ。

 

贖罪であり、義務、か。

 

聖剣に復讐したい。

 

その気持ちは俺にも分かる。

 

でもな、木場。

 

おまえの同志は本当にそんなことをおまえに求めているのか?

 

「うおおおお!!」

 

俺の横で号泣する匙。

 

あーあ、鼻水まで垂れ流してるよ。

 

匙は木場の手を取る。

 

「木場ぁ! お前にそんな過去があったなんてな!ちくしょう! なんて非情な世の中なんだ! 酷い、酷すぎるぜ! おまえが、エクスカリバーを恨む理由も分かった!」

 

おお、力強く頷き出したぞ。

 

とりあえず、鼻水と涙を拭けよ、匙。

 

木場が困惑してるぞ?

 

だけど、匙は続ける。

 

「俺はおまえに協力するぞ!バレた時の会長のお仕置きが正直怖いが、あえて受けよう!」

 

匙は木場にそう言うと今度は俺の手を握ってきた。

 

「兵藤! 俺はおまえに感動している! 危険を省みず、仲間のために動けるなんて、なんて熱いやつなんだ! スゲーよ!」

 

「いや、おまえの方こそ! 誰かのために泣けるなんて、そう出来ることじゃない! おまえも熱い男だ、匙よ!」

 

俺は匙の手を握り返し、そう言う。

 

うんうん。

 

熱い男は嫌いじゃないぜ!

 

「………暑苦しいです」

 

「ははは………」

 

小猫ちゃんと木場が何か言ってるけどそんなのは無視だ!

 

少々、俺の予定とは変わったけど、こうしてエクスカリバーを破壊するための共同戦線が張られることになった。

 

 

 

 

この後、匙は自分の夢は会長とデキちゃった結婚するという夢を語ってくれた。

 

俺はその夢に号泣。

 

感動した。

 

男のロマンを感じたぜ!

 

そして、俺と匙は意気投合することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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