イッセー「なにを!?」
地面に転がる銀髪の男―――――。
俺の鉄拳を受けて、奴は鎧を完全に消滅。
全身から血を流し、立ち上がる気配がない。
見れば気絶しているようだった。
ユーグリットの周囲は俺の拳の余波で巨大なクレーターが出来ていて、完全に地形が変わっていた。
『スッキリしたな』
ドライグも滅茶苦茶キレてたからなぁ。
とりあえず、ぶちのめしておいたからオーケーだろ。
赤龍帝は俺達だけだ………だろ、相棒?
『ああ。その通りだ。赤龍帝を名乗れるのは世界で俺達だけだ』
ドライグの声はどこか嬉しそうだった。
「イッセーくん………」
そこにロスヴァイセさんが歩み寄ってくる。
ユーグリットがかけた魔法の縄は解かれていた。
リアスが解いたのだろう。
俺は鎧を解除した後、笑顔で言った。
「終わったよ、
「っ! はい!」
今のロスヴァイセさんは憑き物が取れたような表情だ。
っと………足元がふらふらする。
よろめいた俺をリアスが支えてくれた。
「大丈夫、イッセー?」
「あはは………奥義使ったから結構ヤバいかも………」
奥義は限界を超えて体内に気を取り込むから、使った後がね。
しばらく体を休めないこと。
「あれだけ無理な力を使っていたもの。しょうがないわ。ロスヴァイセ、イッセーの右側を任せていいかしら?」
「あ、は、はい!」
リアスに言われてロスヴァイセさんが俺の肩を担ごうとした。
その時だった―――――。
「うんうん。流石は勇者くん。あっという間に倒しちゃったね」
この場に響く第三者の声!
振り返れば、そこに立っているのは白髪の少年――――アセム!
俺は冷や汗をかきながら、アセムを睨む。
「このタイミングで出てくるのかよ………!」
こいつ、リゼヴィムと一緒にいたんじゃないのか!?
いや、それよりも………この状況で出てこられたことが一番辛い!
力を使い切った俺にこいつを相手取る体力は残っていない。
リアスやロスヴァイセさんでは太刀打ちできないだろう。
警戒すると共に焦っている俺にアセムが笑顔を向ける。
「大丈夫大丈夫。僕が直接戦うのはまだ早いからね」
「………だったら何しに来たんだ?」
「んー、ちょっとした………エクストラステージってやつ?」
アセムがそう言うと空に魔法陣がいくつも展開する。
それは召喚用の魔法陣。
魔法陣が輝きを放つと、そこから何かが現れる。
それを見て、俺達は言葉を失った。
「なんてこと………! もうこんなにも量産していただなんて………!」
リアスが目を見開きながら言った。
俺達の目の前に広がるのは―――――赤龍帝の鎧。
その数は二十。
もうここまでの数を複製されていたのか!
アセムがクスリと笑う。
「今回、最後の戦いだよ。君は乗り越えられるかな? それじゃあ、頑張ってね~」
そう言って、奴は転移型魔法陣で姿を消す。
くそったれめ………!
こちとら、奥義使ってヘトヘトだってのに!
ロスヴァイセさんが前に出る。
「私が残ります! リアスさんはイッセーくんを!」
「何を言っているの! 複製とはいえ、一つ一つがイッセーの力を持っているのよ!? ここは―――――」
リアスがそこまで言いかけると、複製体の一つがこちらに攻撃を仕掛けてきた!
赤い魔力弾を撃ち込んでくる!
咄嗟にロスヴァイセさんが防御魔法陣を展開するが、あれでは防ぎきれない!
俺は悲鳴を上げる体にムチ打ってロスヴァイセさんとリアスを抱えて後ろに跳ぶ!
何とか回避できたが………。
「ぐあっ………!」
激痛が体に走った。
やっぱり、奥義を使った代償は大きいか………!
「イッセー!」
後ろから声が聞こえてくる。
振り向けばアリスと美羽、レイヴェルがこちらに飛んできていた。
三人は着地すると駆け寄ってくる。
「アリス、向こうは?」
「あっちはもう大丈夫よ。邪龍もあと少しだけだったからこっちに来たのだけど…………いいタイミングで来れたみたいね」
アリスは上空に浮かぶ二十体もの赤龍帝の鎧を見て、表情を厳しくする。
ある程度の予想はしていたけど、こうも早く量産されているを見せられるとな。
鎧を纏った俺の複製体が二十。
それはつまり魔王クラスが二十人いるに等しい。
美羽の頬を汗が伝う。
「こんなの………どうすれば………! ここにいるメンバーだけじゃ!」
俺はこの通り力を使い切った。
他のメンバーも疲弊している。
学校の方にいるメンバーが来ても逆転は難しいか………。
冥界の軍が到着するまで時間がある。
どうする………どうすればいい………!
この場の全員がこの状況を切り抜ける方法を模索していた。
その時―――――。
『ご主人様ご主人様!』
ん?
なんか歴代の女性赤龍帝の人が話しかけてきたぞ?
えーと、どうしたの?
今、結構ピンチなんですけど………。
今度は歴代の男性赤龍帝が言う。
『大丈夫です! こんな時こそあなたの真価を発揮するとき!』
エルシャさんとベルザードさんがそれに続く。
『あなたの進化の源はいつもそこにあった』
『君はそれによって何度も危機を脱してきた。今回も同じじゃないのかな?』
おいおい………まさかと思うがそれって―――――。
『『『そう! 今こそおっぱいに触れる時!
おいいいいいいい!?
俺が言うのもなんだけど、あんたら正気か!?
確かにアリスのおっぱい突いて禁手に至ったけど!
アリスとリアスのおっぱい突いて新しい可能性を得たけど!
つーか、乳力ってなに!?
初めて聞いたわ、そんなパワー!
ツッコミが止まらない俺を見て、怪訝に思ったのかリアスが訊いてくる。
「イッセー? どうしたの?」
「………落ち着いて訊いてくれる?」
「ええ。こんな状況だからこそ冷静でいなければならないもの」
「………歴代の先輩たちがさ………おっぱいの力を借りろってさ」
「………」
ああっ!
リアスがフリーズしてる!
ですよね!
そうなりますよね!
アリスが俺の胸ぐらを掴んでくる!
「あんたはまた胸!? また同じ過ちを犯す気なの!?」
「待って! 俺じゃない! 言ったの俺じゃないからぶたないでぇぇぇぇぇ!」
この弱り切った状態でアリスパンチ受けたら死ぬ!
死んでしまう!
涙目になる俺だが、先輩達は構わず次々に言ってくる。
『そして今は絶好の機会!』
『今はスイッチ姫が二人いる! ダブルスイッチ姫!』
『こんなにも心強いことは無いだろう!』
言葉に熱が入っていませんか!?
すると、イグニスが何かに気付いたかのように言う。
『………まさか、アレをしろと言うのね? アレはまだ机上の空論。成功するかどうかなんて分からないとういうのに………』
『いえ、女神さま! 彼らならできます! 私達が信じる彼らならきっと成功させます!』
すいません、話が見えてこないんですけど………。
君達は俺に何をさせようとしているの?
今までみたいに普通に突けっていう雰囲気じゃないよね?
『そうね………。アリスちゃんとリアスちゃん。次元を越えて揃ったダブルスイッチ姫。そして不可能を可能にしてきたおっぱいドラゴン、イッセーなら………』
イグニスの声がいつになく真剣だ。
それが逆に恐ろしい。
何かとんでもないことを考えてそうで………。
イグニスは実体化し、俺の横に現れると、俺、アリス、リアスの順に見渡して言ってきた。
「三人とも、いい? この状況を変えるには三人の協力しかないの。私の言うことを良く聞きなさい」
イグニスは一拍置くと真っ直ぐな瞳で告げた。
「イッセー、二人のおっぱいを吸いなさい。二人同時に」
「…………」
「…………」
「…………」
思考が完全に停止する俺達。
思考停止数秒後―――――
「「「えええええええええええええええええ!? ここで!? しかも吸うの!?」」」
俺達三人の声が重なった!
だってそうだろう!
今ここで吸えって言ってくるんだもの!
しかも、二人同時に!?
俺は疑問をそのまま口にする。
「なんで吸うの!? それも二人同時って何!?」
「私が立てた理論―――――
「よくそんな意味わからんことを真剣な口調で言えるな!? 乳力を同調させるって何!? つーか、計算したの!? あんたの頭の中はどうなってんだ!?」
「二人の母乳を同時に飲めばオーケーよ。ちゃんと舌で絡めて味わいなさい」
「表現が生々し過ぎる!」
この駄女神ぃぃぃぃぃぃぃぃ!
マジで何考えてんだ!?
見ろよ、おまえの妙な迫力に押されて二人が!
「え、えっと、リアスさん………どうする?」
「そ、そうね………それしかないというのなら、するしかないと思うし………イッセーなら………」
二人とも流され始めてるよ!
マジで良いのか!?
こんな場所で!?
すると、レイヴェルが叫んだ!
「イッセーさま! 複製体が!」
言われて空を見上げると、全ての複製体が天撃の鎧となって全砲門をこちらに向けていた!
あいつら一斉に撃つつもりか!?
あんなもん撃たれたらこの地域が丸ごと吹き飛ぶぞ!?
イグニスが叫ぶ!
「早くなさい! この状況を変えられるのはT・O・Sしかないわ!」
そのT・O・Sって言うの止めてくんない!?
何だよ、ツイン・おっぱい・システムって!?
だが、早く動かないとあいつらが撃った余波で学校の方にも被害が…………!
クソっ、こうなったらヤケじゃぁぁぁぁぁぁぁぁい!
俺はアリスとリアスの肩を掴んで言った。
「アリス! リアス! 二人のおっぱい、吸わせてくれ!」
▽
「やぁっ………リアスさんの乳首が擦れて………んっ」
「あ、アリスさん………そんな、動いたら………あんっ」
服を脱いだアリスとリアス。
二人は互いの胸をくっつけるようにして寄り添っていた。
それは俺に同時に吸わせるため。
豊満なリアスのおっぱいとようやく成長し出したアリスのおっぱい。
二人のおっぱいが密着し、呼吸で震える。
頬は紅く染まり、瞳は潤んでいる。
恥ずかしさもあるんだろうけど、これから自分たちがされることを想像したからかもしれない。
幸いこの場にいるのは俺以外は皆女性。
それだけが唯一の救いかもな。
あ、でも………。
「こ、こんなところで………! うわぁ………は、ハレンチだぁ………エロエロだぁ」
ロスヴァイセさんが顔を手で覆いながらも指の間からバッチリこちらを見ていた。
しかも、方言。
俺は二人の腰を抱くと引き寄せる。
「………二人とも、いいか?」
「は、早くしてよね………」
「あまり、時間をかけられると………恥ずかしくて、私………」
甘い吐息を漏らしながら二人は見つめてくる。
俺は静かに頷くと―――――二人のおっぱいを同時に吸った。
二人の声が周囲にこだまする。
―――――さぁ、目覚めなさい
―――――ここにはアリスちゃんのおっぱいと
―――――リアスちゃんのおっぱいと
―――――おっぱいドラゴンがいるのだから!
赤く光と紅い光、そして白い光。
三つの輝きがこの地域全てを照らした―――――。
▽
俺の中で何かが大きく動いた。
体の底から………いや、魂の底から力が沸き出てくる。
温かい。
優しい熱が俺を包み込んでいく。
それに、二人の力を俺の中に感じる。
そうか、これが―――――
ドライグ、もう一戦いけるな?
『ああ、派手に暴れてやろうではないか』
赤と紅、そして白いオーラが籠手の宝玉から放たれ、俺を包み込んでいく。
この力なら皆を守れそうだ。
『ECLIPSE!!』
翼、腰、籠手にキャノン砲が増設される。
天撃の力が俺を纏う。
『XENON!!』
脚や肩、腕に大型のブースターが出来る。
天撃の上に天武の力が重ねられる。
『AGIOS!!』
翼の形状が鳥類を思わせる赤い翼へと変わる。
天武と天撃の力をまとめるように天翼の力が覆った。
「融合進化ァッ!!」
『EXA Promotion!!!!』
融合進化―――――こいつが俺の新たな力!
体から溢れ出る力はどの形態よりも遥かに濃密で強大!
吹き荒れるオーラでこの地域一帯が激しく揺れる!
複製体達から放たれた極大の砲撃は新形態に至った余波で全て相殺された!
俺は後ろにいる皆に顔だけ向けて言う。
「皆はここにいて、結界を張って身を守ってくれ。ここから先は俺一人で十分だからよ!」
俺は天翼の翼を大きく広げて飛翔する!
複製体を眼前にしてフェザービットを全基展開!
行くぜ、ドライグ!
ビットの制御は任せた!
『任せろ! だが、あまり時間はかけられんぞ。この形態は方向性の違う力を強引に合わせたものだ。強力な反面不安定でもある』
なるほど、確かに力の中に僅かにだけどズレがあるな………。
了解だ!
それじゃあ、さっさと終わらせましょうかね!
俺は天撃のキャノン砲も展開し、照準を定める!
天撃の力と天翼の力!
存分に味あわせてやるぜ!
『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!』
向こうもかなりのスピードで動いてる。
『赤瞳の狙撃手』リーシャほど狙い撃つ力があれば最小限に済ませられるだろうけど、俺にはそんな狙撃力は無い。
だからさ―――――
「乱れ撃つぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
空を駆けるビットによる砲撃と天撃の砲身から放たれる砲撃!
あらゆる角度から放たれる赤い砲撃が複製体を襲う!
まともに受けた複製体は消滅していった。
―――――まるで滅びの魔力を受けたかのように。
下で見守っているリアスが叫んだ。
「あれは私の消滅の魔力! イッセー、あなた私の力を!?」
「それだけじゃないわ! あいつ、私の力まで!」
アリスも驚愕していた。
そう、今の俺の中にはリアスの滅びの魔力とアリスの白雷の力が宿ってる。
恐らく二人のおっぱいを吸ったからだろうけど。
でも、今までアリスのおっぱいは何度も吸ってきたし、この間、リアスのも寝ぼけて吸ったけど、そういう変化はなかった。
今回に限ってなんでだろう?
T・O・Sってやつの効果か?
まぁ、そのあたりは分からないけど、今ならこういうことも出来る。
俺は右手に滅びの魔力を、左手に白雷を纏う。
両拳を胸の前で合わせると―――――滅びの魔力と白雷で構成された巨大な魔弾が出来上がる!
「くらいやがれ! 滅雷球!」
俺は魔弾を殴りつける!
魔弾は複製体に命中すると、跡形もなく消滅させた!
更に、そこを中心に白雷が周囲に広がり、近くにいた複製体を焦がしていく!
俺が遠距離からの攻撃をしていると、奴らは近距離戦に持ち込もうと天武の鎧に変えて突貫してくる。
奴らの籠手のブースターが大きく展開し、炎が噴き出す。
―――――シャイニング・バンカー。
そうか、そんな技まで使えるのか。
人の力を無断で惜しみなく使ってくれる。
そんな奴はぶっ潰さないとな!
俺の籠手のブースターが展開。
そこから炎が噴き出すと同時に滅びの魔力が集中する。
俺は真正面から迎え撃ち―――――
「エクスティンクト・バンカァァァァァッ!」
衝突する複製体の拳と俺の拳!
僅かに拮抗するが―――――滅びの魔力が複製体を炎ごと消滅させた!
よし、ラスト五体!
俺が振り向くと、残りの五体は天撃の状態でドラゴン・フルブラスターを撃つ格好となっていた。
残った奴らで一気に俺を仕留めるつもりか!
だけど、それは願ったり叶ったりだ。
こっちも一気に片付けることが出来るからな!
俺は周囲にビットを一斉展開。
全砲門を開き、赤い竜の力と滅びの魔力、白雷がチャージされていく。
俺と奴らのチャージ完了時間は全く同時。
となれば、あとは力の押し合いだ!
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
『EXA Full Blast!!!!』
放たれる極大の砲撃!
俺とアリス、リアスの力が合わさったこの力!
強力な力だが、向こうも五体の砲撃が合わさってるだけあって強い!
俺達の砲撃は拮抗していた!
だけど、負けられない!
こんなところで負けられない!
俺が負ければこいつらは学校に向かうだろう。
そうなったら、匙が守ろうとした学校や子供達が!
だからこそ!
「負けられるかよォォォォォォォォッ!」
獣のような咆哮!
EXAの砲撃は勢いを増し―――――全ての複製体を完全に消滅させた。
イグニス「ツイン・おっぱい・システム。長いと感じたらツイン・システムと呼びましょう」
イッセー「カッコいいけど中身はおかしいからね!?」