ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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19話 絶対に助けます!

『―――――「罪科の獄炎龍王(マーレボルジェ・ヴリトラ・プロモーション)」。地獄の業火に等しい俺――――いや、俺達の黒炎とあんたの聖なる紫炎。どっちが強いか勝負といこうぜ!』

 

匙の声はヴリトラと混ざったものとなっていた。

 

そうか………二人は同化したのか!

二人の想いが重なったからこそここに至った!

こういう禁手化もあるのか!

 

リアスが教えてくれる。

 

「マーレボルジェは地獄の最下層の一つ上の階層のことよ。悪意を持って罪を犯した者が行き着くという場所なの」

 

その地獄の階層の名前が禁手の名前に入っている。

つまり、匙の黒炎は地獄の炎そのものということか!

 

『さぁ、邪龍共! 覚醒した俺達の力、存分に味あわせてやる!』

 

暗黒の鎧を纏った匙が飛び出していくと、次々に量産型邪龍が飛び掛かっていく。

 

しかし――――匙の鎧に生える無数の触手が向かってくる邪龍を捕らえる。

 

触手に繋がれた瞬間、邪龍共はオーラの全てを吸われていき一瞬で塵と化していった!

ラインの力が大幅に向上されているのか!

あの触手に触れられたら力だけでなく生命力まで吸われるということなのか!?

 

匙の周りには視認できるほどの呪詛が浮かび上がり、空一面に広がっていった!

 

真羅副会長が恐々としながら言う。

 

「あれほどの呪いを放つ禁手………! うかつに近寄れば呪殺されるわ!」

 

事実、呪詛に取りつかれた量産型の邪龍共は糸が切れたように次々に地面に落下していく!

 

あれほどの出力………! 

黒邪の龍王の力!

神滅具クラスはあるんじゃないのか!?

 

これはアザゼル先生が見たら喜ぶかも!

 

『俺が惚れた女を泣かせたあんたは絶対許さねぇ! あんたの紫炎と俺の黒炎! どちらが上か決めようかっ!』

 

「おもしろいわ! おもしろいわねん!」

 

嬉々としてそれを受け入れたヴァルブルガ!

上空で匙とヴァルブルガの炎対決が巻き起こり始めた!

 

ヴァルブルガの放った紫炎を匙の黒炎が容易に相殺している!

神滅具所有者と互角にやり合っている!

 

それにしても、大胆!

 

禁手に至ったからなのか、公開告白したからなのか、もうあいつ隠す気ねぇ!

本人聞いてるし!

 

「サジ………あなたは………! リアス、私はどうすれば良いのですか!?」

 

ほら!

ソーナも顔真っ赤だよ!

普段クールなソーナが顔真っ赤でどうすればいいか困惑してるんですけど!

 

予想外の問いかけにリアスも慌てて手を振る。

 

「え、ええ!? ここで私に聞くの!?」

 

「幼馴染みでしょう!? あなたはイッセーくんに想いを告げたのではないのですか!?」

 

「いや、私はまだ………って、ソーナ!? あなた、そんなキャラだった!?」

 

幼馴染み同士で年頃の女の子みたいになってます!

 

ま、まぁ、弟みたいな存在と思ってたやつがこうもハッキリ想いを告げたんだ。

身を呈して自分を守りながら。

 

さっきの匙はマジで男だったぜ!

 

「なんか………匙くんもお兄ちゃんに似てきたね。あの鎧姿もそうだけど、今の発言とか特に」

 

「そうよねぇ………。イッセーの周りの男の人ってかなりイッセーの影響を受けるわよね」

 

「お兄さまもその部類ですわ」

 

うちの眷属達がなんか言ってる!

 

そうですか、俺の周囲の男達は俺の影響を受けますか!

複雑な思いです!

 

俺は上空でヴァルブルガと戦う匙に叫ぶ。

 

「匙! そっちは任せたぞ!」

 

『おう! 任されたぜ!』

 

匙の黒いオーラが更に増大し、ヴァルブルガを攻め立てる!

この分なら向こうは大丈夫そうだ!

 

俺も匙に負けじと邪龍共を蹴散らそうとした時だった。

 

アーシアが声を張った。

 

「ファーブニルさんのオーラを感知しました! おそらく、ドライグさん達と共に神器の深奥から帰還されたのだと思います!」

 

そうか、ヴリトラが帰ってきたということは、他のドラゴン達も戻ってきたということ。

 

俺の宝玉も点滅した。

 

『今戻ったぞ、相棒』

 

おお、待ってたぜ!

 

それで向こうはなんとかなったのか?

 

『まぁな。詳しくは後で話す。ここを突破したら話し合おうか』

 

了解だ!

そんじゃ、とっとと片付けますかね!

 

アーシアもファーブニルを呼ぶために龍門を展開する!

 

「――――我が呼び声に応えたまえ、黄金の龍よ。地を這い、我が褒美を受けよ! お出でください! 黄金龍君! ファーブニルさん!」

 

召喚の呪文が終わり、魔法陣の輝きが強くなる!

 

黄金のオーラと共に現れたのは―――――クッキング帽を被ったファーブニルだった………!?

 

え………なんでクッキング帽!?

なんで、それを被ってるんだ!?

 

すると、この戦場に場違いな軽快なBGMが流れ出す。

それは、さながらお昼の料理番組を思わせるものだった。

 

ファーブニルが口を開いた。

 

『こんにちわ、ファーブニル三分クッキングにようこそ』

 

などと言って隣に調理場を出現させるファーブニル!

 

なんでキッチン!?

 

頭がおかしくなったのか!?

 

あ………元からか。

 

いやいやいや、それでもだよ!

何をしようってんだ、変態龍王!

 

ん………ちょっと待て。

 

ファーブニルの横に立つ女性を見て、俺は唖然となった。

 

「どうも~、助手のイグニスお姉さんです☆」

 

おいぃぃぃぃぃ!?

なんで、おまえもそこにいるんだ、この駄女神ぃぃぃぃぃ!?

そのエプロンどっから持ってきたぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

イグニスは微笑みを浮かべながらファーブニルに訊く。

 

「ファーブニル先生、今日のお料理は?」

 

『今日のお料理は「ディアボラ風アーシアたんのおパンティー揚げ」です』

 

「まぁ、それは美味しそうですね」

 

………言葉もない俺達を置いて、ファーブニルは材料が書かれたフリップを見せる。

 

『材料はこちら』

 

 

○ディアボラ風アーシアたんのおパンティー揚げ

 

材料

・アーシアたんのおパンティー 適量

・玉ねぎ一個 みじん切り

・ニンニク一個 みじん切り

・オリーブオイル

・赤唐辛子一本 みじん切り

・塩コショウ 少量

・唐揚げ粉 

 

 

………ダメだ、理解が追い付かねぇ。

 

何をしようとしてんだ、あんた達は!?

いや、変態なことが起ころうとしているのは分かるよ!

 

「?」

 

「??」

 

『?????』

 

疑問符だらけの俺達だが………見れば、量産型の邪龍すら首を傾げて見守っていた!

 

こんなことでこいつらの攻撃って止まるの!?

 

ファーブニルはキッチンに立ち、用意された材料を目を輝かせただけでみじん切りにしていく。

 

『まずはおパンティー以外の材料をみじん切り』

 

次にアーシアに言う。

 

『アーシアたん、おパンティーちょーだい』

 

「は、はい」

 

アーシアも応じるしかなく、ポシェットからパンツを一枚取り出してファーブニルに差し出してしまう!

 

『このように材料は産地直送です』

 

「それは素晴らしい。とっても新鮮で安全ですね。今ならアーシアたんの残り香もあるかも♪」

 

『その通りです。なので、おパンティーを一通りくんかくんかします。その後、唐揚げ粉をまぶします』

 

俺達の目の前でパンティーを嗅いで、粉をまぶしていく………。

 

その間にイグニスが鍋に油を入れて自身の炎で油を暖めていた。

 

「先生、油が暖まりましたよ」

 

『では、おパンティーを高温で一気に揚げてしまいましょう』

 

カラッと戦場に小気味のいい油の音が響いていく。

 

匙とヴァルブルガは激戦を繰り広げている中、それ以外の者達は完全に手が止まっていた。

 

量産型邪龍ですらも―――――うん?

 

なんだか、何匹かの邪龍が予想以上に食いついてうんうん頷いている!?

この料理番組は邪龍が魅了される何かがあるってのか!?

 

油に投入したパンツを頃合いを見て取り出すファーブニル。

 

黄金に輝く衣に包まれたパンツをファーブニルが皿に置き、イグニスが先程切った材料を盛り付けていく。

 

『できました。俺様式、「ディアボラ風アーシアたんのおパンティー揚げ」です』

 

 

パチパチパチパチ

 

 

食いつくように見守っていた邪龍達が拍手を送っていた!

 

「では、先生。お味の方を」

 

『はい。いただきます。ぱっくんちょ』

 

口に入れて咀嚼した後、奴は一言。

 

『―――――ありのままでいてほしい』

 

 

ぶわっ。

 

 

拍手を送っていた邪龍達が号泣している!?

 

なにこれ!?

何がどうなってこうなった!?

 

「流石はファーブニル先生、深い言葉ですね。この番組をご覧の皆さんも一度挑戦してみてください。それでは、また明日~」

 

イグニスがそう締めてファーブニルの料理番組は終わった。

 

と、同時に………。

 

「しっかりアーシア! 気をしっかり持つんだ!」

 

「………私は蟹になりたいです」

 

「待て、アーシア! それは蟹ではなく貝だったはずだ!」

 

「流石は期末テスト平均九十点台の優等生! ゼノヴィアは物知りね!」

 

倒れたアーシアをゼノヴィアが支え、イリナがゼノヴィアを称賛していた。

 

………ダメだ、全く理解できなかった。

 

いや、理解できない方が正解なのだろう。

 

ところで、ドライグ。

邪龍の動きが止まっているから聞いとくけどさ、歴代の白龍皇達は説得できたのかよ?

 

『………あ、ああ、ま、まぁな………』

 

おいおい、なんだその返しは………。

 

『そ、そうだな、一応、記録したものがあるからそれを見た方が早いだろう。………あまり薦められたものではないが………』

 

………とりあえず見ようか。

 

俺は瞑目して神器の内部に潜る。

 

すると、ドライグが記録してきたという映像を見せてくれた。

 

映像に晴れやかな表情の歴代白龍皇の方々が移る。

 

『こんにちは、現赤龍帝。我々は歴代白龍皇の残留思念だ』

 

おおっ、とっても気さくじゃん!

被害者の会を設立したとは思えないほどだ!

 

『君の起こした様々な行いに、我らは遺憾を感じざるを得なかった』

 

いや、ほんっとごめんなさい。

俺だけのせいじゃないけど、根本的な原因は俺だものね。

 

『それゆえ、我らは被害者の会を設立したのだが………どうやら我々は思慮が足りなかったようだ。――――我々はファーブニルにより、真理に行き着いた』

 

………ちょっと待て。

 

最後に超不安になる名前が出てきたんだが………。

 

その不安は直ぐに言葉となって俺の耳に入ってくる。

 

『――――そう、おパンティーの素晴らしさ』

 

………。

 

言葉を失う俺。

 

思考が停止した俺に彼らは悟りを開いたような表情で続ける。

 

『我らには女性の臀部に並々ならぬ関心を寄せるという共通点があった』

 

『しかし、白龍皇の手前、それは否定せねばならない事項だった。白龍皇に性癖などあってはならぬと』

 

『だが、ファーブニルは我々に見せてくれたのだ。――――至極の逸品、アーシアたんのおパンティーを』

 

そう言うと歴代の白龍皇達はアーシアのパンティーを広げた!

 

受け取ったのかよ!?

 

『現代の俗世にはこのように素晴らしい臀部を包む布製品があるのだと気づかされた』

 

『形状、役割、肌触り。そしてお尻に着けたときのヒップライン』

 

『この素敵な宝物によって、我らは自らを偽ってきたのだと衝撃を覚えた』

 

『被害者の会を設立し、君達に抗議してしまったことを詫びよう』

 

『そして、この言葉をもって和解の宣言としたい』

 

彼らはお互いの肩を抱き合い、爽やかな表情で言った。

 

 

『『『アーシアたんのおパンティー、くんかくんか』』』

 

 

………。

 

………………。

 

………ドライグ、ひとついいか?

 

『………なんだ?』 

 

これ、イグニスが行っても良かったんじゃないのか?

 

そのほうが比較的短時間で事が済んだと思うんだ。

 

『い、いや、それだけは勘弁してやってくれ。………ついでにアルビオンが縛られる』

 

そうか………。

どうしよう、泣けてきた………。

 

和解してくれたのは良かったけど、これはあまりにも………酷い。

 

今ごろヴァーリの心の中はどうなってんのかなぁ。

 

 

~そのころのヴァーリ~

 

 

「………」

 

『………』

 

「………アルビオン」

 

『………なんだ、ヴァーリ』

 

「………これはどういうことだ?」

 

『………』

 

二人の間に暫く沈黙が続いた。

 

 

~そのころのヴァーリ、終~

 

 

「しかし、邪龍を止めるとは………二天龍と龍王達は読めませんね」

 

聞き覚えのある声が俺達の元に届く!

 

赤い閃光が俺達の横を通りすぎて、ロスヴァイセさんがいる場所に降ってきた!

 

赤い閃光はロスヴァイセさんを包み込む。

 

光が止むと複製した赤龍帝の鎧を纏うユーグリットの姿が!

 

奴はロスヴァイセさんを抱き締めていた!

 

ロスヴァイセさんが抵抗しようとも強く掴まれているため、逃れることが叶わずにいた!

 

「ごきげんよう、『D×D』の皆さん。現赤龍帝」

 

「このタイミングで出てくるか、ユーグリット………!」

 

奴はロスヴァイセさんを抱き、ふざけたことを口にする。

 

「ロスヴァイセとアグレアスは我々『クリフォト』が活用させてもらいます。さて、アグレアスの転移も済みましたし、結界が解けた今、冥界の軍が来てしまうのも時間の問題。とっととおいとまさせてもらいたいところですが、そうはさせてくれないでしょうね」

 

「あたりまえだろうが! ロスヴァイセさんを放しやがれ!」

 

リアスも怒りを向ける。

 

「私達はあなたを捕らえてお兄さまとお義姉さまのもとに突き出さなければならない!」

 

リアスの言う通り、こいつはサーゼクスさんとグレイフィアさんのもとに突き出す!

グレイフィアさんはこいつのせいで、未だに容疑が晴れていない!

こいつを突き出せば、そんな容疑はすぐに晴れる!

 

ユーグリットはクスリと笑う。

 

「それは怖い。では、ささやかな抵抗はしましょうかね」

 

ユーグリットは指を鳴らす。

 

ふると、ファーブニルの料理番組によって手を止めていた邪龍達が号泣している我に返って、再び戦闘を開始する!

 

だが、俺の影響で仲間達は勇ましく立ち向かう!

 

木場も教会トリオもレイナも小猫ちゃんもそれぞれが力を発揮し邪龍達を前に戦っていた!

 

「イッセー、そっちはあんたとリアスさんに任せるわ」

 

「こっちは数が多いからね」

 

「私も頑張りますわ!」

 

うちの眷属達が俺の背後に立ってそう言う。

 

全く………頼もしいことで!

 

俺は三人と視線を合わせる。

 

「ああ………こっち(・・・)は任せるぜ? 多分、まだあるだろうからな」

 

「………でしょうね。それもひっくるめて引き受けるわ」

 

俺の言葉の意図が分かったのか、アリスは頷き、美羽とレイヴェルを引き連れて駆けていく。

 

それを確認した俺とリアスは改めてユーグリットに詰め寄った。

 

その時、ユーグリットの方に魔法の矢が飛んでいった!

 

矢を放ったのは―――――ゲンドゥルさんだった!

酷く疲弊した様子で、体をよろめかせながら手を前に突き出している。

 

「孫を………返してもらいます!」

 

「下で私達の仲間が暴れまわったのでしょう? それの対応で酷くお疲れのご様子と見受けいたしますが?」

 

頑と強い意思を向けるゲンドゥルさんにユーグリットは言う。

 

下でこいつらと通じていた魔法使いと一戦交えて力を使ってしまったのか。

裏切り者の魔法使いも相当な実力者。

 

ゲンドゥルさんも無茶をしたのだろう。

 

ロスヴァイセさんがゲンドゥルさんに叫ぶ。

 

「ばあちゃん! やめて! 力を使い果たして動けないんでしょう!?」

 

「………黙っていなさい。おまえを救うぐらいは出来ます!」

 

ユーグリットは呆れるように息を吐く。

 

「魔法を封じられ、疲弊したあなたでは私の相手は到底無理でしょう」

 

そう言うとユーグリットは足元に転移型魔法陣を展開する!

野郎、ロスヴァイセさんを連れて転移する気か!

 

しかし、そこへゲンドゥルさんが力を振り絞って渾身の矢をぶつけた!

 

瞬間、ユーグリットの魔法陣が乱れ、霧散してしまった!

 

「………転移封じ。中々、こざかしいことをしてくれますね」

 

ユーグリットは忌々しそうに漏らすと、ドラゴンの翼を羽ばたかせて逃亡しだした!

 

追おうとする俺とリアスにゲンドゥルさんはその場に崩れ落ちながら言った。

 

「………赤龍帝殿、リアス姫。………どうか、どうか、私の孫を、ロスヴァイセを助けてください。どうか、どうか………」

 

俺とリアスら笑みを浮かべて告げた。

 

「もちろんです」

 

「俺達の大切な仲間ですから」

 

俺はリアスと頷き合うと、ユーグリットの後を追った。

 

必ず助けるさ―――――絶対に。


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