ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

25 / 421
3話 幼馴染みと事件です!!

一日の授業と部活を終え、悪魔の仕事もなかったから、俺と美羽、アーシアの三人は家路についていた。

いつもなら、部長もいて四人で帰っているんだけど、会長と用事があるらしく、今日はいない。

 

「木場君、大丈夫かな?」

 

今日、木場と同じクラスの子に話を聞いたところ、木場はずっとボーッとしていたらしい。

名前を呼んでも返事をせず、いつもと違う雰囲気に先生も心配するくらいだったそうだ。

 

「まぁ、あいつにも色々あるんだ。今はそっとしておいてやれ」

 

「………ボク達、何か出来ないのかな?」

 

美羽にも一応、木場のことは伝えておいた。

 

というよりも、美羽は俺達に何かがあったことに気がついて俺に尋ねてきたんだ。

本当に鋭いよな。

それ以来、ずっと木場を心配している。

 

「残念だけど、今の俺達に出来ることはあいつを見守ることぐらいだ。今は何を言っても逆効果だろうしな」

 

「………そうなんだ」

 

「そんなに落ち込むなって。あいつは絶対に帰ってくるさ。俺達の仲間を信じろよ」

 

………あいつ、美羽にここまで心配させたんだ。帰ってきたらお仕置きだな

 

『相棒、いつからシスコンになったんだ?』

 

ドライグこそ、いつそんな言葉を覚えたんだ?

 

『………』

 

まぁ、冗談は置いといて、木場には早く帰ってきてもらわないとな。

あいつがいないとオカ研の調子が狂うしな。

 

「っ!」

 

家に着く直前―――――俺は言い知れない悪寒を感じた。

この感覚は以前にも体験したことがある。

アーシアも感じているようだ。

美羽が平然としているから、これは―――――。

 

「アーシア、美羽。少し急ごうか」

 

二人は頷き、歩くペースを上げる。

この方向は俺の家。

母さんの気を感じ取れるから大丈夫だということは分かる。

だけど、何があるか分からない以上、急いだ方が良いだろう。

 

そして、俺達が家の前に着いたとき、そこにいたのはローブを着て十字架を胸に下げている二人の女性。

二人と談笑する母さんの姿があった。

 

「………母さん、玄関前で何してるの?」

 

「あら、イッセーじゃない。三人とも、お帰りなさい。久しぶりに会ったものだから話し込んじゃって」

 

久しぶりってことは知り合いなのか?

 

俺は二人の女性に視線を向ける。

一人は栗毛、もう一人は青髪に緑色のメッシュが入っている。

二人ともかなりの美人さんだ。

そして、二人からは聖なるオーラが感じられる。

エクソシストかね?

 

「こんばんわ、兵藤一誠君」

 

栗毛の女性が話しかけてきた。

 

俺のことを知ってる?

えーと、誰だっけ?

 

「あれ? 覚えてない? 私だよ?」

 

自分を指差す栗毛の女性。

 

俺は腕を組んで記憶を探る。

うーん、思い出せねぇ。

こんな美人さんなら一度会えば絶対忘れないんだが………。

 

すると、母さんが一度家に戻ってから一枚の写真を持って来た。

その写真はあの聖剣が写っていたものだ。

母さんはそこに写る友達だった男の子を指差した。

 

「この子よ。紫藤イリナちゃん。この頃は男の子っぽかったけど、今じゃ立派な女の子になっていたから、私もビックリしたのよ」

 

な、なにぃいいい!?

ウソだろ!?

俺、完全に男の子だと思ってたぞ!

なんか、ごめん!

 

「お久しぶり、イッセー君。男の子と間違えてた?仕方がないよね、あの頃はかなりヤンチャだったからね。………お互い、しばらく会わないうちに色々あったみたいだね。本当、再会って何が起こるか分からないものだわ」

 

………気付いているな。

俺が悪魔になったことに。

 

「そうみたいだな」

 

本当、再会ってのは何が起こるか分かったものじゃないな。

まさか、あのヤンチャ坊主がこんな美人になるとは!

 

『そこじゃないだろ』

 

ドライグにツッコミを入れられた。

 

 

 

 

「無事で良かったわ」

 

あの後、聖剣の気配を感じた部長がいそいで帰ってきた。

とりあえず、俺達の無事を確認して安堵しているようだ。

 

「部活が終わってから、ソーナから聖剣を所持した教会の関係者が潜り込んできている、という話を聞いたの。どうやら、私達に交渉を求めているようなの」

 

「教会関係者が俺達に交渉を? 部長はどうするつもりなんですか?」

 

「とりあえず受けておくことにしたわ。わざわざ向こうから交渉してくるなんて、よっぽどのことでしょうから」

 

まぁ、そうだよな。

断って、下手に動かれるよりは話を聞いた方が良いよな。

それにしても、このタイミングで聖剣ときたか。

最悪だな。

 

「それで、交渉はいつ?」

 

「明日の放課後よ」

 

明日か………えらく急だな。

 

「木場が聖剣を前にして冷静にいられますかね?」

 

「そうね。正直言って、今の祐斗は堪えられないと思うわ」

 

だろうな、下手したらイリナ達に剣を向けかねないな。

いざという時は俺が何とかするか。

 

 

 

 

そして、次の日の放課後。

 

部室には美羽を除いた部員全員とイリナ、緑色のメッシュを入れた女性が集まっていた。

美羽には話が立て込みそうなので先に帰ってもらった。

部長とイリナ達が向かい合う形で座り、俺達は部長の後ろで控えている状態だ。

 

………木場は一人、俺達と少し離れたところで壁にもたれ掛かり、イリナ達を鋭い目付きで見ている。

 

「この度、会談を了承してもらって感謝する。私はゼノヴィアという者だ」

 

「紫藤イリナです」

 

「私はグレモリー家次期当主、リアス・グレモリーよ。それで、悪魔を嫌っている教会側の人達が私達悪魔に何の用かしら?会談を求めてくるぐらいだからそれなりのことがあったのでしょう?」

 

「簡潔に言おう。………教会側が所有しているエクスカリバーが、堕天使たちによって奪われた」

 

「な!?」

 

俺達は声を出して驚いていた。

 

エクスカリバーは大昔の大戦で折れて今は七つに分けられたと部長から聞いていた。

 

確か、一本だけ行方不明でそれ以外は全て管理していたらしいんだけど………。

 

「教会は三つの派閥に分かれていて、所在が不明のエクスカリバーを除いて6本の剣を2つずつ所有していた。その内、三本のエクスカリバーが盗まれた。残っているのは私の持つ《破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)》と」

 

「私の持っている《擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)》よ」

 

ゼノヴィアは布で巻かれた大剣、イリナは腕に巻かれている紐のようなものそれぞれ指差した。  

 

管理していた物の半分、盗まれてるじゃねぇか。

教会がよっぽどバカだったのか。

 

―――もしくは、手引きしたやつがいたのか。

 

「我々がこの地に来たのはエクスカリバーを奪った堕天使がこの町に潜伏しているという情報を掴んだからだ。我々はそれを奪取、もしくは破壊するためにここに来た」

 

「堕天使に奪われるくらいなら、壊した方がマシだもの」

 

「………それで、盗んだ堕天使の名は?」

 

部長はゼノヴィアにそう尋ねた。

確かに、教会から聖剣を盗むことが出来るほどの堕天使だ。

気になるのも仕方がない。

 

「《神の子を見張る者(グリゴリ)》の幹部、コカビエル」

 

ゼノヴィアの情報に俺以外の全員が驚いていた。

 

………コカビエルって誰だっけ?

前に教えてもらった気がするけど、忘れちまった。

幹部って言うくらいだから凄そうなのは分かるんだけど………。

 

あと、グリゴリって何?

 

『グリゴリというのは彼方より存在する堕天使の中枢組織だ。コカビエルはそこの幹部でな。かつての大戦を生き残った強者でもあり、聖書にも記されている存在だ。その力は最上級悪魔を越えている』

 

へぇ、そんなやつが出てきたのか。

かなりの大事だな。

 

「………それで、貴方達は私達に何を要求するのかしら?」

 

「簡単だ。私達の依頼―――いや、注文は私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いに悪魔が介入してこないこと。つまり、今回の事件で悪魔側は関わるなということだ」

 

ゼノヴィアの物言いに部長の眉がつり上がる。

 

「ずいぶんな言い方ね。私達が堕天使と組んで聖剣をどうにかするとでも?」

 

「悪魔にとって聖剣は忌むべき物だ。可能性がないわけではないだろう?」

 

部長の瞳に冷たいものが宿った。

かなりキレてるな。

まぁ、自分達の失態を棚にあげておいてこれだからな。

 

「もし、そちらが堕天使と手を組んでいるなら、私達はあなた達を完全に消滅させる。たとえ、魔王の妹でもね」

 

「そう。ならば、言わせてもらうわ。私は堕天使と手を組んだりしない。決してね。グレモリーの名にかけて、魔王の顔に泥を塗るような真似はしないわ」

 

部長がそう言い切るとゼノヴィアはフッと笑った。

 

「それが聞けただけで十分だ。私も魔王の妹がそこまで馬鹿だとは思っていない。今のはあくまで上の意向を伝えただけさ」

 

ゼノヴィアの言葉を聞き、部長は表情を緩和させる。

はりつめていた部屋の空気も少し緩くなった。

 

会話が終わり、イリナとゼノヴィアは立ち上がる。

 

「本日は面会に応じていただき、感謝する。そろそろおいとまさせてもらうよ」

 

「そう。お茶は飲んでいかないの?」

 

「いや、悪魔とそこまでうちとけるわけにもいかなくてね」

 

「ごめんなさいね」

 

ゼノヴィアは部長の誘いを断り、イリナも手でゴメンをしながら謝る。

すると、二人の視線はアーシアに集まった。

 

「兵藤一誠の家で出会った時、もしやと思ったが、アーシア・アルジェントか。こんな極東の地で『魔女』に会おうとはな」

 

ゼノヴィアの言葉にアーシアはビクっと体を震わせる。

 

―――――魔女。

 

この言葉はアーシアにとって辛いものだ。

イリナもそれに気づいてアーシアを見る。

 

「へぇ。あなたが噂になってた元聖女さん?悪魔を癒す力を持っていたから追放されたとは聞いていたけど………まさか、悪魔になっていたとはね」

 

「あ、あの………私は………」

 

二人に言い寄られ、対応に困るアーシア。

 

「安心しろ、このことは上には報告しない―――だが、堕ちれば堕ちるものだな。まだ、我らの神を信じているのか?」

 

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信じているわけないでしょう?」

 

呆れた様子でイリナはゼノヴィアに言う。

 

「いや、背信行為をする者でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。彼女からもそれと同じものが感じられる」

 

「そうなの? ねぇ、アーシアさんは今でも主を信じているのかしら?」

 

その問いにアーシアは悲しそうな表情で答える。

 

「………捨てきれないだけです。ずっと、信じてきましたから………」

 

それを聞いたゼノヴィアは布に包まれた聖剣を突き出す。

 

「そうか。ならば、今すぐ私達に斬られるといい。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

 

 

―――ああ、限界だ。

 

 

俺はアーシアに突き付けられた聖剣を掴み、無理矢理下に向けさせる。

 

これにはゼノヴィアも驚きを隠せないようだ。

 

「布に包まれているとはいえ、悪魔が聖剣に触れるとは………」

 

「そんなもん知るかよ。それより、随分と好き勝手言ってくれたな。………アーシアが魔女だと」

 

「そうだ。少なくとも今の彼女は魔女だと呼ばれるだけの存在ではあると思うが?」

 

こいつ………!

 

俺は怒りに奥歯を噛み、ギリギリ鳴らす。

 

部長が俺を制止しようとするが、俺は言わせてもらう!

 

「ふざけんなよ………! 聖女だと勝手に祭り上げ、悪魔を癒してしまえば今度は魔女だと勝手に追放する。おまけにはアーシアを斬るとか言いやがったよな。おまえら教会側の人間は身勝手すぎる」

 

「聖女と呼ばれながらも、神に見放されたのは彼女の信仰心が足りなかったからだろう?」

 

「だったら、随分と心の狭い神様なんだな」

 

「なんだと?」

 

俺の言葉にゼノヴィアは眉を吊り上げて反応する。

 

「だってそうだろ。悪魔にも優しくできるアーシアを認めない。それまで多くの人々を救ってきたにも関わらずだ。本当に優しい心を持っている者が救われない。そんな信仰は間違っている」

 

「………今の発言は我々、教会への挑戦か?」

 

「別に俺はおまえらと戦いたい訳じゃない。戦争なんざ嫌と言うほど体験してきたからな。………ただ、おまえ達が俺の仲間や家族に剣を向け、傷つけると言うなら俺も容赦はしない。その時は叩き潰す」

 

「ほう。一介の悪魔がそこまでの口を叩くか」

 

ゼノヴィアが俺に向けて殺気を放つ。

 

「イッセー、お止め―――」

 

部長が俺を止めようとしたときだった。

俺とゼノヴィアの間に木場が入る。

 

「ちょうどいい。僕が相手になろう」

 

強い殺気を発して、木場は剣を携えていた。

 

「誰だ、キミは?」

 

ゼノヴィアの問いに木場は不適に笑う。

 

「キミ達の先輩だよ。―――失敗作だったそうだけどね」

 

その瞬間、部室内に無数の魔剣が現れた。

 

 

 

 

 

 

俺達は旧校舎の前にある芝生の広場に来ていた。

 

先ほど、俺とゼノヴィアの口論に木場が飛び込んできて、一触即発の空気になったんだ。

 

木場が売った喧嘩をゼノヴィアが買い、今から殺し合いは無しの決闘が行われることになった。

 

俺の前にはイリナ、木場の前にはゼノヴィアがそれぞれ対峙するかのように立っている。

 

対戦相手が逆のような気もするが………。

元々、俺がゼノヴィアと言い争っていたんだし。

 

そして、俺達の周囲を丸ごと囲むように紅い魔力の結界が展開されていた。

人払いと、戦いの騒音を消すための結界だ。

結界の端では部員の皆が俺達を見守っている。

 

「では、始めようか」

 

イリナとゼノヴィアが白いローブを脱ぐと黒い戦闘服の姿となった。

体の線が浮き彫りになっており、ボンテージっぽくてエロい。

どちらも出るとこ出てて腰が引き締まっている。

二人ともスタイルが良いな。

 

ゼノヴィアは布を取り払いエクスカリバーを解き放つ。

イリナの方は腕に巻いていた紐が日本刀の形になった。

 

「イッセー、ただの手合わせとはいえ、聖剣には十分気を付けて!」

 

「分かってますよ、部長」

 

以前、聖剣使いと悪魔の一戦を録画した映像を見たことがあるけど、聖剣で斬られた悪魔は傷口から煙を立てていた。

 

斬られたら本当にヤバイんだと思ったよ。

斬られないようにしよう。

 

『相棒ならあの程度の小娘など、余裕だろう』

 

まぁ、油断せずに行くさ。

木場の方は既に神器を発動して周囲に魔剣を出現させている。

 

そして、木場は不気味に笑っていた。

 

「………笑っているのか?」

 

ゼノヴィアが木場に聞く。

 

「倒したくて、壊したくて仕方かなかったものが目の前にあるんだからね。嬉しくてね」

 

ゼノヴィアは周囲に展開された魔剣を見る。

 

「《魔剣創造(ソード・バース)》か。………聖剣計画の被験者で処分を免れた者がいると聞いていたが、もしやキミが?」

 

ゼノヴィアの問いに木場は答えず、ただ殺気を向けるだけだ。

 

あいつ、これは殺し合い禁止だってこと分かってんのか?

 

「兵藤一誠君!」

 

いきなり、イリナが話しかけてきた。

 

「な、なに?」

 

「再会したら懐かしの男の子が悪魔になっていたなんて、なんて運命のイタズラ!聖剣の適正を認められ、晴れて主のお役にたてると思ったのに!これも主の試練なのですね!でも、この試練を乗り越えることで私は真の信仰に近づけるんだわ!」

 

目をキラキラと輝かせながら、難易度の高い言葉を飛ばしてきたよ!

 

完全に自分に酔ってるよね!

実は楽しんでるとか!?

俺はなんて返せばいいんだよ………。

 

ドライグ、ヘルプ!

 

『・・・・がんばれ、相棒』

 

ちょっと、ドライグさん!?

 

「さぁ、イッセー君。私のこのエクスカリバーであなたの罪を裁いてあげるわ!アーメン!」

 

ドライグとそんなやり取りをしていると風を切る音と共にイリナが斬りかかってきた。

 

おいおい、本気で斬りかかってきてないか?

それが久しぶりに会った幼馴染みにすることかよ!

 

………まぁ、俺は覚えてなかったけど。

 

よし、イリナには悪いけど速攻で終わらせよう。

さっきから聖剣のオーラが当たってピリピリするし。

 

俺は突っ込んで来たイリナを最小限の動きでかわした後、手首を掴み、空いてる手で聖剣を叩き落とした。

 

「えっ?」

 

呆然とするイリナの足を払い、地面に倒す。

 

「これで勝負あったな」

 

「ウソ………」

 

余りに一瞬のことだったので、イリナは信じられないような表情をしている。

 

まさか、こうもあっさり自分が負けるとは思わなかったのだろう。

 

「格上相手にいきなり突っ込んでくるのは不味いぞ、イリナ。もっと相手の力量を測れるようにならないとな」

 

俺はイリナの頭をポンっと撫でた後、部長の元へと戻った。

 

「終わりました、ってどうしたんですか?」

 

何故かアーシアを除いた全員が呆けていた。

 

「いえ、余りにも鮮やかだったから………」

 

「流石はイッセー君ですわね」

 

「………やっぱりイッセー先輩は規格外です」

 

まぁ、修業の賜物ですよ。

 

「おケガはありませんか、イッセーさん」

 

「ありがとうアーシア。俺は無傷だよ」

 

やっぱりアーシアは優しいよな。

一度、教会の上の人間に聞いてみたい。

何故、こんなにも優しいアーシアを追放したのか。

 

とりあえず、俺の方は終わった。

残りは木場とゼノヴィアか。

 

「まさか、イリナがこうもあっさりと倒されるとは………。正直、彼を見くびっていたよ」

 

「次は君の番さ」

 

木場は二本の魔剣を握り、ゼノヴィアに迫る。

 

「燃え尽きろ!そして凍りつけ!ハアアアア!!!」

 

片方の魔剣から業火が生まれ、もう片方からは冷気が発生する。

そして、木場の魔剣とゼノヴィアの聖剣がぶつかり合い火花を散らす。

二人の剣士による激しい剣撃が繰り広げられる。

 

「中々のスピードだ。そして、炎と氷の魔剣か。だが甘いっ!」

 

ゼノヴィアの一振りが木場の二本の魔剣を粉々にした!

 

「君の魔剣など、私のエクスカリバーの相手ではない!」

 

ゼノヴィアは長剣を天にかざし、地面へ振り下ろした。

 

 

ドォォォォォォォン!

 

 

地面が激しく揺れて地響きが発生する。

 

聖剣を振り下ろした場所にはクレーターが生み出されていた。

 

「七つに分かれてもこの威力。全てを破壊するのは修羅の道か………だけど!」

 

木場は新たに魔剣を作り出す。

 

「この力は同志の無念の思いで作られたものだ!この力で僕はエクスカリバーを破壊する!」

 

再び、ゼノヴィアに向かっていくが、作った魔剣はことごとく破壊される。

 

破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)か。

 

その名の通り、破壊力に特化した聖剣のようだ。

あれだと、普通の魔剣では歯が立たない。

すると木場は手元に巨大な一本の剣を創り出す。

禍々しいオーラを放つ魔剣を木場は両手で構える。

 

「その聖剣の破壊力と僕の魔剣の破壊力!どちらが上か勝負だ!」

 

木場はそれをゼノヴィアに向けて振るう。

 

 

―――それは、木場が最もとってはいけない行動。

 

 

壊れたのは、木場の魔剣。

 

そして、木場の腹部に聖剣の柄頭が抉りこむ。

 

「ガハッ」

 

口から吐瀉物を吐き、木場はその場に崩れ落ちた。

 

ゼノヴィアは木場を見下ろしながらつまらなさそうに言う。

 

「残念だよ。キミの武器は多彩な魔剣とそのスピードだ。巨大な剣を持てばキミの長所を殺すことになる。そんなことも分からないとはね」

 

そう、巨大な魔剣は木場が持ってはいけないものだったんだ。

 

ゼノヴィアはそれを見抜いていたらしい。

 

木場は立ち上がろうとするが、ダメージが大きいせいでそれは叶わない。

 

ゼノヴィアは木場を一瞥した後、俺の方に歩み寄ってきた。

 

「さて、兵藤一誠。イリナを一瞬で倒したキミの強さには私も驚いたよ。是非とも手合わせ願いたいところだが、私達も忙しいのでな。またの機会にするとしよう。リアス・グレモリー、先ほどの話、よろしく頼むよ」

 

「ええ、分かっているわ」

 

ゼノヴィアは踵を返しイリナと合流する。

 

「それでは失礼するよ」

 

「イッセー君!今度は私が勝つからね!」

 

なんか、イリナが拗ねているような………。

 

負けず嫌いなのは昔と変わらないな。

 

こうして、二人はこの場を去っていった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。