サイラオーグさんと並んで体術の授業を終えた俺は他のメンバーの様子を見に行っていた。
まず視界に入ったのは匙だった。
「わかったかな? 人間や人間とのハーフには、こういう神器っていう悪魔とは違う特殊な能力を持った者がいるんだ」
グラウンドの隅で子供達に神器について教えているようだった。
右腕に神器である黒い蛇を幾重にも出現させて説明をしているようだ。
匙の神器実演の後は講師として来ているバアル眷属のメンバーが話を始める。
バアル眷属の神器所有者兼魔法剣士のリーバン・クロセルさんだ。
ここでの匙の授業サポートは神器の実演らしい。
役目を終えた匙は俺の方にやって来る。
「お疲れさん」
「ああ、そっちもな。体術教えてたんだろ?」
「まぁ、簡単なやつだけどな」
「そっか」
俺達は互いに受け持った授業内容や子供達の反応を話し合いながら校舎の方へと向かっていく。
話しているときの匙は楽しげだった。
匙は学校を誇らしげに見上げながら呟く。
「…………なぁ、兵藤」
「ん?」
「…………子供達がさ、俺を『先生』って呼んでくれるんだ。…………俺を『先生』って。俺なんてまだまだなのにな」
少し恥ずかしそうにしているが、匙は嬉しそうだ。
こいつの夢はレーティングゲームの学校で先生になること。
そのためにも、いつかは教員免許を取得したいと言っていた。
「兵藤、俺、ここで子供達の対応をしてきて再認識できたよ。俺は絶対に『先生』になる。まずは中級悪魔にならなきゃいけないけどさ。それでも、絶対になるぜ」
「その意気だ。なーに、おまえなら中級なんて直ぐさ。おまえなら出来る」
俺が匙の背中を叩きながら言うと、匙は気恥ずかしそうに頬をかいた。
と、そんな俺達の前方に何やら賑わっていた。
そこにいたのはアーシア達教会トリオ。
「きんいろドラゴン出して! きんいろドラゴン!」
そう口々に言うのはアーシア達に群がる子供達だ。
「はい、いいですよ」
アーシアも微笑みながらそれに応じ、召喚の呪文を唱える。
黄金の魔法陣から現れるのは黄金の龍王。
大きなドラゴンの登場に子供達の興奮は高まっていく。
アーシアはファーブニルに言う。
「ファーブニルさん、子供達と遊んでくれますか?」
『いいよ。けど、俺様、
アーシアのお願いに変態はそう返した。
最近、あの変態が設定したパンツポイントってのは、あいつが働くために必要なエネルギーらしい。
アーシアのパンツ成分で構築されており、足りないと力が抜けていくと言う…………。
うーん、この場で滅ぼしてやろうか!
「パ、パンツですね…………分かりました」
赤面しながらも頷くアーシア!
子供達の目の前であげちゃうの!?
アーシアはポシェットからパンツを取り出してファーブニルに与えてしまう!
ファーブニルはパンツを―――――頬張り始めた。
それを見て子供達は爆笑してる。
「すっげぇ、パンツ食べてる!」
「アハハハ! おパンツドラゴン!」
うわぁぁぁぁぁ!
子供達の中でまた新しいドラゴンが誕生してしまった!
おっぱいドラゴンの次はおパンツドラゴンかよ!?
「…………うふふ、なんだか、最近、ひどく疲れるんです」
ああっ、アーシアが倒れ込んでしまう!
間一髪のところでゼノヴィアが受け止めるが、目が死んでいる!
ゼノヴィアとイリナが叫んだ。
「アーシア! 君はよくやっているぞ!」
「そうよ! おパンティーが大好きなドラゴンで体験学習というのも子供達の良いお勉強になるわ!」
うぅ…………子供達のために自らを犠牲に…………!
ゼノヴィアの言う通りだ!
アーシアは良くやっている!
俺、後でアーシアを一杯甘えさせてあげよう!
俺が涙している横では、
「…………ヴリトラがファーブニルは変わったってよく言うんだよな」
▽
校舎の中を進むと、とある教室から子供達の元気な声が聞こえてきた。
見れば、子供達が廊下に溢れるほど大盛況になっているようで、親御さん達まで立ち見しているほど。
「ここは魔法の学科だよ。魔法も人気のある科目でな。レーティングゲームの授業と並んで希望者が多いから、この二つは回数と講師を増やして対応するほどなんだ」
匙が教えてくれた。
この大盛況振りを見るに魔法は子供だけでなく、大人も興味津々って感じなのだろう。
人の隙間から覗き見してみると、
「ロスヴァイセ先生!」
「見て見て! 火が出たよ!」
子供達に囲まれるロスヴァイセさんの姿。
その近くには美羽もいて、ロスヴァイセさんのサポートをしているようだ。
子供達は簡単な魔法を覚えて、実際に放てているようだ。
あちこちで小さな火の玉が飛び交ってる。
「人に向けちゃダメだよー」
と、美羽が微笑みながら注意している姿は中々に微笑ましい。
魔法が使えるようになってはしゃぐ子供達。
そんな中で、一人離れた場所で必死に手を突き出して念じている男の子がいた。
上手く発動せず、苦戦しているようだ。
目にはうっすら悔し涙まで浮かべている。
あの男の子には見覚えがある。
名前は確か…………リレンクス。
おっぱいドラゴンのイベントがあった時に会場に入れず泣いていた子だ。
そっか、あの子もこの学校に来ていたんだな。
ふと背後に気配を感じる。
振り向くと、そこにいたのは―――――ロスヴァイセさんのお祖母さん、ゲンドゥルさんだった。
「こちらに来ていたんですね」
「ええ。着いたのはつい先程ですが。彼氏さんも授業を行っていたようですね」
「まぁ、簡単なものを少しだけ…………。でも、子供達も頑張ってました」
俺がそう言うとゲンドゥルさんは微笑みを浮かべて頷いてくれた。
こちらも気配を察したのか、ロスヴァイセさんがこっちにやって来た。
「ば、ばあちゃ…………お祖母さん、来ていたのですか」
「ここで特別講師をする約束だからね。明日の集会前にいい気分転換にもなります」
明日は例の魔法使いの集会だったな。
そこ前にここで講義を行うってことなのだろう。
その時、教室内に緑色のオーラに包まれた小さな妖精が出現し始めた。
妖精は子供達の間を軽やかに飛び回ると、教壇の上に降りていく。
その教壇にはゲンドゥルさんが立ち、妖精を優しく撫でた。
一瞬で子供達の視線を集めてしまう。
ゲンドゥルさんはそれを確認すると、優しい笑みを浮かべながら静かに口を開く。
「皆さんは魔法がどのように生まれたか知っていますか?」
ゲンドゥルさんの問いに一人の子供が元気よく挙手して答える。
「占いや呪術だって聞きました!」
「そう、その通りです。魔法は占いやおまじないから誕生したのです。こんなことが知りたい、あんなことになったらいいな、あの人のために、誰かのために、たくさんの人を助けられる方法が欲しいと願った術者達が作り上げたものなのです」
ゲンドゥルさんの語り口は耳にすんなり入ってくるもので、この場にいる全員が聞き入ってしまっていた。
「現代の魔法には様々なものがあり、複雑なものです。ですが、これだけはまず最初に覚えておいてほしいのです。―――――どのような魔法にも必ず誰かの役に立ちます。この世に意味のない魔法なんてないのですから」
にっこりと慈愛に溢れた笑顔。
…………この世に意味のない魔法なんてない、か。
「良い言葉だね」
いつの間にか横に来ていた美羽がそう呟いた。
俺も静かに頷く。
ふとロスヴァイセさんの方に視線を向ければ、微笑んでいるようにも見えた。
「彼女の中でも何か変化があったのかもしれないわね」
と、これまたいつの間にか実体化していたイグニスがそう言った。
今回の手伝いがロスヴァイセさんの中で何か一つの答えが見つかれば良いな。
それからもゲンドゥルさんの講義は続いていく。
子供も大人もうんうんと頷きながら意欲的に取り組んでいる。
そんな授業を見守っているとイグニスが、
「…………うーん、私も授業してみようかしら」
「…………一応、聞いておくけど…………どんな?」
「イグニス先生の小学生から始める性教育。初級はディープキスからね」
「匙、どうよ?」
「却下に決まってんだろ!? つーか、ツッコミはおまえの役目だろ!?」
「俺ってそういう認識だったの!?」
「ちなみに上級は――――――」
▽
その日の深夜。
一日のプログラムを終えて、グレモリー、シトリー、講師の方々と夕食タイムを取り、明日の日程を確認を済ませた後で個別の自由時間となった。
俺達が泊まるのは学校の敷地内にある学生寮となる建物。
内部は整備が整っていて、各室の備品も良いものばかり。
共同の大浴場まで完備してある。
俺は男子寮の大浴場に一人浸かっていた。
「ふぃー。なんとか、終わったか…………」
体術の講義の後は、各授業のサポートに回っていたわけだが…………思ってた以上に大変だった。
子供に教えるのって中々に難しいもので、どうすれば上手く伝わるのか、結構頭を使うんだよね。
ただ、子供達も熱心に聞いてくれるので、こちらも何とかしたいと思えるわけで…………。
人に教えることって、やりがいのあるものだと思えたかな。
今後、俺に何が出来るか分からないけど、可能な限り手伝えたらと思う。
今日、サポートに回っていたメンバー全員が同じ意見だったりする。
…………イグニスの性教育は無しだけどね。
つーか、性教育とかレーティングゲーム関係ないし!
そんな風に思っていると浴場の扉が開く音が聞こえてきた。
木場かキャスパー、匙辺りかと思ったんだが…………。
「…………イッセーくん、ですか?」
ロスヴァイセさんだったぁぁぁぁ!?
ちょ、え、えええええ!?
女子の風呂は女子寮にあったはず!
家の時みたいに偶然バッタリというわけではないだろう!
ということは、ロスヴァイセさんは態々、男子風呂に入ってきたことになる!
あのロスヴァイセさんがまさか、そんな…………。
色々な思考が張り巡らされる中、ついついそのお体に目が行ってしまう!
スレンダーなのに豊かなおっぱい!
細すぎるということもなく、ラインが整った美脚!
うーん、ロスヴァイセさんのお体は神秘的なものを感じさせるな!
いや、待てよ…………ヴァルキリーは半神。
神々しいお体でもおかしくはないのか…………。
うーむ、これはずっと眺めていたい!
そんか気持ちで一杯になりながらも俺は口を開いた。
「ここ…………男子用の風呂ですよ? 女子用は女子寮にあると聞いてるんですけど…………」
「そ、そのはずだったのですが…………女子寮のお風呂のお湯が出なくなったとのことで、一時的に男子寮のお風呂を使うように言われまして…………。今なら誰も入っていないと聞いたのですが…………」
なるほど、女子寮の風呂が壊れましたか!
これは他の女子も入ってくるのではなかろうか!
つーか、俺、普通に使ってます!
誰だ、今なら誰も入ってないとか言った奴!
おかげで素晴らしいものが見れちゃったじゃないか!
ありがとう!
まぁ、でも、こういうことには厳しいロスヴァイセさんだ。
出ていくかも――――――なんて思っているとロスヴァイセさんは体を洗い始めた!
「…………時間もありませんから、素早く入ってしまおうと思います。あまり、じろじろ見ないでくださいね?」
と、ロスヴァイセさんは恥ずかしそうにしながらもシャワーを浴びていく。
体を洗い終えたロスヴァイセさんは、そのまま浴槽に入り、俺と少し離れたところに。
「め、冥界のお風呂も悪くないですね」
「そ、そうですね」
ロスヴァイセさんと二人で入るなんて初めてだから地味に緊張するな…………。
「魔法の授業、盛況でしたね」
「ええ。人手が足りなくて、中々休めませんでした」
「でも、子供達は皆楽しそうでしたよ?」
「それはそうなのですが…………一人だけ、初歩の魔法が発現できない子がいまして、それが気になってしまいました」
リレンクスのことか。
あれから、美羽やロスヴァイセさんが教えていたみたいなんだが…………どうにもコツが掴めず、苦戦を強いられていたようだった。
「…………」
「…………」
で、始まりました無言タイム。
そういや、アリスと初めて混浴した時もこんな感じだったな…………。
これはなんとかして話題を探さねば…………!
えーと…………あ、そうだ。
「ひとついいですか?」
「なんでしょう?」
「ロスヴァイセさんの論文のことです。どうして666について調べようと思ったんですか?」
「…………イッセーくんもご存じでしょうけど、トライヘキサは伝承のみの存在。未だ発見には至っていません。けれど、同じ黙示録に記されたグレートレッドは存在します。だから、調べてみたくなったんです。見つけることは到底無理でした。各神話の神々でも見つけられなかったのですから、当然と言えばそうなのですが…………。でも、トライヘキサがどんな存在なのかぐらいは知りたくて、666や616という数字を調べ始めたんです」
先生も言ってたな。
トライヘキサは各勢力から「いるかもしれない」程度の認識で、本当に存在するのか、存在するならどこにいるのか。
それは長く議論され続けていたことだと。
ロスヴァイセさんは苦笑する。
「…………答えなんて出なかったんですけどね。…………ですが、解答出来なかったあの計算、術式の組み方に彼らが欲する答えが隠されていたのかもしれません」
実はオーフィスにもそれとなくトライヘキサについて訊いてみたんだ。
グレートレッドを求めるオーフィスなら何か知ってるかもしれないと思ってね。
しかし、オーフィスは首を横に振った。
オーフィスでもトライヘキサについては知らなかったらしい。
でも、オーフィスが知っていれば旧魔王派や英雄派はトライヘキサについて訊きだして自分たちの武器にしていただろうし…………。
オーフィスの分身を連れているリゼヴィムもトライヘキサは聖杯に潜ることで発見できたって言ってたしな。
ロスヴァイセさんはぽつりと漏らした。
「イッセーくん…………。もし、私が彼らに利用されそうになったら…………私を殺してくれますか?」
「は…………?」
あまりに唐突過ぎる頼みに俺はつい聞き返してしまう。
「…………彼らに利用されて、仲間に、世界に迷惑をかけるぐらいなら、私は死を選びます。私なんかのせいで、皆が死ぬなんて耐えられませんから…………」
悲哀に満ちた表情…………それでも、意志は固そうな瞳。
俺は無言のまま、ロスヴァイセさんに近づき口を開いた。
「…………本気で言ってるんですか?」
「本気です。皆に迷惑をかけるぐらいなら、私が――――――」
「――――――ふざけんな」
ロスヴァイセさんの言葉を遮って俺は一言そう言った。
とても低く、怒気を含んだ声で。
突然の声音の変化に伏せ気味だったロスヴァイセさんは顔を上げて戸惑った表情で俺を見てくる。
俺はその声音のまま続けた。
「死を選ぶ? 軽々しくそういうこと言うな。――――――次言ったら、マジで怒るぞ」
「軽々しく口にしたつもりは…………! それに、私があのユーグリット・ルキフグスに捕えられたら、きっと利用されて――――――」
「その時は俺が全力で奪い返す。利用なんてさせない」
「そんなに都合よく…………」
「だぁぁぁ! もうっ! いいか、よく聞け!」
俺は
「俺はおまえを連れていかせないし、ユーグリットの野郎は俺がぶちのめす! 利用もさせない! 都合が良かろうが悪かろうが、ロスヴァイセは必ず守りきってみせる! 約束だ! だから、死ぬなんて言葉、二度と言うんじゃねぇ! いや、言わせねぇ!」
語気を荒げる俺。
一通り叫んだ後、深呼吸して息を整える。
最後に深く息を吐いた後、笑みを浮かべた。
「この間、ゲンドゥルさんに言ったこと、あれは本心だ。俺は守ると決めたものは守りきる。おまえも必ず俺が守る。俺は曲がりなりにも勇者とか英雄とか言われてきた男だぜ?」
それに、
「おまえについているのは俺だけじゃない。仲間もいる。仲間に迷惑をかける? 迷惑を掛け合うのも仲間の特権だぜ。世界に迷惑をかける? その時は全員で尻拭いしてやるさ! だからさ―――――信じろよ俺を、仲間を」
そこから更に念を押すように言った。
「もう一度言う。ロスヴァイセは連れていかせないし、利用もさせない。だから、死ぬなんて言うな。おまえが死ねば、皆泣くぜ?」
グレモリー眷属は仲間想いなやつばっかりだからな。
特に眷属を大切にしているリアスがさっきの発言を聞けば、自分を責めてしまうだろう。
俺だって仲間が死ぬ姿なんてもう見たくないしな。
「あ、あの…………イッセーくん」
「ん?」
「…………そろそろ、離してくれますか? 流石に…………恥ずかしい、です」
そう言われて俺はハッとなる。
俺、いつの間にかロスヴァイセさんを抱き締めてたぁぁぁぁぁ!?
俺は慌ててロスヴァイセさんを離して、素早く後ろに下がる!
なんか調子に乗って…………色々、恥ずかしい!
ロスヴァイセさんも顔真っ赤だよ!
「…………初めて、イッセーくんに呼び捨てされましたね」
「あ、いや、その…………す、すいません」
「いえ、別に…………学園では生徒と教師という立場ですが、実際はイッセーくんの方が歳上ですし…………」
うん、そうなんだけどね………。
普段の立場もあるし…………ロスヴァイセさんの方が大人っぽいから。
リアスと朱乃に関してはすんごく甘えてくるから、もう気にせずに呼び捨てだし、敬語もなしだ。
まぁ、普段の学園生活では先輩として見ているけど。
ロスヴァイセさんは顔を赤くしながら、大きく息を吐いた。
「ありがとう、イッセーくん。少し気が楽になりました」
ロスヴァイセさんがそう言った時だった。
再び浴室の扉を開く音が聞こえてきた。
「まさか女子のお風呂が壊れるなんてね」
「ええ、ですがこれでイッセーくんのお背中を流すことができますわね。脱衣所に服がありましたし」
と、リアスと朱乃を先頭にオカ研女子部員が全員入ってきたぁぁぁぁ!
歩く度にぶるんぶるん揺れるおっぱい達!
うーん、絶景なり!
女子達の登場に心踊らせている俺だが…………
「あ、ロスヴァイセさんだ。ロスヴァイセさんも入ってたんだね。気づかなかったよ」
「「「え?」」」
美羽の発言に女子全員が硬直する!
「ろ、ロスヴァイセ!? あなた、二人きりでイッセーと混浴を!?」
「り、リアスさん!? ち、違います! これは偶々――――きゃっ!」
慌てて立ち上がったものだから、ロスヴァイセさんが足を滑らせてしまう!
ちょうどその後ろには俺がいて――――――
「のわっ!?」
「ひゃあ!? い、イッセーくん!? どこを触っているのですか!?」
「わざとじゃないです! 不可抗力です!」
「ちょ、そこは…………あっ、んんっ…………だ、ダメですぅ…………!」
浴槽の中で揉みくちゃになる俺とロスヴァイセさん!
そんな光景に皆は―――――――
「「「私も一緒に入る!」」」
ドボンと全員が浴槽に飛び込んで来たのだった。
▽
お風呂でも大忙しだった俺。
風呂を上がり、用意された部屋に戻ったところでようやくゆっくりできることに。
「今日はお疲れさま。気持ちいい?」
「うん、美羽の太ももの寝心地は良いなぁ」
はい!
美羽に膝枕してもらってます!
この柔らかさ、この弾力。
加えて美羽の笑顔が俺を心から癒してくれる。
あぁ、美羽に頭を撫でられるのも相変わらず気持ちいい。
「いつもは甘えさせてもらってるからね。たまにはボクにも甘えてくれると嬉しいな」
なんてことまで言ってくれるんだ。
もうね、幸せだわ。
ついつい太ももに顔を埋めたくなってしまう。
俺が美羽の太ももに頬をスリスリすると、
「やんっ。お兄ちゃんのエッチ」
うーむ、反応も可愛いなぁ。
やっぱり、こうして兄妹だけの時間を作ることって必要だよね。
寝るまでの間だけでも、この癒し空間に包まれていたいぜ!
と、ここでとあることを訊いてみる。
「なぁ、この間のことだけどさ。秘密なのか?」
この間のことというのは、母さんに呼び出された美羽が号泣しながら帰ってきたことだ。
詳しいことは教えてくれなかったんだけど、どうやら、あの涙は嬉し泣きだったらしい。
まぁ、母さんが美羽を傷つけるようなことをするとは端から思ってなかったけどね。
それで、気になった俺は母さんと美羽に何度か訊いてみたんだけど…………。
「まだ秘密かな。お母さんにもそう言われたし」
「…………秘密にされると気になるんだよなぁ」
美羽があれだけ号泣してたのも気になる理由の一つなんだけど。
「いつ教えてくれるんだ?」
「お母さんしだいかなぁ。もう少し時間かかるって言ってたしね」
時間がかかる…………?
母さん、何してんだろ?
訝しげに首を傾げる俺だが、美羽は微笑んで言う。
「まぁ、もうちょっとだけ待ってね。お兄ちゃんもきっと驚くと思うから」