ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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6話 契約結びます!

ゲンドゥルさんが兵藤家を訪れた翌日。

 

俺は上階にある空いている部屋でルフェイとの最終的な契約の手続きをしていた。

 

契約に関してはこれまでサポートしてくれたレイヴェルが間に入り、書類やら専用の魔法陣やらを用意してくれている。

本当にレイヴェルには世話になっているよ。

 

「ここまでスムーズにこれたのもレイヴェルのおかげだな」

 

「いいえ、良い契約相手に恵まれたからこそ、これほどまでにスムーズに事が進んでいるのです」

 

レイヴェルにそう評価され、ルフェイはもじもじと恥ずかしそうにしていた。

 

契約書となる悪魔文字が書かれた書面。

そこに自身の血で名前を書く。

 

ナイフで指を軽く切って、悪魔文字で署名。

ルフェイも同様に自身の血で名前を魔術文字で書いていった。

これで書類の面は完了。

 

次に俺とルフェイは動物の血で描いた契約用魔法陣の中に入り、契約のための呪文を互いに口にしていく。

 

魔法陣が怪しく輝きを放ち始める。

 

「我、ルフェイ・ペンドラゴンの名において、グレモリー眷属が『兵士』兵藤一誠に願う。我と盟約を結びて、盟友となれ」

 

今回の魔法使いとの契約活動は赤龍帝眷属の『王』としてではなく、リアス・グレモリーの眷属『兵士』として進んでいたからね。

ルフェイとの契約もリアスの眷属として行われる。

 

俺も暗記した呪文を口にする。

 

「リアス・グレモリーが眷属『兵士』兵藤一誠の名において、汝、ルフェイ・ペンドラゴンと盟約を結ぶことをここに誓う。まぁ、よろしく頼むよ」

 

俺が微笑みながら手を差し出すと、ルフェイもニコリと可愛い笑顔で手を握ってきた。

 

「はい、よろしくお願いします」

 

俺とルフェイの額にグレモリーの紋様が浮かび、役目を終えた魔法陣の輝きと共に消えていく。

 

「これで終わりなの?」

 

あまりに簡単に終わってしまったので、一応、レイヴェルに確認を取ってみる。

 

「はい、よろしいですわ。これでイッセーさまとルフェイさんはお仕事のパートナーです」

 

書類審査の時はけっこう苦労したが、決まるときは一気に行くもんなんだな。

 

まぁ、契約を結んだと言ってもなぁ。

 

「仕事のパートナーって具体的に何をすれば?」

 

契約を結んだし、さっそくパートナーらしく魔法の研究…………ってわけでもないだろう。

 

レイヴェルが答える。

 

「それはルフェイさん次第ですわ。今から実験をされるのでしたら、今からイッセーさまと作業に取りかかりますし、明日に実験をされるのでしたら、明日イッセーさまを呼べばいいだけです。今回は五年契約です。五年の間に良い成果をみせてくだされば、イッセーさまにとっては万々歳となりましょう」

 

「あ、やっぱりそんな感じなのな」

 

今はとりあえず契約を結びましたってことでいいんだな。

 

五年の間でルフェイと魔法研究の成果を出せば良いんだけと…………どうすっかな。

俺って魔力も砲撃以外で使うことってほぼ無いし、魔法の術式もよく知らないんだよね。

 

そのあたりも今後でルフェイと話し合っていくか。

 

すると、部屋の扉がノックされ開かれた。

 

「契約は終わったみたいだね。お茶淹れたよ」

 

美羽がお茶を淹れて持ってきてくれたようだ。

 

俺達は端に寄せていた折り畳み式のテーブルを組み立てて、その周りに座る。

美羽が紅茶の入ったティーカップを置いていってくれた。

 

俺はティーカップに口をつけると美羽に言う。

 

「良いタイミングだったな」

 

「うん。ずっと待機してたからね。かれこれ十五分くらい」

 

「マジっ!?」

 

「うふふ、冗談だよ。時計見て、ぼちぼちかなって思ったから」

 

こんにゃろぉ~、兄をからかって楽しんでるな!

なんて悪い妹だ!

 

だけど、美羽なら許せちゃう!

可愛いもん!

妹万歳!

撫で撫でしちゃうぞ!

 

そこからは俺とレイヴェル、ルフェイ、それから途中参加の美羽の四人での会話となった。

 

いくつか話しているうちにルフェイが言った。

 

「しかし、ロスヴァイセさんのお祖母さまがかの高名なゲンドゥルさまだとは思いも寄りませんでした」

 

「有名なんだよな?」

 

「はい、北欧に伝わる魔術、特にルーン式、精霊魔術ガンドル式、降霊魔術セイズ式の使い手として有名です」

 

レイヴェルが続く。

 

「ロスヴァイセさんはルーン式に『ヴァルキリー』が独自に編み出したという術式系統を組み込んで使っていましたわね。そこにご自身で考案した術式を取り入れて使用していると仰っていましたわ」

 

「それ、ボクも聞いたよ。ボクはこっちの世界の魔法に関しては勉強中だから、ロスヴァイセさんに教えてもらってるんだけど、結構オリジナルが入っているみたいなんだ」

 

「でも、オリジナルを組み込むのって美羽もやってるだろ?」

 

俺が訊くと美羽は頷きながら続ける。

 

「まぁね。多分、こっちの世界の魔法使い達も元になるベースの術式に独自の術式を組み込んで改良したり、発展されたりしてると思うんだけど…………オリジナルを組み込むにもそれなりの技量がいるんだよ?」

 

「というと?」

 

「浅いものならともかく、長い時間をかけて編み出された魔法は凄く完成度が高いものなの。すっごく頭の良い人達が一生をかけて、構築してきたものだからね。それを簡単に改良できると思う?」

 

「そりゃ難しいな。下手すれば改悪になるんじゃないのか?」

 

「その通り。それで、ロスヴァイセさんの術式なんだけど、北欧魔術の本に載ってたものよりも、ずっと計算されていて、無駄のない術式になってるんだ。簡単に言えば超低燃費」

 

美羽の言葉にレイヴェルが続く。

 

「黒歌さんも言ってましたわ。ロスヴァイセさんの術式は魔法力の燃費を極限にまで抑え、それでいて効率の良い攻防力向上を追求したものだと。人間界のゲームで例えるなら本来、消費MPが10の魔法をMP5で、しかも威力はそのままに放っている、と」

 

黒歌のやつ、RPGで例えるとは…………。

 

しかし、分かりやすい。

 

いつも魔法のフルバーストをばかすか撃ってるロスヴァイセさんだが、あの一つ一つが計算し尽くされたものだったということか。

そして、ロスヴァイセさんはそれを成せる才女だと。

 

あれ…………それじゃあさ。

 

「美羽の魔法って完全オリジナルあったよな?」

 

「あるよ? 一から構築したやつがいくつか。あれもね、まだまだ改良の余地はあるんだ。威力も燃費も良いんだけど、発動までに時間がかかるから…………そこをどうしようか考え中。ルフェイさん、なにか方法ないかな?」

 

「異世界の術式を読みきれるか分かりませんが、見てみましょうか?」

 

そこから美羽とルフェイは互いに術式を開いて、あーだこーだと魔法論議に入ってしまった。

第四項目が~とか、なんちゃら術式を入れてみては~とか言ってるが全然理解できん。

 

話のレベルが高すぎて着いていけない…………。

 

俺どころかレイヴェルもちんぷんかんぷんといった表情で苦笑いしてるし…………。

 

うん、ここにいる二人の魔法使いも負けず劣らずの才女だったということか。

 

話が進むなかでふと思うことがある。

 

ロスヴァイセさんってゲンドゥルさんと同じ魔法を習得していないんだろう? 

ルーン式やガンドル式はともかく、セイズ式って使っているところを見たことがない。

 

ルーン文字や精霊についてはロスヴァイセさんに習ったこともあるけど…………。

 

お祖母さんがそれだけの使い手で、お祖母さんに憧れてヴァルキリーになったと聞いたから、てっきり同じ魔法を使うものだと思ったんだけどね。

 

そんなことをかんがえていると、レイヴェルがコホンと咳払いした後に言ってくる。

 

「ところでイッセーさま。この後はロスヴァイセさんとお出かけをされるそうですわね」

 

そう、ルフェイとの契約が済んだので、この後はロスヴァイセさんとお出かけ――――デートをすることになっている。

ロスヴァイセさんも退くに退けなくなり、昨日の今日というドタバタで決まることに。

 

お祖母さんがこの町にいる間に成果を見せつけてやりたいという思いと破れかぶれでお願いしてきたんだ。

 

まぁ、断る理由もないし特に用事もなかったから、俺は別に良いんだけどさ…………他の女性陣が、ね?

 

美羽が言う。

 

「ロスヴァイセさんとのデートも良いけど、リアスさんと朱乃さんのこともキチンと見てあげてね? …………あの二人、すっごく焦ってるから」

 

「う…………うん」

 

美羽、アリス、レイナ、そしてレイヴェル。

俺が色んな女の子と関係を持ち始めてからあの二人の調子がどうにも…………。

 

レイヴェルが頬を染めながら、恥ずかしそうに呟く。

 

「え、えっと…………今になればリアスさま達を差し置いて大胆だったかな、と…………。申し訳ないような気がします…………」

 

「でも、後悔はしてないんでしょ?」

 

美羽の問いにレイヴェルはずいっと前に乗り出しながら答えた。

 

「それはもう! 後悔なんてするはずがありませんわ! むしろ、私は幸せ者だと感じているぐらいです! あの時のイッセーさまはいつも以上に優しくて、私を…………あっ」

 

自分が何を言おうとしているのか気づいたレイヴェルは勢いを失い、まるで風船が萎むかのように小さくなった。

顔なんて耳まで真っ赤に。

恥ずかしさで一杯なのか、涙目でこちらをチラッと見てくる。

 

うん、可愛い。

可愛いから撫で撫でしちゃう。

 

その光景に美羽は微笑み、ルフェイは苦笑を浮かべていた。

 

美羽が言う。

 

「とにかく、リアスさんと朱乃さんもちゃんと見てあげてね? あの二人、強引そうで案外押しに弱かったり、ここぞと言う時にタイミングが悪かったりするから」

 

「…………よく見てるな」

 

「もちろん!」

 

「何がもちろんなのかは分からないけど…………まぁ、了解だ。今度、二人をデートにでも誘ってみるよ」

 

そうだな…………温泉旅行に行く際、スレイプニルに乗りたがってたし、タンデムでドライブに行ってもいいな。

 

これがゼノヴィアとかだったら、音速を出してくれなんて言いそうだが…………。

 

うん、とりあえず、今度二人を連れてどこか行こう。

 

ふと視線を上げるとルフェイが小さく挙手していて、

 

「…………」

 

ちょっと言いにくそうというか、言い出せないでいるようだ。

 

俺は微笑みながら頷く。

 

「ルフェイとも行くよ。というか、この際、下宿してる皆と買い物に行くさ。年末の買い出しって必要だろうしな」

 

「やった♪」

 

俺の言葉に嬉しそうに声を弾ませるルフェイ。

 

女の子は男以上に年末年始の物の入り用が発生するだろうしね。

 

こりゃ、松田や元浜と遊ぶ時間はなさそうだな。

いや、一日ぐらいは遊びたいところだけど…………どうしたものかね?

 

 

バタンッ!

 

 

 

「我も買い物行く」

 

「私もー!」

 

クローゼットから飛び出してくる龍神さまと女神さま!

 

あんたら何してんだ!?

 

いつからそこに入ってた!?

 

「かくれんぼしてました!」

 

敬礼のポーズで元気よく答えるイグニス。

 

か、かくれんぼ…………?

二人は逃げてる側だとして鬼は?

 

などと思っていると、部屋に入ってくるメイドさんが一人。

 

「むっ、オーフィスとイグニス発見」

 

「やん、見つかっちゃった♪ ディルちゃんの勝ち~」

 

悔しそうにするイグニスだが…………俺のツッコミが部屋に響く!

 

「おまえかいぃぃぃぃ! え、おまえが鬼なの!? つーか、こんなのに参加するようなキャラだっけ!?」

 

「暇だったのでな」

 

「だとしても! 最初のイメージなんてもう砕け散ってるんですが!?」

 

「人は変わるものだ」

 

「変わりすぎだろぉぉぉぉぉ!?」

 

最初のイメージ返して!

 

ディルムッドは美羽を見るなり、こちらに寄ってきて美羽の隣に座り込む。

 

「マスター、今日の夕食は何ですか?」

 

「今日はブリの照り焼きかな。ディルさん好きだよね?」

 

「…………やった♪」

 

ニヤけ顔でガッツポーズを決めるディルムッド。

 

こ、こいつのキャラはよく分からんな…………。

 

 


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