ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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3話 新しい可能性を求めて

領域(ゾーン)――――それは極限の集中状態。

 

自身の時間軸を高位のレベルに上げることで、相手とは違った世界での行動を可能にする。

ここに辿り着けると戦闘のレベルが数段上がると言ってもいい。

 

グレモリー城の地下にあるおなじみの修業空間に俺達は集っていた。

 

各自、修業に取り組んでいるが、俺はというと・・・・

 

「おらおらぁ! そんなんじゃ、やられちまうぞ!」

 

「くぅ・・・・ぅっ!」

 

今日は木場に対して領域(ゾーン)に意識的に入れるように修業をつけていた。

 

今の木場は第二階層――――騎士王状態にあり、俺も天武の鎧を纏って対峙している。

 

皆にはレベルに合わせて修業をつけると伝えておいたけど、俺は殺す気でかかっている。

それぐらいしないと至れないからだ。

 

木場が新しい禁手を得ようとした時も殺す気でやったが、今回はそれ以上。

 

ここまで追い詰める理由は生死の狭間を実感させるためだ。

それを実感することで、更なる高みに至れる。

 

まぁ、実際に殺したりはしないからね?

死んだらアウトだし・・・・・。

修業もくそもないし・・・・・。

 

「はぁぁぁっ!」

 

木場が残像を残しながら横合いから斬りかかってくる!

 

白と黒のオーラをたぎらせながら、振り下ろされる全力の一太刀。

破壊の特性も入っているせいか、以前の木場よりもはるかに攻撃力が増している。

 

左腕でそれを受け止めると、刀身から発せられた冷気によって籠手を凍らされた!

 

「まだだっ!」

 

それを勝機とは見ず、更なる追撃をしかけてくる!

 

刀身には―――――水と雷!

 

内側から焦がすつもりか!

しかも、水もあるから余計に感電しやすい!

 

「あめぇ!」

 

右腕の籠手、そこに搭載されているブースターが大きく展開し、炎を放つ!

 

俺はその手で日本刀型の聖魔剣の刀身を掴む!

巻き起こる炎が水と雷を呑み込み、消し去った!

 

木場は――――既に聖魔剣を手放しており、その代わりに手にはグラム。

 

「いい判断だ」

 

「あのままじゃ、死んでいただろうからね」

 

俺の言葉に木場は苦笑する。

 

使えない、危険だと判断した段階で武器を手放し、新たな武器に持ちかえる。

戦場じゃ良くあることだ。

 

ただ、念のためにもう一度言っておくが、実際に殺したりはしない。

今のだったら、木場が全身大火傷をするレベルなので、アーシアの治療で一瞬で完治する。

 

さて、木場も大分天武の動きが分かってきたみたいだし、俺も変えるか。

 

俺は鎧の形状を変更。

 

「禁手第三階層――――天翼。さぁ、こっからが本番だ」

 

「・・・・今までは本番じゃなかったのかい?」

 

「天武のままでも良いんだけど、おまえを相手取るなら天翼の方が良いだろ?」

 

天武は格闘特化だけあって近距離戦がメインとなる。

それに対して天翼ならオールレンジでの攻撃から攻防一体の戦闘まで幅が広い。

 

木場を追い詰めるなら天翼の方がもってこいって訳だ。

 

「気を抜くなよ? 一瞬でも気を抜けば―――――死ぬぜ?」

 

「っ!」

 

俺の殺気をぶつけられた木場はグラムを構える。

 

俺は地面を蹴って―――――瞬時に背後へと回り込んだ。

 

「くっ!」

 

木場は振り返り様にグラムを横に薙ぐが、虚しく空を切る。

 

「遅いっ!」

 

その隙を狙って掌底を鳩尾に叩き込む!

 

木場は咄嗟に後ろへ飛ぶが回避に間に合わず、半分ほど食らってしまう。

 

ヴァーリやサイラオーグさんなら、これを受けても平気で返してくるだろう。

しかし、防御力の薄い木場なら、今の威力でも相当なダメージ。

 

吹き飛びながら、口から血を吐き出していた。

 

俺はフェザービットを展開し、更に追撃をしかけた。

 

「木場ァ! 敵は待ってくれねぇぞ!」

 

「わかっているよ! この程度で倒れるわけにはいかないね!」

 

なんとか持ちこたえた木場は左手にグラムを持ち、右手に日本刀型の聖魔剣を創造。

二刀流の構えとなって、俺を迎え撃つ。

 

木場はフェザービットの砲撃をかわしながら駆け抜けていく。

 

この砲撃の嵐の中を潜り抜けるとは・・・・・流石に速い。

 

俺はフェザービットを両手に持つと、オーラを流し込む。

すると、赤いオーラで形成された刃が現れた。

 

こいつがフェザービットのソードモード。

 

赤い二振りの剣を握り、木場目掛けて飛翔する。

 

衝突する互いの剣。

流石に剣の質では木場の方が上だ。

 

魔剣の王と呼ばれるグラムもそうだが、騎士王状態の木場が造り出す聖魔剣もかなりのもの。

聖と魔、相反する力をぶつけ合い出力を上げている。

 

水と雷、風と火のように相性の良い属性を組み合わせての攻撃も鋭い。

更には幻影も作り出せるようになっているようで、能力の幅もどんどん広がっているようだ。

 

俺の剣戟を受けた木場は大きく後ろに飛ぶと聖魔剣を大きく振る。

 

すると―――――無数の剣が聖魔剣の刀身から飛び出てきた!?

 

「んなっ!? そんなこともできんのか!?」

 

俺は回避しながら、驚愕の声をあげる。

 

だって、滅茶苦茶な数が降ってくるんだぜ!?  

 

驚く俺に木場は不敵な笑みを浮かべる。

 

「切り札は最後まで取っておくものだよ」

 

「ええい、言ってくれるな、イケメン王子! だがな、俺の天翼の特性を忘れてるぜ!」

 

フェザービットを操作して正面にシールドを展開!

降り注ぐ全ての剣を防ぎきる!

 

巻き起こる砂塵。

 

その時、俺の背後に気配!

 

「これで取った!」

 

振り下ろされるグラム。

龍殺しの一撃を受ければ俺もタダではすまない。

 

だから―――――

 

「なっ!?」

 

今度は木場が驚愕の声をあげる。

 

なぜなら―――――俺の姿が赤い粒子に変わり、宙に消えたからだ。

 

その光景に動きを止めてしまう木場。

 

そんな木場の背後からアスカロンの刃を首筋に当てて、

 

「こいつで終いだ」

 

「は、ハハハ・・・・まいった。流石だよ」

 

 

 

 

 

 

 

「気を抜くなって言ったろ」

 

「抜いたつもりはないんだけどね・・・・というより、あれを見たら誰でも動きを止めると思う」

 

「だから、動き止めたら死ぬって。戦場でもそれ言うつもりか?」

 

「うっ・・・・イッセーくんは手厳しいね」

 

先程の失敗に深くため息をつく木場。

 

ま、最後の最後で問題ありだったけど、良くついて来ていると思う。

以前の木場とは比較にならないほどの進歩だ。

 

成長の速いグレモリー眷属の中でも木場は頭一つ二つ抜けているのはいつも実感してること。

 

このペースだと、少ししないうちに領域に至れそうだ。

 

ふと上を見上げると上空で白い閃光がジグザグに動き回っていた。

光翼を羽ばたかせる鎧姿のヴァーリだ。

 

あいつも修業に参加しているのだが、模擬戦の相手はあの初代孫悟空のじいさん。

 

幼稚園児ほどの背丈の白い猿のじいさんが、雲――――觔斗雲に乗りながら、最小限の動きだけでヴァーリをいなしていた。

 

ヴァーリの魔力、魔法攻撃を如意棒で打ち消し、ありとあらゆる妖術を使って翻弄していく姿は流石としか言いようがなかった。

 

もっとも、どちらも本気ではないのだが・・・・それでも初代の実力の凄さが伺える。

 

数分の攻防の末にヴァーリが鎧を解除して下に降りてきた。

初代のじいさんも戻ってくる。

 

ヴァーリは肩をすくめた。

 

「・・・・悔しいが、当たらないものだな」

 

「いやいや、おまえさんも流石の白龍皇じゃて。おまえ達二天龍の攻撃をまともに受ければ儂とて塵と化すわい。攻撃の威力だけなら、儂よりもおまえさん達の方が上だぜい?」

 

「そうは言っても中々当たらないんですけどね」

 

俺は苦笑する。

 

俺も相手をしてもらったが、ヴァーリと同じく中々当てることが出来なかった。

 

妖術と仙術を極めた伝説の妖怪、初代孫悟空の名は伊達じゃない。

 

ま、持ってるテクニックもそうなんだけど、経験の差がありすぎるんだよね。

 

当たれば勝てる。

だけど、当てるまでが遠い。

 

初代は煙管を吹かしながら笑む。

 

「そうは言うが、赤龍帝の坊主も中々やるぜぃ? 流石に異世界で戦場を駆け巡ってきただけはある。現段階では赤いほうが白よりも僅かに上かのぅ。スピードもパワーも互角じゃが、技の多彩さで赤が勝ると言ったところじゃろう」

 

なるほどなるほど。

初代から見た俺達はそう言う評価なのね。

技ってのは錬環勁気功のことを言ってるんだろうな。

 

まぁ、それでも・・・・。

 

俺は息を吐きながら言う。

 

「ヴァーリが白銀状態になれば、ごり押しでやられそうだけどな。テクニックがあっても圧倒的過ぎる力の前では潰されるし」

 

例えば曹操。

あいつは俺以上のテクニックを持ったテクニックタイプの極みとも言える存在。

 

ただ、その曹操が無限だった頃のオーフィスに勝てるかと問われるとまず無理だろう。

何しろ攻撃が効かないし、オーフィスが全力で攻撃なんてすれば、その余波だけで致命傷を受けるかもしれない。

 

今のは極端な例かもしれないが、ヴァーリの極覇龍もそれが言える。

あの白銀状態のヴァーリの戦闘力は俺の三形態よりずっと上だからな。

 

まぁ、勝機がないわけじゃない。

 

ヴァーリが自嘲気味に笑みを浮かべる。

 

「知っての通り極覇龍は使い勝手が悪すぎてね。総合的なバランスでは君の三形態の方が上だろう」

 

「極覇龍はスタミナの消耗が激しすぎるからな。俺が勝てるとすれば、使いきったその後だ」

 

「そこに持ち込まれればこちらは手も足も出なくなるだろうな」

 

ヴァーリはそう言うが・・・・その時はその時で何かしてきそうだけどな。

以前の模擬戦の時のようなとんでもない技編み出してたりして。

 

初代が煙管を吹かした後に言った。

 

「極覇龍とやらは覇龍よりはマシじゃけどねぃ、潜在能力を一時的に全て解放する点では一緒でのぅ。つまりは負担が異常なレベルなんじゃい。いくら覇龍より危険を取り除いたとしても、おいそれと連発も維持も出来たもんじゃないじゃろ。白龍皇の課題は有り余るパワーを必要に応じて出力できるようになることだろうねぃ」

 

続けて初代は話す。

 

「赤龍帝は倍加と譲渡、白龍皇は相手の力を半減した上でその力を自分のものにすること。歴代の二天龍の宿主はこれらの力を駆使して戦っておった。それらの力を珍しい使い方をしていた者はおったが・・・・おまえさんらのようにデタラメなパワーアップをした者は一人としていなかったはずだぜぃ?」

 

デタラメなパワーアップか。

 

ヴァーリは才能によって白龍皇の力を引き上げようとしているが、俺は様々な要素の元で禁手を別の次元に進化させてきている。

 

ま、木場もそこへ至れたわけなんだけどさ。

 

何にしても禁手を第二、第三へと上位の次元に向かわせているのは事実だ。

 

それに・・・・・

 

初代が言う。

 

「デタラメなパワーアップもそうじゃが、どうやら天龍本来の力が解放されたようじゃの? ドライグとアルビオンは神器の奥から帰ってこんのじゃろい?」

 

初代の言うようにドライグとアルビオンは神器の深奥へと出かけている。

 

先日、ユーグリットとの戦いでドライグの方から流れ込んできた力。

あれはドライグが持っていた天龍本来の力らしい。

 

ドライグとアルビオンの意識が共鳴したことで解放されたのか、もしくは別の理由があるのか・・・・。

それははっきりと分からないが、新たな力が目覚める可能性が出てきたことは確か。

 

それはアルビオンの方でも同じようだ。

 

そこで、二人は意識を繋げて神器の深奥へと潜り、新たな可能性を探ることにしたのだが・・・・・。

 

ヴァーリが言う。

 

「存外、アルビオン達は苦戦しているようだ。・・・・意見を問いたい歴代白龍皇達は赤龍帝を嫌悪しているそうだからな。むろん、それは積年の恨みとは別に兵藤一誠への不快感を表している」

 

う、うん・・・・それを言われると大変申し訳なく思ってしまう。

 

歴代の白龍皇達は神器の内部で『赤龍帝被害者の会』を設立してしまい、ドライグとアルビオンの和解後も断固として不快感を訴えているそうだ。

 

ま、まぁ、確かに原因は俺だよね・・・・おっぱいドラゴン。

 

でも、ケツ龍皇って名付けたのはオーディンのじいさんだってことはご理解いただきたい!

 

ドライグも白龍皇の神器に意識を移動させて、歴代の残留思念の話を聞いているんだが・・・・アルビオンが間に入っても苦戦しているとのことだ。

 

どうしたものか・・・・。

 

『私が行っちゃいましょう! 説き伏せてくる!』

 

やめてくんない!?

 

あんたが動くとろくでもないことになるだろ、この駄女神!

 

『心配しないで。ちょーっと縛って、ちょーっと鞭で会話するだけだから』

 

なにが『ちょーっと』だ!?

 

許さん!

許さんぞ!

SMで説き伏せるとか無しだからな!?

 

『ぶー』

 

拗ねた!?

拗ねたの!?

 

そんなにSMプレイしたいのか!?

 

すると、イグニスは実体化して俺達の前に現れる。

 

「良いもん、イッセーのけちんぼ」

 

石を蹴る仕草をするとイグニスは視線をヴァーリに移し――――――

 

「ヴァーリくん、私と遊ぼ~♪」

 

「やめてぇぇぇぇ! ヴァーリを巻き込まないでぇぇぇ! 逃げろ、ヴァーリ! おまえはこんな駄女神と関わっちゃいけない! おまえまでこっち側に来る必要はないんだ!」

 

「・・・・しかし、兵藤一誠は彼女の力もあり新たな強さを得たと聞く。ならば、俺も―――――」

 

「早まるな! そこで真面目に考えないでくれぇぇぇぇ!」

 

「うんうん、ヴァーリくんは分かっているわね。なら、私が新しい扉を開いてあげる!」

 

「開かんでいい!」

 

俺は必死になってイグニスを羽交い締めにする!

 

ヴァーリまでシリアスブレイカーにしてたまるか!

 

俺のライバルにはシリアスのままでいてほしい!

 

なんとかして駄女神を押さえつける俺だが・・・・何か柔らかいものに触れた。

 

見ると俺の両手はイグニスの胸を鷲掴みにしていて―――――

 

中々の感触だ!

 

女神さまのおっぱい!

この柔らかさとこの弾力!

流石です!

 

「いゃん♪ イッセーのエッチ♪ なーんだ、ヴァーリくんに取られるのが嫌だったんだー? ふふふ、そうなの、そういうことなの」

 

「お、おい・・・・おまえ、何を・・・・?」

 

目もとをひきつらせる俺を見て楽しげに笑むイグニス。

 

「皆が見ている前でなんて流石は鬼畜☆」

 

「いや、おまえには言われたくない!」

 

「でも、まだまだね。私の力を見せてあげる! ヴァーリくん! これがイッセーを鍛えた私の実力よ!」

 

「ほう、それは興味深い。異世界の女神の力、見せてもらおうか」

 

「興味持つな! って、ギャァァァァァァ! 犯されるぅぅぅぅ! たぁぁぁすぅぅぅけぇぇぇてぇぇぇ!!」

 

俺はイグニスに襲われた。

 


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