ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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23話 D×D結成です!

ツェペシュとカーミラの城下町で起きたテロによる壊滅的被害から五日が過ぎた。

 

俺達は日本に戻り、各神話勢力の出方を待っていた。

 

『リリン』として聖書に記されし者、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーと異世界の神、アセム。

 

この二人の登場、思想に冥界も天界も他の勢力の神々の間で大混乱となっている。

 

邪龍を使い世界規模で大混乱をもたらそうとしている上に、伝説の魔獣トライヘキサまで蘇らせようとしている。

しかも、最終的には異世界への攻撃を宣ったのだから。

 

これを受けて、各神話体系の主神は、この事態を過去最高の危険レベルと断定。

 

和平を結んだ勢力同士で『クリフォト』に対する対抗策を協議することが決まったそうだ。

今回の一件、各神話体系において、史上初となる宗教、思想を超えた国際問題に発展しようとしていた。

 

異世界が絡むということで、当然、俺も上層部の会議に呼ばれた。

俺が異世界から帰還し、美羽やアリスが向こうの住人であったことは今回の騒ぎで完全に露呈されたからな。

 

俺が疑問を話したのは基本的にアスト・アーデという世界についてだ。

向こうはどんな世界で、どんな神がいて、どのような事情を持っているのか。

会議に参加した上層部、神、魔王、全員が興味深く聞いていたよ。

 

・・・・中には美羽とアリスを調べさせろ、なんて言う奴もいたけどな。

 

そんなもん即却下だ。

 

興味本意であいつらの体を弄られるのは我慢ならないからな。

 

まぁ、そのあたりはサーゼクスさんやアザゼル先生、ミカエルさんの三大勢力トップ陣がフォローしてくれたので一応の解決はした。

俺も軽く脅しを入れておいたけどね。

 

あれから、リゼヴィム達は行動を起こしていないが、各勢力、各主要拠点の警戒体勢は解かれていない。

 

深夜、駒王学園に集まる面々。

 

オカ研メンバー、生徒会メンバー、アザゼル先生、グリゼルダさん、デュリオ、ティア、幾瀬さんの他にサイラオーグさん、シーグヴァイラ・アガレス、更に初代孫悟空にヴァーリチーム。

 

すごい面子が揃っていた。

 

まさか、ヴァーリチームに加えて初代孫悟空のじいさんまで来るとはね。

 

ここには各勢力の名うての先兵が集まったって感じだ。

 

全員が顔を合わせたところで、リアスが先生に問う。

 

「上の反応はどうなの?」

 

「流石に今回の件は無視できないとして、非協力的だったところも話し合いに応じると言ってきている。リゼヴィムとアセムの思想は危険だ。現に無視できない規模の破壊を吸血鬼の領土で出してしまったからな」

 

あいつらはツェペシュ、カーミラの城下町のテロで甚大な被害をもたらした。

死傷者も少なくない。

 

しかも、これはあいつらにとって始まりに過ぎないんだ。

 

先生はため息を吐く。

 

「とある神話からは武力による介入も辞さないと過激な発言も出ている。今はオーディンやゼウスなどの主神がその神話体系に忠言を発しているようだが・・・・これ以上、テロが続くとどうなるかわからん。何せ各神話で危険視され滅ぼされた邪悪なドラゴン共が一斉に暴れ回り出したんだからな。しかも、それを指揮しているのが前ルシファーの息子ときている。冥界で起こった魔獣騒動はあくまで冥界側の被害で対岸の火事と高をくくっていた連中もヤバいと感じたのさ。―――――トライヘキサが復活して、グレートレッドと戦えば全世界が崩壊するかもしれん」

 

『―――――っ!』

 

先生の告白に全員が言葉を失っていた。

 

・・・・・やっぱりそうなんだな。

 

なんとなく予想はしていたよ。

グレートレッド級の魔物が二体も暴れたらそうなるのも頷ける。

 

もしグレートレッドが倒され、次元の狭間を守護する存在がいなくなればどうなるか・・・・・。

どんなことになるのかは想像できないが、ろくでもないことが起こるのは確かだろう。

 

しかし、俺は先生の言葉に疑問を覚えた。

 

「その過激発言している連中が危険視しているのはリゼヴィムと邪龍だけなんですか?」

 

「・・・・おまえの言いたいことは分かる。おまえの話を聞いてアセムとその一行に最大限の警戒する者もいるが、中には未知の存在であるアセムよりもリゼヴィムに対する警戒を強める者もいる。・・・・未だ半信半疑なんだろうな」

 

先生の言葉にティアが舌打ちする。

 

「ちっ・・・どこのどいつだ、そんなことを言っている奴は」

 

「でも、仕方がないと言えるわ。リゼヴィム・リヴァン・ルシファーの危うさは各勢力のトップ間で知れ渡っている程のものだと聞くわ。どんな存在かも分からないアセムよりはそちらの対処を優先するでしょうね」

 

リアスも息を吐きながらそう続けた。

 

リアスの言うことも理解はできるんだよ。

 

そもそも、今までは異世界なんて存在自体あるかどうかって問題だったんだ。

それが、異世界の神が既にこちらの世界に来ていて暴れようとしている、なんて言われても信じられる者は少ないだろう。

 

ま、リゼヴィムも十分に危険なんだけどさ。

 

先生は苦笑する。

 

「そんな顔すんなって。俺達が他勢力から攻撃を受けるわけじゃない。ただ、再び共通の敵をどの勢力も持っちまったことに問題があるだけだ」

 

グリゼルダさんも続く。

 

「ミカエルさまも主の代行として、他勢力と交渉しております。過激な発言をした神話体系もミカエルさまからの指示で落ち着いたところもありますよ」

 

おおっ、流石は天使長!

 

やっぱり、ミカエルさんもできる人だな!

 

先生が指をひとつ立てる。

 

「それとひとつ、各勢力の首脳から提案がされている。それは対テロ組織チームの設立だ」

 

対テロ組織チーム?

 

全員が先生の言葉に注目して、耳を傾けていた。

 

「吸血鬼の領土でのテロを受けて、各勢力が警戒を強めているのは先に話した通りだ。もちろん、どの神話にもクソ強い神はいるが、おいそれと自ら赴いてテロリストと戦うのもあらゆる体裁が付きまとってできないときている。そこで、リゼヴィム達とまともに張り合え、すぐに動ける実力者を集めたチームが必要になったというわけだ」

 

なるほど、それは必要だな。

 

仮に各勢力の神が戦って消滅でもしたら、えらいことだしな。

 

それで、ここで俺たちにその話をするってことは・・・・

 

先生が集うメンバーを見渡して言う。

 

「そのチームは各勢力の自由が利いていて強い者ほど都合がいい。もう分かるな? そう、ここにいるおまえ達が対テロリストの混成チームとして挙がっている。ここに集うメンバーは実力としては申し分ない上に、物凄く動きやすい」

 

『若手四王』、アザゼル先生と刃狗にレイナ、転生天使のイリナ、グリゼルダさん、デュリオ、龍王達、初代孫悟空。

 

ここにいるメンバーは破格とも言えるだろう。

 

皆も反対する気配は微塵もない様子で、 

「私は賛成よ。こんなときだからこそ、皆で力を合わせるべきよ」

 

リアスの賛成に他のメンバーも続く。

 

「問題ないでしょう。俺もリアスや兵藤一誠達と共に戦わせてもらおう」

 

「異論ありません」

 

「こちらも。主に後方支援になりそうですが」

 

サイラオーグさん、ソーナ、シーグヴァイラさんも同意した。

 

「儂も別にないぜぃ。年寄り一人より若いもんとやったほうが楽じゃい」

 

初代も賛成してくれた!

すげぇ、あの孫悟空と共闘だ!

 

皆がチーム結成に賛同する中、デュリオだけは「うーん」と首を捻っていた。

 

先生が問う。

 

「どうした? 何か不満か?」

 

「いえね、名前が必要じゃないかなーって思って。折角チーム作るんですし」

 

あー、名前ね。

 

確かにチーム名的なものはいるかな。

テロ対策チームってだけじゃね。

 

すると、小猫ちゃんがぼそりと呟いた。

 

「―――――『D×D(ディー・ディー)』」

 

小猫ちゃんの呟きに全員の視線が集まった。

 

小猫ちゃんも注目され驚いていたけど、そのまま恥ずかしそうに続ける。

 

「異形達の混成チームなのでなんとなく・・・・」

 

リアスが問う。

 

「『D×D』の意味は? グレートレッドを指しているのかしら?」

 

「いえ、デビルだったり、ドラゴンだったり、堕天使の堕天、ダウンフォールだったり・・・・色々です」

 

それを聞いて先生がうんうんと頷いた。

 

「名前が必要だってのは確かなことだ。しかし、なるほど、『D×D』か・・・・。『D×D』たるグレートレッドを守るという意味でもわかりやすい。俺はそれでいいと思うが?」

 

「変な名前じゃなければいいんじゃないスかね?無難だと思いますよ」

 

と、デュリオ。

 

「儂はどうでもいいさね。まぁ、そのへんは若いもん達に任せるわい」

 

初代はどうでも良いらしい。

 

他のメンバーも「まぁ、無難だろう」という感じでOKを出した。

 

・・・・こうして、チームを組むことで他の勢力で嫌な顔をする者が出るかもしれないけど、そこは仕形がないんだろうな。

 

ってか、自分達が動けないから俺達が動くということになったんだ。

 

そのあたりは我慢しろってね。

 

などと考えていると先生がデュリオに指を突きつける。

 

「リーダーはおまえな、デュリオ」

 

「・・・・・・」

 

突然の振りにデュリオは反応できず、無言になるが―――――

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? じ、自分すか!? な、なんで!? いや、マジでなんで!?」

 

かなり驚いているな。

 

どうやら、デュリオはこういうのを振られるのは苦手らしい。

 

デュリオは焦りながら、俺を指指して続けた。

 

「リーダーなら、イッセーどんでしょ!? 異世界帰りだし、なんか向こうで勇者とか言われてたんでしょ!? 断然、リーダー向きじゃないすか!」

 

お、俺かよ・・・・。

 

あー、そうそう、この場にいるメンバー全員、俺の秘密を知っている。

 

ま、もう既に秘密ではなくなってるんだけどね。

 

先生がデュリオに言う。

 

「おまえの言わんとすることは分かる。異世界が絡む件も含めてイッセーがリーダーだと何かと都合がいい。だがな、悪魔や堕天使がリーダーってのは体裁的にまずいんだよ。世間的に悪役イメージで固まってる。その点、天使ならいいイメージで満載だ。特に人間から天使になったってところもポイントが高い」

 

まぁ、そうだよね。

体裁を考えるなら、天使の方がイメージが良い。

 

でも、デュリオは納得できないようで、

 

「えー・・・・、そんな感じで決めちゃうんですか? 俺、そういうのは・・・・」

 

うん、リーダーをやるのは嫌って感じだな。

 

すると、グリゼルダさんがデュリオにもの申した。

 

「デュリオ、これは大変名誉なことです。歴史に名を残せるのかもしれないのですよ? やっておきなさい。・・・・いえ、やりなさい。『切り札』を体現した役職者にいる以上、やるべきです」

 

おおっ、最終的に命令しちゃったよ!

 

グリゼルダさん怖い!

 

その迫力にデュリオも断ることができず、ついに折れた。

 

「・・・・うぅ、姉さんには敵わないなぁ。わかりましたよ! やりますです、はい!」

 

皆の前に立って、デュリオが改めて挨拶する。

 

「えー、まぁ、そんなわけでして。俺がリーダーってことでよろしくです」

 

うん、全然やる気が感じられねぇや!

 

しっかりしろい、リーダー!

 

実力と役職は完璧なんだから、期待するしかないか!

 

先生が初代に視線を向ける。

 

「サブリーダーは初代に任せたい。副職で申し訳ないんだが・・・・」

 

「ええよええよ。勢いのある若いもんが頭になるほうがよかろうて」

 

初代がサブリーダーを引き受けた!

 

リーダーが天界の切り札で、サブリーダーが初代孫悟空か!

 

それだけで、このチームの凄さが分かる!

 

次に先生はヴァーリに視線を向けた。

 

「ヴァーリ。リゼヴィム達の計画の抑止力として、おまえ達のチームをこの混成チームへ参加させるべきと主張する。それによって、おまえ達への不信感を少しでも払拭させるつもりだ」

 

今は違うといえ、ヴァーリチームは『禍の団』に所属していたため、各勢力から危険視されている。

今回結成されるチームに参加させることで、それを緩和させたいのだろう。

 

何よりヴァーリ程の戦力は今後必要になってくるだろうし。

 

ヴァーリがアルビオンに問う。

 

「アルビオン、アザゼルが言っているが、宿敵と組むことに不満はないのか?」

 

『私はかまわん。それよりも赤いの、今度は千年前の戦いについて語ろうか』

 

『うむ、俺もかまわんぞ、白いの。いやー、昔話は楽しいなぁ』

 

二天龍はチーム結成よりも、二人での話し合いの方が大切らしい。

 

・・・・・うーん、マイペース!

 

「・・・・ずいぶん、仲がいいな」

 

ヴァーリも若干戸惑ってる!

 

ですよね!

 

俺もだし!

 

アルビオンとドライグが元気に答える。

 

『我らが揃えば乳だの尻だのもう怖くないのだ! なぁ、赤いの!』

 

『ああ、おっぱいだろうがヒップだろうがドンと来いというもの! 俺達はそんなものには屈しない!』

 

『『ねー』』

 

おいおい!

 

この性格の変化はなに!?

 

「ねー」って言った!

 

二天龍が「ねー」って言った!

 

『むっふっふっふっ。それじゃ、仲直りの印に私が二人まとめて縛ってあげる! さぁ、来なさい! 新しい世界へ連れていってあげるわ!』

 

『『イヤァァァァァァァァッ!』』

 

おいぃぃぃぃぃぃぃ!

 

何してんだ、この駄女神はぁぁぁぁぁぁ!?

 

なんか、悲鳴聞こえたって!

 

やめてあげて!

 

今は二人を放っておいてあげて!

 

「兵藤一誠。縛る、とは?」

 

「聞かないで! おまえにそんなこと教えられない! とりあえず、ごめん! うちの駄女神がほんっとごめん!」

 

ヴァーリにドラゴンSMなんて教えられないよ!

 

つーか、ドラゴンSMってなに!?

 

俺も分かんない!

 

「・・・・こんなところで、二天龍の長年の因縁に決着がつくとはな・・・・。わからんものだ」

 

サイラオーグさんも首を傾げていた。

 

ですよねー・・・・・しかも、原因が俺みたいだし・・・・。

 

ほんっと、世の中何が起こるか分かんないぜ☆

 

「ですが、ヴァーリ・ルシファーとその仲間達が『禍の団』に荷担していたことは大きいのでは?」

 

と、ソーナが挙手して先生に問う。

 

先生は頬をかきながら言う。

 

「あー、そのことなんだが、オーディンのじいさんが全て承知の上でヴァーリを養子として受け入れたいと申し出てきた」

 

「マジですか! って、そこは先生じゃないんですね。一応、育ての親なんでしょう?」

 

俺がそう言う。

 

しかし、先生は首を横に振った。

 

「さっきも言ったが悪魔、堕天使ってのは天使や他の神に比べると体裁が悪いんだ。俺は堕ちた天使の頭をやっていた者。そんな俺よりはオーディンのじいさんの方がずっと良い。あのじいさんは古い神の一角。オーディンが養子に迎え入れるとなれば、アースガルズ神族も他の勢力の神々もおいそれと文句は言えんだろう。・・・・それでも条件と制限はつくだろうが、今よりは身軽に動けるようになる。どうだ、ヴァーリ?」

 

先生の問いにヴァーリはしばし考えた後、

 

「お互いに利益が出そうな時は協力しよう。あとは独自にやらせてもらう」

 

「それは合意と見て良いんだな?」

 

直接は返さないヴァーリだけど、これはOKということだ。

 

ヴァーリがオーディンのじいさんの養子ねぇ・・・・凄い肩書きになったもんだ。

 

ヴァーリは黒歌とルフェイに視線を送る。

 

「黒歌とルフェイは基本的にそちらに預ける。こちらでも必要になったら呼ばせてもらうが。黒歌、ルフェイ。ここは任せる」

 

「任せられたにゃ」

 

黒歌は敬礼ポーズで了承した。

 

俺は息を吐く。

 

「ってことは今まで通り、家の食客ポジションか」

 

「んーふふふ、よろしく頼むにゃ、赤龍帝ちん♪」

 

「へいへい。あ、そうだ、黒歌。おまえ、また俺のアイス食っただろ」

 

「あー! あれ、あんたの仕業だったの!? 私のも食べたでしょ!?」

 

俺の一言にアリスが便乗する。

 

そう、こいつは風呂上がりの楽しみをいつも奪っていくんだ!

 

許せん!

 

「いやー、ついね? テヘペロにゃん♪」

 

こいつ、全然悪く思ってねぇ!

 

黒歌とそんなやり取りをしていると、アーサーがルフェイに話しかけていた。

 

「ルフェイ」

 

「は、はい、お兄さま」

 

「良い機会です。あなたはこのチームに参加しなさい。今回の恩赦を受けるべきです。――――赤龍帝」

 

俺に視線を送るアーサー。

 

「なんだ?」

 

「現在、契約する魔法使いを探していると聞いています。妹と契約していただけませんか? 冥界の英雄であるあなたと契約を結べばルフェイは家に戻れるでしょうから」

 

「あー、その件な。了解だ。いいだろ、レイヴェル?」

 

俺は近くに立つレイヴェルに話をふる。

 

レイヴェルも頷いた。

 

「今回の混成チームに参加することで、『禍の団』に関与したことがある程度晴らせるのであれば、問題ないと思いますわ」

 

流石は我がマネージャー!

話が分かるぜ!

 

「てなわけだ。今すぐにって言うわけではないけど、近く契約を取りたいと思う。ルフェイはどうだ?」

 

「あ、私ですか・・・・? 私は赤龍帝さまと契約できることは・・・とても、その、光栄です!」

 

ルフェイも恐縮しながらも頷いてくれた。

 

それを受けてアーサーが珍しく感情のある微笑みを浮かべていた。

 

「心より感謝します。この借りはいつか返しましょう」

 

「・・・・にしても、おまえもルフェイを大切に思ってんだな」

 

「ええ。たった一人の妹ですから」

 

「うん、それ分かる」

 

・・・・・何か、アーサーとは分かりあえるような気がした。

同じ妹を持つ兄として。

やっぱり、妹って可愛いし大切にしたいよね!

 

気づけば、俺とアーサーは握手を交わしていた。

 

そんな中、美羽が先生に訊く。

 

「これって組織した後はどう動くの?」

 

「普段通りにすれば良い。この大所帯をおいそれと全員を動かせるわけにもいかないだろう。皆、それぞれの役職を持っているしな。事件が起きたときに動ける者同士で連絡を取り合って協力すれば良いんだ。そのための編成だからな」

 

「そっか。それもそうだね」

 

こちらとしても生活をいきなり変えられたんじゃ、かえって動きにくいしな。

 

状況に合わせて動くって感じか。

 

初代が一歩前に出て言う。

 

「さて。若いもんで強くなりたい奴はおるかねぇ」

 

「それはどういうことでしょう?」

 

リアスの質問に初代はしわくちゃな口元を笑ます。

 

「おまえさん達は儂が一から鍛えるでな。―――――全員、最低でも上級悪魔、上級天使、上級堕天使クラスに成長してもらわんとこれを結成した意味がないぞぃ。ゆくゆくは最上級クラスになってもらうわけじゃい」

 

初代が俺達を鍛えるのか!

確かに、俺も修行相手になってもらえるのはありがたい!

初代っていろんな技を持ってそうだし!

 

っと、俺も皆に言うことがあったんだ。

 

「俺も皆に習得してもらいたいものがある。―――――領域(ゾーン)。極限の集中状態、これに入れるか入れないかで戦いのレベルが変わってくる」

 

領域は集中力を極限にまで高めることで入れる世界。

自分を相手と異なる時間軸に置く技だ。

 

今後の敵のレベルを考えると必須になるだろう。

 

「もちろん、無理な指導はしない。こいつは脳にかなりの負荷をかけるからな。下手すりゃ、自滅も有り得る諸刃の剣だ。だから、一人一人のレベルに合わせた修行をするつもりだ」

 

「それは・・・・アセム達を警戒してのことだな?」

 

先生の問い。

 

「はい。少なくともヴィーカは入れるかと。それからベルも」

 

「ったく、手下でそのレベルなんだから、頭が痛くなるぜ」

 

先生が額に手を当てながら息を吐く。

 

いやー、俺も頭が痛いです・・・・・。

 

初代が見渡すように言う。

 

「邪龍との戦い方は儂が一から教えてやるわい。特に今回は相手が相手。神とも戦えるようにならんとのぉ」

 

 

 

 

 

 

 

会議を終え、家に戻った後。

 

俺は一人、家の屋上にいた。

 

屋上の手すりにもたれかかり、夜の駒王町を眺める。

 

「静かだな。・・・・夜中だから当たり前か」

 

吸血鬼の町では夜中に激戦だったからな。

多分、それもあって余計に静かだと感じてしまうのかもしれない。

 

 

――――テロ対策チーム『D×D』

 

 

今回結成されたこのチームは各勢力がテロに対抗するための象徴とも言えるチームだ。

 

俺は・・・・俺達はこのチームと共にリゼヴィムと、アセムと戦っていく。

 

 

 

―――――復活した邪龍

 

 

―――――奪われた聖杯

 

 

―――――トライヘキサ

 

 

―――――前魔王ルシファーの息子

 

 

そして――――――

 

 

「アスト・アーデの神・・・・アセム。おまえの好きにはさせねぇ。この世界も向こうの世界も無茶苦茶にされてたまるか。絶対に止めてやる」

 

俺が一人、改めて決心している時だった。

 

屋上に入ってくる人物がいた。

 

「ベッドにいないと思ったら、こんなところにいたのね」

 

アリスだった。

 

パジャマ姿にサンダルを履いた状態でこちらに歩み寄ってくる。

 

「おまえ、寝てなかったか?」

 

「さっきまではね。目が覚めたのよ」

 

そう言って、アリスは俺の隣に立つと同じような格好で手すりにもたれかかった。

 

「テロ対策チームなんてものが結成されて、かなり大事になってきたわね」

 

「ああ。今回は今までのテロとは変わってくるからな。トライヘキサが復活して暴れたら、世界が崩壊しかねないんだ。誰もが必死になる。もっとも、前々からこういうチームがあれば、京都でも魔獣騒動の時でももうちょいやりやすかったかもしれないけどな」

 

まぁ、そんな過ぎた話をしても仕方がないのだけど。

 

「モーリス達には知らせるの?」

 

「ああ。今度、向こうに行くぞ。おまえと美羽には着いてきてもらう」

 

「・・・・そうよね。万が一のこともあるし、向こうでも何か対策を打ってもらう必要があるわね」

 

「万が一が無いのが一番ベストなんだけどな。・・・・いや、その万が一を絶対に防がなきゃいけないんだ」

 

俺は強く拳を握る。

 

すると、アリスがその拳に手を重ねてきた。

 

「私も同じ気持ちよ。絶対に防いでみせる。何がなんでも」

 

強い決意の籠った瞳。

 

重ねられた手に力が入っていた。

 

そんなアリスに苦笑しながら言う。

 

「だけど、無理はするなよ? ・・・・また、ボロボロのおまえを見るのは嫌だぜ?」

 

「うっ・・・。心配かけて・・・・ごめん」

 

ばつの悪そうな顔で謝罪してくる。

 

いつも、ボロボロで周囲に心配かけまくってきた俺が言えることじゃないけどさ。

 

アリスが血塗れで倒れている姿を見たときは心臓が止まるかと思った。

気の流れが分かる俺はアリスが生きていることは分かっていたものの、それでも衝撃だったんだ。

 

俺は夜空を見上げながら言う。

 

「ヴァレリーの聖杯が抜かれた後のギャスパーを見て改めて思い出したよ。・・・・失うことの怖さってやつをな」

 

決して忘れていたわけじゃない。

その恐怖は常に俺の中にあった。

 

でも、動かなくなったヴァレリーを抱きしめて涙を流すギャスパーが昔の俺と重なったんだ。

 

そして、ユーグリットとの戦闘の後、血塗れのアリスを見つけて・・・・。

 

「アリスが生きていることが分かった時は、力が抜けそうになった。――――生きていてくれて、本当にありがとう」

 

俺の言葉を聞いて、アリスは目元に涙を浮かばせるが、それを堪えて言ってくる。

 

「もう二度と、あんたにそんな恐怖を感じさせないように私も強くなる。もう誰にも負けない。あ、言っとくけど、無理はしないからね? あんたに止められそうだし」

 

「ハハハ、頼むぜ――――――俺の『女王』」

 

「任せて―――――私の主さま」

 

俺達が互いに微笑み合っていると、屋上に冷たい風が吹いた。

 

その風に触れたアリスの体が震える。

 

「へっくち!」

 

「おいおい・・・・そんな薄着じゃまーた風邪ひくぞ? 部屋に戻った方が良いんじゃないか?」

 

「あははは・・・・もう少しここにいるわ。せっかくだし」

 

「せっかくって・・・・どういう意味?」

 

「気にしない気にしない。そういえば、温かそうな上着着てるじゃない」

 

「そりゃあ、夜は冷えるからな・・・・ってまさかおまえ・・・・」

 

アリスの企みを察した俺は半目でアリスを見るが・・・・・アリスはイタズラな笑みを浮かべて―――――

 

「そのまさかよ♪ 大人しく私を入れなさいな」

 

「はぁ・・・・。ま、いいけどさ」

 

俺が了承すると同時に、俺の上着の中に入ってくるアリス。

 

その表情はどこか楽しげで、嬉しそうにも見えた。

 

やれやれ・・・・うちの『女王』さまも中々に甘えん坊のようで。

 

俺とアリスは暫しの間、夜の町を眺めていた。

 

 

 

 




というわけで、『課外授業のデイウォーカー』は完結となります。

伏線の回収やら新キャラの投入やらで思っていたより長く、『異世界召喚のプリンセス』に次ぐ話数となりました。

それにしても・・・・・メインヒロイン、アリスだったっけ!?
ダブルヒロインで来てますけど、今回は完全にアリスがヒロインでしたね。

さて、新たな章に入る前に、次回は番外編を描こうと思ってます。
内容はまだ決まっていないので、少し間が空くかもしれません。


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