ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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20話 悪神の下僕達

光が止み、目を開けると俺達は外にいた。

城にある塔の一つ、その頂上に俺達は立っていた。

 

眼前に広がるのは燃える町。

数多くの邪龍によって破壊されているツェペシュの町だ。

 

高い建物はほぼ倒壊していて、町には逃げ惑う一般の吸血鬼達。

 

マズいな・・・・早く助けねぇと!

 

「・・・・リゼヴィムの野郎は?」

 

辺りに目を配る先生。

 

ヴァーリが空中を睨みつける。

 

「リゼヴィムッ!」

 

「やっほー、ヴァーリきゅん♪ お祖父ちゃんが遊んであげるぞい☆ 肩叩きしてくれると嬉しいな!」

 

空を飛ぶリゼヴィムはリリスを抱き抱えて無邪気に手を振る。

 

ヴァーリは光翼を展開させて、奴の方に飛び出していく!

あいつ、怒りで頭が一杯になってやがる!

 

挑発に乗ってリゼヴィムと空中戦を始めやがった!

 

先生は怒気を吐く。

 

「クソッ! どうしようもねぇな、この状況じゃ! リアス! イッセー! 手分けして量産型とかいう邪龍共を殲滅、住民を避難させるぞ! 上の連中がどうであれ、ここに住む者達に罪はない!」

 

俺も大いに頷いた。

 

「分かってます! アリスは俺と来い! 美羽とレイヴェルは住民の避難をメインに邪龍を撃退だ!」

 

「オッケー! こんなことさっさと終わらせてやるわ!」

 

「分かった!」

 

「了解ですわ!」

 

俺の指示に三人が頷く。

 

リアスも木場達に指示を出す。

 

「皆、出来るだけツーマンセルでお願い! 私と朱乃、ロスヴァイセとレイナ、ゼノヴィアとイリナさん、祐斗は一人で当たれるわね?」

 

「もちろんです」

 

木場もリアスの指示に応じる。

 

ああ、今の木場ならあの程度の邪龍は一人でやれる。

 

リアスはゼノヴィアとイリナ、アーシアに目を配る。

 

「ゼノヴィアとイリナさんはまずアーシアと気絶している小猫とギャスパーを連れて町の外に退避させてちょうだい」

 

先生が続く。

 

「なら、東門の先にしろ。地下シェルターがあったはずだ」

 

「では、その後、そこを緊急避難場所にするわ。各自住民をそこへ誘導すること! アーシアはケガをした住民の回復をお願いするわ!」

 

「了解」

 

「任せて!」

 

ゼノヴィアとイリナは応じるとそれぞれ気絶している小猫ちゃんとギャスパーを抱き抱える。

 

「はい! 回復は任せてください!」

 

アーシアも気合いを入れていた。

 

先生も光の槍と黒い翼を出現させる。

 

「俺も一人で当たる! いくぞ、おまえら!」

 

『はいっ!』

 

俺達は素早くその場から散開した――――――。

 

 

 

 

 

 

「ドライグ! フェザービット、シールドモードだ!」

 

『任せろ!』

 

鎧を天武から天翼に変えた俺は邪龍に襲われている住民をフェザービットのシールドで覆い保護。

ピラミッド型に形成されたオーラの盾が住民達を邪龍の脅威から守っていく。

 

その間にアリスと組んで邪龍を一掃していった。

 

この量産型の邪龍とやらの強さは少なくとも中級悪魔クラス以上はあるが、俺達の相手ではない。

グレンデルのようなしぶとさもないし、クロウ・クルワッハのように卓越した戦闘技術があるわけではない。

 

俺の拳、アリスの槍の一撃で余裕で倒すことができている。

 

他のオカ研のメンバーもこのレベルなら平気で相手に出来るはずだ。

 

ただ、問題は数だな。

もう町の至るところにうじゃうじゃいやがる。

いったい、どれだけの吸血鬼が聖杯で改造されたのやら。

 

こういうのは天撃でまとめて吹き飛ばしたいところだが・・・・流石に町のど真ん中でそれをするわけにはいかないか。

逃げている最中の住民もいるわけだしな。

 

「東門の先に避難場所がある! そこまで走るんだ!」

 

「は、はい! あ、ありがとうございます!」

 

礼を述べて避難する吸血鬼の住民達。

 

「アリス、何匹倒した?」

 

「今ので十強くらい。・・・・どんだけいるのよ・・・・」

 

アリスは町を見渡しながら息を吐く。

 

これだけの数の吸血鬼がリゼヴィム側についていたことにかなり呆れているようにも見える。

 

これが進化を願った吸血鬼の成れの果て、か・・・・。

 

「いやぁ、呆れるよねぇ。進化と改造を勘違いしてるんだからさ」

 

――――――っ!

 

突然、背後から聞こえてくる声。

 

この声は・・・・・!

 

俺とアリスはその声がした方を向くと同時に殺気を放った。

 

そこにいるのはリゼヴィムの協力者。

アスト・アーデの神、アセム。

 

その隣には娘のヴィーカも控えていた。

 

「吸血鬼・・・・まぁ、一部の貴族なんだろうけどさ。無駄に高いプライドを持ってるだけで、自分達の力じゃなーんにも出来ないバカばっかりだよ。ほんと笑っちゃうよね。進化ってのは他人の力でするものじゃない、自らの強い意思と自らの力で成し遂げるもの。そうは思わない?」

 

俺はアセムのその言葉を聞いて頷いた。

 

「ああ、その意見には同意だ。確かにクーデターに荷担した吸血鬼の上役共はアホばっかりだったよ」

 

「でしょー。血と伝統を重んじるとか言っといてさ、結局は自分でそれを踏みにじってるんだもんねー」

 

「全くだ。・・・・で? そんなことを言うためだけに俺の前に再び出てきたのか?」

 

「いやいや。君に声をかけたのは偶々近くを通りかかったからだよ。言っておくけど、基本的に僕自身が直接手を出すことはない」

 

「・・・・ってことは間接的には手を出すってことじゃねぇか」

 

「アハハハ、まーねー。一応、協力者だし?」

 

本当に読めない奴だな・・・・・。

 

ふざけているようも見えるが、ずっと俺の内側を探るように見てきている。

 

悪意の塊・・・・リゼヴィムならこの一言で済むだろうが、こいつは何か違う。

 

もちろん、悪意もあるのかもしれないが・・・・・。

 

どのみち、こうしてリゼヴィムに協力している以上は危険な存在には変わりないか。

 

高まる俺とアリスのオーラを見て、ヴィーカが口元を笑ます。

 

「ふふふっ、すんごくやる気みたいね? さっきから抑えられてないみたい」

 

「馬鹿ね。抑える気がないだけよ。こうして対峙しているなら、やることはひとつじゃない」

 

「あら、怖い。そうね、それじゃあ軽く相手してあげようかしら」

 

そう言うとヴィーカは槍を構え、黒いオーラを滲み出させる。

 

アリスも不敵に笑みを浮かべて、槍の切っ先をヴィーカへと向けた。

白いオーラが荒々しく燃え盛る。

 

「ええ、ぜひそうしてもらうわ。軽くやるついでに潰してあげる」

 

「そういうのはあまり言わない方が良いわよ? 弱く見えるわ」

 

そして、二人は同時に飛び出し――――――衝突した。

 

白と黒のオーラが町でぶつかり、その余波で建物を次々に破壊していった。

 

ヴィーカの実力。

まだ、その片鱗すら見せていない。

能力も不明だ。

 

だが、強い。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

アリスの鋭い突き。

切っ先に雷を集中させて、破壊力を大きく上げた一撃だ。

 

大抵のやつならアリスのスピードに着いてこれず、槍に貫かれてアウトだ。

 

それをあのヴィーカは平気な顔で捌いていた。

 

「あらあら。すごいわ、この子。私、殺されそう♪ そんなに怖い顔してるとシワが増えちゃうぞ☆」

 

「うっさい!」

 

怒声と共に横凪ぎに槍を振るうアリス。

宙返りしながら、後退するヴィーカを更に追いかけていく。

 

ヴィーカはアリスの槍を受け止めなると、アリスの胸と自分の胸を見比べながら言った。

 

「それにしてもペタンコよねぇ。勇者くんは大きなおっぱいが好みって聞いていたのだけれど・・・・」

 

「う、うううううるさーい! なんで、そんな憐れむ眼で見るわけ!? これでも最近は育ってるんだから!」

 

「えっ!? 育ってそのサイズなの!?」

 

「こ、このぉぉぉぉ! その胸もいでやるぅぅぅぅ!」

 

・・・・あいつ、挑発に乗ってないよね?

 

なんか、アリスが涙眼になってるし・・・・・。

いや、動きは格段に上がってるけどさ。

 

なんというか・・・・ヴィーカの胸の辺りに攻撃が集中している気がする・・・・。

 

怒り(主に胸に関することだろう・・・・)によって攻撃の手が激しくなったアリス。

 

その槍さばきは次第にヴィーカを追い詰めていき―――――ついにその槍を弾き飛ばした!

 

得物を失ったヴィーカ。

 

眼前に迫るのは白雷に身を包むアリス。

 

アリスの一撃を生身で応じるのはヴィーカでも厳しいはずだ。

 

「これで終わりよ、この巨乳娘ぇぇぇぇえ!」

 

明らかに個人的な恨みが籠められた一撃!

 

アリスの槍がヴィーカへと迫る。

 

しかし――――――

 

「ざ・ん・ね・ん☆」

 

 

バァン!

 

 

突然鳴り響く炸裂音。

 

その音はヴィーカから聞こえてきて―――――

 

アリスは音が聞こえると同時に弾かれたように横に跳んでいた。

 

頬は何かで切ったように、赤い血が流れていた。

 

俺はヴィーカの手元に視線をやると何かが握られていることに気づいた。

 

「け、拳銃・・・・?」

 

それは俺達がよく知るリボルバー式の拳銃だった。

 

銃口から煙があがっていて、つい先程、弾丸を放ったのが分かる。

 

ヴィーカは指でくるくると拳銃を回しながら感心したように言う。

 

「へぇ、今のを避けちゃうんだ。距離もタイミングもバッチリだったんだけど」

 

アリスは頬の血を拭う。

 

「今ので死んでるくらいなら、私はとっくに死んでるわよ。・・・・その銃どっから出したのよ? 槍が届く瞬間まで出す素振りすらしなかったのに・・・・いつのまに・・・・」

 

俺もヴィーカの動きは追っていたけど、アリスの言うように何処から出したのか分からなかった。

 

気づいたら、銃をぶっ放されていたんだ。

 

ゼノヴィアがデュランダルを亜空間から取り出すように、ヴィーカもそれと同じことをした?

 

でも、それとはどこか違っているような・・・・・。

 

「気になる? そんなに気になるのなら、おしえてあげる」

 

怪訝に思う俺とアリスを見て、ヴィーカは笑みを浮かべ、指を鳴らした。

 

すると、その背後の空間がぐにゃりと歪み始める。

空間が捻れ、渦を生じさせながら開いていき、大きな穴が出現した。

 

そして、見えてくるのは棚や箱に詰められた剣や槍、ヴィーカが握っているような拳銃からライフル。

他にも様々な武器があった。

 

ヴィーカは俺達がそれを確認したのを見ると、拳銃を持つ逆の手を横に突きだす。

そこに出現するのは刃の部分がやたらと長い剣。

 

「改めて自己紹介といきましょうか。私は『武器庫(アセナル)』のヴィーカ。ご覧の通り、ありとあらゆる武器を創り、貯蔵するのが私の能力よ。あなた達の仲間に剣を創造する子がいたと思うけど、それと似たようなものね」

 

木場の魔剣創造の拡大版って感じか。

 

「んー、反応薄いわね。まぁ、あなた達からすれば割りと見慣れた能力だろうから、しかたないと思うけど。まぁ、でも――――――」

 

ヴィーカの周囲の空間が再び歪み始め、小さな穴が無数に出現する。

 

そこから現れたのは――――――

 

アリスが顔をひきつらせる。

 

「ちょ・・・・なに、それ・・・・?」

 

「あら、知らないの? ガトリングガン」

 

「いや、そういうことじゃなくて―――――」

 

アリスが言い終える前に無数の穴から出現したガトリングガンが火を噴いた!

 

全砲門から弾丸がアリスに向けて斉射される!

 

それはまさに弾丸の雨!

あまりの多さに先が見えないほどだ!

 

しかも、この弾丸・・・・

 

「アリス、絶対にくらうな! 一発一発に聖なる力が籠められてるぞ!」

 

「わかってるわよ! ったく、もう! こんなのアリぃぃぃぃぃ!?」

 

絶叫をあげならがら、アリスは弾丸に当たらないよう駆けていく。

 

そこにヴィーカが迫る!

 

「ほら、そっちにばかり集中してると私に首切られるわよ?」

 

「ええい! めんどくさい能力持ってるわね! 私はこれ一本なのに!」

 

再びぶつかるアリスとヴィーカ。

 

しかし、先程の衝突と違うのはヴィーカは剣から槍に、槍から弓に、弓から銃へと武器と戦法を変えてきていることだ。

 

あまりに変幻自在過ぎる戦い方、それを為すヴィーカの技量にアリスも表情を厳しくしている。

 

―――――アリスが圧され始めた。

 

「アリスッ!」

 

俺はアリスに加勢しようと飛び出していく。

 

しかし―――――

 

 

ドォォォォォォォォンッ

 

 

俺の前に何かが降ってきた!

 

衝撃で巨大なクレーターが生まれ、砂埃が舞い上がる!

 

砂埃のせいで、視界が完全に遮られ辺りは灰色の世界しか見えない。

 

そんな中、眼前に黒い影が現れる。

 

ゆっくりと動く影は―――――俺に攻撃してやがった!

 

砂埃の向こうから巨大な拳が突き抜けてくる!

 

「ちぃっ!」

 

俺は舌打ちしながらも、それを回避。

影に向けて気弾を放ってみるが、倒れた様子がない。

 

砂埃が収まり、視界が開けてくる。

 

俺の視線の先にいたのは―――――――

 

「はぁ。ここまでする必要はなかったでしょう? 見てください、私の服がこんなになってしまった」

 

「ガハハハハ! そんな服ぐらい気にすんなって! せっかくの挨拶なんだから盛大にしねぇとな!」

 

服についた砂を払いながら文句を言う茶髪の男性と豪快に笑う巨大な男。

 

英雄派のヘラクレスよりでかいんじゃないのか?

三メートル近くあるぞ。

 

アセムが二人の男に声をかける。

 

「遅いよー。どこに行ってたのさ?」

 

「申し訳ありません、父上。ラズルがまた道に迷いまして」

 

「おいおい! なに人のせいにしてんだよ!? つーか、おまえがあの店が良いだの、この店が良いだのつって、うろちょろすんのが悪いんだ!」

 

「私は時間に間に合うようには行動していたのです。私の言う通りの道を進んでいれば、集合時間の五分前には到着していた。それを『こっちが近道だぁ!』なんて言って私から地図を奪うから・・・・・はぁ」

 

「う、うるせぇ!」

 

その話どっかで聞いた・・・・って言うか体験したな。

 

アセムが喧嘩する二人を宥めるように言う。

 

「まーまー、二人とも。別に遅れたことは気にしてないよ。集合時間作ったのヴィーカだし」

 

「さっすが、親父殿! ヴァルスと違って懐がでけぇ!」

 

「誰の懐が小さいと?」

 

「君達って本当、よく喧嘩するよねぇ。・・・・まぁ、それは置いといて、勇者くんに自己紹介してよ。彼も君達のこと気になってるみたいだしさ」

 

アセムはため息をつきながらそう促す。

 

その言葉に二人は「そうだった」と思い出したようにこちらを向いた。

 

まず名乗ったのは茶髪の男性。

長身痩躯で、髪を後ろで括っている。

 

腰に帯剣していることから剣士っぽいけど・・・・・。

 

「これは始めまして、勇者殿。私は『覗者(ヴォアエリスムス)』のヴァルスと申します。以後、お見知りおきを」

 

続いて名乗るのはラズルと呼ばれた巨漢。

 

「おうおう! 俺は『破軍(バリアント)』のラズルだぁ! よろしくたのまぁ! ガハハハハ!」

 

「この子達もヴィーカと同じで、僕が作り出した下僕だよ。ま、話の流れで分かるよね~」

 

と、アセムが軽い口調で言った。

 

『覗者』のヴァルスと『破軍』のラズル。

 

ヴァルスは丁寧な言葉遣いで物腰も柔らかそうだが、その眼は全くの別物。

 

アセムのように・・・・・それ以上かもしれない。

俺のことをじっくり観察するような眼で見てくる。

 

ラズルはそういう感じは皆無だが、纏うオーラがあまりに荒々しい。

 

二人ともどういう能力を持っているかは分からないけど・・・・・。

 

ラズルが俺に指を突きつけて叫ぶ。

 

「さぁ、戦おうぜ! 俺ぁ、おまえと戦いたかったんだ!」

 

「・・・・なんで、俺なんだよ?」

 

「そりゃあ、親父殿がおまえのことを語っていたからだよ! 最強の魔王シリウスを、そして親父殿を殺しかけたロスウォードを倒した男! そんなスゲェ奴の話を聞いて、大人しくしてられっかよ!」

 

あぁ・・・・こいつもバトルマニアなのか・・・・。

 

なんで、こんな奴ばっかり、俺の周囲に集まってくるんだ!

 

そんな熱い視線で俺を見ないで!

暑苦しい!

 

「出来れば、私とも手合わせ願いたいですね。あなたの力、私も気になっているので」

 

おまえもかぃぃぃぃぃぃ! 

 

嫌がらせか!? 

 

これは俺に対する嫌がらせか!? 

 

なんで、アセムの下僕の男二人は俺に興味津々なんだよ!? 

 

せめて、ヴィーカにしてくんない!?

 

俺が抗議の眼をアセムに向けた時だった―――――

 

「・・・・解析完了(アナライズ・コンプリート)

 

「―――――っ!?」

 

いつの間にか俺の背後に一人の少女が立っていた。

 

幼い顔立ち。

背丈からして中学生くらいだろうか?

 

真っ白な肌に足元まである真っ白な髪。

何もかもが白い少女。

 

その少女は俺の鎧に触れていた。

 

俺に気づかれずに―――――――。

 

得体の知れないその少女の存在に俺は思わず、その場から大きく飛び退いてしまう。

 

・・・・・いったい、いつ俺の背後に回ったんだ?

 

声がするまで全く気付かなかった。

 

アセムがその少女に声をかけた。

 

「やぁ、ベル。途中で別れちゃったけど・・・・どこに行ってたんだい?」

 

ベルと呼ばれたその白い少女は顔をあげて、アセムの方を見ると一言。

 

「・・・・おしっこ」

 

「・・・・・」

 

無言になるアセム。

 

えっ!?

 

そこで無言なの!?

 

何か返してあげないの!?

 

「「・・・・・・」」

 

あっ!

 

ヴァルスとラズルも黙りやがった!

 

何で黙るの!?

 

暫しの沈黙を経てアセムが口を開く。

 

「まぁ、そういうことで・・・・」

 

「えっ!? 何がっ!?」

 

「分かると思うけど、この子は僕の最後の下僕にして、最強の下僕、『絵師(マーレライ)』のベル。可愛いでしょ~?」

 

「スルーして勝手に紹介しないでくれる!? つーか、まさかと思うがおまえ、その子とも・・・・・!」

 

「アッタリー♪ 毎晩お世話になってます♪」

 

「そんなロリっ娘とだと!? そこにヴィーカは交ざるのか!?」

 

「おおっ、よく分かったね」

 

「こんの変態神がぁぁぁぁ!」

 

「いや、おっぱいドラゴンの君に言われてもねぇ」

 

この野郎!

歳上お姉さんとロリっ娘から同時に相手をしてもらっているのか!

なんて神だ!

 

クソォ・・・そんな子供の姿してるくせに!

 

小学生の俺が見たら血の涙を流してるところだぞ!

 

はぁ・・・はぁ・・・・お、落ち着け、俺!

 

俺には皆がいるんだ!

 

べ、べべべ別に羨ましがることはない!

 

大人の体だからこそ出来ることもあるんだからな!

 

美羽なんか、いつもチュッチュッしてくれるし!

 

『それだけじゃないけどね~』

 

ま、まぁ、それは言わない・・・・。

 

『放課後の保健室で美羽ちゃんと・・・・! あれはドキドキするわよね!』

 

それ言っちゃダメだろ!?

 

なんでおまえがドキドキしてる!?

 

「まぁ、とにかく、これで僕の下僕達は全員紹介できたかな? これが『アセムくんの四天王!』なんてね」

 

『武器庫』ヴィーカ、『覗者』ヴァルス、『破軍』ラズル、そして『絵師』ベル。

 

アセムの作り出した下僕達。

 

今のところヴィーカしか能力が割れてない。

 

ほかの三人はどういう――――――

 

真っ白な少女―――――ベルが小さな口を開く。

 

「パパ・・・・解析できた。もう召喚できる」

 

この子はさっき、俺の鎧に触れて解析完了と言っていた。

どう解析したのかは分からないけど、おそらく俺の力をを解析したのだろう。

 

ただ・・・・召喚だと?

 

俺を解析して、召喚?

 

あの子はいったい何を・・・・・

 

その言葉にアセムは笑みを浮かべた。

 

「うん、ありがとう。ラズル、ヴァルス。君達には悪いけど、勇者君の相手はまた今度ね」

 

「そりゃねぇぜ、親父殿! ここに来てお預けかよ!?」

 

「ゴメンゴメン。ちょっと試したいことがあってね。ベル、早速お願いできるかな?」

 

「・・・・うん」

 

ベルはコクリと頷くと右手の人差し指を突きだした。

 

人差し指が怪しく輝き、空中に何かを描いていく。

 

少しして、出来上がったのは――――――鎧姿の俺の絵だった。

 

「・・・・俺?」

 

怪訝に思う俺。

 

そんな俺を無視して、ベルは呪文を口していく。

 

「汝、我が人形となりて形なせ。一時の空想より、姿を現せ―――――」

 

その呪文が唄われ、宙に描かれた鎧姿の俺が強く輝き始める。

 

その絵は形を崩して光の塊と化し、繭のようにも見えた。

 

そして――――――

 

光の塊がガラスが割れるような音と共に砕け散った。

 

「なっ・・・・・!?」

 

俺は繭から出てきた物を見て、眼を見開いた。

 

なぜなら、それは――――――

 

解析召喚(アナライズ・サモン)――――赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)

 

――――――赤龍帝の鎧を纏う俺が目の前に出現した。

 

 

 

 

 




ユーグリットは次回で!

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