ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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遅くなりました!
大学院の研究室訪問とかしてたら、時間がなくて・・・・。

とりあえず、どうぞ!


16話 赤龍帝&白雷姫 vs 暗黒龍!

ほんの少し前。

 

俺とアリスは地下通路で迷子になっていた。

 

正直、ミスったと思ってる。

アリスに地図を渡してしまったのは失敗だった。

 

「・・・・なんで迷うんだよ」

 

「アハハハハー・・・・。さ、さぁ・・・・」

 

「アリスくん。こっち見なさい。話すときは人の目を見て話すもんだ」

 

「イッセー先生、怖いんだもん」

 

大丈夫大丈夫。

イッセー先生は怖くないよ。

 

ほら、こんなにも笑顔じゃん。

ちょーっと、青筋浮かんでるけど笑顔じゃん。

 

・・・・俺が受け取った見取り図を奪って、先にドンドン進んでいった挙げ句、道に迷っただけだもんな。

 

うん、それだけだから、イッセー先生は怖くない。

 

「・・・・とりあえず、弁明があるなら聞こうか」

 

「・・・・認めたくないものね。若さ故の過ちというものは」

 

「よし、お説教の時間だ」

 

「なんでそんなにニコニコしてるのよ!? ゴメン! ほんっとゴメン! 許してよぉ・・・・。ちょっと道に迷っただけじゃない・・・?」

 

「・・・・ここがどこだか教えてもらえるか?」

 

「え、え~と・・・・」

 

俺が問うとアリスは見取り図とにらめっこしながら、図面を指でなぞっていく。

 

周囲の通路や歩いた順から現在地を割り出しているのだろう。

 

少しすると、顔を上げるアリス。

 

そして、ペロリと舌を出してこう言った。

 

「わかんない!」

 

「よし、お仕置きだ」

 

時間ないのに何してくれてんだよ!?

この方向音痴!

 

なんで俺から見取り図パクった!?

 

勝手にドンドン進んでいくから、俺にも現在地は分からんよ!

 

くそったれめ!

 

「ぅぅ・・・。私だって・・・・イッセーの役に立とうと思ったんだもん・・・・」

 

そんな体を縮めて、涙目になったところで・・・・!

 

可愛いじゃないか、ちくしょうめ!

 

悶えそうになるわ!

 

ん?

 

今、アリスがちろっと舌を出したのが見えたような・・・・。

 

「おまえ、俺がそれに弱いと分かってやってるだろ?」

 

「あ、バレた・・・?」

 

こいつ、素に戻りやがった!

 

なんてやつだ!

 

「純情な俺を弄びやがったな!?」

 

「どこが純情!? このドスケベ勇者!」

 

「やかましい! 今のトキメキを返せ!」

 

「無理っ!」

 

そう言うとアリスは「ん~」と背中を伸ばす。

 

「まぁ、迷ったのは悪かったわよ。でも、ここでそれをとやかく言う時間はないんじゃない?」

 

「開き直りやがった!?」

 

「うん」

 

「しかも、あっさり認めた!?」

 

こいつ・・・・マジでなめとるな。

 

『女王』ってこんな感じだっけ?

眷属ってこんな感じだってけ?

 

朱乃やグレイフィアさん。

あと、ライザーのところのユーベルーナさんもそれらしくしてたような・・・・。

 

いや、別にアリスに主従関係を求めるつもりはないけど・・・・流石にこれは・・・・。

 

おまえも残念美人と化したのか・・・・グスッ。

 

俺が肩を落としていると、アリスが訊いてくる。

 

「あんたなら皆の場所分かるでしょ? 気の位置で。さっさと探しちゃってよ」

 

「へいへい・・・・」

 

尻に敷かれてるな、俺・・・・。

 

とりあえず俺は感覚を強化して、探索網を広げていく。

地下だから平面だけじゃなくて、上と下にも広げないといけないんだよね。

 

これが割りと大変な作業だったりする。

 

少ししてから、皆の気を見つけた。

 

そこには身に覚えのある気もあってだな。

 

「グレンデルもいるのか・・・・」

 

「あの邪龍も?」

 

「ああ。急ぐぞ」

 

「オッケー。で? どの方向よ?」

 

アリスに問われた俺は、感じ取った方向を指差した。

 

薄い壁一枚ならぶち抜けばいいだけの話なんだが・・・・この感じからして、そういうわけでもないんだよな。

 

多分、城の土台的な・・・?

 

ま、あんまり無茶苦茶するとえらいことになりそうだ。

 

急ぐとは言ったけど、ここは近い道を探して―――――

 

「イッセー、そこどいて」

 

「え?」

 

アリスに言われ、振り向くと―――――アリスが白雷を纏って槍を構えていた。

 

ちょっと待て。

 

おまえ、何を―――――

 

白の槍砲(アスプロス・ヴリマ)ッ!!!」

 

「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

俺の制止も虚しく、アリスの槍は放たれたのだった。

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

 

俺とアリスは砂埃で真っ白になってしまっていた。

 

俺達の前には美羽達と鎧姿のヴァーリ。

それからクロウ・クルワッハ。

 

どうやら超ドシリアスなところに俺とアリスは突っ込んできたらしい。

皆に『シリアス返せ』って言われたし。

 

いや、本当にゴメンね。

俺もこんなことになるとは思ってなかったんだよ。

 

先生が言う。

 

「おいおい、イッセー・・・・。随分遅かったじゃねぇか。つーか、なんつー登場の仕方しやがる・・・・。何してた?」

 

「え、えーと、リゼヴィムの協力者に会ってました・・・・。それで、異変に気づいてティアをこっちに呼んで・・・・それから――――」

 

『エルメちゃんのクマさんパンツを堪能してたのよねー♪』

 

「「「えっ・・・・・」」」

 

イグニスの言葉に反応する女性陣。

 

こっ・・・・この駄女神がぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

な、なに言ってくれてんだよぉぉぉぉぉ!!!

 

リアスが叫ぶ!

 

「イッセー!? こんな時にエルメンヒルデのパ・・・下着を堪能していたの!?」

 

「してないしてない!」

 

ゼノヴィアが続く!

 

「子作りか! 子作りしたのか! あの吸血鬼とやったのか!」

 

「やってないやってない! つーか、なんでそこに繋がるんだよ!? おまえの頭の中はそれだけか!?」

 

「エルメンヒルデさん、クマさんなんだ。なんか意外・・・・」

 

美羽がそう呟く。

 

それには同意!

確かに意外だった!

 

先生が眉を潜める。

 

「リゼヴィムの協力者だと?」

 

「ええ。・・・・質の悪そうなやつでしたよ。詳しくは後で話します。今は―――――」

 

俺はそこまで言って、視線を眼前に立つ黒ずくめの男――――クロウ・クルワッハに向けた。

 

ここに来る前に察知したグレンデルがいないということは、皆は何とかグレンデルを退けたようだ。

 

そこにクロウ・クルワッハとヴァーリが現れたってところか。

 

クロウ・クルワッハが口を開く。

 

「来たか、現赤龍帝」

 

「ああ。・・・・おまえがここにいるということは皆の足止めか?」

 

「そうだ」

 

そりゃ、またとんでもないやつが足止めに来たもので。

 

俺はクロウ・クルワッハから僅かに視線を剃らし、皆の様子を伺う。

 

先生はともかく、他のメンバーはそれなりに消耗しているな。

 

グレンデルに続いてクロウ・クルワッハと戦わせるのは無謀か。

いや、万全の状態でも皆の攻撃が邪龍最強に通じるかと言われると、それは難しいな。

 

ヴァーリはというと・・・・・

 

俺はヴァーリに問いかける。

 

「ヴァーリ。この邪龍を相手取れるか?」

 

「今の俺に極覇龍を使えるだけの体力はないな」

 

「マジか」

 

「ここに来る前にユーグリット・ルキフグスに妨害されたのでね」

 

そう言ってヴァーリは肩を竦める。

 

ユーグリットと一戦交えたってか。

この口調とヴァーリの様子から察するにユーグリットは倒してなさそうだな。

 

ただ、お互いに本気でやったというわけでもないだろう。

ヴァーリが本気を出したのなら、それに俺が気づかないはずがない。

 

「それから、俺はここでこれ以上の消耗は避けたい。この先にいるであろう者に用がある」

 

「・・・・リゼヴィムか?」

 

「そうだ」

 

俺が聞き返すと、ヴァーリはそう一言だけ返してきた。

 

ヴァーリとリゼヴィムの間に何があったかは知らないけど、ヴァーリはあいつと戦うつもりらしい。

 

バトルマニアとして強者と戦いたいって気持ちじゃなさそうだが・・・・。

 

ま、それは今はおいておこうか。

 

とりあえず、美羽達は休息が必要でヴァーリは力を使いたくない。

 

先生は聖杯を扱うことを考えると、ここで何かあってもらっては困る。

 

となると・・・・

 

「こいつは俺が相手する」

 

その言葉に真っ先に反応したのはクロウ・クルワッハだった。

 

「赤龍帝が俺の相手か」

 

「ここに来るまでに皆は頑張ったんだし、そろそろ俺もやらないと格好がつかないだろ?」

 

皆が戦ってる間、俺はというと・・・・エルメンヒルデのクマさんとかティアのノーパン疑惑とかで・・・・・。

 

うん、ぼちぼち俺も参戦しないとマジで申し訳が立たねぇ。

 

先生が俺に訊く。

 

「イッセー。やれるのか?」

 

「ま、出来るだけやってみますよ。皆をこれ以上消耗させるわけにはいかないですし」

 

「それじゃあ、私もいこうかしら。活躍してないのイッセーと私だけだし」

 

アリスも槍をクルクル回して構えると、俺の顔を見てクスリと笑う。

 

俺もそれに応えるように笑みを浮かべる。

 

「そんじゃ、ここは赤龍帝眷属の『王』と『女王』でかっこよく決めますか」

 

「そうね。・・・・じゃないと、流石に美羽ちゃんやレイヴェルさんに申し訳がたたないわ・・・・。ほとんどサボってたし」

 

いや、サボってはないけどね?

 

でも・・・・どうやら、こいつと考えることは同じらしい。

 

それはそれで良しとするか。

 

俺はアリスに合図を送ると、鎧を纏って駆けた。

 

クロウ・クルワッハの眼前にまでつめ、真正面から殴り付ける―――――と見せかけて、残像を残して背後に回る!

 

後頭部目掛けて殴り付ける!

 

すると、クロウ・クルワッハは首を傾げて俺の拳打をかわし、俺の腕を掴んだ。

 

そして、背負い投げの要領で俺を床へと叩きつける!

 

「なんの!」

 

が、俺は叩きつけられる直前に両足で踏ん張ってそれを阻止!

 

そのままの状態で膝蹴りを奴の胸へと叩きつける!

 

避けられないと判断したクロウ・クルワッハは俺の腕を放して、後退するが―――――そこを待ち受けていたのはアリス。

 

金色の髪が純白に変わり、白き雷を纏う白雷姫。

 

槍の穂先に恐ろしい質量の白雷を集中させて、後退したクロウ・クルワッハへと鋭い突きを繰り出していく!

 

「黒焦げになりたくなかったら、私に触れないことね!」

 

空中に白いラインを描きながら繰り出されるアリスの槍術!

 

高速の突きから横凪ぎ、石突きによる殴打と一本の槍を変幻自在に操り、クロウ・クルワッハを攻め立てる!

 

クロウ・クルワッハはアリスの白雷に当たらないように少し大きめにかわしていくが、その表情は余裕そのもの。

 

閃光のような一撃を避けると、瞬時にアリスの背後に回り、拳を放つ。

 

「させるかよ!」

 

俺はアリスを庇うように間に割り込むと、その拳を受け止める。

 

それから、受けとめた拳を強引に引いて、クロウ・クルワッハの態勢を崩す!

顔面目掛けて、鋭いアッパーを放った!

 

クロウ・クルワッハは空いている方の手で俺の拳を掴み取り、俺達は互いの手を塞ぐ状態になった。

 

そこから始まるのは蹴りの応酬。

互いの膝が衝突し、胴へ、足へと蹴りを次々と放っていく!

 

超至近距離での蹴りだけの攻防戦!

 

ぐっ・・・・鎧を通して伝わってくるこの重さ!

 

一撃が重いぜ!

 

俺の拳を難なく受け止め、蹴りを受けても動じないんだからな。

対してこっちは、蹴られた部位にヒビが入ってる。

 

少なくとも今の俺よりこいつの方が上手だ。

流石に普通の鎧じゃ分が悪い。

 

だから俺は鎧を変える!

 

「禁手第二階層―――――天武! 格闘戦で派手にいくぜ!」

 

クロウ・クルワッハ真正面から蹴り飛ばし、俺は一度大きく後ろに飛ぶ。

 

着地と同時に全身のブースターからオーラを噴出させて、もう一度距離をつめる!

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

『Ignition Booster!!!!』

 

後方にソニックブームを発生させながら、俺はクロウ・クルワッハの懐に潜り込む!

 

奴は俺が懐に入った瞬間に合わせて、拳を放ってくる。

その拳に纏うオーラ、振り下ろされるそれは巨大な拳にも見えて―――――

 

こいつをカウンターとして受けるのはよろしくないな。

 

だから、俺は脳に錬環勁気功を使用。

領域(ゾーン)に突入した。

 

高速で迫っていた拳がまるスロー再生されたように、ゆっくりと近づいてくる。

 

俺はそれを屈んでかわして――――――クロウ・クルワッハの顎に強烈な一撃を加える!

 

もちろん、アスカロンの龍殺しも乗せてな!

 

「くっ・・・!」

 

クロウ・クルワッハの体が宙に浮いた!

 

俺は宙に浮いたクロウ・クルワッハの背後に回り込んで、背中に蹴りをくわえる!

 

天井に飛ばされるクロウ・クルワッハだが、衝突の直前に宙返りすると、天井を蹴って俺に突っ込んできた!

 

流石に速い。

しかも、今のところダメージを受けているように見えないのが・・・・。

 

まぁ、グレンデルでもあんだけやっても倒れなかったんだ。

こいつがそう簡単に倒れるとは思えない。

 

最低でも、グレンデルの時以上の一撃を放たなければこいつに通りそうにない。

 

「はぁっ!」

 

床の石が砕けるほどの重い踏み込みを入れながら、アリスが横合いからクロウ・クルワッハを狙い打つ。

 

クロウ・クルワッハは俺を蹴り飛ばすと、即座にそれに対応。

 

スウェーバックで槍をしのぐと、その体勢から槍を蹴り上げ、アリスの槍を弾き飛ばす。

槍がアリスの手から離れてしまう。

 

クロウ・クルワッハが静かに言う。

 

「得物がなくなったな」

 

「ええ、そうね。槍を弾かれたのは久しぶりだわ。イッセー!」

 

「おうよ!」

 

俺はアリスの合図を受けると、空中で回る銀の槍を掴み、それを持って斬りかかる!

 

槍の刃が奴の体を掠めた!

黒い衣服が破れ、腕から血が滲み出ている!

 

「アリス、これ返すぜ! それから――――」

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

アリスに槍を投げると同時に倍加をスタート。

 

手元に倍加したオーラを集めていく。

 

「受けとれぇぇぇぇ!」

 

オーラを放ち、アリスに命中する!

 

そして――――――

 

『Transfer!!』

 

アリスに倍加した力が譲渡された!

 

アリスのオーラが膨れ上がり、白雷に赤いオーラが加わる!

 

「受け取ったわ! さぁ、行きましょうか!」

 

「俺達のタッグを見せつけてやるか!」

 

赤と白の閃光がこの空間を流れていく。

 

俺の拳が、アリスの槍が、二人のコンビネーションがクロウ・クルワッハを襲う!

 

前線で磨いてきた俺達のコンビは二年という時間が経っても健在だ!

 

俺はアリスの、アリスは俺の呼吸を読んで、言葉を交わさなくても次にどう動けばいいか、どう立ち回れば良いのかが分かる!

 

それからも俺とアリス、クロウ・クルワッハの激しい攻防戦は続いていく。

 

「そらっ!」

 

拳に赤いオーラを乗せてクロウ・クルワッハの顔面目掛けて放つ・・・・が、クロウ・クルワッハはそれを手で流していく。

 

赤い拳が空を切ったところにクロウ・クルワッハの拳が脇腹にぶちこまれてきた!

 

「ガハッ・・・・! ちぃっ!」

 

舌打ちしつつも、体を捻って回し蹴りを繰り出してみるが、読んでいたかのようにあっさりかわされる。

 

なんというか・・・・こいつの戦い方は洗練されているな。

 

グレンデルは力任せのただの暴力だった。

攻撃も高く、防御もうんざりするほど高い。

それにスピードもあった。

 

だが、あいつはそれに頼ってる分、隙だらけだった。

 

だから、少し戦えば奴の攻撃パターンは読めたし、とりあえずは重症を与えることもできた。

 

対して目の前の邪龍はというと―――――

 

「あんた、どっかで武術でも習ったのかよ? 動きに無駄がないな」

 

「長く修行をしてきたのでな。これくらいは身に付く」

 

修行ね・・・・。

 

滅ぼされる前はこいつも努力してたってことなのかね?

 

聖杯でいくら強化されようとも、技術――――体捌きや呼吸、経験までもが身に付くわけじゃない。 

何百、何千と繰返し修行して、自身の体に覚えさせることで本当に得ることができる。

 

こいつの動きはそうして培われたものから繰り出されているのはすぐに分かる。

 

「聖杯使って強化しているとはいえ、やっぱ強ぇな」

 

クロウ・クルワッハの攻撃をかわしながら、そう漏らす俺。

 

すると、クロウ・クルワッハはそれを否定した。

 

「聖杯で強化? 俺はそんなものは使っていないが?」

 

「なに? あんた、聖杯で復活して、強化されたんじゃないのか?」

 

グレンデルはあれだけ強化しておいて、こいつだけ強化をしないってのは無いだろう。

 

駒として使うのなら、強化しないわけがない。

 

しかし、クロウ・クルワッハは――――

 

「おまえは思い違いをしている。俺は一度たりとも滅ぼされたことはない」

 

「なに?」

 

俺は眉を潜めて、聞き返す。

 

アザゼル先生は滅ぼされたって・・・・。

俺はそう聞いたんだけど・・・・。

 

クロウ・クルワッハはふぅ、と息を吐くと言う。

 

「確かに俺はキリスト教の介入が煩わしくてかの地を去ったのは事実だがな」

 

「じゃあ、今の今まで何してたんだよ?」

 

アザゼル先生でも誤解してるってことは他の勢力でも「最強の邪龍は滅んだ」って認識されていると見ていい。

そうなると、こいつは滅んだと認識されるまで何をしていたんだよ?

 

クロウ・クルワッハは言う。

 

「修行と見聞を兼ねて人間界、冥界、世界中を見て回っていた」

 

「――――っ! おいおいマジかよ・・・・」

 

つまり、こいつは今に至るまで滅ぼされることもなく、ずっと一人で修行に打ち込んできたと・・・・。

 

そして、今の力は聖杯で強化されたものではない。

 

こいつはとんでもねぇドラゴンだぞ・・・・!

 

グレンデルなんか比じゃない。

 

己の意思で己を高めてきた。

それもかなり長い時をかけて。

そういう奴は例外なく強い・・・・!

 

先生達と俺達の戦いを見ていたヴァーリが笑う。

 

「くくくっ。はははははっ。なるほど、戦いを司るドラゴンとはよく言ったものだ。どうやら、俺以上に戦闘と探求を追い求めるドラゴンがいたようだな。リゼヴィムのもとにいるのも、強者と戦うためだな?」

 

ヴァーリの言葉にクロウ・クルワッハも口元を笑ます。

 

「ドラゴンが行き着く先を見たいのでね」

 

「俺と似たタイプか。ますます興味を持ったよ、クロウ・クルワッハ。ここは俺も戦った方が良かったか?」

 

おまえ、さっきは消耗したくないって言ってたじゃん!

だから、俺とアリスで引き受けたのに!

 

ええい、ヴァーリといい、クロウ・クルワッハといい、頭の中はバトルだけか!?

   

あー、戦いしか興味ないやつは嫌だ嫌だ!

 

俺は戦いよりも、女の子とのイチャイチャを選ぶね!

つーか、それ一択!

 

『だが、相棒。強化なしの状態で龍殺しの拳を受けてあれだ。奴は俺やアルビオンが神器に封じられた後も、人間界、冥界に潜り研鑽し続けた。既に天龍クラスにまで登り詰めた可能性がある』

 

天龍クラス・・・・生前のドライグやアルビオンと同レベルってことかよ。

 

そうなると、このままやり続けるのは得策じゃないな。

 

『出来ることなら、この場は引くことを勧めるが・・・・無理か』

 

ああ、無理だな。

 

やれやれ、こいつは難儀なこった。

 

仮に天龍クラスだとしたら、この場の全員がかかっても勝てるか微妙だな。

 

いや、ここでこれ以上やり合ったら時間がなくなるか。

 

ここは何とかして皆を通してやりたいところだが・・・・。

 

美羽が心配そうな声音で言う。

 

「お兄ちゃんとアリスさんを同時に相手取ってるのに・・・・。」

 

ああ、全くだ。

 

俺とアリスのコンビで大した傷がつけられないっての刃な・・・・。

 

こいつの戦闘技術の高さと強靭な肉体には舌を巻くよ。

 

さてさて、どうしたものかな・・・・・。

 

すると―――――先生がアーシアの肩に手を置いた。

 

「これ以上、時間をかけるわけにはいかん。アーシア!」

 

「は、はい!」

 

「こうなったら仕方がねぇ。ファーブニルを呼べ!」

 

 

 

―――――――マジか。

 

 

 




パンツ龍王、再び!

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