ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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15話 皆の気持ちが一つに!!

[木場 side]

 

 

滅びの球体が消えた後に残ったのは―――――頭部の半分しかなくなったグレンデルの変わり果てた姿だった。

 

なんという消滅の力だ・・・・。

あのグレンデルをここまでにするなんてね。

我が主ながら恐ろしい技を編み出したものだよ。

 

ただ、真に恐ろしいのは邪龍のしぶとさだと思った。

 

そう、グレンデルは体を失ったのにまだ生きていたんだ。

残った頭部の半分だけの状態でグレンデルは嫌な笑みを浮かべていた。

 

『・・・・なるほどよ。ユーグリッドの野郎が言った通りだ。バアル家の血筋が持つ滅びの魔力ってーやつぁしぶてぇ邪龍の意識、魂すらも削るってな。こりゃ、効いたぜぇぇぇっ! グハハハハハ!』

 

哄笑をあげるグレンデル。

 

しかし、次に僕達にとって嫌な情報がグレンデルの口から発せられた。

 

『なーに、また体を新調すりゃいいだけの話だ! 何せ、魂さえ無事なら、俺らはいくらでもボディを取り替え可能だからよぉぉぉぉ! 聖杯ってのは本当に便利なもんだぜぇ!』

 

―――――っ!

 

聖杯を使って再び体を再構築出来るのか・・・・。

 

いや、元々滅んだ邪龍をこうして復活させることが出来るんだ。

肉体を回復・再構築することぐらいは出来るのだろう。

 

グレンデルは牙を覗かせて不敵に漏らす。

 

『でもよぉぉぉっ! こんな状態でやるっつーのも乙かもしれねぇよなぁぁぁぁぁ! 一匹でも多く噛み殺してから消滅ってのも楽しそうじゃねぇか! グハハハハハッ!!』

 

『・・・・・っ!』

 

戦意か一切薄れない・・・・・いや、それどころか増している。

そんなグレンデルに僕達は戦慄していた。

 

頭しか残っていない状態でまだ戦おうと言うのか・・・・!

まともじゃない!

 

部長が前に立ち、手元に滅びの魔力を作り出す。

 

「流石に私達はもう戦いたくないわ。あなたのような邪悪な存在は消し飛んでしかるべきよ。今の私の力なら魂まで削れるはず。魂までしぶとい邪龍に対してどこまで効果があるか分からないけど、当面復活は出来ないはずよ」

 

部長がとどめの一撃を放とうとした――――――その時だった。

 

この空間に現れる新たな気配。

 

このプレッシャーには身に覚えがある。

 

全員がそちらへと視線を注ぐと、そこには黒ずくめの男が立っていた。

 

「・・・・・クロウ・クルワッハ、か」

 

先生が目を細めて、そう呟く。

 

クロウ・クルワッハ。

邪龍最強の一角と恐れられるドラゴン。

 

黒ずくめの男が歩きながら言う。

 

「――――グレンデル、一度ひけ」

 

『おいおい! これからどこまでやれるか挑戦しようってのによ! あんた、邪魔するってーのかよ!?』

 

「その体ではどちらにしても長くは保たん。さっさと体を乗り換えろ」

 

『うるせぇぇぇぇよっ! 黙っててくれや! おらぁ、こいつらと殺し合いしてんだよ! 殺し合いてぇんだよ! せっかく盛り上がってきたんだ! 邪魔しねぇでくれよぉぉぉぉぉ!』

 

頭部だけでも啖呵を切るグレンデル。

 

・・・・どこまで戦いたいんだ。

 

グレンデルの叫びに僕達は背筋に薄ら寒いものを感じながらも警戒を強めていく。

 

しかし、クロウ・クルワッハは鋭い眼光を向けて、

 

「意思を通したければ、俺を倒さねばならない。――――ということになるが? 俺とやるか? 俺はそれでも構わん」

 

『・・・・ッッ!』

 

その迫力に僕達だけでなく、グレンデルさえも言葉をつぐんだ。

 

しばし無言の後、グレンデルは口を開く。

 

『チッ。ここで旦那とやり合おうなんざ思っちゃいねぇよ。やるならベストな状態で殺し合いてぇしな。いいぜ、交代してやんよ』

 

あのグレンデルが言うことを聞いた。

 

僕達の攻撃をどれだけ受けても、部長の技で頭しか残っていない状態になっても戦意を衰えさせなかったのに・・・・。

それだけの存在感と強さがあの男にはあるという証拠なのだろう。

 

すると、男の姿が瞬時に消えた。

 

驚く僕達は辺りに視線を配る。

 

クロウ・クルワッハはいつの間にかグレンデルの近く――――僕達の眼前に移動していた。

 

・・・・動きが見えなかった。

動作の前兆も気配の動きも捉えられなかった・・・・。

 

クロウ・クルワッハが指を鳴らすと、グレンデルの下に転移魔法が展開される。

 

「逃げる気か! そうはさせん!」

 

ゼノヴィアがデュランダルの莫大なオーラを放つが、クロウ・クルワッハは片手で防いでしまった。

 

転移の光に包まれながら、グレンデルが吠える。

 

『おい、クソガキども! 運がねぇな。おまえらじゃ、束になってもクロウの旦那には勝てねぇ。ま、生き残ったら、またやろうや。殺し合いってやつをよ! グハハハハハハッ!』

 

それだけ言い残して、グレンデルはこの場から消えてしまった。

 

あそこまで追い詰めたと言うのに逃がしてしまうなんてね・・・・。

体を回復して、襲ってくるとなると・・・・考えるだけでも嫌になる。

 

残ったクロウ・クルワッハが僕達に言う。

 

「ここから先を通すわけにはいかんのでな」

 

「押し通させてもらおう。聖杯をこれ以上好き勝手にさせるわけにはいかないからな」

 

「堕天使元総督か。ならば、俺を倒すことだ」

 

「ちっ、グレンデルよりは話が出来ると思ったが・・・そう言うわけでもないか」

 

先生は舌打ちすると、光の槍を作り出して構える。

 

その身からは薄暗いオーラを滲み出させて、こちらも凄まじいプレッシャーを放っている。

 

前線を引いたとは言え、流石は元総督。

聖書に記されし堕天使の長。

 

しかし、先生のプレッシャーを受けてもクロウ・クルワッハは薄く笑みを浮かべるのみ。

 

僕も剣を構え、クロウ・クルワッハと対峙。

 

このまま戦っても間違いなくやられる。

仮に騎士王の姿になっても彼に剣が届くかどうか・・・・。

 

その時だった。

 

「何か来ますわ!」

 

レイヴェルさんがそう叫んだ。

 

僕達も急速に接近してくるそれに気づき、とある方向を見る。

 

扉が勢いよく破壊され、それが飛び込んできた!

この広い空間に閃光が飛来する!

 

僕達の前に目映い白い光が舞い降りた。

 

光が止み、そこに立っていたのは―――――ヴァーリだった!

 

既に鎧姿となっているヴァーリはクロウ・クルワッハに視線を向けた。

 

「おまえがクロウ・クルワッハか」

 

「ああ、そうだ。現白龍皇」

 

無言で見つめ合う両者。

 

ヴァーリもクロウ・クルワッハも体から戦意に満ちたオーラを滲み出させて、今にも激戦が繰り広げられそうな空気だ。

 

先生がヴァーリに言う。

 

「遅かったじゃねぇか、ヴァーリ。カーミラの領地から俺より先にでたのに、なぜ到着が遅れた?」

 

「色々とね。途中で妨害されていたのさ。あのルキフグスの男―――――ユーグリット・ルキフグスにな」

 

―――――っ!

 

ユーグリット・ルキフグス!

 

グレイフィアさんの実の弟!

レイヴェルさんを拐った集団の黒幕!

 

ヴァーリはユーグリットと戦っていたから、遅れたのか。

 

先生は再度問う。

 

「美猴たちは?」

 

「はぐれ魔法使い集団『魔女の夜(ヘクセン・ナハト)』。そこに所属しているという聖十字架使いに捕まってな。あいつらはその女の相手をしている」

 

「・・・・やれやれ、聖十字架も『禍の団』に本格的に協力ってか・・・・。聖槍といい、聖杯といい、今度は聖十字架。神滅具の聖遺物(レリック)は全部テロリストに関与してるじゃねぇか・・・・」

 

先生は苦虫を噛み潰した様子で吐き捨てる。

 

他の皆も同じ心境だよ。

聖遺物が聞いて呆れるというか・・・・聖書の神が知ればどんな顔をするだろうね?

 

聖遺物のどれか一つぐらいは正しく使ってもらいたいものだ。

 

僕はそんなことを思いながらヴァーリに問う。

 

「ここで来てくれたのはありがたいけど、君はクロウ・クルワッハに勝つ自信はあるのかい?」

 

「どうだろうな。・・・・だが、出来るだけ消耗は避けたいと思っている。俺はそれでもこの先にいるであろう者に用があるのでな。このドラゴンを追い求めてはいたが、それはそれだ。今の俺はどうしても奴に会わなければならない」

 

この先にいる者・・・・?

 

マリウス・・・・いや、おそらく、リゼヴィムのことを言っているのだろう。

先生の話では、ヴァーリは自身の祖父に恨みを持っているという話だからね。

 

二人の間に何があったのかは定かではないが・・・・。

 

とにかく、ヴァーリも消耗はしたくない。

それは僕達も同じだ。

 

それに、先程の戦闘で消耗してしまった。

出来る限り、回復させたいところだ。

 

ここにいるメンバーで眼前に立つ最強の邪龍を退ける、または何とか潜り抜けて先に進むには・・・・。

 

先生が部長に問う。

 

「リアス、さっきのもう一度撃てるか?」

 

「あれを使えばダメージは与えられるでしょうけど、そのためには少し休まないと無理ね」

 

「了解だ。なら、おまえは後ろで休んでいろ。木場、ゼノヴィア、イリナ。前衛いけるか?」

 

「僕は大丈夫です」

 

「正直に言えば、少し回復したいところだが・・・・」

 

「そんな悠長なことは言ってられないしね」

 

ここで何もせずに休むなんて出来ない。

その間にもマリウスの思惑はどんどん進んでいくのだから。

 

次に先生はヴァーリに視線を移すが、ヴァーリは先生に問われる前に首を横に振った。

 

「悪いが、極覇龍は使えない。先程、それを使える分の体力は消耗してしまったのでね」

 

ユーグリットとの戦いでそこまで消耗していたのか・・・・。

 

最上級死神のプルートを瞬殺したあの圧倒的な力があれば・・・・とも思ったんだけどね。

 

でも、消耗したくないと言っていたから、どのみち白銀の鎧は使えないか。

 

「ぼ、僕も戦います! 僕の力が通じるか分からないけど、やれることはあると思うんです!」

 

ギャスパーくんが必死の表情でそう叫ぶ。

 

ギャスパーくんにしても、この場で停滞するわけにはいかないからね。

恩人を――――ヴァレリーさんを助けるためにも、彼はここまでやってきたんだ。

 

そんな彼に僕は微笑みながら言った。

 

「分かっているよ、ギャスパーくん。後輩がここまで言っているのなら、多少の無理はしないとね。グレモリー男子としては、先輩として魅せないと後でイッセーくんに怒られそうだ」

 

「木場、おまえもイッセーの影響受けてんな」

 

「ハハハ、でも、彼の近くにいて影響を受けない人はいないと思いますよ?」

 

それに、僕はイッセーくんが不在の時は皆を守るって約束しているしね。

ここはグレモリー男子としての根性を出さないと。

 

「いかせてもらうよ」

 

剣を逆手に構えて力を高めると、聖のオーラと魔のオーラが僕の体を包み込んでいく。

 

後で動けなくなるのが問題だけど、ここで使わなければ先に進めない。

それなら使うしかないだろう。

 

それに、動けなくなっても、そこは根性で乗りきればいい。

 

僕が騎士王の姿になろうとした。

 

 

 

その時だった―――――――

 

 

 

ドッゴォォォォォォォォォォオオオオオオンッ!!!

 

 

 

クロウ・クルワッハの後方、右側の壁が突如として崩壊した!

石が崩れる轟音と震動がこの空間を激しく揺らす!

 

その揺れの激しさに僕達の後ろではアーシアさんとギャスパーくんが尻餅をついているほどだった。

 

新手・・・・いや、このオーラは・・・・・!

 

この空間を埋め尽くす程の砂埃の向こうに二つの影が見えた。

 

その存在を確認したヴァーリは笑みを浮かべ、クロウ・クルワッハも振り向き注目している。

 

 

砂埃が止み、そこにいたのはもちろん――――――

 

 

「ゲッホッゲッホッゲッホッ! お、おまえなぁ! 無茶苦茶し過ぎだっての!」

 

「あんたがこの方向に皆の気を感じるって言ったんでしょ!」

 

「確かに言ったよ! でもな、もう少し方法考えろよ!」

 

「別にいいじゃない! 壁ぶち抜いた方が早いんだから!」

 

「アホかぁぁぁぁ! 誰がここまで無茶苦茶しろっつたよ!? 見ろよ! 俺達、砂埃で真っ白になってるじゃねぇか!」

 

「後で洗えばいいじゃない! ゲッホゲッホゲッホ!!」

 

「咳き込んでんじゃねーか! ゲッホゲッホゲッホ!!」

 

「うー、喉痛い! 煙たい! 服の中がジャリジャリするぅぅぅぅ!」

 

「俺もだよ! 背中とか凄いことになってるし! 痛い! 痒い!」

 

「何とかしてよぉぉぉぉ!」

 

「それ、ゲッホ、俺のセリフ!」

 

「ゲッホ、あ、皆いる!」

 

「ホントだ! ゲッホゲッホ! やっと合流できたな!」

 

「やっぱり壁ぶち抜いて正解だったでしょ! ゲッホ!」

 

「よく胸張って言えたな! ゲッホゲッホ!」

 

「ゲッホ! 言っちゃう!」

 

「ゲッホ! 言わんでいい!」

 

「「ゲッホゲッホゲッホゲッホゲッホゲッホ!!」」

 

咳き込むイッセーくんとアリスさん。

 

・・・・・いや、なんとなく分かってたよ。

君達が揃うとこうなるって。

 

それでも一言だけ言わせてほしい。

 

イッセーくん、アリスさん。

 

あのね――――――

 

 

 

「「「シリアス返せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」

 

 

 

今、皆の気持ちが一つになった。

 

 

 

[木場 side out]

 

 


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