ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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13話 白音モード発動!

[木場 side]

 

 

階段を進み、再び開けた空間にたどり着いた僕達。

 

城の地下は最下層を含めて四つの空間があり、ここはその二つ目ということになる。

 

到着した僕達を待ち受けていたのは―――――

 

「来た来た。主殿が仰った通りだ」

 

「うむ、噂のグレモリー眷属」

 

「強化された我々にとっては良い相手になりそうだ」

 

明らかに上階の兵士達よりも格上であることがわかる。

兵士の鎧ではなく、普通の衣類を身に纏っているが、全身から放つプレッシャーは兵士達の比じゃない。

 

数は先程よりは数は少ないが・・・・・

 

「クーデター派側についた上役直属の戦士だろう。純血ではないだろうが、吸血鬼の特性を色濃く継いでいる者達だ。吸血鬼の気配が濃い」

 

先生がそう呟く。

 

なるほど、やはり下層に行くほど強敵が待ち構えているようだね。

 

僕は手元に聖魔剣を一振り造り出す。

 

「ここは僕が先陣をきります」

 

この場にいるメンバーで、先生を除けば僕が最も速く動ける。

 

僕が敵を撹乱しつつ、皆が攻撃を仕掛ければ―――――

 

その時だった。

 

「いや、ここは」

 

「私達に任せて!」

 

僕の横を通りすぎていくゼノヴィアとイリナ。

 

二人は敵との距離を一気に詰め寄ると、デュランダル、量産型聖魔剣を交錯させて吸血鬼の戦士達に斬りかかる!

 

「くっ! 聖剣か!」

 

毒づく吸血鬼は身を霧に変えて、初太刀を回避する・・・・しかし、二人の攻撃はそれだけでは終わらず、刀身から聖なる波動を繰り出していた!

 

「ちっ!」

 

後方に位置していた吸血鬼は自身をコウモリに変化させて、間一髪で回避。

 

「伸びろっ!」

 

ゼノヴィアはデュランダルの刀身を鞭状に変えて、横の吸血鬼に斬りつける!

 

「ぬわっ!」

 

僕はついその光景に感動してしまった。

 

ゼノヴィアが・・・・テクニックを見せてくれた!

デュランダルの砲撃ではなく、エクスカリバーの能力を活かした攻撃をしてくれた!

 

「祐斗先輩、なんで涙目なんですか?」

 

気にしないでいいよ、ギャスパーくん。

これは嬉し涙だからね。

 

しかし、僕はゼノヴィアに斬りつけられた吸血鬼を見て表情を厳しくした。

 

・・・・・傷は負っているものの、聖剣のダメージが通っていない。

 

吸血鬼は悪魔同様、聖なる攻撃に弱い。

たとえ、斬り傷が浅くても傷口から聖なる力の侵食を受ける。

 

それがない。

つまり、あの吸血鬼は聖なる力によるダメージを受けていないということ。

 

先生が目を細める。

 

「・・・・聖杯によって、聖なる力への耐性をつけたか」

 

ゼノヴィアとイリナが息を吐く。

 

「うーん、軽く振っただけとはいえ、吸血鬼にデュランダルが効かないのは遺憾だね」

 

「けど、勝てないわけじゃないわ。一撃一撃加えていけば確実に勝てる。・・・・問題は時間をかけられないってことよね」

 

そう、今の攻防で分かったことはこのまま戦ったとしても眼前の強化された吸血鬼には勝てるということ。

 

しかし、聖なる力が効かないのは面倒な話であり、僕の聖魔剣も効果はないだろう。

 

地下という空間を考えると、派手な攻撃はできないため、地道に攻撃を加えるしかない。

 

時間もないため、僕が残って戦うという選択肢もあるが・・・・・下の階層にはおそらく邪龍が控えているだろう。

 

クロウ・クルワッハとオーフィスの分身であるリリス。

 

それに『禍の団』が関わっているということは、イッセーくん達が戦ったというグレンデルなどの他の邪龍がいる可能性がある。

 

ここは一人一人の消耗を避けるなら全員でかかるべきか・・・・。

 

最善の一手を模索しているなかで小猫ちゃんが一歩前に出た。

 

「・・・・ここは私に任せてください」

 

そう言うなり、彼女は目を閉じて、深く息をし始める。

 

「・・・・姉さまに教えてもらったものがここでお役に立ちそうです」

 

そう言う小猫ちゃんの体に淡い白い光が集い始める。

それは小猫ちゃんの小柄な体を覆い、彼女自身も呼応するように闘気を発生させていく。

 

闘気を纏い、全身から光を放つ小猫ちゃん。

 

その光は膨れ上がり、大きくなっていった。

 

光が収まった後に現れたのは・・・・・白い着物を着た女性だった。

歳は僕達よりも歳上に見える。

頭部には猫耳があり、二股の猫の尻尾を生やしていた。

 

その女性が口を開く。

 

『近隣に存在する自然の気を集めて、自身の闘気と同調させることで強制的に成長させました』

 

―――――小猫ちゃんの声だった。

 

この女性があの小猫ちゃんだというのかい?

 

これには驚きを隠せないメンバーが何人かいるようで、アーシアさんやゼノヴィアも目を丸くしていた。

 

事情を知っているのか、部長が言う。

 

「あれは外部の気を体内に取り込むことで、猫又の力を自在に扱えるように一時的に小猫を大きくさせる仙術よ。―――――白音モードだと小猫は言っていたわ」

 

仙術で強制的に成長させたというのか。

小猫ちゃんはお姉さんからそんな技を教えてもらっていたんだね。

 

「・・・・小猫ちゃんの胸が大きくなってます」

 

「ああ。私から見ても大きいと思うぞ。黒歌くらいはあるんじゃないか?」

 

「イッセーくんが喜びそうね!」

 

アーシアさんとゼノヴィアは複雑そうな表情で白音モードとなった小猫ちゃんを見ていた。

 

僕もイリナの意見には同意かな?

この場にいれば、イッセーくんはとても喜んでいただろう。

 

「こ、小猫さんが・・・・そんな・・・・・!」

 

同じ学年であるレイヴェルさんは信じられないといった表情で小猫ちゃんの胸と自分の胸を交互に見ていた。

 

・・・・心配しなくても、イッセーくんなら大丈夫だと思うよ?

 

美羽さんがレイヴェルさんの肩に手を置く。

 

「大丈夫。お兄ちゃんはレイヴェルさんも可愛く思ってるからね。それにレイヴェルさんもまだまだ大きくなると思うし、小猫ちゃんと合わせて余計に喜ぶんじゃないかな?」

 

「そ、そうですよね! わ、私も小猫さんに負けず、大きくなって見せますわ! 毎日、牛乳だって飲みますわ!」

 

・・・・・すごい気合いの入れようだ。

 

成長した姿の小猫ちゃんが音もなく前方に進んでいく。

そのまま右手を横にすると、その先に大きな車輪が出現した。

その車輪が白い炎に包まれていく。

 

『――――火車。猫又が操る能力の一つです』

 

火車・・・・その名前は聞いたことがあるね。

 

確か―――――

 

「火車は死者をあの世に誘う妖怪で、猫又のもう一つの姿とも言われている。死者から起き上がって吸血鬼となった奴等にとっては、技の特性上、必殺の一撃となるだろう。問題は聖杯で強化された奴等に効くかどうかだが・・・・」

 

先生が顎に手をやりながら言う。

 

小猫ちゃんは宙にいくつもの火車を出現させると、それを吸血鬼の戦士達に向けて放っていく。

 

火車は勢いよく回転しながら、高速で彼らのもとに飛んでいく!

 

「見知らぬ技だが、この程度!」

 

不敵な笑みと共に火車を回避するが――――避けた途端に火車は軌道を変えて縦横無尽に吸血鬼を追い回していく!

 

そして、ついには吸血鬼の一人を捉えた!

火車の直撃を受けた吸血鬼が白い炎に包まれていく!

 

「う、うわあああああああっ!」

 

絶叫をあげながら、その吸血鬼は灰と化していく。

 

その光景に他の吸血鬼が驚愕していた。

 

「な、なぜだ!? なぜ燃える!? 我らは聖杯により、炎すら寄せ付けない体を手にいれたはずだぞ!?」

 

そんな彼らに小猫ちゃんが無慈悲に言う。

 

『いくら強化しようと無駄です。その炎は死者を燃やし尽くすまでは決して消えることはありません。仙術の応用により、取り込んだ自然の気を浄化の力に変えていますから。弱点どうこうの理屈ではありません。あなた達の存在理由、真理そのものを根源から作り替えない限り、炎はあなた達を燃やし尽くします』

 

浄化の力。

小猫ちゃんはそのような力を使えるようになっていたのか。

 

お姉さんとの修行でレベルアップしていたようだけど、ここまでのものとは・・・・・。

 

先生がうなる。

 

「匙の黒炎とは対極のものだな。あちらは負の力で永遠に呪い、こちらは正の力で清めてしまう」

 

清めの力。

 

であれば、魔の存在である悪魔の僕達も容易に触れることは避けた方が良さそうだ。

 

美羽さんが先生に訊く。

 

「イグニスさんの炎は?」

 

「あれは単なる火力だろ。ま、魂まで燃やし尽くすような馬鹿げた火力だがな。つーか、あの女神の力は底が見えん。あれで一部なんだろう? 本来の力はなんだってんだよ・・・・」

 

そう言って、先生は深く息を吐いた。

 

・・・・小猫ちゃんの火車や匙くんの黒炎も怖いけど、真に恐ろしいのは異世界の女神なのかもしれない。

 

 

 

~そのころのイグニスさん☆~

 

 

 

『へっくち!』

 

「イグニスがくしゃみなんて珍しいな。風邪か? つーか、おまえって風邪引くの?」

 

『さぁ? 誰かが私を呼んでるのかもね。私の出番かも☆』

 

「あー、それは歴代の先輩だな。ぼちぼちSMが切れてきてるから騒ぎ出すぞ?」

 

『まっかせなさーい! 私の究極の鞭捌きで彼らを天国へ送ってあげるわ!』

 

「いや、既に死んでるからね? 残留思念だからね?」

 

『そういえばそうね。あ、そうそう。一つだけ言っておくわ』

 

「なんだよ?」

 

『私はいつでもノーパンよ♪』

 

「それは知ってる」

 

 

異世界の女神さまはいつでも平常運転だった。

 

 

 

~そのころのイグニスさん☆、終~

 

 

 

「なら、攻めるまでだ!」

 

吸血鬼の一人が回避を諦め、小猫ちゃんに一撃を加えようとする。

 

だが―――――拳が小猫ちゃんに触れた瞬間に、その吸血鬼は灰と化していった。

 

『今の私は浄化の力そのものです。あなた達は触れただけで消滅します』

 

小猫ちゃんが操る無数の火車は一人一人確実に、その白い炎で吸血鬼を灰にしていった。

 

「ちくしょおおおおおおおおっ!!!」

 

最後の一人も絶叫をあげ―――――消滅した。

 

片付いたのを確認して、息を吐く小猫ちゃん。

顔には少々疲労の色が見える。

 

小猫ちゃんは胸に手を当てて呟いた。

 

『・・・・イッセー先輩・・・・・おっきくなりましたよ。この姿を見せられなかったのは残念ですけど・・・・。いつか、この姿になって先輩のお嫁さんに―――――』

 

そこまで言ったところで彼女を包んでいた光が止み、元の小柄な小猫ちゃんへと戻ってしまった。

 

途端に力が抜けたように崩れ落ちていく。

 

僕は慌ててそれを受け止めると、小猫ちゃんは穏やかな寝息を立てていた。

 

「実戦での初使用だったからな。体力が一気になくなっちまったんだろう。慣れていけばより長時間かつ、消耗も少なくできるだろうさ」

 

先生がそう分析する。

 

イッセーくん、小猫ちゃんはかなり大きな進歩を遂げているよ。

 

「お疲れさま、小猫」

 

部長が小猫ちゃんの頭を優しく撫でる。

 

小猫ちゃんの奮闘のおかげで、かなり短時間でここを抜けることができた。

 

僕達は小猫ちゃんを抱いて、次の階層へ向かっていく。

 

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 

 

 

「この地下道を進めば、城の地下へと辿り着けますわ」

 

エルメンヒルデがツェペシュ派の政府側から入手していたという城の見取り図を見ながら、そう教えてくれる。

 

俺達はクーデター派の兵士達を薙ぎ払いながら、戦場と化した城下町を駆け抜け、城に繋がるという隠し通路の入口に辿り着いていた。

 

元々は非常時の脱出用なんだろうけど・・・・。

まさか、こういう風に使われることになるとはね。

 

カーミラ側や俺達に知られることになったのは政府側にとっても痛いだろうに。

 

ま、今回はそんなこと言ってる場合じゃないけどさ。

 

俺は戦場の声に耳を傾けた後、エルメンヒルデに言った。

 

「エルメンヒルデはこれからカーミラ側の人達と合流するんだろう?」

 

「はい。カーミラさまより任されているので」

 

「それじゃあ、ティアもついて行ってやってくれ。ティアもいれば、外側の連中は速攻で片がつくだろう?」

 

「それはそうかもしれんが・・・・良いのか? この先にはクロウ・クルワッハがいるのだろう?」

 

それはそうなんだけどね。

 

皆が向かうのは最下層にある祭儀場。

そこに辿り着くまでにいくつかの階層を通る必要がある。

 

下に行けば行くほど強者を配置するのが妥当なところ。

それを考えると祭儀場の近辺にクロウ・クルワッハがいる可能性は大きい。

 

リリスって可能性もあるが・・・・できればそちらは考えたくないな。

オーフィスと瓜二つってのもあるんだけど、リゼヴィムに利用されてるって考えるとな・・・・。

 

それでも戦わないと進めないなら戦うしかないんだけどさ。

 

エルメンヒルデが城の見取り図を手渡してくる。

 

「これを渡しておきますわ。この通路を進んでいけば辿り着けると思いますが・・・・念のため」

 

「そっか。ありがとな。アリス、行くぜ」

 

「了解。それじゃあ、さっさと美羽ちゃん達と合流しましょうか」

 

俺とアリスはここで二人と別れ、地下へと繋がる通路を進んでいった。

 

 


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