ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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10話 吸血鬼、動き出します!

バチバチと火花を散らせながらこちらへ歩み寄ってくるアリス。

 

既に戦闘モードに入っているのか、髪も金から純白に変わってる。

 

俺は息を吐く。

 

「先に戻るよう言ったろ?」

 

「お生憎さま。私はあんたの『女王』よ? 『王』たる者、常に『女王』を傍らに置くものってリアスさんに言われてなかったかしら?」

 

アリスは肩を竦めながらそう返してくる。

 

それは・・・・言われたような、言われてないような。

 

あ、グレイフィアさんに言われたか。

 

「あんたがああいう顔してる時は何かある時。それくらい私でなくても分かるわよ」

 

「ハハハ・・・・・。皆は?」

 

「皆には城に戻ってもらったわ。大勢で動くと大事になりかねないし。あんたもそのつもりだったんでしょ?」

 

どうやらお見通しのようで。

 

吸血鬼に監視されている以上は出来るだけ大きな騒ぎは起こしたくない。

そう思っていたのは事実だ。

 

自身の気を消すことで、監視役から俺の存在を認識できなくすることは出来る。

俺はそうやって監視を撒いた。

 

もちろん、俺を見失ったことで騒がれるだろうから、出来るだけ早くに戻る必要があるけどね。

 

・・・・ちょっと待てよ。

 

アリスが皆と別れて、ここにいるってことはアリスにも当然、監視がつくよな。

 

もしかして、こいつ。

 

「おまえ・・・・監視は?」

 

「んー・・・・あそこ」

 

アリスが指差す方を見ると・・・・・吸血鬼が一人、ベンチの上でのびていた!

 

おいおいおいおいおい!

 

「おまえ、何した!?」

 

「なにって、軽く手刀決めただけだけど?」

 

そう言って、手を上下に動かしてジェスチャーするアリス。

 

手刀決めたの!?

 

相変わらず、無茶苦茶しやがるな!

手荒すぎるだろ!

 

あの吸血鬼、白目むいてるけど・・・・死んでないよね!?

大丈夫なんだよね!?

あとで吸血鬼殺しなんて呼ばれたりしないよね!?

 

マジで勘弁してくれ!

あとで色々言われそうで怖いよ!

 

いくらマリウスでも流石にこれは言い返す自信ないよ!?

 

「ま、小さいことは気にしない気にしない。男ならドーンとかまえなさいよ」

 

「おまえはドーンってしすぎ!」

 

「それが私の良いところ!」

 

「あ、こいつ、自分で言いやがった!?」

 

確かに君はドーンと構えてるよね!

良い意味でも悪い意味でも!

 

ちくしょう、そんな胸張って堂々と言いやがって!

おっぱい揉んじゃうぞ!?

 

「でも、私を見失って騒がれるよりはマシでしょ?」

 

「そりゃ、そうだけど・・・・。いや、一人連絡が取れなくなったって余計に騒ぎそうな気がする」

 

「あー、それはあるかも。よし、その時は期待してるわよ、主様!」

 

「全責任を擦り付けられた!?」

 

ひでぇ!

 

都合の良い主様だな、おまえのは!

君、完全に俺を舐めてるよね!

 

よし、決めた!

騒動が終わって、日本に帰ったらお仕置きだ!

 

帰ったら、おっぱい揉んでやるぅぅぅぅうう!

 

『良く言ったわ! それでこそ、イッセーよ!』

 

なんで、シリアスな空気で黙ってたのに、この空気になった途端に口を開くんだよぉぉぉぉぉぉ!

 

イグニスの出番、いくらでもあったじゃん!

異世界の話とか、ロスウォードの話とか、おまえが話すところあったじゃん!

 

『だって、シリアスな空気に私はお邪魔かなーって』

 

このバカちん!

この駄女神!

そんなところに気使わなくていいわ!

 

アリスが赤面しながら胸を突き出した。

 

「い、いいわよ! 好きなだけ揉めばいいじゃない! お仕置きすればいいじゃない! 私は・・・・あんたがしたいなら・・・・いつでも・・・・はぅぅぅぅ」

 

おーい!

声が段々小さくなってますけど!?

涙目になってますけど!?

 

なにアーシアみたいな声だしてるの!?

可愛いけどさ!

 

胸がキュンってときめいちゃったじゃないか!

 

おまえがそんな声出したら、ついつい抱き締めたくなるんだよ!

 

・・・・あ、今はダメか。

 

火花飛び散らせてるし、抱きついたら黒焦げになっちまう。

 

「へぇ、これが噂のシリアスブレイカーなんだ。面白いね~」

 

アセムが何か言ってる!

 

「噂なの!?」

 

「そうだよ~。『禍の団』の構成員の間では『赤龍帝眷属が関わるとどんなシリアスも粉々に破壊される』って恐れられてるからね~」

 

なにそれ!?

俺達、そんな風に恐れられてるの!?

初耳なんですけど!?

 

なんか、ゴメン!

良く分からないけど、本当にゴメン!

テロリストに頭下げるのはどうかと思うけど、それに関しては謝る!

マジでゴメン!

 

「アッハッハッハッ♪」

 

アセムのやつ、爆笑してやがる!

 

腹立つけど、この空間を作ったのは俺達だから何も言えねぇや!

 

くそったれ!

 

ここしばらくシリアスが続いてたと思ってたのに、ここに来てこれか!

涙が出てくるぜ!

 

『・・・・そろそろ話を戻した方が良いんじゃないか? 流石に脱線しすぎだ』

 

ナイス指摘だ、ドライグ!

これ以上いくと戻れなくなりそうだもんな!

 

俺はコホンと強く咳払いした後、アセムを見据える。

 

アリスもそんな俺を見て表情を真剣なものにした。

 

「あの子供は・・・・何者なの?」

 

目を細め、そう訊いてくる。

 

最大限に警戒を強めているな。

 

まぁ、さっきのを見ればそうなるだろうし、こいつが醸し出すオーラは不気味だ。

 

俺は声を低くして答えた。

 

「あいつの名前はアセム。アスト・アーデの神の一角だ。そして―――――ロスウォードの産みの親の一人でもあるらしい」

 

「っ!?」

 

その情報に目を見開き、言葉を失うアリス。

 

「あんたが・・・・・あんたがアレを作った・・・・?」

 

「そうだよー。僕をメインにした複数の神々ってのが正確な答えだけどねー」

 

「・・・・・なんでよ」

 

そう呟くと、アリスは悲痛な声で続けた。

 

「なんで、あんなのを作ったのよ・・・・! アレのせいで私達の国は滅茶苦茶になった・・・・!」

 

「んー、まぁ、そうだね。でも、そこの勇者くんが頑張ったおかげで、壊滅はしなかったんでしょ? ならいいじゃん。君がここにいるのも、国の復旧が進んだからなんでしょ?」

 

「ふざけないで! そのせいで、民は傷ついた! 私達の親しかった人達も死んだわ! イッセーだって・・・・!」

 

そうだ、俺は一度ロスウォードに殺された。

アスト・アーデの人達もたくさん傷ついた。

 

たとえ、それがあいつの意思でなくとも。

こいつらが施した呪いのせいで、あいつは力を振るい続けることになった。

 

しかし、アセムは軽い口調で、

 

「アハハ♪ 最終的には片付いたんだし、いいんじゃない? 中々見れるものじゃないよー? 人も魔族も、そして神までもが一つになれる瞬間なんてね。貴重なものが見れたし、よかったじゃん」

 

その瞬間――――――

 

アリスから莫大な白いオーラが放たれた!

 

アリスから放たれる殺気が白い雷となって、広場を抉っていく!

木々がざわめき、敷き詰められたレンガが弾け飛ぶ!

 

「ふ・・・・ざけるなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

カッと目を見開き、殺気全開でアセムに急接近する!

 

あいつ、この場でアセムを殺す気だ!

 

大切な国をあれだけ無茶苦茶にされたのに、未だに楽しそうにしているこいつを見て、アリスが怒らない訳がない。

 

だけど、迂闊すぎる!

あいつ、怒りに呑まれてやがるぞ!

 

アリスの槍がアセムを貫こうとした、その直前―――――

 

横合いから何かがアリスに向けて突っ込んできた。

 

「っ!」

 

それに気づいたアリスは咄嗟に槍でガードするものの、勢いまでは殺せず、吹き飛ばされてしまう!

 

ちぃっ!

 

俺は瞬時に領域(ゾーン)に突入し、先回り。

アリスが家屋に突っ込む前に何とか受け止めることができた。

 

「バカ野郎! 乗れば思う壺だぞ!」

 

俺は声を荒くした。

 

今の・・・・ギリギリのところで防げたから良かったものの、少しでも遅ければ危なかった。

 

「ご、ごめん・・・・・」

 

それが分かったのか、アリスは申し訳なさそうに謝る。

 

「・・・・おまえにケガがないなら、いい。・・・・誰だ、そいつは?」

 

俺は視線をアセムの・・・・隣に立つ者に移す。

 

浅黒い肌にアセムと同じ髪色の長髪。

背もアリスくらいで高く、顔立ちも中々の美女。

 

布面積が少なめの黒いドレスを着ていて、エッチな体つきが良くわかる。

眼福だけど、よくあれで動けるな。

寒くないのかな・・・・・?

 

手には禍々しい装飾が施された黒い槍。

 

その女性はふふんと笑う。

 

「お父さまに手を出そうなんて千年早いわよ、小娘」

 

「お父さまは止めてよー。どう見ても君の方が年上なんだからさ。おっと、紹介するよ。この子はねー」

 

アセムがそう言うと、女性はくるくると槍を回してニッコリと微笑む。

 

「やっほー、噂の勇者さま♪ 私はアセムお父さまの娘。『武器庫(アセナル)』のヴィーカよん♪ よろしくー」

 

ヴィーカと名乗った女性。

 

む、娘・・・・?

 

怪訝に思う俺にアセムが言う。

 

「この子はね、僕が作った下僕の一人だよ。ロスウォードと比べると力はかなり劣るけど従順で良い子なんだ」

 

ロキがヘルを作り出したみたいな感じか。

 

「あと、たまに夜伽もしてくれるんだー」

 

「はぁっ!?」

 

ついつい、その情報に反応してしまう俺!

 

え、なに、こいつ・・・・

 

「娘に何させてんだよ!?」

 

「いや、娘というより、下僕だからね?」

 

「いや、それでも問題あるだろ!?」

 

俺がそう言うとアセムは少し困り顔で言った。

 

「んー、最初はそんなつもりじゃなかったんだけど・・・・。やっぱり人間の体を使ってるだけあって、元気になっちゃうんだよね。いやー、参った参った♪」

 

うっ・・・・それは分かる!

 

そうか、元気になるのか!

それは仕方がない!

男の子の宿命だもん!

 

「なんで、そこでうんうん頷いてるのよ」

 

おっと、アリスさんが半目で見てくるぜ。

 

でも、あんな子供があんなお姉さんに夜のお相手をしてもらえるのは羨ましい!

 

俺だって小学生の時はそれに憧れたんだよ!

 

ちくしょう、俺の小学生の時の夢を叶えやがって!

許さねぇ!

 

ヴィーカもおっぱい大きいじゃないか!

 

揉んだのか!?

吸ったのか!?

挟んだのか!?

 

子供の癖に生意気だ!(神だけど!)

 

「あーもう! あんた、どれだけ反応してるのよ!」

 

「ぐべらっ!」

 

ぐぅぅぅぅ・・・・アリスパンチが顎に・・・・

 

超痛い!

 

この光景にアセムが笑う。

 

「アハハ♪ いいね、君達♪ 見ていて飽きないよ」

 

俺は顎を擦りながら答える。

 

「イテテテ・・・・。そりゃ、どうも。・・・・おまえ、さっき下僕の一人(・・)って言ったな? 他にもいるのか?」

 

「まぁね。一応、この町にも連れてきているよ。ヴィーカ、あの子達は?」

 

アセムがヴィーカに問う。

 

「今頃、その辺りの店でのんびりお茶してるんじゃないかしら? こっちは私だけで十分だって言って、どこかに行ったから」

 

自由だな、こいつら・・・・。

 

アセムの下にヴィーカ、それから他にも何人かいるのか・・・・。

 

このヴィーカって女性、かなりラフな雰囲気だけど・・・・強い。

周りが見えていなかったとはいえ、アリスを吹き飛ばしたぐらいだからな。

 

他の下僕とやらもヴィーカと同じレベルと見た方が良いだろう。

 

警戒を強める俺とアリス。

 

ヴィーカが言う。

 

「あら? やる気? 私はいいけど?」

 

「ダメだよ、ヴィーカ。今は戦うためじゃなくて、話すために来たんだから。それにボチボチ、リゼ爺も動くだろうし、勇者くん達もそっち行かせてあげないとね」

 

「なに・・・?」

 

俺はアセムの言葉に片眉をあげた。

 

「リゼヴィムが動くのか?」

 

そう問うとアセムは微笑みを浮かべる。

 

「あれ? 君達は気づいてなかったんだ。あれを見てごらん」

 

アセムが指差す方向――――――城の方を見ると、巨大な光の壁が城を覆うように発生していた!

 

あれは・・・・魔法陣の光か?

 

「マリウスくんはヴァレリーちゃんの聖杯を抜き出すんだって。そんなことをすれば、どうなるか・・・・分かるよね?」

 

―――――っ!

 

そうかよ・・・・・!

あの『解放』という言葉の意味はそういうことか!

 

となると、あれは神器を――――神滅具を抜き出す術式魔法陣の光ってことか?

 

この場に先生がいれば、それもハッキリするけど・・・・。

 

どのみち急ぐ必要がある!

 

以前、先生から聞いた話では適切な処置をしなければ、神器を抜かれた者は死ぬ。

神器は魂と結び付いているから、ちゃんとした方法で取り出さないとダメだそうだ。

 

マリウスがそこまで気を使うとは思えない!

 

アセムが軽い口調で言う。

 

「早くしないと間に合わなくなっちゃうよ? リゼ爺のショーにもね。アハッ、楽しみだよ。君達の驚く顔が見れそうでね」

 

「あんたねぇ・・・・!」

 

アリスが憎々しげに睨み付けるが、ここでこいつらを相手にしている時間はない。

 

俺はアリスの手を引いて叫ぶ。

 

「アリス! 今はヴァレリーのところに急ぐぞ! 皆も動いているはずだ!」

 

「了解!」

 

俺達はその場を離れ、城へと急行した。

 

アセム達は追ってくる様子もなく、それどころか、こちらに手を振って見送ってくるぐらいだ。

 

アセムが言っていた『ショー』ってのが気になる。

 

リゼヴィムは一体、何をしようとしているんだ?

 

嫌な予感しかしねぇ・・・・!

 

俺は走りながら、ティアへ緊急の連絡を入れた。

 

 

 

 

[三人称 side]

 

 

一誠達が広場を去り、その背中を見送るアセムとヴィーカ。

 

ヴィーカがアセムに問う

 

「行かせて良かったの?」

 

「まぁね。ここで彼と戦っても良かったけど、それだと面白くない。今の彼には勝てるし」

 

そう言うと、アセムは手のひらを一度握って、開いた。

 

確かに自分の力はこの体に乗り換えた時に大きく削がれた。

それでも、長い時の中で失われた力も回復しつつある。

 

今、真っ正面から戦えば勝つのは間違いなく自分だろう。

 

しかし、それはアセムの性格上したくなかった。

 

「勝敗の見えてる勝負ほどつまらないものはないよ。今は彼の成長を楽しもうかな♪」

 

「そうですか」

 

「あれ? 不満かな?」

 

「いいえ、お父さまがそれで良いのなら」

 

アセムは唇を尖らせる。

 

「もー、お父さまは止めてよ~。見た目的にはヴィーカの方がお姉ちゃんなんだからさぁ。あ、でも、戦いたいなら別にいいよ? これは僕が勝手に言ってることだし。それを君達にまで強制はしないよ」

 

「あら、お見通しでしたか」

 

手を口許に当ててうふふと笑むヴィーカ。

 

アセムは背を伸ばす。

 

「さてさて、僕達も戻るとしようか。・・・・・ところでさ、寒くないの?」

 

アセムは今のヴィーカの格好を見て、そう訊く。

 

今のヴィーカの格好は薄着。

しかも、露出も多く、胸元が大きく空き、へそも丸出しだ。

 

この極寒の地で寒くないはずがない。

 

しかし、ヴィーカは笑んだ。

 

「大丈夫です。この通りカイロ持ってきてますから♪ へっくち!」

 

「・・・・・・僕のパーカー、貸そうか?」

 

 

[三人称 side out]

 

 


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