ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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7話 ゲーム終了!! そして・・・

[木場 side]

 

『ライザー・フェニックス様、リタイア。よってこのゲーム、リアス・グレモリー様の勝利です!!』

 

 

そのアナウンスが流れた時、運動場にいた僕達グレモリー眷属、ライザーの眷属の全員がその瞬間を見ていた。

 

イッセー君がライザーを倒す瞬間を。

 

―――圧倒的だった。

 

ライザーは決して弱いわけではない。

 

レーティングゲーム公式戦でのライザーの戦績は10戦2敗。

 

2敗は懇意にしている家への配慮だから実質無敗。

 

既に公式でタイトルを取る候補として挙げられているほどだ。

 

それらを考慮すると若手の上級悪魔の中でも強い方だろう。

 

 

そのライザーの攻撃をものともせず、イッセー君は圧倒していた。

 

そして、イッセー君が最後に放った技。

 

その技は極大の光の奔流となってライザーを呑み込んだ後も、そのまま空へと伸びていき、破壊音と共にゲームフィールドに大きな穴を開けた。

 

………ゲームフィールドに穴を開けるなんて聞いたことがない。

 

イッセー君が放った攻撃は明らかに魔王クラスのものだ。

 

しかも、神器を使わずにそれだけの技を繰り出していた。

 

そして、不死身であるはずのフェニックスを倒したんだ。

 

十日間の修業を経て、僕達は強くなれた。

 

このゲームでも以前より強くなれたことを実感できた。

 

だけど、イッセー君を見て今の状態で満足できないと思えた。

 

もっと強くなりたい。

 

僕を救ってくれた部長を守れるようになりたい。

 

そう思った瞬間だった。

 

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

俺の体はとてつもない脱力感と疲労感に襲われている。

 

おまけに右腕が痺れている状態だ。

 

アグニ―――長時間溜めた気を一気に解放して放つ超火力砲。

 

素の状態でも禁手と同じくらいの破壊力を出すことができる。

 

ただ、技を放つのに時間がかかるのと放った後に反動が来るのがこの技の弱点だ。

 

「以前使ったときよりも反動が大きいな………」

 

俺がそう呟いたとき、左手の甲に宝玉が現れた。

 

ドライグだ。

 

『仕方があるまい。今の技は本来、籠手の力を使って放つ技だ。それを籠手なしで使ったのだ。反動も大きくなるさ』

 

ドライグの言う通りで、アグニは本来、籠手の倍加の力を使って放つ技だ。

 

その方が反動が小さいからな。

 

今回、籠手を使わなかったのは一応の理由がある。

 

『いくら、リアス・グレモリーのためとはいえ、少々無茶をし過ぎだ』

 

大丈夫だって。

反動が大きいといっても、もう少しで痺れとかも無くなるから。

 

それより、部長や皆にはそのことは黙っといてくれよ?

余計な心配はかけたくないからな。

 

『ああ。分かっている。そんな野暮なことはしないさ』

 

よし。

 

とりあえず、部長の所には戻るとするか。

 

 

 

 

「部長、大丈夫ですか?」

 

旧校舎に戻った俺は屋根の上で休んでいる部長の元に駆け寄った。

 

部長が着ている制服はもうボロボロだ。

 

ただ、アーシアの治療のお陰で怪我はすっかり治っているようだ。火傷の跡もない。

 

よかった。

 

「ええ。まだ体が痺れているけど、大丈夫よ。それより、イッセーの方は大丈夫なの?」

 

「俺は何ともないですよ。少し疲れましたけど怪我はありません。………まぁ、制服はボロボロですけど」

 

俺の制服はライザーの炎のお陰で部長と同じくボロボロだ。

 

特に上半身なんかは布地がほぼ失われているから裸に近い。

 

『まぁ、服は相棒の体と違って頑丈じゃないからな』

 

これ、買い換えないといけないのかな?

 

あーあ、後で母さんに何言われることやら………。

 

うん、服のことは諦めよう。

 

今更考えても仕方がないし。

 

「とりあえず、木場達の所に行きますか?」

 

「そうしましょう、と言いたいところだけど。まだ動けないのよ。・・・ごめんなさいね」

 

「あー、そうでしたね。じゃあ、少し失礼して」

 

部長を抱き上げる。

 

すると、部長は焦りだした。

 

「え? ………ちょ、イッセー!?」

 

「すいません、部長。嫌でしょうけど、今は我慢してください」

 

「………いや、じゃないけど………。こんな………お姫様だっこなんて、私………」

 

部長は顔を真っ赤にしながら何かを呟いた。

 

最後の方は聞き取れなかったけど、とりあえず許してくれたみたいだ。

 

「アーシア、飛べるか?」

 

「は、はい!大丈夫です」

 

アーシアが少し頬を膨らませているけど、何かあったのか?

 

まぁ、いいか。

 

「じゃあ、行こうぜ!」

 

この後、俺達は運動場にいた木場達と合流。

 

三人ともとくに大きな怪我をしている様子は無く、無事だった。

 

そして俺達、グレモリー眷属は誰一人欠けること無く、全員揃って部室に帰ることができた。

 

 

 

 

[三人称 side]

 

 

ここはレーティングゲームの観戦ルーム。

 

今回の縁談に関係しているグレモリー家とフェニックス家の者が集まっている場所である。

 

この場にいる全員が息を飲んでいた。

 

当初、このゲームは見るまでもなくライザーが勝つと思われていた。

 

いくら、リアス本人や眷属がどれだけ才能が高くとも、まだ成人すらしていない未熟な者達がフェニックスを倒すところなど一部の者を除いた全員が想像していなかった。

 

その一部の者―――サーゼクスは一人笑みを浮かべていた。

 

彼だけはイッセーの勝利を疑っていなかった。

 

ただ、あそこまでの実力とは思っていなかったが………。

 

「驚きましたな」

 

「ええ、話には聞いていましたが、まさかこれほどとは」

 

今、椅子に腰かけて話している二人はグレモリー卿とフェニックス卿。

つまり、リアスとライザーの父親だ。

 

「サーゼクスよ。彼の名前は何といったか?」

 

「兵藤一誠君です。父上、どうかされましたか?」

 

「いや、一つ気になることがあってな。私には彼が赤龍帝の神器を使っていなかったように見えたのだが………」

 

それを聞いてサーゼクスはああ、と納得する。

 

彼には何となくイッセーが神器を使わなかった理由が分かっていた。

 

「ええ。彼は神器は一切使っていませんよ」

 

その言葉に反応したのは、フェニックス卿だ。

 

「なぜ彼はそんなことを?神器を使えばもっと楽にライザーは倒せたでしょうに」

 

フェニックス卿の最もな意見にグレモリー卿も頷く。

 

確かに、イッセーは神器を使えば最後にあれほど疲労せずに済んだのだ。

 

では、なぜ使わなかったのか。

 

「仮に彼が神器を、赤龍帝の力を使っていればどうなると思われます?」

 

サーゼクスの問いに二人は考える。

 

「おそらく、一部の貴族の方の間ではリアスはこう言われるでしょう。『リアス・グレモリーは伝説のドラゴンを使って無理矢理、婚約を解消した』と」

 

「まさか・・・」

 

「ええ。これはあくまで私の想像ですが、彼はリアスの先のことを考えて、このゲームに臨んだのでしょう。リアスが他の貴族の方から揶揄されないようにするため、あえて赤龍帝の力を使わなかったのでしょう」

 

サーゼクスの言葉に二人は驚きを隠せないでいた。

 

イッセーが今回の縁談だけでなく、リアスの今後のことを考えながら戦っていたことに。

 

しばらくの間を置き、グレモリー卿はフェニックス卿の方へと向きを変える。

 

「フェニックス卿。今回の結婚、このような形になってしまい大変申し訳無い。無礼承知で悪いのだが、この件は・・・・」

 

「みなまで言わないでください、グレモリー卿。今回の縁談、残念な結果になってしまったが、息子にとっては良い勉強になったでしょう。フェニックスは絶対ではない。これを学べただけでも今回は十分でしょう」

 

「そう言っていただけると、こちらも助かります」

 

「グレモリー卿。あなたの娘さんは良い下僕を持ちましたな」

 

「………しかし、まさか私の娘が赤龍帝を眷属にするとは思いもしませんでした。―――次はやはり」

 

「ええ。目覚めているかも知れませんな。―――白い龍(バニシング・ドラゴン)。赤と白が出会うのもそう遠い話ではないでしょうな」

 

 

[三人称 side out]

 

 

 

 

 

 

部室に帰った後、シャワーを浴びて汗を流したりしてから少しゆっくりした。

 

そういえば、部室のシャワーって初めて使ったな。

 

ちなみに、俺のボロボロになった制服は朱乃さんが魔力で修復してくれた。

 

これで母さんに怒られなくてすむな。

ほっとしたぜ。

 

木場や朱乃さん、小猫ちゃん、そしてアーシアも先に帰った。

 

アーシアは小猫ちゃんが家まで送ってくれるみたいだから安心だ。

 

 

部室には俺と部長の二人っきりだ。

 

俺はソファに横になり、部長は動けるようになったので、シャワーを浴びている。

 

いつもの俺ならもっとテンションが上がるんだけど、流石にアグニを放った後だからな。

 

性欲に体が着いてこず、グッタリしている。

 

まぁ、部長の裸は妄想の中で楽しむさ。

 

もう少ししたら帰るか。

 

美羽にはメールしたけど、心配してるだろうし。

 

そんなことを考えているとシャワー室からバスタオルを巻いた部長が出てきた。

 

おお!

 

やっぱり、部長のおっぱいは最高だな!

 

そんなことを考えていると部長がそのままの格好で俺の所に寄ってきた。

 

「イッセー、本当に大丈夫なの?」

 

「え?」

 

「だって、凄くダルそうにしてるし………」

 

「まぁ、少し体が重いですけど、もう少ししたら完全に回復するんで、大丈夫ですよ」

 

「そう、それはよかったわ」

 

部長はそう言って微笑み、俺の隣に座る。

 

なんだろう。

 

部長が少し緊張しているような………。

 

「部長、どうかしました?」

 

「………私ね。嬉しかったの。ライザーにやられそうになった時、助けてくれて」

 

「部長を助けるのは当然ですよ。守るって約束しましたからね」

 

「………それでね、イッセー。少し目を閉じてもらえるかしら? 渡したいものがあるの」

 

「え? あ、はい」

 

渡したいものってなんだ?

 

俺は部長に言われた通りに目を閉じる。

 

すると、俺の唇に何か柔らかいものが当たった。

 

目を開けると―――

 

部長が俺の首に手を回し、唇を俺へ重ねていた。

 

キス―――。

 

一分ほど唇を重ねた後、部長の唇が離れていく。

 

なっ!?

俺、部長とキスしちゃったよ!!

 

やばい!

俺、完全にフリーズしてたよ!!

 

「私のファーストキスよ。今日頑張ってくれたから、そのお礼よ」

 

「えええ!? いいんですか!? 俺なんかにファーストキスしちゃって!?」

 

「もちろんよ。あなたはそれだけのことをしてくれたもの」

 

頬を赤らめながらニッコリと微笑む部長。

 

そして、俺に抱きついてきた。

 

「ありがとう、イッセー」

 

いつもの部長の声だ。

 

ようやく、緊張が解けたようだ。

 

よかった。

 

部長に笑顔が戻ってくれて。

 

 

 

 

「私、イッセーの家に住むわ」

 

「へ?」

 

部長が着替えた後、いきなり言ってきた。

 

「すいません。部長………もう一度お願いします」

 

「イッセーの家に住むわ」

 

「な、なんで!?」

 

「下僕との交流を深めたいからよ。それにイッセーに鍛えてもらいたいからね。一石二鳥よ」

 

「いやいや、別に家に住まなくても修業くらい付き合いますよ!?」

 

俺がそう言うと部長は突然、上目使いで俺を見てくる。

 

そして、モジモジしながらこう言った。

 

「私と、一緒に住むのは………イヤ?」

 

 

ズキューーーン!!

 

 

今、俺のハートが撃ち抜かれた気がした。

 

な、何と言う破壊力!

 

いつもお姉様として崇められている部長が上目使いをするとここまでの破壊力があるのか!

 

そんなウルウルした目で見ないで!

 

そんな目で見られたら俺は………っ!

 

「わ、分かりました。とりあえず、親に聞いてみます………」

 

それから母さんに電話したところ、なんと即OK。

 

俺達が居ない間、家の大掃除をしたら部屋が一つ空いたらしい。

 

「何をおいてたんだよ!」とツッコミを入れてしまった。

 

というわけで、家に部長が住んでも問題ないと言われた。

 

なんて都合の良い展開なんだ………。

 

「そういうわけで、イッセー。明日からよろしくね」

 

ウインクしながら言う部長。

 

なんか、凄い展開になったな。

 

まぁ、良いか。

 

俺の日常は更に賑やかになりそうだ。

 

 




第二章はこれにて完結!

次回は一応、番外編を書こうと思いますが、気分次第でエクスカリバー編に入るかもしれません。

その時はご容赦を。

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