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「そういうわけで、学園の破損箇所は後程修復します。美羽さんの魔法で眠っていた生徒達を含め全校生徒は全て下校させました」
魔法使いを倒した俺は転移してきたソーナから報告を受けていた。
転移してきたメンバーは駒王町に残ったオカ研メンバーとシトリー眷属。
中にはレイヴェルもいて、表情は少し辛そうだが、隣に小猫ちゃんがいてくれているし、今はそちらに任せよう。
ソーナに続き、真羅先輩が口を開く。
「アザゼル先生が置いていかれた生徒の記憶をつかさどる装置が役に立ちました。魔法使いに襲撃されたという生達の記憶を『変質者が校内に侵入して、学校が臨時休校となった』というものに置き換えてあります」
アザゼル先生が抜け目ないおかげで、その辺りは問題なさそうだな。
ただ、この記憶の改変はあんまりやると記憶に悪影響が出るらしく、本来は限定条件をつけてやるそうだ。
それで、今回は変質者が「校内に侵入した」って設定に塗り替えたのか。
「破壊された場所については?」
「それは緊急の補修作業が同じ日に重なったというものに記憶を変換しています。・・・・あのような騒ぎがあったのに、学校から抜け出した者がいなくて幸いでした。携帯機器などで記録したであろうものについても三大勢力のバックアップでなんとかなりそうです」
と、ソーナは教えてくれた。
つまり、魔法使いや俺達の正体を含め、学園の裏の顔はバレずに済んだってわけか。
いや、でも・・・・・
真羅先輩が悔しそうにする。
「今回のことでショックを受けた生徒の心の傷は完全には消えません。記憶は変えられても体験した恐怖までは書き換えられませんから・・・・」
・・・・そうだよな。
あの人質にされた女子生徒。
魔法使いの記憶はなくなっても、怖い者に襲われたトラウマは残る。
きっと、家に帰った今でもそのことが頭から離れずに震えているかもしれない。
魔法使いのせいなのは間違いない。
でも、学園の生徒までもが被害を受けたのは学園が一般人に偽って運営していることが問題でもある・・・・か。
異形の存在が、一般人に紛れて生活をしている。
特に俺達のように前線で戦い続けて、敵の多い者達がそれをすることは、周囲を巻き込むことに繋がる。
今回はそれを深く痛感したよ。
そりゃあ、悪魔は悪魔らしく冥界にいれば、一般の人間を巻き込まずに済んだだろう。
でも、人間界で暮らしたい、勉強したいというリアスやソーナ達の気持ちは本物で・・・・・。
俺だって生まれ育ったあの町にいたい。
一般人からすれば勝手なわがままに聞こえるだろうけど、それでも俺達は―――――。
「えっと、ずっと気になってたんだけど、その二人は・・・・?」
などと考えていると美羽がとある二人を指さしてソーナに訊いていた。
視線を移すと大柄な男性とローブを被った小柄な何者か。
男性の方は灰色の髪をしていて、前髪が長く、目元が隠れている。
整った顔立ちだ。
・・・で、一番気になってたのがその横のローブの人。
仮面を被り、鎌を持った姿は完全に死神なんだよね。
ソーナが連れてきたってことは大丈夫なんだろうけど・・・・。
ソーナが答える。
「この二人は私の新しい眷属です。こちらの男性は駒王学園大学部に在籍するルー・ガルーさんです」
すると、男性は無骨そうな反応と言葉少なに、
「・・・・・ルー・ガルーだ。シトリー眷属の『戦車』をすることになった」
そう呟いた。
シトリーの『戦車』ときましたか!
そういや、新しい眷属がなんとかって聞いてはいたが、この人がそうだったのか!
つーか、大学部にこんな体格の良い人いたっけ!?
驚く俺に真羅先輩が言う。
「私達はルガールさんと呼んでいます。兵藤くんもそのように呼んであげてください」
「は、はぁ・・・・」
ルガールさんね。
うーむ、中々にテンション低めな人だが・・・・何か話す話題とかあるだろうか。
続いてソーナは死神の方の紹介をし出す。
「こちらは私の新しい『騎士』で、名前は―――」
《あっしはベンニーアと申します。元死神の悪魔ですぜ》
ベンニーアと名乗った死神が仮面を外すと――――そこにあったのは中学生くらいの女の子の顔だった!
いや、性別は気の流れで分かってたけど、今までのイメージってもんがあるからね!?
少し驚いたよ!
深い紫色の長髪と金の瞳。
眠たそうな目をした可愛い女の子!
よく見たら、死神の印の鎌には可愛いドクロの装飾がある!
そんなところでも女の子してるのか!
ロリっ子死神じゃないか!
「死神を眷属にしたの!?」
驚く俺に会長は頷く。
「ええ、ベンニーアは死神です。と言っても死神と人間のハーフ、半神ですが」
「最上級死神の一角、オルクスの娘なんだって。驚きだろう?」
匙が追加情報をくれた。
最上級死神の娘って・・・・・。
最上級死神のプルートは鎧を纏った先生と五分にやり合う実力者だったけど、そのオルクスってのが同レベルって考えると・・・・・。
こいつは、凄い力を秘めてたりするかもね・・・・。
真羅先輩が言う。
「元々『騎士』のあては別の人だったのですが、その方の都合がつかなくなりまして。そこに彼女が現れまして――――」
《あっしが名乗りでたんすよ。ハーデスさまのやり方についていけなくなったのでこっちに寝返ることにしやした》
な、なるほど・・・・・。
まぁ、あの骸骨神さま見てたらそういう人が出てもおかしくはないかなって思えるけど・・・・・。
「怪しさは凄まじいものでしたが、ある一点で信頼することにしました」
「ある一点?」
俺がソーナに問うと・・・・・ロリっ子死神が俺に色紙を突き出してきた。
《おっぱいドラゴンの旦那。あっし、旦那の大ファンですぜ。ほら、マントの裏はおっぱいドラゴンの刺繍って具合です。サインをひとつお願いできませんかね?》
あ、ほんとだ。
マントの裏に鎧の俺が刺繍されてる!
「これって自分で縫ったの?」
《もちろんですぜ。あっし、こう見えても裁縫は得意なんです。いやー、これから旦那の近くで働けるとなると胸が躍りやすぜ》
うん、この子、ルフェイと同じだわ。
ルフェイも初めて会った時にサインねだってきたしなぁ。
俺は色紙を受けとるとサラサラっとサインを書いていく。
イベントとかで書き慣れてきたから、サインも大分と上達したな。
《ありがとうございやす。こいつは一生の宝ですぜ》
ハハハ・・・・。
まぁ、そう言ってくれると素直に嬉しいよ。
さて、とりあえず現状の確認とソーナの新眷属の紹介は終わったな。
俺は魔法使いを拘束しているイリナに声をかける。
「イリナ、そいつら意識あるよな?」
「一応ね。・・・・まさか、二人で殴り込みかけるなんて。イッセー君って相変わらず無茶苦茶するよね」
息を吐きながら、少し呆れ気味に言う。
まぁ、このレベルなら問題ないしな。
アリスもいたから、楽だったし。
俺は項垂れている魔法使いに近づくと、目の前でしゃがんで問いただす。
「おい、おまえらが言ってたボスはどこにいる? この場には来ていないようだが?」
そう、こいつらを率いているというボス、つまりは今回の件の首謀者が未だに姿を現していない。
戦闘開始直後に連絡を入れていたのは確認できたが、それから時間は経っている。
「・・・・し、知らない。ボスの居場所は俺達、下の者には教えられてないんだって・・・・」
「・・・・本当、か?」
「ひっ・・・・ほ、本当なんだ!」
殺気をぶつけながら再度問うと震えながら答えてきた。
・・・・戦闘前とは別人だな。
でも、嘘は言ってなさそうだ。
それに下の者には出来るだけ情報は与えないっていう考えも理解できる。
そうなると、今回はミスったな。
首謀者捕まえて一気に終わらせたかったんだけど・・・・・
「噂通りですね」
―――――っ
突然の第三者の声。
俺達の正面、少し距離を置いたところに銀色の魔法陣が展開される。
そこから現れたのは装飾の凝った銀色のローブに身を包む何者か。
フードを深く被っているせいで、顔はわからないが声からして男だ。
この気の質、誰かに似ているような・・・・・。
その男の登場に小猫ちゃんが鋭い視線を向けているのが見えた。
俺はそいつに視線を向けながら立ち上がり、尋ねる。
「おまえが黒幕か」
「ええ、そうです」
即答か。
こいつが魔法使いが言ってたボスで間違いなさそうだ。
ソーナが男に問う。
「あなたは『禍の団』なのですか? フェニックス家の息女であるレイヴェルさんを拐った理由は・・・・あれを見れば一応の理解はできました。それを行ったあなた方の精神までは理解できませんが」
ソーナは培養カプセルの方を一瞥した後、男に嫌悪の視線を向ける。
「しかし、昼間の学園を襲撃した理由にはなりませんね。彼女を拐うなら私達がいる時よりも一人になった時の方が実行しやすかったのではありませんか?」
それはそうだ。
態々昼間の学園を襲撃しなくても、レイヴェルが一人になる機会を待てばいいだけの話だ。
その方がこいつらにとっても俺達と戦闘になるリスクが少なくて良いはずなんだ。
「まずは一つめの質問にお答えしましょう、シトリー家次期当主。私は現在『禍の団』をさせてもらっています。次に魔法使いが昼に攻撃を仕掛けたのは、単純に彼らが待ちきれなかっただけのことです。それと好奇心があった、といったところでしょうか」
「今回の襲撃はもしかして、協会が出した若手悪魔の評価が関連してますか? 兵藤一誠くんを襲った魔法使いがランクについて言及しながら、攻撃を加えてきたと聞いています」
「ええ、そうです。彼らは協会が出した若手悪魔の評価が気になったようでして。自分の魔法が通じるかどうか試したくなったそうです。本来なら、少し時間を置いた後にあなた方へ連絡を入れ、再度挑戦する予定だったそうですが、それは叶いませんでしたね」
俺とアリスが来なければ、こいつらは調子に乗ってそんなふざけたことをするつもりだった、と・・・・。
どこまでも身勝手すぎる。
男は続ける。
「若い魔法使いが多いため、自制が効きにくいところがあったのですよ」
それを聞いてソーナが納得したように頷く。
「『禍の団』で最大派閥を誇っていた旧魔王派、そして英雄派。この二大派閥が無くなり、組織の勢力図が乱れて、彼らの意見も通りやすかったということですね?」
「もはや、シャルバ・ベルゼブブと曹操はいませんので。今は私がその一部を指揮しているのですが・・・・それが中々に大変でして。今回は上の意向もあって、彼らのわがままを叶えた形になりました」
男の言葉に疑問を覚えた俺は二人の会話に口を挟む。
「ちょっと待て。上の意向だと? おまえが『禍の団』を纏めあげているやつじゃないのか?」
「ええ。私はある方より、指示を受けて動いているに過ぎません」
ある方・・・・・・?
そいつが先生が言っていた『禍の団』の残党を纏めあげている奴ってことなのか?
俺の疑問が更に深まる中、男はローブを翻して改まる。
「さて、今回の一件についてご理解いただいたところで、我々からの要求を聞いてもらいましょう。あなた達のような強者と戦いたいと願う者がいるので、お相手をしてもらえませんか? 私があなた方が揃うまで待っていたのはこの為なのですよ」
そう言う男は俺達との間に巨大な陣を作り出していく。
光が床を走り、円を描いて輝きだした。
お相手?
俺達と戦わせたいやつがいるってのか?
それから、あの魔法陣。
あれには見覚えがある。
あのでっかい龍王、ミドガルズオルムの意識を招き寄せた時に使ったのと似ている。
匙が声を漏らす。
「
そう、それ!
力のあるドラゴンを招くってやつだ!
確か龍門って呼び寄せるドラゴンの色が出るはずだ。
ドライグは赤、アルビオンは白、ティアは青、ヴリトラは黒、ファーブニルは金、
目の前に展開されている龍門の輝きは緑。
「緑・・・・五大龍王の一角、玉龍? なんで、龍王がここにーーーー」
それに玉龍は初代孫悟空と一緒にいるはずだ。
『禍の団』に加担するような真似をするだろうか?
疑問に思う俺だが、ソーナが首を横に振った。
「・・・・・いえ、あの色は緑ではありません。更に深い・・・」
そう言われて見れば確かに色が濃い。
深緑?
「深緑を司るドラゴンっていたっけ・・・・?」
イリナがぼそりとそう呟いた。
『まさか・・・。いや、しかし奴は・・・・・』
ドライグには心当たりがあるようだ。
「いたのですよ。過去に深緑を司るドラゴンがね」
銀色のローブの男がそう言い放つと、龍門の魔法陣が輝きをいっそう深くして、ついに弾けた!
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
白い空間全てを震わせるほどの声量!
俺達の眼前に出現したのは浅黒い鱗をした二本足で立つ巨大な怪物。
太い手足、鋭い爪と牙と角、巨大な両翼を広げ、長く大きい尾を持ったドラゴン。
というよりは、ドラゴンの特徴を持った巨人って感じだ。
尾も羽もあるし、頭部なんて完全にドラゴンだ。
「伝説のドラゴン、『
突如現れた巨大なドラゴンのギラギラした戦意と殺気がこの空間を満たしていった――――――