ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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5話 不穏な動き

会談が終わり、十分ほど過ぎた頃。

 

「しっかし、恐ろしいな・・・・・・・おまえの『女王』は」

 

アザゼル先生がやれやれといった表情で苦笑していた。

 

先生がこう言うのも当然だろう。

 

だって、いきなり『和平はなし』なんてこと言うんだもんな。

 

俺もあの瞬間は焦った。

 

で、当のアリスは・・・・・・

 

「あんな、ふざけた態度で和平なんて嘗めてるでしょ? ていうか、助けてほしいなら、素直に助けて下さいって言えばいいのに。これだから、プライドばかり高いやつらは・・・・・・。ねー、イッセー、聞いてるの?」

 

「はいはい、聞いてますよ、アリスさん」

 

会談の時、少しばかりスッキリした顔してたと思ってたのに・・・・・・・、どうやら、まだまだ溜めている言葉があるらしい。

まぁ、その単語を会談の時に使ってくれなくて良かったと思うよ。

 

使ってたら、別の問題が起きてただろうし・・・・・・。

 

「あー、もうちょっと上かな」

 

「このへん?」

 

「うん、そこそこ」

 

「・・・・・・つーか、なんで俺はアリスの肩揉んでるんだよ?」

 

そう、会談後、なぜかアリスが肩を揉んで欲しいと言ってきた。

 

それで、今はソファに座ったアリスを後ろからマッサージしてるんだが・・・・・・。

 

えーと、一応、悪魔の主とその下僕、なんだけど・・・・。

 

「いいじゃない。ああいう堅苦しい空気は苦手なのよ。それに、あの小生意気な吸血鬼をどうしてくれようかと、考えてたら肩が凝ってきたのよねー」

 

うん、ダメだ!

俺とこいつじゃ、主従関係は成り立たねぇ!

 

いや、別に求めてはないけど・・・・・・今後のことを考えると、ね?

 

うーむ、早速尻に敷かれているような気が・・・・・・。

 

「アリスさん、お茶ですわ」

 

「わーい、ありがとー、朱乃さん」

 

自由だなぁ・・・・・俺の眷属・・・・・・・。

 

それでも、良くやってくれたとは思う。

 

あの状況で話が進めばこちらの怒りは結構なところまでいってただろうからな。

 

「・・・・・・相変わらず、吸血鬼は好きになれない・・・・・」

 

リアスもそうだけど、特にゼノヴィア。

 

背中を向けていても分かるくらいに敵意のあるオーラを身にまとわせていたからな。

 

グリゼルダさんがカップに口をつけた後、ゼノヴィアに言う。

 

「昔のあなたたら、デュランダルで斬りかかっていたところですね。よく我慢しました。成長しましたね」

 

グリゼルダさんに褒められて、ゼノヴィアは複雑そうな表情で頬を赤く染めていた。

 

やっぱり、ゼノヴィアのこういう反応はいつになく可愛く思ってしまうな。

 

「それでこの後はどうするのですか? とりあえず、あちら側からの連絡待ちという形にはなっていますが、それからのことを考えておかなければなりません」

 

ソーナの言葉に全員の表情が引き締まる。

 

「ぼ、僕はヴァレリーを助けたいです!」

 

ギャスパーの気持ちは分かっている。

 

となると、俺達がすることは決まったも同然だろうな。

 

ギャスパーの決意を聞いたリアスは立ち上がる。

 

「行くわ。今度こそヴラディ家とテーブルを囲むつもりよ。まずは私が先に行って、この目であちらの現状を確認してくるわ。ギャスパーの派遣はそれからでも遅くないと思うの」

 

「俺も行こうか?」

 

俺がそう申し出るがリアスは首を横に振った。

 

「いえ、イッセー達は待機していてちょうだい。もしかしたら、ということもあるかもしれないもの」

 

「というと?」

 

俺の問いにリアスは指を二本立てる。

 

「前提条件としてギャスパーの主たる私が直接訪れるのが道理だし、その方が先方にも失礼がないわ。そしてあなた達に待機してもらう理由だけど、一つは事が起きた際にすぐに行動してもらうため。ここに襲来してくる者もいないとは限らないから、対応できるメンバーが残った方がいい。二つ目は私があちらで何かあった時に増援メンバーが必要になるでしょうから」

 

木場が問う。

 

「部長は何かが起きる、または巻き込まれると踏んでいるんですね?」

 

「ええ、祐斗。そうならないのが何よりだけど、今までの経緯、吸血鬼の問題から察しても巻き込まれる可能性はあるわね」

 

リアスの言葉に先生は頷く。

 

「ぞろぞろ全員で行けばあちらも警戒するだろうしな。俺は悪くない判断だと思う。だが、お前だけじゃ、不安だな。今回の一件、ツェペシュ、カーミラの双方の裏の事情が絡みそうだ。さっきの話は腑に落ちない点がいくつもあった」

 

「もちろん、最低限の備えはするわ。私の『騎士』は連れて行くつもりよ。いいわね、祐斗?」

 

「はい、お任せください」

 

木場がお付きか。

それなら安心できる。

 

今の木場なら大抵の相手は退けられるだろうしな。

 

先生が首をこきこき鳴らしながら言う。

 

「俺も行こう。俺はカーミラに会ってくる。エルメンヒルデから話は聞けたが、他にもいくつか確認しておきたいことがあるしな。その間、リアスはヴラディ家に向かうといい。リアスがカーミラ側に顔を出せば、警戒は強くなるだろうからな」

 

「先生自らだと警戒されるんじゃ? 堕天使の要人ですし」

 

「いまだ吸血鬼相手に戦っている天界側の人間が行くよりは多少はマシだろうよ。ていうよりも神器に詳しい俺が行くのは色々と都合がいいだろう」

 

「あー、聖杯とかで」

 

「そういうことさ」

 

先生がグリゼルダさんとイリナに言う。

 

「イリナ、シスター・グリゼルダ、このことはミカエルにも伝えておいてくれ。聖杯と吸血鬼、流石にきな臭すぎる」

 

シスターが頷く。

 

「ええ、わかりました。こちらは場合によってはジョーカーを切るとミカエルさまも仰っておりますし、最悪の結果だけは避けたいものです」

 

グリゼルダさんの言葉に先生も軽く驚いていた。

 

「天界の切り札をそんな簡単に出してもいいのか? まぁ、聖杯が絡む以上、ジョーカーの手助けはあった方がいいが・・・・・・。聖杯と吸血鬼。本来、相容れない聖と闇。ろくでもないことが起こるのは確かだろうな。俺は最低限の犠牲ですむようにしたい」

 

「ええ、そうならないためにも暇人ジョーカーは存分に使えと四大セラフさまのご意志です。本当、あの子ったら、暇さえあると美味しいもの巡りに出掛けて連絡がつかなくなりますから。ゼノヴィア以上に困った子です」

 

暇人なのか、ジョーカーって。

 

というより、グリゼルダさんはジョーカーの知り合いなのか?

 

まぁ、それはおいといてだ。

 

リアスと木場、先生が吸血鬼側のもとへと向かい、状況の確認をする。

そんでもって、ギャスパーを含めた残りのメンバーはこの町に待機。

 

先生の言う通り、嫌な予感しかしないが・・・・・・、今ここでそれを議論しても仕方がない。

 

まずはエルメンヒルデからの連絡を待つとしようか。

 

 

 

 

 

 

吸血鬼についての話し合いが終わった後のことだった。

 

先生が何かを思い出したように手をポンと叩く。

 

「そうだ、おまえ達に伝えておくことがあったんだ。ヴァーリから情報があってな」

 

「ヴァーリから?」

 

「あいつが世界中に足を運んで未知のものを探求しているのは知っているな?」

 

それは知ってる。

 

初めて聞いたときはマジで暇人の集団だとも思った。

 

まぁ、それも育ての親であるアザゼル先生の探求心があいつに移ったんだろうなぁ。

 

「どうにも旅先で『禍の団』の連中と遭遇するらしくてな」

 

「それはお尋ね者になってるヴァーリチームに粛清を与えるため、ですか?」

 

ヴァーリはオーフィスを俺達の元に送り込んだことで『禍の団』からも追われる立場となっている。

 

まぁ、元々他の派閥から色々と睨まれていたようだけどね。

 

先生が続ける。

 

「ヴァーリが探していたのは既に滅んだとされる凶悪な魔物の類いだ。生きているかもしれないという不確かな情報をもとに探しているようだ」

 

「・・・・・暇人通り越した超暇人じゃねぇか」

 

つい漏らした俺の言葉に先生も苦笑する。

 

「だな。それで、だ。その滅んだ魔物、主にドラゴンの生息していた地に『禍の団』の構成員――――魔法使いのグループも来ていたそうだ。遭遇は一度や二度じゃないらしい」

 

「偶然じゃなさそうですね。ま、あいつらなら余裕で撃退できると思いますけど。・・・・・・そういや、滅んだドラゴンってどんなのがいるんですか?」

 

「有名どころで言えば、『三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)』クロウ・クルワッハ、『魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)』アジ・ダハーカ、『原初なる晦冥龍(エクリプス・ドラゴン)』アポプスかな」

 

『懐かしい名だ。そのドラゴン達は『邪龍』の筆頭格だ。相当危険なドラゴン達だった』

 

へぇ、ドライグがそこまで言うってことは相当ヤバイ奴らだったんだろうな。

 

先生は頷く。

 

「そいつらは残虐性が高すぎて封印、退治されちまったよ。他にも北欧のニーズヘッグ、初代ベオウルフが退治したグレンデル、英雄の初代ヘラクレスが試練で倒したラードゥンは伝説の果実を守護していたドラゴンだったが退治されたな。日本だと八岐大蛇(やまたのおろち)が有名だ」

 

知らない名前ばかりだ。

 

知っているのは八岐大蛇くらいか。

 

「こいつら邪龍に共通するのはどこまでもしぶといってところだな。ヴリトラですら、魂を幾重に刻まれて意識を封じられただろう? それぐらいしないと邪龍ってのは存在を抹消できないのさ。で、邪龍の中でも筆頭格の三匹は頭一つ二つ抜けていた」

 

ヴリトラでも不気味だと感じてしまうのにそれ以上ってことかよ・・・・・・。

 

「・・・・・二天龍よりも強いんですか?」

 

「それは流石に現役時代の赤白の方が強いだろう」

 

そっか。

 

やっぱり、封印される前のドライグとアルビオンはそれだけ強かったってことか。

 

『だが、俺やアルビオンでさえ、『邪龍』に近づくのは避けたぞ。あいつらはとにかく面倒なんでな。何度倒しても狂ったように向かってくるのさ。何度かその類いとやり合ったが嫌になった・・・・・。おそらくアルビオンもそう感じているはずだ』

 

マジかよ・・・・・。

絶対に関わりたくない奴らじゃねぇか。

 

関わるな危険、だな。

 

先生は顎に手をやりながら話を続ける。

 

「しかし、滅んだドラゴン――――特に『邪龍』を語るのは久しぶりだ。だが、わかるだろう? 力があり、暴れん坊のドラゴンは例外なく滅ぼされる。その点、ティアマットは要領がいいんだろうな。なんだかんだ好き勝手に生きているようだ」

 

先生の言葉を聞いてどこか納得してしまった。

 

ドライグなんかはアルビオンと盛大に喧嘩した上に、三大勢力の三つ巴の戦争を無茶苦茶にしたから滅ぼされたわけだし。

 

ティアは俺の使い魔なんてやってくれてはいるが、基本的には自由に生きている。

 

「私がどうかしたか?」

 

ふと声をかけられたので振り返ってみると、部室にティアが転移してきていた。

オーフィスをおんぶした状態で。

 

「ティアって要領がいいなって話をしてたんだ。力のあるドラゴンが滅ぼされる中で上手くやってるなーって」

 

俺がそう言うと、ティアはオーフィスを下ろしながら笑みを浮かべる。

 

「だろうな。私は考えなしに力を振るったりはしない。滅ぼされたドラゴンはその辺りを全く考慮しないからバカなんだ。そこの赤いのも含めてな」

 

『・・・・・・・』

 

ティアの鋭い一言に黙ってしまうドライグさん。

 

うん、返す言葉もないって感じだな。

 

「イッセー、抱っこ」

 

「はいはい」

 

そうせかされ、俺はオーフィスを抱き抱える。

 

こいつは・・・・・完全に子供だよね。

 

初見の人は元龍神さまって言われても信じられねーよ。

 

「でも、まぁ、あれだよな。たまにティアが龍王ってこと忘れる時があるわ」

 

「む? なんだと?」

 

「だって、さっきのティアなんて完全なお姉さんだったぞ。普段もそういうとこあるしな。そこが良いんだけど。頼れるお姉さんって感じでさ」

 

俺の身の回りにそういう人ってティアしかいないもんなぁ。

 

「ひどーい、私だって頼れるお姉さんでしょ?」

 

などと実体化したイグニスが言うが・・・・・・

 

「あんたはお茶目過ぎるお姉さんだろ・・・・・・」

 

究極のシリアスブレイカーじゃねぇか!

 

そりゃ、戦闘になれば頼りにはなるよ!?

 

でもね、毎回毎回のシリアスブレイカーについていけない時があるんだよ!

 

ドライグどころか俺の精神もやられるわ!

 

「テヘ☆」

 

「んー・・・・・可愛くしても評価は変わらねーよ!?」

 

可愛いのは認めるけど!

エッチなところも最高です!

 

『結局はそこか』

 

うん!

 

部屋のシリアスが崩れかけたどころで先生が息を吐く。

 

「あー、なんでこうもシリアスが続かないのかね、おまえさん達は・・・・・・。まぁ、何はともあれ、水面下でテロ集団が何かを企んでいるようだ。また、嫌なことが起こるかもしれないと覚悟だけはしておいてくれ」

 

先生の最後の一言に全員が頷いたところで、今日は解散となった。

 

 

 

 

 

 

早朝。

 

早くに目が覚めた俺は兵藤家の地下にある大浴場でシャワーを浴びていた。

 

美羽達は気持ちよさげに寝ていたから起こさないように注意してからここに来ている。

 

俺はシャワーのお湯を頭にかけながらここ数日のことを思い出していた。

 

 

―――フェニックス関係者に接触をはかる魔法使い

 

―――フェニックス家産でないフェニックスの涙

 

―――吸血鬼に聖杯、その所有者がギャスパーの恩人

 

―――ヴァーリチームと遭遇する『禍の団』構成員、魔法使い

 

 

こんな短期間にこれだけの情報が俺達の元に届いている。

 

何かの偶然か。

 

それとも・・・・・・・。

 

そういや、先生が『禍の団』残党を纏めている輩がいるって言ってたな。

 

そいつが関係しているのか?

 

まぁ、流石にギャスパーの恩人が聖杯の所有者だったのは偶然だろうけど。

 

ったく、英雄派の連中倒して、少しは平穏な日々を過ごせると思った途端にこれだ。

俺の平和って続かないよなぁ・・・・・。

 

 

ガラララッ

 

 

ふいに大浴場の扉が開く。

 

顔を向ければ―――――

 

「・・・・・・イッセーさま?」

 

「レ、レイヴェル?」

 

こいつはミスったな・・・・・・。

まさかレイヴェルが起きてくるなんて・・・・・。

 

いや、確かにレイヴェルとは何度も風呂場で遭遇したりするが・・・・・・それは他の女子も一緒の時だ。

 

流石にレイヴェルと二人っきりってのは初めてで・・・・・。

レイヴェルも緊張するだろうし、ここはあがった方が良いかも。

 

 

しかしだな・・・・・・

 

 

全裸のレイヴェル!

 

小柄の身体なのに、しっかりと女性のからだつきをしている!

 

おっぱいだって結構ある!

 

いつものドリルロールもおろしていているから、印象もかなり違ってて・・・・・・・

 

これはこれで・・・・・・って違ぁぁぁぁうぅぅぅぅぅっ!

 

マネージャーとはいえ、レイヴェルは客分だぞ!?

 

変な気を起こすな、俺!

 

「わ、わるい・・・・。俺はあがるから・・・・・」

 

そう言って大浴場から出ようとする俺だが――――

 

「お、お背中をお流しします!」

 

「・・・・・・・え?」

 

 

 

 

 

というわけで

 

 

 

 

「・・・・・・いかがですか?」

 

「うん、気持ちいいよ」

 

レイヴェルに背中を流されている俺。

タオルで優しく背中を擦ってくれている。

 

・・・・・ライザーを更正させた時は「イッセーさまのエッチ!」って炎の翼で燃やされたから、それも覚悟してたんだけどね。

 

これは予想外だった。

正直、戸惑ってます!

 

背中を流してもらっている間、俺達は昨日の吸血鬼について話していた。

 

「・・・・私、生まれて初めて純血の吸血鬼と出会いましたけれど・・・・・・まだ理解できないところもあって・・・・・。お友だちのギャスパーさんを取引の条件に指定したこともありますけれど、自分達以外はどうでもいいという姿勢が・・・・・・。ですが、これは政治。悪魔も合理的で純血を尊びますわ。私も純血の悪魔です」

 

「純血、か・・・・・。それって誰かを傷つけてまで誇るものなのかな? 俺から言わせればそんなものよりももっと大事なものがあると思うけどな」

 

「大事なもの、ですか?」

 

「そう。俺の場合は家族だったり仲間だ。まぁ、それは人それぞれだとは思うけどな。それでも誰かを一方的に傷つけてまで誇れるものなんてないと思うぜ?」

 

家を誇るのもいい、純血を誇るのもいい。

 

だけど、自分以外はどうでもいいと考えてしまうものなら捨ててしまえ。

 

そんなものは誇りじゃない。

そうでなくてはならないと決めつけてしまう、ただの呪縛だ。

 

俺はそう思う。

 

「・・・・・昨晩、アリスさんにも驚きましたが、あの美羽さんまでもが荒々しいオーラを纏っていて・・・・・・。他の皆様も吸血鬼へ思うところがあるといった表情でしたが、それでもあのお二方は少し違っているように思ってしまったのですが・・・・・・」

 

よく見てるな。

 

昨日、俺の背後でピリピリしたオーラを放っていたのはアリスだけじゃない。

美羽も静かに、だけど触れれば火傷するようなオーラを纏っていた。

 

あの時は何も言わずに堪えていたようだが・・・・・・。

 

俺は大きく息を吐いた。

 

「実はさ、俺も美羽もアリスも戦争を体験しているんだ」

 

「・・・・戦争を、ですか?」

 

レイヴェルは少し驚いた表情で聞き返してくる。

 

俺は一度頷いて、続けた。

 

「俺とアリスは実際に戦場に立って、そこで色々なものを見てきた。当然、辛い経験もしてきたし、悲しいこともあったよ。美羽は戦場には立ってないけど、大切な人を亡くした。だからさ、俺達には和平って言葉の重みが分かる。そこに辿り着くことがどれだけ困難なものか知っている。――――だからこそ、あんな風に和平を交渉の材料にしてくるのは許せないんだ」

 

和平を盾に自分達の要求を通す。

 

そんなやり方は許せなかった。

 

あの場でアリスの発言を許した理由のひとつがこれだ。

 

「まぁ、そういうわけで、俺もあの二人もそういうことには敏感なんだよ。普段は結構だらしないところが多いんだけどね」

 

俺は苦笑しながらそう付け加えた。

 

レイヴェルはというと、疑問に思うところとあるようだけど、それ以上に俺の言葉について考えているようにも見えた。

 

まぁ、レイヴェルがそんなに深く思い悩む必要はないと思うけどね。

誰かを想うことができるなら十分なんだからさ。

 

俺は重くなった空気を軽くするため、話題を変えてみる。

 

「それにしても、アリスと美羽にも困ったもんだよ。二人とも勉強はできるのに、ああいう書類仕事は本当に嫌いでさ。あの二人もいつかは魔法使いと契約を結ぶことになるだろうし・・・・・。先行きが不安だよ」

 

本当にそう思う。

 

なんで毎回毎回、眠っちゃうのかね?

 

特にアリスは一国の王女だったんだろう?

それなのになんで、資料読み出して数分でダウンするんだ・・・・・・。

 

お湯で背中を流してもらった後、レイヴェルが訊いてくる。

 

「イッセーさまは・・・・・そ、その、残りの眷属は決めておられるのですか?」

 

「一応、何人かは決めてあるよ。まぁ、本人にはまだ伝えてないし、了承も得ないとダメなんだけど・・・・・・。仮に全員がOKを出してくれても、まだ駒は余るだろうし、どうしようか考えているところなんだよね」

 

一人は駒を複数消費するだろうけど、それでも余る。

 

うーむ、どうしたものか・・・・・・・。

 

腕組みしながら、考える俺だが・・・・・、こういうのって考えて解決できる問題じゃないしなぁ。

 

と、そこまで思ったときだった。

 

 

――――そうだよ、こんなに近くにいるじゃん。

 

 

 

俺が眷属にしたいと思える子が。

 

この子がいてくれたら、どれだけ心強いか。

 

「なぁ、レイヴェル。あのさ――――」

 

俺がそこまで言いかけた時だった――――

 

 

ザバッ!

 

 

「我、三十分潜れた」

 

・・・・・オーフィスが風呂から出てきた。

 

いつからそこにいたんだよ・・・・・・・。

 

つーか、脱衣所にオーフィスの服なんてなかったぞ!?

 

まさかと思うが、部屋から真っ裸で来たのか!?

 

俺の思考がそこへ至ったときだった。

 

 

ザバッ!

 

 

「やったー! 私の勝ちー!」

 

オーフィスと同じくイグニスまで風呂から出てきやがった!?

 

「何やってんの!?」

 

「我とイグニス、どちらが長く潜れるか競争してた」

 

「そんでもって私の勝ちよ♪」

 

こちらにブイサインを送ってくるイグニスだが・・・・・・。

 

競争って・・・・・・そんなことしてたのかよ・・・・・・。

 

 

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・

 

 

盛大にため息が漏れた。

 

ったく、龍神さまと女神さまは本当に自由ですね!

仲が良くて大変よろしいよ!

 

 

 

この後、既にレイヴェルに流してもらった背中をロリロリ龍神さまとナイスバディの女神さまにもう一度流してもらうというイベントが起こった。

 

で、なんだかんだで四人で入浴することになったんだが・・・・・・・。

 

やっぱり、女の子との混浴って最高だわ。

 

 

 

 


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