ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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3話 ケンカするほど仲が良い

魔法使いの選考を始めて数日後の深夜。

 

「あー、多すぎだろ・・・・・・」

 

俺は目の前の書類の多さに根をあげそうになっていた。

 

読めども読めども減る気配がない。

かなり辛い作業だ。

 

「イッセーさま、この魔術文字の解読が済みましたわ。読んでくださいましね」

 

横につくのは敏腕マネージャーのレイヴェルちゃん。

俺のサポートとして確認作業を手伝ってくれている。

 

俺が頑張れるのはレイヴェルの存在が大きいな。

こうして夜遅くまで手伝ってくれてるんだ。

この子には本当に感謝してるよ。

 

他の部屋では皆がそれぞれの見方で魔法使い達の履歴書を見ている。

アーシア、小猫ちゃん、ゼノヴィア、ギャスパーはリアスや朱乃の意見を取り入れながら書類に目を通しているようだ。

 

美羽とアリスもいずれは自分達も契約することになるからと、最初は俺の隣で目を通していたんだが・・・・・・。

 

「・・・・・・スースー・・・・・」

 

「・・・・エヘヘ、これで私も巨乳に・・・・・」

 

はい、二人とも爆睡しております。

 

毎回これだ。

 

美羽は魔法使いとしての視点で意見をくれたりもするが、最後まで起きていた試しがない。

 

アリスなんて資料見始めて、数分でダウンしやがる!

「おまえは一体何しに来たんだよ!」ってツッコミたくなるが、一応手伝ってくれているから我慢する。

 

うぅ・・・・俺の眷属、こんなんで大丈夫なのかな

ぁ・・・・・。

 

不安しかねぇ!

 

「レイヴェル・・・・・」

 

「どうしました?」

 

「この状況・・・・・頼れるのは君だけだよ・・・・・・」

 

「っ! お任せください! 私がイッセーさまに相応しい相手を選び抜いてみせます!」

 

おおっ、やる気十分だ!

やっぱり、レイヴェルは頼りになるな!

 

今も書類ひとつひとつに視線を落として、辞書や資料を片手に細かくチェックしてくれてる。

しかも、分かりやすく付箋を貼ってメモまでしてくれている!

丁寧な仕事ぶりに感激だ!

 

「この魔法使いの男性は錬金術において、希少なレアアース、レアメタルの魔術的利用方法を研究されてますわ。こっちの女性はーーーー」

 

こうして俺でも分かるよう噛み砕いて情報を教えてくれる。

 

小猫ちゃんの話では休み時間にも人目から隠れて調べてくれているそうだ。

 

俺のために頑張ってくれるのは嬉しいけど、無理して体を壊さないか心配になるな・・・・・・。

 

そうそう、先日のフェニックス家の関係者が狙われるって情報についてだけど、改めてフェニックス家から届いたそうだ。

 

ライザーがえらく心配してたらしいが、あいつもお兄ちゃんしてるぜ。

 

まぁ、ライザーの気持ちも分かるな。

レイヴェル可愛いもん。

 

「か、可愛いですか・・・・・!?」

 

今まで真剣に資料とにらめっこしていたレイヴェルが突然、赤面しながら声を裏返らせていた。

 

・・・・・・えーと、これって―――――

 

「・・・・・・声、出てた?」

 

俺が問うとレイヴェルはコクコクと小さく頷いて返してきた。

 

あちゃー・・・・・、こいつはミスったかな。

 

いや、でも、レイヴェルが可愛いってのは事実だ。

頑張り屋さんだし、俺のためにこうして動いてくれているしな。

可愛いものを可愛いと言って悪いことなんてないんだ。

 

「もちろん容姿的なものもあるんだけどさ・・・・・。レイヴェルの一生懸命頑張ってる姿が良いなって思ったんだよね」

 

「~~~~っ!」

 

あ・・・・・・余計に顔が真っ赤に・・・・・・・

 

これは話題を変えた方が良いかもしれない。

 

俺は一度咳払いした後、レイヴェルに言った。

 

「その、なんだ、俺って普段からレイヴェルに色々と助けてもらってるし、お礼の一つでもできないと申し訳ないなーって。レイヴェルは俺にしてほしいことってあるか?」

 

マネージャーとして何かと頑張ってくれているレイヴェルに何かしてあげたい。

前々から考えていたことだ。

 

すると、レイヴェルは手にしていた資料を置いて赤面した状態で俺と向かい合った。

 

「で、でしたら・・・・・頭を撫でて、ほしいです・・・・・」

 

それは思ってもなかったリクエストだった。

 

んー・・・・・・頭を撫でてほしいって・・・・・・。

 

「そ、そんなことでいいの? 遠慮しなくていいんだぞ?」

 

けど、レイヴェルは首を横に振って、真正面から言ってきた。

 

「イッセーさまのマネージャーをできるだけで光栄なんです。だから、頭を撫でていただけるだけで、私はこの先も頑張っていけます」

 

・・・・・・なんて・・・・・・・なんて、良い子なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

良い子過ぎるぞ!

 

この子がマネージャーで良かった!

 

俺は抱き締めたくなる気持ちを抑えて、要望通りにレイヴェルの頭を撫でてあげた。

 

「・・・・・えへへ」

 

くぅぅ・・・・・笑顔も可愛いなぁ!

 

うん、俺、このマネージャーと一緒に今後も頑張っていくよ!

 

すると―――――

 

「あ、そうです。この後、『おっぱいドラゴン』のお仕事についてもスケジュール調整いたしますわ。魔獣騒動でショックを受けた子供達のためにチャリティーイベントに参加してほしいとの打診が既に――――」

 

・・・・・・でも、少し休ませてほしいと思ってしまう俺だった。

 

 

 

 

 

 

魔法使いの書類選考と悪魔の仕事に追われる俺達グレモリー眷属だが、修行もサボらずに続けなければいけない。

 

メフィストさんとアザゼル先生の話だと何やら不穏な動きもあるみたいだし、いざという時に動けるようにしておかないとな。

 

そういうわけで、俺達オカ研メンバー+アリスはジャージに着替えてグレモリー領にある地下の広大なバトルフィールドで修行に入っていた。

 

いつもと違い、俺に加えてアリスが前衛組の木場、ゼノヴィア、イリナを相手取り、美羽は後衛組のリアス達と離れたところで修行に取り組んでいる。

 

というのも、木場の第二階層に興味があったからなんだよね。

 

それで一戦交えてみたが・・・・・・想像以上だった。

 

複数の属性を一度に使えるという能力、あれは厄介なんてもんじゃないな。

 

たとえば、水と雷、火と風というような組み合わせできたとする。

そうすると、属性の相乗効果で威力は増加し、攻撃範囲も大きくなってくる。

 

しかも、見た目で変化がないし、ノータイムで能力を変えてくるから、かなり対処しにくくなってくるんだ。

 

身体能力もかなり伸びるし・・・・・・能力の幅で言えば、天武、天撃よりも上だろう。

 

まぁ、消耗が激しいところは俺と同じようだけど。

今も後遺症の筋肉痛で俺の隣でダウンしてるし。

 

「ハハハ・・・・・これに慣れるまでにどれくらいかかるんだろうね?」

 

「至ったばかりだからな。そのうち、痛まなくなるさ」

 

そんでもって、俺が木場の相手をしている間、アリスにゼノヴィアとイリナを任せていたんだけど・・・・・・。

 

こちらはアリスが圧倒していたな。

 

ゼノヴィアのエクス・デュランダルとイリナの量産型聖魔剣による剣戟を全てかわして、隙が出来たところを槍の石突きで突くという戦法を取っていた。

 

「むぅ・・・・・あそこまで攻撃が当たらないとなると嫌になるな」

 

「そうね。それも木場君みたいにスピードで翻弄する感じじゃなくて体捌きと槍捌きで全ての攻撃を流されたわ。・・・・・もう、あそこまでくると流石としか言いようがないわね」

 

ゼノヴィアに続き、イリナもそう漏らす。

 

二人の意見にアリスは苦笑しながら言う。

 

「スピードで撹乱することも出来たけど、今回は自分に制限をつけてみたのよ。その方が修行になるしね」

 

なるほどなるほど。

 

アリスも考えながら修行に取り組んでたってことか。

 

でも、まぁ、アリスが木場みたいにスピードで攻め出したらゼノヴィア達ではついていくのは難しいだろうな。

特にパワータイプのゼノヴィアじゃ荷が重そうだ。

 

「うーん・・・・・・。やっぱり、エクス・デュランダルはせっかく多彩な能力があるんだし・・・・・破壊力以外のも使えたらゼノヴィアさんはもっと伸びると思うの」

 

アリスがそう指摘する。

 

七つに別れたエクスカリバーはそれぞれに特殊能力を有していた。

今ではその全てが統合し、デュランダルと合体を果たしている。

 

破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)

 

その名の通り、破壊力のある攻撃特化の能力だ。

ゼノヴィアはこの聖剣の主だったから一番使いこなせている。

パワー重視のゼノヴィアには相性が良い。

 

 

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)

 

様々な形に姿を変える特性を持つ。

これはイリナが持っていた聖剣で、持ち運ぶときは紐状にして戦うときは日本刀にしていた。

ゼノヴィアよりも元々の持ち主だったイリナの方が一日の長がある。

 

 

天閃の閃光(エクスカリバー・ラピッドリィ)

 

所有者のスピードと振られた剣速を高速化させる。

こいつはフリードが一番最初に使ってたな。

 

 

透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)

 

刀身だけでなく、持ち主をも透明にする。

バアル戦でロスヴァイセさんが使用した聖剣だ。

 

 

夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)

 

相手に幻術をかけて、敵を惑わすことができる。

これは魔法などが得意な者の方が相性がいいらしく、そちら方面に疎いゼノヴィアは習得に難航していた。

 

 

祝福の聖剣(エクスカリバー・プレッシング)

 

信仰が関与するようで聖なる儀式などで使うと効果を発揮するという。

 

 

支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)

 

いかなる存在をも意のままに操れるようになる特性を持つという。

ヴァーリチームのアーサーが所有していたのだが・・・・・

 

「私はアーサーのように伝説の魔物を支配できるような才能は発揮できないだろうな。・・・・・うまく発動すらしない」

 

やはりこちらも習得に難航しているようだ。

 

イリナがゼノヴィアから擬態の聖剣を受けとると刀身がうねうねと変化して、日本刀の形となった。

 

「ミミックはイメージ力が必要よね。使いこなせればいろんなものに変化させられるんだから」

 

イメージ力か・・・・・・流石に元持ち主が言うと説得力があるな。

 

そういや、木場の聖魔剣も創り出すときにはその剣を強くイメージするらしい。

 

木場は完全なテクニックタイプだし、イリナも最近は魔法を覚え始めてるからテクニックタイプのウィザードなのだろう。

 

こうして考えるとテクニックタイプの方がイメージ力があるのか?

 

俺はパワータイプだし、今持つ戦闘技術も修行と実戦で身に染み付いた感覚みたいなもんだから、その辺りはよく分からないけど・・・・・・。

 

「このままじゃ、自称剣士になってしまうわよ、ゼノヴィア」

 

「んなっ!?」

 

イリナに言われて相当ショックを受けた様子のゼノヴィア。

大口を開けて固まってるし・・・・・・。

 

しかし、ゼノヴィアも涙目になりながら言い返す。

 

「・・・・・・自称天使め」

 

自称天使。

それはイリナにとってタブーに近い単語だ。

 

言われたイリナは頬を膨らませてプンスカ怒り始める。

 

「自称じゃないもん! 天使だもん! ね、イッセー君! 幼馴染みのイッセー君なら私が本当の天使だってわかってくれるよね?」

 

「そういや、俺とイリナって幼馴染みだったな。ごめん、たまに忘れるわ」

 

「ガーン!」

 

あらら、今度はイリナが大口開けて固まったぞ。

 

うん、でも、割りと本当に忘れる時があるよ。

昔のイリナってやんちゃ坊主ってイメージあったからね。

あの頃は完全に男の子だと思ってた。

 

俺の言葉を聞いたゼノヴィアがせせら笑う。

 

「なるほどなるほど。イリナは自称幼馴染みなのか。そうなのか」

 

「自称じゃないもん! 幼馴染みだもん!」

 

「やーい自称幼馴染み天使ぃ」

 

「合体させないでよ! この自称剣士! 脳みそまで筋肉ぅっ!」

 

アホだ・・・・・。

この二人、口喧嘩を始めるとかなり低レベルの舌戦を繰り広げる。

内容は完全に小学生。

 

まぁ、そこが可愛くもあるんだが・・・・・・。

 

つーか、こいつら出会った時のあの危ないイメージから本当に変わったよなぁ。

 

こっちの方が年相応で本来の姿なんだと思うけどね。

見た感じ、二人とも楽しそうだし。

 

「どうするのよ、この状況」

 

「このままで良いんじゃね?」

 

 

 

 

 

 

修行を終えて、一日の予定をクリアした後はのんびりするだけだ。

 

「先輩、チョコミント食べますか?」

 

「うん、一口もらうよ」

 

膝上に座る小猫ちゃんが「あーん」をしてくれる。

 

うん、後輩からの「あーん」って良いよね!

最高だ!

 

いやー、今日も小猫ちゃんは俺を癒してくれるぜ!

 

小猫ちゃんの頭を撫でていると、レイヴェルが前に立った。

 

「こ、小猫さん、いつも思ってましたけど、人前でイッセーさまのお膝に座るなんてお行儀が良くないですわ!」

 

「・・・・・・ここは私だけの特等席」

 

ハハハ・・・・・特等席ときましたか。

 

「と、特等席!? イッセーさまからも言ってあげてください!」

 

「アハハハ・・・・・・。ま、まぁ、俺も嫌じゃないから別に良いんだけどね?」

 

ってか、いつも小猫ちゃんが膝上に座ってるから、これが生活の一部って感じなんだよね。

 

すると、小猫ちゃんは俺に抱っこという形になる。

 

「・・・・・私はイッセー先輩のお嫁さんになるから、ここをキープする」

 

「・・・・・っ!」

 

それを聞いたレイヴェルはワナワナと体を震えさせ、心底悔しそうな表情を浮かべていた。

 

小猫ちゃんにこうして注意しているレイヴェルだが、二人きりの時は俺の膝上に座りたいと言ってくる。

それで、俺も座らせてあげている。

 

それを見かけた小猫ちゃんは不機嫌そうに頬を膨らませるのだが・・・・・・・俺の膝ってそんなに人気なのか・・・・・?

 

最近ではいの一番に小猫ちゃんが占拠しにくるようになっている。

 

レイヴェルは涙目で抗議を始めた!

 

「ず、ずるい! ずるいずるいずるいずるい!」

 

おおっ!?

あのデキるマネージャー、レイヴェルが地団駄を踏んでる!?

 

「小猫さんばかりずるいですわ! えいっ!」

 

レイヴェルは小猫ちゃんを突き飛ばして、空いた俺の膝上に鎮座してしまう!

 

「私だってここに座ります! いいえ、占拠しますわ!」

 

「っ!」

 

突き飛ばされた小猫ちゃんは眉をつりあげ、口を三角にしている。

可愛いが、纏うオーラが恐ろしい!

背後に猫が見える!

 

そして――――

 

「えいっ!」

 

「きゃっ!」

 

今度は小猫ちゃんがレイヴェルを突き飛ばした!

即座に俺の膝上に乗り、俺にしがみついてくる!

 

「・・・・・ここは私の席っ! あげないっ!」

 

「独り占めなんて許しませんわ! 私も座りたいぃっ!」

 

再び小猫ちゃんを下ろそうとレイヴェルが奮闘し始める!

 

ま、また、この展開か・・・・・・。

 

小猫ちゃんとレイヴェル。

猫と鳥の『膝上争奪戦』勃発。

 

『レイヴェルはな。親しい者の前では礼儀正しく、慎ましいんだが・・・・・。基本的にはリアス並にわがままだ。特に人のものを欲しがる癖があってな。・・・・・・おまえとの暮らしの中でその辺りも見えてくるかもな』

 

以前、ライザーとのプライベート回線で話したときにそう言われたんだが・・・・・・・その通りだったよ。

 

レイヴェルも中々に・・・・・・・ね?

 

「お兄ちゃん達、何してるの・・・・・・って、また始まったんだ」

 

と、声をかけてきたのはパジャマ姿の美羽。

手には牛乳の入ったコップが握られていた。

 

美羽もこの光景を見て驚かないほどに見慣れている。

 

俺が視線で助けを求めながら、手でお願いのポーズを取ると美羽は苦笑しながら頷いてくれた。

 

コップをテーブルに置くと、未だ言い争ってる二人の頭を撫でながら、

 

「小猫ちゃん、レイヴェルさん。二人がケンカするとお兄ちゃんも困っちゃうよ? ここは仲良くね?」

 

「・・・・・はい・・・・・ごめんなさい」

 

「・・・・・・もうしわけありませんでした・・・・・・」

 

美羽にそう言われて落ち着く二人。

 

うーむ、こうして見てると美羽がお姉さんになってきているのが分かるな。

今の言葉もしっかり者のお姉さんって感じだったし。

 

結果的に右膝に小猫ちゃん、左膝にレイヴェルが座る形に治まり、そのまま俺達は四人で仲良くテレビを見てからその日を終えることになった。

 

俺の膝上に座っていた二人だが、最初はプンスカしてたけど、時間が経過するにつれて仲良く話をするようになっていたよ。

 

ま、ケンカはするけど、二人は友達ってことなんだろうな。

 

 


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