ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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12話 英雄VS英雄

アリスのおかげで、空腹は何とかなった。

 

何とかなったんけど・・・・・・・。

 

「ね、ねぇ、アリスさん・・・・・・・おっぱい、出るの?」

 

美羽が戸惑いながらも興味津々と言った表情でアリスに尋ねていた。

 

他の女性陣もそれに続く。

 

「今のって確実に・・・・・・ねぇ?」

 

「ええ。しかし、出るとなれば・・・・・・それはつまり、アリスさんは既にイッセー君の子供を・・・・・・?」

 

「・・・・・その可能性は大きいです」

 

「ええっ!? お二人はいつの間に!?」

 

「しまった! 美羽に続き、アリスにまで先を越されていたと言うのか!」

 

「待って、ゼノヴィア! 赤ちゃんが出来るにしても早すぎるわ!」

 

「となると二人はかなり前から・・・・・・・?」

 

「イッセー君!? 学生の間からこ、子供だなんて! あなたには教育的指導が必要ですね!」

 

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?

皆が戦闘そっちのけで、別のこと考え始めたぁぁぁあ!?

 

しかも、ロスヴァイセさんに怒られたよ!

 

ちょ、ちょっと待ってくれ!

俺とアリスはまだしてない!

 

俺達はまだ一線越えてません!

 

アリスも涙目になりながら皆に叫んだ!

 

「待って待って! まだ処女! イッセーとだってしてない!」

 

慌てるのは分かるが落ち着け!

こんな公衆の面前で処女とか言っちゃダメだって!

 

ほら見てよ!

この会話に参加してないメンバーは唖然としてるから!

 

曹操ですら対応に困ってるみたいだから!

 

「え、えーと・・・・・・お兄ちゃんとしてないのに・・・・・出たの?」

 

うっ・・・・・美羽の鋭いご指摘だ!

 

た、確かにアリスは出して、俺はそれを吸った!

そして回復した!

 

だからこそ、俺も驚いている!

 

回復できたこともそうだけど、なぜアリスから母乳が出たのか!

 

アリスは恥ずかしそうな表情のまま、俺の方をチラッと見るとその口を開いた。

 

 

 

「そ、そこは・・・・・・・・・気合い?」

 

 

 

き、気合い・・・・・なのか?

 

つーか、それって俺が異世界から戻る時にアリスに言った言葉じゃん!

 

おまえも結局気合いか!?

 

『スイッチ姫だからかもね。もしかしたらリアスちゃんも出るかも』

 

イグニスが皆に聞こえる声でそう言った。

 

スイッチ姫だから出たと?

 

あ、あり得そう・・・・・・。

現に俺はつついてパワーアップしてきたし・・・・・。

 

するとリアスが言った。

 

「それよ! イッセー! さっそく私とも試しましょう! 私だってスイッチ姫なのだから!」

 

リアスゥゥゥゥゥウウ!?

 

なんでそんなに声が弾んでるの!?

 

なんでそんなに笑顔なの!?

 

なんでそんなにテンション上がってるのぉぉぉおお!?

 

 

つーか、吸って良いの!?

 

嬉しいけどさ!

リアスのあのおっぱいを吸えるとか最高じゃないか!

 

「ちょっと待ってくれ! 流石にここまで放置してたら申し訳ないから! ずっと待ってくれているみたいだから! そろそろあいつの存在思い出してあげて!」

 

俺は曹操を指差しながら叫ぶ!

 

曹操のやつ、何も言わずにずーっと待ってくれてたんだよ!?

 

こんなアホな展開に付き合ってくれてるんだ!

敵でも申し訳なくなるわ!

 

「「「「あっ・・・・・・忘れてた」」」」

 

声を揃える女性陣。

 

忘れてたんかぃぃぃぃぃいい!

 

 

 

 

 

 

 

 

一先ず女性陣が落ち着いたところで、俺は再び曹操の前に立つ。

 

ヴァーリが俺に歩みより、小さい声で訊いてくる。

 

「奴の七宝、覚えているな?」

 

・・・・・曹操の能力についてか。

 

「俺が体験したのは攻撃を受け流すやつと、木場みたいに分身を生み出す能力だった。あとは話に聞いただけだけど・・・・・・武器破壊と女の異能を封じるやつがあったよな?」

 

今挙げたどれもが厄介な能力だ。

 

俺が相手をするなら、女の異能を封じるのは使えないから他の六つに気をつければいいんだが・・・・・・・・そう簡単にはいかないよな。

 

「そうだ。残りは飛行能力を得るものと相手を強制転移させるもの、最後に破壊力重視の球体だ」

 

なるほど。

空を飛ぶのと強制転移と破壊力のある球体か。

 

「サンキュー」

 

問題はそれを見極められるか・・・・・・だな。

見た目に変化がないから、どれがどの能力だか全く分からん。

 

ま、それは戦いながらどうにかするとしようか。

 

そんなことを考えながら俺は更に一歩踏み出す。

 

「俺の相手はやはり赤龍帝か」

 

おーおー、嬉しそうな笑みを浮かべてくれるぜ。

ヤル気満々って感じだな。

 

「おまえには先日の借りもある。それに、おまえには俺の可能性を十分に魅せつけていないしな」

 

こいつとやり合うには天武でも天撃でもない、天翼が最適だろうさ。

 

俺の戦意を感じ取って、曹操は肩に槍をとんとんとした。

 

「面白い。それでは見せてもらおうか。――――君の新たな可能性とやらを」

 

「ああ。覚悟しやがれ。いくぜ、ドライグ、イグニス!」

 

『応ッ! 相手は再び最強の神滅具! ここで倒さねば赤龍帝は名乗れんぞ、相棒!』

 

『さぁ、見せてあげなさい。真の勇者の力を!』

 

籠手の宝玉から燃え盛る炎のような紅蓮のオーラが発せられ、俺の体を包み込む。

 

鎧の周囲にバチッバチチチッとスパークが飛び交った。

 

 

ドバァァァァァァァァッ!

 

 

俺を覆っていた紅蓮のオーラが膨れ上がり、そして弾け飛んだ!

 

「禁手第三階層――――天翼(アイオス)!!」

 

今の鎧は赤色から鮮やかな紅蓮に変わり、全体的に鎧が鋭いフォルムとなった。

 

背には特徴的な赤い翼!

広げると赤い羽が舞い、キラキラと輝く赤い粒子に代わる。

 

こいつなら曹操の多彩な能力にも対応出来るはずだ!

 

――――天翼になら全て託せる!

 

俺の変化を確認すると、奴も輪後光と七つの球体を出現させる。

 

前回は既に禁手の状態だったけど、えらく静かな禁手化だ。

静かすぎて不気味だぜ。

 

 

互いの視線がぶつかり――――俺達はその場を駆け出す!

 

俺達は既に領域に突入している。

あとはガチンコで勝負ってわけだ!

 

「象宝」

 

曹操は足元に球体を置くと宙に飛び出した!

あれが空を飛ぶ能力ってやつか!

 

俺も翼を広げて奴を追う!

 

 

『Accell Booster!』

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!』

 

「まずは初手だ!」

 

拳に気を溜めて、曹操目掛けて突き出す!

放たれるのは気の散弾!

 

奴は球体を近づける。

球体の前方に渦が発生して気弾をいくつか吸い込んだ!

 

あれは攻撃を受け流すやつだ。

となると、前回みたいにみたいにどこかから吐き出されるはず。

 

警戒していると――――真下から渦が発生して気弾が返ってくる!

 

俺は腕を薙いでそれを弾き飛ばす。

 

いくつかがビルに直撃して、壁が崩壊したけど・・・・・・

ビルのオーナーさん、ゴメンね!

 

「っ!」

 

背後に気配を感じ、腰を捻る!

そこを聖槍の聖なるオーラが通り抜けていった!

 

振り向くと曹操が不敵な笑みを浮かべていた。

 

こいつ・・・・・・いつの間に背後に―――――転移の力か!

 

「居士宝!」

 

曹操が球体の一つを前方に移動させるとそれが弾けて、光輝く人型の存在が複数出現する。

分身を作るやつだ。

数は二十近く。

 

前回はこれに手間取らされたところに邪眼でやられたが・・・・・・。

 

「生憎、やられっぱなしは性に合わねぇよ!」

 

大きく広げた翼から八つの大きな羽――――フェザービットが飛び出す!

 

フェザービットが空中を飛び回り、それぞれの先端の砲門からオーラの砲撃を放っていく!

 

放たれたオーラが分身を捉えていき、次々に消滅させていった!

 

「遠隔攻撃というやつか! 木場祐斗の能力に似ているな!」

 

「まぁな! おまえの分身を潰すにはもってこいだろ!」

 

フェザービットから放たれた砲撃が分身体の一体を捉えた瞬間、その分身体がぐにゃりと歪んで渦ができた。

 

こいつ、あの分身体の一体に攻撃を転移させる球を仕込んでいたのか!

 

見てすぐに対応策を編み出す・・・・・なんてやつだよ!

 

背後の空間が歪み、渦を巻く。

前と左右からは分身体が突っ込んでくる。

 

下手に避ければ、その隙を曹操につかれかねないな。

 

「だったら、全て防げばいい!」

 

俺の声に呼応して五つのフェザービットが陣形を組む。

それぞれの先端からオーラを放出して五つ全てが繋ぎ合わさった。

 

ピラミッド状に組まれたクリアーレッドの障壁が俺を囲み、全ての攻撃を防ぐ!

 

「全方位攻撃ならぬ全方位防御ってな」

 

俺の言葉に曹操は興味深そうにこちらを見ていた。

 

「砲撃に加え防御障壁か。随分多彩な能力だ。この分なら木場祐斗のように剣状にして飛ばせるのかもしれないな」

 

あらら・・・・・バレちゃったよ。

 

確かに俺のフェザービットはオーラを刃状に放出することで木場の七剣のように相手を斬り刻むことも可能だ。

 

フェザービットの能力は大きく三つ。

砲撃、斬撃、それから防御。

 

展開している八つをその時の戦況に応じて陣形を変えることで様々な対応が出来る。

曹操の禁手ほどの多彩さはないが、天翼の強みの一つでもある。

 

攻撃力は天武、天撃には劣るがな。

 

『相棒は元々攻撃力が高いのだからその辺りは気にしなくても良いだろう? 通常の禁手でもその攻撃を受ければ大抵の奴が倒れるさ』

 

俺の敵に回ってきた奴らが異常すぎるってことだな。

 

攻撃力を高めた形態の攻撃が通じないとかどんだけ強敵ばかりなんだよ・・・・・。

 

まぁ、今は天武や天撃ほどの攻撃力はいらない。

曹操に当てることが出来れば俺の勝ち。

 

曹操とやり合うなら手数が多い天翼が一番合ってるってことだ。

 

・・・・・・それをことごとく避けていくから嫌になるけどな。

 

俺は防御障壁を解くと、曹操と一定の距離をとる。

 

「ふぅ・・・・・。やっぱりおまえの相手はやりづらいな。俺だけでなく先生まで倒したんだからな」

 

「アザゼル総督か。確かにこの間の戦闘では制させてもらったが次はどうなるだろうな」

 

「どういうことだ?」

 

「あの総督を侮ることはできやしない。ああいう研究者気質の戦士は次に戦う時まで徹底的にこちらを研究してくる。俺のように強者の重い一撃を食らえばアウトなタイプはあの手の手合いとの戦いが一番怖い」

 

曹操の解説になるほどなと思った。

 

あの先生がやられ続けるなんて考えられないもんな。

次にやるときは新技なり新兵器なり用意してそうだ。

 

それはそれで見てみたい気もするけど・・・・・・。

 

「さて、戦闘再開だ」

 

そう言うなり曹操の姿が消えた!

上、下、後ろ、左右とありとあらゆる場所に曹操の気配が消えたり現れたりしやがる!

 

また、転移の力かよ!

 

攻撃を仕掛けようにもあちこちに転移するから動きが捉えにくい。

 

フェザービットの全方位防御で守りに転じても良いが、それでは無駄に消耗するだけだ。

 

そうこうしていると横から聖なるオーラ!

かわして瞬時に気弾を放つが、すでに曹操は転移済みか!

 

ええい、面倒な奴め!

ヒットアンドアウェイにしても面倒すぎるぞ!

しかも、分身体を作り出してそいつらを俺の方に放ってくるから余計にめんどくさい!

 

俺はフェザービットをソードモードに切り換えて、分身体を斬り刻んでいく。

分身体程度であれば、フェザービットで対応すればいい。

 

 

問題は――――

 

 

「ちょこまかするんじゃねぇ!」

 

 

ガギィィィィン!!

 

 

転移の瞬間移動で間合いを詰めてきた曹操の聖槍と俺の拳が衝突する!

 

「今のを見切ったか!」

 

「嘗めんな。おまえの気の動きさえ掴めればこれくらいの対応は出来るんだよ。つーか、これだけ転移の動きを見せられれば次の動きくらい予想できるさ」

 

「ハハハハ。サラリととんでもないことを言ってくれる。俺の動きを予想するなんてね。これでも相手に捉えられないようにしているつもりなんだが」

 

だから、ここまで苦戦してるんだろうが!

おまえの動きは読みづらくて仕方がねぇ!

 

そこから近接戦に入るが、曹操は俺の拳を蹴りを、あらゆる攻撃を受け流していく。

気弾を放つと球体で受け流されるし、フェザービットで砲撃をくわえようにも武器破壊でそれを破壊していきやがる!

 

破壊されたフェザービットは新たに作り直せばいいんだが、曹操も徐々に対応策を掴んできていやがる。

 

更に言うなら右眼に光るメデューサの眼!

あらゆる物を石化させるその能力は厄介極まりない!

 

近接戦を仕掛ければ俺の鎧は石化され、そのたびに石化した部分を破壊して修復しなければならない。

 

俺のリズムを崩したところをついて聖槍の切っ先が俺を貫こうとする!

 

 

だったら――――

 

 

俺はイグニスを手元に呼び出し、柄を握った。

 

「こいつなら防げねぇだろ!」

 

刀身に灼熱の炎を纏わせた状態で曹操に強烈な斬撃を放つ!

 

 

ギィィィィィィィィィンッ!!

 

 

「ぐっ!」

 

曹操は聖槍を盾にすることでやり過ごすが、イグニスの熱量にやられて苦悶の表情を浮かべていた!

 

ここだ!

 

フェザービットが曹操の背後に展開、三角形の防御障壁を形成する。

 

ここで初めて曹操が焦りの表情となった。

 

「っ! これは俺を捕らえるための壁か!」

 

その通り。

そいつは攻撃でも自らを守るためのものでもない。

 

曹操のリズムを崩し、更には逃げられないようにするための壁だ。

 

転移するにも残りの五つのフェザービットで珠を狙い打ち、それを妨げる。

 

あれを曹操に近づけさせなければ、転移は出来ないだろ!

 

 

 

「こいつで終わりだ!」

 

 

 

イグニスの刃が曹操に届く――――

 

 

 

 

ガシャァァァァアアアアアアアンッ!!!

 

 

 

 

突如、背中に強烈な衝撃を受けた。

鎧が砕け、破片が周囲に飛び散る。

 

「ガッ・・・・・・!?」

 

衝撃のあまりに肺が圧迫され、息が詰まる。

 

な、何が・・・・・・・!?

 

上空から町へ落下していく中、見上げると先程、俺がいた場所にあの球の一つが浮かんでいた。

 

「将軍宝。破壊力重視の七宝を転移の七宝で君の背後に転移させた」

 

曹操が笑みを浮かべながらそう言うのが聞こえた。

 

今のが破壊力重視の球体・・・・・・ッ!

なんて衝撃だ!

 

しかも、自身の能力を自身の能力で転移させて、俺の背後を取ったと・・・・・・・。

 

「ゴブッ・・・・・」

 

口から吐き出されたのは大量の血反吐。

肋骨も何本かやられたな。

 

やられた・・・・・!

まさか、そんなことまで出来るなんて・・・・・・!

 

曹操が槍を構えて俺を追いかけてくる!

 

マズい!

痛みで体が痺れて動かねぇ・・・・・!

 

「今のを受ければ流石の君も動けないだろう?」

 

あいつ、俺が動けないのが分かってるから自ら突っ込んできていやがる。

最後のトドメは自らの手でってか。

嫌な野郎だ。

 

このままじゃ、俺はやられる。

あの極大の聖なるオーラを纏った槍に貫かれれば俺は確実に消滅してしまうだろう。

 

悪魔にとって聖なる力は猛毒だもんな・・・・・・。

 

「さぁ、これでチェックメイトだ」

 

曹操が俺の眼前に迫る。

 

 

 

 

その時だった――――――

 

 

 

「死んじゃ嫌だよ、イッセェェェェエエエエッ!!」

 

 

 

声がした方を向けば美羽がすぐそこまで来ていた。

 

泣いているのか?

 

ハハハ・・・・・泣くなよ、美羽。

 

誰も諦めたわけじゃないんだからさ。

つーか、諦めねぇよ俺は。

 

おまえを・・・・・・おまえ達を残して死ねるわけないだろ?

 

 

俺は錬環勁気功を全力で発動した。

それは奥義ではない。

 

それよりもっと先の―――――――

 

 

 

 

 

聖なる槍が俺の胸を貫く。

 

その瞬間――――――

 

 

 

 

俺の体は赤い粒子と化して、その場から消えた――――

 

 

 

 

 

 

 

 


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