ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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10話 紅蓮の光

声が聞こえた。

 

 

 

――――助けて、おっぱいドラゴン!

 

 

――――早く来て!

 

 

――――あの怪獣をやっつけて!

 

 

 

子供達の声。

 

俺を呼ぶ子供達の声だ。

 

 

イグニスが俺に問う。

 

「イッセー、聞こえる?」

 

「ああ、聞こえるよ。しっかりとな」

 

『俺にも聞こえるぞ。相棒の登場を待っているこの声がな』

 

ふと見上げると次元の狭間の万華鏡の中身のような空に冥界の子供達の笑顔が次々に映し出されていく。

 

これは・・・・・・

 

『冥界中の子供達の想いをここに投射しているとグレートレッドが言っている』

 

冥界中の・・・・・

 

そうか、俺を待っている子供達がこんなにもいるんだな。

 

何だろう・・・・・胸の奥が熱くなる。

 

 

俺を待っている人がいる。

 

不安な気持ちもあるだろうに、笑顔を絶やさずに俺を待っている子供達がいる。

 

だったら、俺は行くしかないだろう?

 

「あなたはあの子達の希望。ヒーローならそれに応えてあげないとね」

 

イグニスはそう言うと実体を消し、剣へと戻っていく。

 

ああ、そうだな。

 

俺はこんなところでのんびりしている場合じゃないんだ。

 

『ああ、帰ろう。グレートレッド、この男をあの子達のもとへと帰してやってほしい。頼めるか?』

 

ドライグがそう言うとグレートレッドが一際大きい咆哮をあげる。

 

すると、前方の空間に歪みが生じて、裂け目が生まれていく。

 

 

感じる。

 

仲間のオーラを。

 

俺の大切な家族のオーラを。

 

 

俺は隣にいるオーフィスに言った。

 

「オーフィス、俺は行くよ。俺の居場所へ。皆が待ってるからな」

 

「そう。それは・・・・・少し羨ましいこと」

 

寂しげなオーフィス。

 

そんな顔するなよ。

 

だっておまえも―――――

 

「俺と来い」

 

俺の言葉にオーフィスは驚き目を見開いていた。

 

「おまえの居場所はこんな寂しい場所じゃない。おまえの居場所はこの俺だ」

 

俺は笑顔を浮かべてオーフィスに手を差しのばした。

 

「一緒に行こうぜ。俺の友達、オーフィス」

 

その時、最強と称された存在は微笑んだ。

 

「我とドライグは友達。我、おまえと共に行く」

 

俺とオーフィスは手を取り合った。

 

 

さぁ、行こうか。

 

 

俺達の居場所へ―――――

 

 

 

 

 

 

次元の狭間を抜け出ると――――どでかい怪獣が目の前にいた!

 

おいおい!

 

あれ、あの疑似空間で生み出されたモンスターの中で一番デカかったやつじゃねぇか!

 

後方を見れば遠目に都市部が見える。

 

そうか、あのモンスターはあの都市に向かおうとしているのか。

 

モンスターの周囲は破壊しつくされた後で、地面に大きなクレーターが無数に生まれている。

山も森も建物も全てが崩壊しているのが見えた。

 

ってか、今あのモンスターと戦っているのってグレイフィアさんとルシファー眷属か!?

 

しかも、美羽やアリス、ティアまでいる!

 

グレイフィアさんが戦うところを初めて見たけど、スゲーな!

一撃で周囲の風景が変わるほどの威力だ!

どう見ても魔王クラスの一撃だ!

 

その他のメンバーもとてつもない実力者だってことがここからでも分かる!

 

あの面子の攻撃を受けて、あのモンスターは大したダメージを負っていないのかよ・・・・・・・。

 

確か他にも巨大モンスターはいたはずだが・・・・・・

 

そうなると冥界の被害はとんでもないことになってるんだろうな。

 

うーむ、やはり一体だけでも倒しておいて良かった!

ガス欠になってでも倒して正解だったぞ!

 

『だからって、皆に心配かけても良い理由にはならないわよ?』

 

うっ・・・・・・はい、すいませんでした・・・・・・・。

 

反省してます・・・・・・・。

 

『まぁ、それでも冥界の負担は減っただろう。相棒のしたことは無駄ではない。事情を話せば許してくれるさ』

 

うぅ・・・・・やっぱりドライグは良い奴だなぁ。

 

相棒の優しさが身に染みます!

 

と、こんなところで感動している場合じゃなかった。

俺も参戦しないと。

 

俺は禁手になって鎧を纏うとドラゴンの翼を広げる。

 

「オーフィス。俺は少し行ってくるから、ここで待っててくれ。グレートレッドもオーフィスといてあげてくれないか?」

 

などとお願いをしてみるが・・・・・・・

 

グレートレッドに俺の言葉は通じているのだろうか?

 

すると、グレートレッドはコクコクとその大きな頭を上下させた。

 

『いいと言っている。少し見物させてもらうらしいぞ』

 

おおっ!

言葉が通じたのか!

 

「じゃあ、行ってくる!」

 

俺は翼を羽ばたかせ、美羽の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「美羽!」

 

俺は巨大モンスターに魔法攻撃をぶっ放している美羽の元へと降り立った。

 

近くにはアリスやティアもいて、二人も強烈な攻撃をモンスター目掛けて放っているところだった。

 

三人は俺に気づき、こちらに視線を送るが・・・・・・

 

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

 

目を丸くして呆然とする三人。

 

 

・・・・・・あれ?

 

反応薄くない?

 

 

あ、攻撃の途中だからかな?

 

『イッセーと認識してなかったりして』

 

そっち!?

 

いや、それはないだろう!?

 

『だって二日も音信不通だったのよ? 死んだと思われてるかもしれないじゃない』

 

あー、なるほど・・・・・・って酷い!

 

俺は死んでません!

気絶はしてたけど、死んではないから!

 

と、とりあえず、顔見せれば信じてくれるかな・・・・・?

 

俺は一旦鎧を解除して、三人に笑みをひきつらせながら口を開く。

 

「え、えーと、ただいま?」

 

頭に手を当てながらそう言うと―――

 

「お兄ちゃん!」

 

「イッセー!」

 

「うおっ!?」

 

美羽とアリスが飛び付いてきて、俺は地面に押し倒された!

 

「イダダダダダダダダダダダッ! 二人とも力強い! 絞めすぎ!」

 

二人が俺を抱き締める力が強すぎて、全身が悲鳴をあげてるよ!

 

あ!

 

今、変な音したよ!?

そろそろ離してくれないとマジで死ぬ!

 

帰還早々死んでしまう!

 

 

「信じてた・・・・・! 帰ってくるって信じてた・・・・!」

 

「何でこんなに遅いのよ・・・・・! バカァ!」

 

二人が涙を流しながら、そう声を漏らした。

 

美羽は俺の胸に顔をうずくめ、アリスは泣きながら俺の胸をドンドン叩いていてくる。

 

・・・・・やっぱ、二人にもかなり心配かけてたんだな。

 

「ゴメン、遅くなった」

 

俺は二人の頭をそっと撫でる。

 

二人は何も答えないけど、うんうん首を縦に振っていた。

 

ティアが俺の方に歩み寄ってきた。

 

「やっと帰ってきたか」

 

「ティア・・・・・・」

 

俺が声をかけるとティアは俺の側にしゃがみこむ。

 

そして、俺の頬を引っ張った。

 

「え、ちょ、ティア!?」

 

驚く俺だが、ティアはクスリと微笑む。

 

「心配させおって。バカ者め」

 

ハハハハ・・・・・・

 

どうやらティアも俺のことを心配してくれていたらしい。

 

これは他の皆にも相当心配かけてるんだろうなぁ・・・・・。

 

あー、後で皆にも謝らないと。

 

そんなことを思慮していると一つの人影が俺の近くに降り立つ。

 

「やはり一誠さんでしたか」

 

さっきまで凄まじい魔力攻撃を繰り出していたグレイフィアさんだ。

 

いつものメイドの格好ではなく、髪を一本の三つ編みに纏めあげて、ボディラインが浮き彫りになる戦闘服を身に付けている。

 

これがグレイフィアさんの戦闘服・・・・・・

 

前々から思っていたけどグレイフィアさんもスタイル抜群だよね!

本当に子供一人産んでますか疑いたくなるほど、腰に括れがある!

 

おっと、いかんいかん。

スケベ心を出している場合じゃなかった。

 

「はい、ただいま戻りました」

 

「連絡が取れないとのことだったので心配していましたが、無事で何よりです。戻って来てばかりで申し訳ないのだけれど、『超獣鬼』を止めるのを手伝っていただけますか?」

 

「ジャバ・・・・ジャバウォック・・・・・?」

 

「あの巨大魔獣の名前です。アザゼル総督がそう名付けました」

 

へぇ、あの巨大モンスターはそういう名前なのか。

 

あれ・・・・・そういや・・・・・・。

 

 

俺は目を閉じて感覚を研ぎ澄ませる。

 

感知範囲を広げていき―――――皆の気を見つけた。

 

都市の方、それもオカ研メンバーだけじゃなくて、シトリーとサイラオーグさんの気も感じる!

皆は無事のようだ!

良かった!

 

しかし、アザゼル先生はいないようだ。

 

てっきり皆と一緒にいると思ったのに・・・・・・。

 

俺はグレイフィアさんに尋ねた。

 

「アザゼル先生はどこに? 皆と一緒じゃないんですか?」

 

「アザゼル総督は今、サーゼクスと共に冥府にいます」

 

「冥府?」

 

「はい。冥界の混乱に乗じて冥府の神ハーデスが介入してこないとも限りませんから」

 

なるほど・・・・・。

 

確かにあの疑似空間でも大量の死神を送りつけてくるわ、伝説の死神を送りつけてくるわ、あげくの果てには英雄派とシャルバの野郎にも手を貸していたからな、あの骸骨神様。

 

放っておけば、この機に仕掛けてくるのは容易に想像できる。

 

アザゼル先生はハッキリ嫌いと言っていたけど、俺も今回の件で嫌いになったね。

どっかで仕返ししてやりたいと思える程には。

 

『それは私も賛成。そこで良い案があるんだけど』

 

良い案?

 

どんな?

 

『それはね――――』

 

イグニスがその良い案とやらを説明してくれる。

 

ふむふむなるほど。

 

中々面白いこと言うじゃないか。

 

『でしょう?』

 

クスクスと笑うイグニス。

 

俺はその案に乗った!

 

ドライグはどう思う?

 

『ふむ・・・・・神に喧嘩を売るなど中々過激だが・・・・・面白い。それでこそ赤龍帝というものだ』

 

よーし、多数決の結果全員一致だ!

 

それじゃあ、一発かましてやるか!

 

俺はグレイフィアさんに視線を戻す。

 

「グレイフィアさん、いくつかお願いがあります。美羽達も協力してくれ!」

 

俺がその作戦を告げると、この場にいた全員が不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

再び鎧を纏った俺は超巨大モンスター『超獣鬼』の眼前に飛翔した。

 

人型だけど、ドラゴンやらライオンやら他の生物の色々な部位がごちゃ混ぜな怪物。

まるでキメラっていう合成獣だな。

目も六つあるし。

 

サイズで言えばグレートレッドよりも大きい。

 

ったく、シャルバの野郎・・・・・・面倒なものを冥界に送り込んでくれたな!

 

『文句を言っても仕方があるまい。今はあの怪物を倒すことに専念することだ』

 

分かってるよ。

 

それじゃあ、おっ始めるか!

 

二人とも頼むぜ!

 

『応!』

 

『さっさとやっちゃいましょうか!』

 

 

俺は瞑目し、意識を集中させた。

 

 

籠手の宝玉から燃え盛る炎のような紅蓮のオーラが発せられ、俺の体を包み込む。

 

鎧の周囲にバチッバチチチッとスパークが飛び交った。

 

 

さぁ、魅せてやろうぜ。

 

俺の・・・・・俺達の可能性を!

 

 

ドバァァァァァァァァッ

 

 

俺を覆っていた紅蓮のオーラが膨れ上がり、そして弾け飛んだ!

 

そこから現れるのは―――――

 

 

「禁手第三階層――――天翼!!」

 

 

今の鎧は赤色から鮮やかな紅蓮に変わり、全体的に鎧が鋭くなっている。

 

特徴的なのは背の鳥類を思わせる赤い翼。

鳥類と言っても羽の一本一本は鋭く、刃物のようだ。

 

纏うオーラは天武や天撃よりも落ち着いた感じだ。

しかし、そのオーラは濃密で―――――

 

 

ゴアアアアアアアアアアアアッ!!

 

 

俺を認識したからか、『超獣鬼』が咆哮をあげる!

 

牙剥き出しの狂暴な口内から危険な火の揺らめきを確認できる!

 

炎を吐く気だ!

 

『相棒、あの炎が都市部に向かうのはマズイ。美羽達も準備中のようだしな』

 

分かってるよ、ドライグ!

 

 

ゴバァァァァァァァァァァンッ!

 

 

吐き出される大質量の火炎球!

確かにあんなのが都市に直撃したら広範囲で吹き飛ぶ!

 

避けるのがマズイならここで防ぎきってやるさ!

 

翼から八つの大きな羽が飛び出し、それが宙を駆け巡る!

 

俺が手を突き出すと、その内の三つが大きく三角形を描くように陣形を組んだ。

 

「フェザービットォッ!」

 

『Barrier!!!!』

 

その音声と共に各々の羽の先端から赤いオーラが放たれ、三つの羽を繋ぎ会わせる!

 

そして出来るのは巨大な三角形の形をしたクリアーレッドの障壁!

 

その障壁は迫る巨大な火炎を見事に防ぎきった!

 

「一誠さん。冥府にいるサーゼクスと通信が取れました。映像もそちらに送れます」

 

「ボク達も準備オーケーだよ!」

 

グレイフィアさんと美羽が準備完了の知らせを告げてくる。

 

よし、それならさっさと片付けるとするか!

 

俺とグレイフィアさんは仲間に指示を出す。

 

「アリス!」

 

「総司さん! 『超獣鬼』の足を両断してください!」

 

俺はアリスにグレイフィアさんは新撰組の羽織を着た侍にそう指示する。

 

「いくわ!」

 

「了解です、グレイフィア殿」

 

アリスと総司と呼ばれた侍は『超獣鬼』の足元に詰めより―――――それぞれ、『超獣鬼』の足を両断した。

 

アリスは左足を総司と呼ばれた侍は右足。

 

同時に両足を切断された『超獣鬼』はバランスを崩し、地響きをたてながら倒れていく。

 

その落下点には美羽とティアとグレイフィアさん、それから他のルシファー眷属が巨大な魔法陣を展開し始めた。

 

斬られた足が既に再生しつつある!

 

傷口から触手みたいなのが生えて、斬られた足を繋げようとしていた!

しかも速い!

 

ちぃっ!

間に合ってくれよ!

 

今からする技は地表付近で使って良い技じゃないんだからな。

 

俺がそう願っていると、どうにか魔法陣は完成したようで、『超獣鬼』の下に超巨大な魔法陣が輝きだした!

 

「上に上げるよ、お兄ちゃん!」

 

美羽がそう叫ぶ!

 

刹那、『超獣鬼』は魔法陣からの衝撃を受けて、遥か上空に吹き飛ばされた!

 

かなり高いぞ!

 

これなら!

 

「プロモーション『女王』!!」

 

 

 

キィィィィィィィィィィンッ!!!

 

 

 

女王に昇格すると同時に甲高い音が鳴り響き、鎧から赤い光が放たれる!

 

バッと翼を大きく広げると羽の隙間から赤い粒子が大量に放出されていく!

 

俺はイグニスを展開し上空に向けて構える。

 

すると、イグニスの刀身に先程射出された八つのフェザービットがカシャカシャという音を出しながら変形、イグニスと合体していく。

 

出来上がるのは刀身が三メートル近くはある超巨大な剣。

 

 

 

実を言うとこの天翼、元々俺のパワーアップを目的とした形態ではない。

 

もちろん通常の禁手よりも出力は上だが、天武や天撃と比べると攻撃力が低い。

打撃力は天武の方が高いし、砲撃の破壊力なら天撃の方が上だ。

この二形態は俺自身のパワーアップに主眼をおいてるからな。

 

 

では、天翼はどこに主眼をおいているか。

 

 

それはイグニスと同調し、イグニスが持つイグニスとしての力(・・・・・・・・・)を完全に引き出すこと。

 

 

それはほんの僅かな時間だが、イグニスの力をフルで引き出せるのさ!

 

もちろん天翼の特性はそれだけじゃない。

他にも色々な機能がついている。

フェザービットもその一つだ。

 

まぁ、それはこの場ではいいだろう。

 

 

完成した巨大な剣を振り上げると、刀身から莫大なオーラが解き放たれる。

 

放たれたオーラは天を貫き、その太さは『超獣鬼』の体長を遥かに超える!

 

それまるで紅蓮に輝く光の柱!

 

イグニスから放たれる莫大なオーラは冥界の空を赤く染め、大地を揺らし始めていた!

 

「これは・・・・・・冥界そのものが揺れている・・・・!?」

 

グレイフィアさんが驚愕の声を漏らしていた。

 

それだけイグニスの力が凄まじいと言うことだ!

 

『まだ本来の力の一部だけどね』

 

こんなことを軽く言ってくれるから家の女神様は恐ろしい!

・・・・・・が、心強くもある!

 

ドライグ、そろそろいけるか!

 

『・・・・・・Ⅲ・・・・・・Ⅱ・・・・・・・Ⅰ!!』

 

『Full Charge!!』

 

『今だ、やれ!』

 

ドライグからの合図!

 

今だ!

 

「ロンギヌス・・・・・・ライザァァァァァァアアア!!!」

 

剣を振り下ろしたと同時に莫大な紅蓮の奔流も次元を斬り裂きながら、『超獣鬼』目掛けて振り下ろされる!

 

そう、こいつは砲撃じゃない!

超巨大な斬撃なのさ!

 

「このままくたばりやがれぇぇぇええええええ!!!」

 

イグニスの絶大な力は『超獣鬼』を容易く呑み込んでいった――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

イグニスとの同調が終わり、紅蓮のオーラによる斬撃も終わる。

 

『超獣鬼』の姿はもうない。

イグニスの力に完全に消し飛ばされたからな。

 

それと、空間が大きく斬り裂かれたせいで万華鏡空間が一面に広がってる。

これは直るのに時間かかりそうだ・・・・・・・。

 

 

・・・・・・っと、ヤバイ。

 

 

突如、俺を激しい疲労感が襲った。

 

今の技は威力は絶大、神すらも容易に消し飛ばす威力を持つ。

しかし、当然ながら消耗は尋常じゃない。

 

現に俺はあの疑似空間でこれを使って二日も気絶してたからな。

 

まぁ・・・・・冥府には今の映像を送れたみたいだし良しとするか?

 

『ククク・・・・・今頃ハーデスを含め死神共は恐々としているかもしれんな。まさか、こんな形で我らから警告を受けるとは思わなかっただろう』

 

俺の意図が伝わっていると良いけどな。

 

 

 

――――次はない。俺の家族と仲間、そして子供達をも傷つけると言うのなら、神だろうと何だろうと、その時は迷わず消し飛ばす。

 

 

 

天翼の状態が解け、そのまま通常の禁手すら維持できなくなった。

 

いやー・・・・・・流石にキツいなこの技。

 

絶対に連発はしたくない。

 

『連発するような技ではないだろう?』

 

『それ以前に今のあなたでは連発できないでしょ?』

 

うん、ごもっともで。

 

空中で悪魔の翼を広げて、何とか体のバランスを維持するが・・・・・・力が抜けそうになる。

 

そこに美羽が駆け付けて、俺の体を支えてくれた。

 

「大丈夫?」

 

「あー、ありがとな。フラフラするけど平気平気」

 

などと言う会話をしながら近くの建物の屋上に降りる。

 

屋上に足をつけた瞬間、その場にへたりこんでしまった。

 

俺を追いかけてアリスとティアもこの場に現れる。

 

ティアが息を吐きながら言う。

 

「イッセー・・・・・。あのような技をいつの間に得ていたのだ? まともにくらえば神クラスですら消し飛ぶぞ」

 

「まぁね。ただ、使った後はこの様でさ。ここぞという時にしか使えないんだよね」

 

『皆と別れてから、この技を使ってねー。そのまま気絶しちゃったのよねー』

 

・・・・・・・あ、チクられた。

 

いや、自分で言うつもりだったけどさ・・・・・・もう少しタイミングを見図るつもりだった。

 

ツッコミたいけどスタミナが・・・・・・

 

『そして起きてからは私とにゃんにゃん』

 

「うおぉい! 根も葉もないこと言うなよ!」

 

『ツッコむ気力あるじゃないか』

 

うるせぇよ、ドライグ!

ここで止めないと厄介なことになるでしょーが!

 

「ねぇ、イッセー・・・・・・。今のはどういうことかしら?」

 

ほら、厄介なことになった!

 

アリスがこめかみに青筋立ててるよ!

 

「お、おち、おち、落ち着け! 今のはイグニスがふざけて」

 

『でも、裸で抱き合ったわ♪』

 

「あんたが脱がせたんだろ!?」

 

「もうっ! 私達が戦っている時にあんたはにゃんにゃん!? 舐めてるの!? ねぇ、舐めてるの!?」

 

「にゃんにゃん言うな! 俺は無実だ! なにもしてない!」

 

『私のおっぱいに見とれてたくせに』

 

「うっ・・・・・・それは・・・・・・」

 

「なんでそこで言葉が詰まるのよ!? あんたやっぱり!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「おい、イッセー。今のは聞き捨てならんな。やはりイグニスとにゃんにゃんしたのか?」

 

『プラスでオーフィスちゃんもね』

 

「「「3(ピー)!?」」」

 

おいぃぃぃぃぃぃ!!

 

女の子がこんな公の場でそんなことを叫んじゃいけません!

 

近くにグレイフィアさん達もいるからマジで止めてくんない!?

 

つーか、してねぇし!

 

 

 

 

したいという気持ちは・・・・・・・否定できないけど。

 

 

 

 

あ、そうだそうだ。

 

イグニスの言葉で思い出したけど、オーフィスを待たせたままだった。

 

「ちょっと待っててくれ。オーフィスを待たせてるんだ」

 

「オーフィス? 奴も近くにいるのか?」

 

「ああ、グレートレッドのところにな」

 

「それなら、すぐそこに来てるが」

 

「え?」

 

ティアが指差す方を見ると俺達の上空。

 

巨大な赤いドラゴン――――グレートレッドの姿があった。

 

こっちまで来てくれたのか?

 

「オーフィス! 終わったぞ!」

 

と、俺が手を振ってそう言うとグレートレッドの頭からオーフィスが降りてきた。

 

「ドライグ、帰る?」

 

「ああ。その前に皆と合流しないとな。付いてきてくれるか?」

 

「我、ドライグと友達。我はドライグについていく」

 

コクリと可愛く頷きながら了承してくれた。

本当に素直で純粋だな。

 

「とうとう無限の龍神まで引き込んだか。いや、オーフィスがイッセーに惹かれたのか? どちらにせよ、ここまで来るとイッセーの人を惹き付ける力というのは凄まじいな」

 

ティアが顎に手を当てて何やら頷いているが・・・・・・。

 

引き込んだとか、そんなんじゃなくて友達になっただけなんだが・・・・・・・

 

ま、いっか。

 

 

『ほう、それは本当か?』

 

ドライグが少し驚いたような声を漏らした。

 

どうした?

 

『喜べ、相棒。朗報だ。グレートレッドが相棒のオーラを回復してくれるらしいぞ』

 

おおっ!

 

マジでか!

 

『なんでも面白いものを見せてもらった礼だそうだ。グレートレッドに気に入られたな』

 

グレートレッドに視線を送ると、グレートレッドは俺を真っ直ぐ見ていた。

 

その大きな目が輝くと、グレートレッドから赤いオーラが放たれ、それが俺の中に入ってくる。

 

力が戻ってくる!

マジで回復してくれたのか!

 

俺の回復が終わるとグレートレッドの目が再び輝き、空に歪みが生じていく。

 

歪みは広がりを見せて、やがてグレートレッドが潜れるほどの大きさとなる。

穴の向こうに次元の狭間の万華鏡空間が認識できた。

 

「サンキューな、グレートレッド!」

 

別れる前にお礼をと思い、そう言う俺。

 

それが伝わったのかグレートレッドは再び俺に視線を移した。

 

そして、大きな口を開けた。

 

 

 

 

《おっぱい、おっぱい》

 

 

 

 

な、なんだと!?

 

初めて聞いたグレートレッドの言葉が・・・・・おっぱい!?

 

《おっぱい、おっぱい、さんぴー》

 

おいぃぃぃぃぃぃ!!

 

誰だグレートレッドにそんな言葉教えたやつ!

 

つーか、最後だけ違う!

 

さっきの会話を聞いてたな!?

 

「いま、最後・・・・・・」

 

「ええ、最後だけ違かったわね」

 

「やはりイッセーはイグニスとオーフィスの二人と」

 

違う!

 

あれは君達のせい!

俺じゃない!

 

あ!

 

言うだけ言って帰っちゃったよ、グレートレッド!

 

帰ってきて!

せめてこの三人の誤解を解いてから帰ってください!

 

 

 

カムバーーーーークッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、俺の想いは届くことがなく・・・・・・・

 

しばしの間、俺は三人に事情を話すだけで精一杯となった・・・・・・・

 


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